設立の手続き

適用額明細書を付けないと法人税15%は使えない?最大37.5万円の差

結論

中小法人の年800万円以下の所得にかかる法人税15%(措法42条の3の2)は、適用額明細書を法人税申告書に添付して初めて使えます。添付しないと租特透明化法3条2項により特例の適用は「ないもの」とされ、本則の19%で計算されます。東京都の法人なら、所得800万円以上で法人税・地方法人税・法人住民税の合計が年37.5万円増えます。後から誤りのない明細書を出せば、故意でない限り税務署長は特例を適用できます。

  • 明細書には条項「第42条の3の2第1項の表の第1号」・区分番号「00380」・適用額(所得のうち年800万円まで、千円未満切捨て)を書く。所得0円・欠損の年は書かない
  • 財務省の調査では、令和6年度に軽減税率を使ったのは111万966件。所得800万円超で適用額が上限の800万円に達する法人が34.1%を占める
  • 少額減価償却資産の特例(区分番号00277)も同じ明細書の対象。修正申告で適用額が変わるときは、全ての措置を書いた明細書を出し直す

法人税の申告を自分でする一人社長がつまずきやすいのは、税率の計算そのものより「15%を使うための書類」です。別表一で15%を使って税額を出していても、適用額明細書が付いていなければ、法律上は特例を受けていないことになります。この記事では、根拠条文、明細書の書き方、付け忘れたときにいくら変わり、どう直すかを順に確認します。

15%は租税特別措置。だから適用額明細書が要る

中小法人の所得のうち年800万円までの部分の税率は、法人税法66条2項の本則では**19%**です。これを租税特別措置法42条の3の2が、令和9年3月31日までに開始する事業年度に限って15%に読み替えています。15%の期限と延長されなかった場合の影響は法人税15%の期限で計算しています。

租税特別措置の適用状況の透明化等に関する法律(租特透明化法)3条1項は、法人税関係特別措置の適用を受けようとする法人に、適用額明細書を法人税申告書へ添付するよう義務付けています。対象の措置は施行令2条が列挙しており、その1号が措法42条の3の2、つまり中小企業者等の法人税率の特例です。

区分根拠年800万円以下の部分適用額明細書
本則法人税法66条2項19%不要
特例租税特別措置法42条の3の215%必要(租特透明化法3条1項・施行令2条1号)

※ 資本金1億円以下の普通法人(適用除外事業者・通算法人を除く)。年800万円超の部分は23.2%で、特例の対象外

明細書の目的は、税務署の審査ではありません。財務大臣が明細書の記載を集計し、措置ごとの適用法人数や適用額を国会に報告するためです(同法4条・5条)。とはいえ、添付は特例を受けるための条件として法律に書かれています。申告書本体と同じ扱いで準備する必要があります。

一人社長が使いがちな措置で、同じ明細書が要るものはもう1つあります。少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例(措法67条の5)です。施行令2条11号に含まれ、記載の手引では区分番号00277、適用額は年300万円が上限です。特例の枠の変化は少額減価償却資産の特例で整理しています。

明細書には何を書くか

国税庁の「適用額明細書の記載の手引」(令和8年4月1日以後終了事業年度)では、中小企業者等の法人税率の特例を使う普通法人は、次の3つを書きます。

欄記載する内容
租税特別措置法の条項第42条の3の2第1項の表の第1号
区分番号00380
適用額別表一次葉二の「74」欄の金額(千円未満切捨て)

適用額は、軽減税率の対象になった所得金額です。施行規則2条1号が「所得の金額のうち年800万円以下の金額」と定めているので、上限は800万円になります。手引の「よくある記載誤り」には、所得金額が900万円でも適用額は「8,000,000円」と書く、という例が載っています。

法人成りした1期目のように事業年度が1年に満たない場合は、上限も800万円を12で割って月数を掛けた額になります。7月設立・12月決算の6か月なら400万円です。

ほかに手引が挙げる注意点は2つです。

  • **所得が0円または欠損の年は、軽減税率を記載しない。**適用を受けられない措置だからです。ほかに使う措置がなければ明細書自体が不要で、別表一等の「適用額明細書提出の有無」欄を「無」にします
  • **資本金や所得金額は別表一と同額にする。**転記の誤りがよくある誤りの1つ目に挙がっています

適用を受ける措置がある年は、e-Taxなら別表一等の「適用額明細書提出の有無」欄の「有」にチェックし、明細書を一緒に送信します。書面なら「有」を丸で囲み、明細書はホチキスどめをせずに申告書に挟み込みます。

添付しなかったら、適用は「ないもの」とされる

租特透明化法3条2項は、明細書を添付しなかった法人、または虚偽の記載をした明細書を添付した法人について、その事業年度に受けようとした特例の適用は**「ないものとする」**と定めています。国税庁の手引も、添付は確定申告書の提出期限までに求められるものだと説明しています。

ただし、救済の規定があります。3条3項は、添付がない申告書や記載に虚偽がある申告書が出された場合でも、誤りのない明細書の提出があったときは、税務署長が特例を適用できるとしています。手引のQ&Aも、故意に添付しなかった場合と虚偽の記載をした場合を除き、後から正しい明細書を出せば適用を受けられるとしています。

状況扱い根拠
期限内に正しい明細書を添付特例を適用租特透明化法3条1項
添付漏れ・虚偽の記載特例の適用はないものとされる同3条2項
その後、誤りのない明細書を提出税務署長は特例を適用できる(故意の場合を除く)同3条3項
修正申告で適用額が変わる変更後の明細書の再提出が必要記載の手引 Q9

3項の文言は「適用することができる」です。後から出せば必ず救われる、という書き方ではありません。気づいた時点で、正しい明細書を早く出すことが前提になります。再提出するときは、誤った部分だけでなく、受けようとする全ての措置を記載し直します(手引 Q5)。

なお、租特透明化法の「法人税申告書」には期限後申告書も含まれます(2条1項4号)。申告が期限に遅れた場合も、15%を使うなら明細書の添付が必要です。期限後申告そのもののペナルティは法人の無申告加算税で計算しています。

15%が外れると、税はいくら増えるか

特例の適用がないとされた場合、年800万円までの部分には本則の19%がかかります。法人税が増えるだけでは済みません。地方法人税(法人税額の10.3%)と法人住民税の法人税割(東京23区で7%)は法人税額を基準にするため、連動して増えます。法人事業税は所得が基準なので変わりません。

当サイトの計算エンジンで、税率だけを15%から19%に差し替えて計算しました。

法人の税引前利益課税所得(適用額)法人税の差地方法人税・法人税割の差増える税の合計
100万円95.4万円(95.4万円)3.8万円0.7万円4.5万円
300万円286.2万円(286.2万円)11.4万円2.0万円13.4万円
500万円475.3万円(475.3万円)19.0万円3.3万円22.3万円
800万円755.0万円(755.0万円)30.2万円5.2万円35.4万円
1,000万円938.5万円(800.0万円)32.0万円5.5万円37.5万円
1,500万円1394.7万円(800.0万円)32.0万円5.5万円37.5万円

※ 東京都の税率。法人事業税は課税所得の計算で損金になる前提(エンジンの近似)のため、税引前利益と課税所得は一致しない。地方法人税は法人税額の10.3%、法人住民税の法人税割は7%。当サイトの計算エンジン(scripts/tekiyougaku-meisaisho-keigen-zeiritsu.mjs profit)で算出

課税所得が800万円に届くと、差は年37.5万円で頭打ちになります。法人税の差は800万円×4%の32.0万円で、残りの5.5万円が地方法人税と法人税割です。

一人社長の場合、法人の所得は役員報酬をいくらにしたかで決まります。判定ツールが探す最適な役員報酬で払った後、法人に残る所得で計算すると次のとおりです。

事業所得最適な役員報酬法人の課税所得適用額明細書の適用額法人税等(15%)明細書なし(19%)増える税
800万円月54万円56.7万円56.7万円19.7万円22.3万円2.6万円
1,000万円月54万円247.6万円247.6万円62.4万円74.0万円11.6万円
1,200万円月54万円437.5万円437.5万円105.8万円126.4万円20.5万円
1,500万円月54万円717.2万円717.2万円175.4万円209.0万円33.6万円
2,000万円月90万円748.1万円748.1万円183.1万円218.1万円35.1万円
2,500万円月100万円1090.4万円800.0万円302.8万円340.4万円37.5万円
3,000万円月100万円1546.7万円800.0万円470.8万円508.3万円37.5万円

※ 事業所得=売上−経費(青色申告特別控除の前)。経費200万円・東京23区・40歳未満・単身・インボイス登録あり・合同会社。役員報酬は軽減税率15%で計算した最適額に固定。法人税等は法人税・地方法人税・法人住民税(法人税割+均等割)・法人事業税・特別法人事業税の合計(東京都の税率)。19%は法人税法66条2項の本則税率。当サイトの計算エンジン(scripts/tekiyougaku-meisaisho-keigen-zeiritsu.mjs owner)で算出

役員報酬は申告の時点でもう払い終わっているので、明細書を付け忘れても報酬を組み直すことはできません。事業所得1,500万円の一人社長なら、法人に717.2万円の所得が残り、付け忘れで年33.6万円税が増えます。この額は、法人化の判定で見る「法人化の実質差額」をそのまま削ります。

統計で見る:明細書を出す法人の3社に1社は上限の800万円

財務省の「租税特別措置の適用実態調査の結果に関する報告書」(令和8年2月国会提出)は、明細書の記載を集計したものです。令和6年4月〜令和7年3月に終了した事業年度で、適用額明細書を提出した法人は1,517,466法人でした。そのうち中小企業者等の法人税率の特例の適用は1,110,966件で、措置の中で最も多い件数です。少額減価償却資産の特例も669,306件あります。

報告書の所得階級別の表を、当サイトで割合と1件あたりの適用額に直しました。

法人の所得適用件数割合1件あたりの適用額
100万円以下282,026件25.4%40.2万円
100万円超〜800万円450,218件40.5%352.7万円
800万円超1,000万円以下48,622件4.4%795.4万円
1,000万円超5,000万円以下233,195件21.0%795.3万円
5,000万円超1億円以下46,749件4.2%795.7万円
1億円超10億円以下47,794件4.3%794.5万円
10億円超100億円以下2,342件0.2%792.2万円
100億円超20件0.0%800.0万円
合計1,110,966件100.0%424.2万円

※ 財務省「租税特別措置の適用実態調査の結果に関する報告書」(令和8年2月国会提出)の業種別・所得階級別適用件数及び適用額(中小企業者等の法人税率の特例)の合計行。令和6年4月〜令和7年3月に終了した事業年度。1件あたりの適用額は当サイトで適用額÷件数を計算(scripts/tekiyougaku-meisaisho-keigen-zeiritsu.mjs stats)。元データは data/official/tekiyou-jittai-r06/

所得800万円超の層は合わせて378,722件で、**全体の34.1%**です。この層の1件あたりの適用額は795万円前後で、上限の800万円にほぼ張り付いています。前の節で計算した、事業所得2,500万円・3,000万円の一人社長と同じ位置です。

逆に、所得100万円以下の法人が25.4%あり、1件あたりの適用額は40.2万円です。前の節の税引前利益100万円の例と同じく、税の差は小さい層ですが、明細書を付けなければ特例を使えない点は変わりません。

自分で申告する前に確認する3点

法人の決算と申告を自分でする場合、明細書は申告書の最後に作る書類になりがちです。提出前に次の3点を確認してください。

  1. **別表一次葉二の「74」欄に金額があるか。**あれば明細書に00380を書く。適用額はその欄の金額(800万円が上限、1年未満の事業年度は月割り)
  2. **少額減価償却資産の特例を使ったか。**別表十六(七)を付けたなら、明細書に00277も書く
  3. 別表一等の「適用額明細書提出の有無」欄と、明細書の中身が一致しているか。「有」にして明細書がない、明細書の資本金・所得金額が別表一と違う、を避ける

提出後に漏れに気づいたら、誤りのない明細書を税務署に出します。修正申告で所得が変わる場合も、変更後の明細書を全ての措置について出し直します。どの措置を明細書に載せるべきか判断がつかない場合や、故意かどうかが問われる状況では、個別の事情を専門家に確認する価値があります。

まとめ

  • 法人税15%は租税特別措置法42条の3の2の特例で、本則は法人税法66条2項の19%。適用額明細書の添付が条件になる(租特透明化法3条1項・施行令2条1号)
  • 明細書には「第42条の3の2第1項の表の第1号」「00380」と、所得のうち800万円までの適用額を書く。所得0円・欠損の年は書かない
  • 添付しないと特例の適用はないものとされる。誤りのない明細書を後から出せば、故意でない限り税務署長は適用できる
  • 19%で計算されると、東京都の法人で税は最大年37.5万円増える。事業所得1,500万円の一人社長なら年33.6万円
  • 令和6年度の適用は111万966件で、34.1%は所得800万円超で上限に達している

明細書の有無で変わる額は、法人に残す所得の大きさで決まります。一般論の数字ではなく、自分の売上と経費で法人化後の所得がいくらになるかを確かめてください。

よくある質問

赤字の年も適用額明細書は必要ですか

国税庁の記載の手引は、所得金額が0円または欠損の場合、軽減税率のように適用を受けられない措置は記載不要としています。ほかに使う措置(少額減価償却資産の特例など)があればその措置について添付し、何も使わなければ別表一等の「適用額明細書提出の有無」欄で「無」を選びます。

白色申告の法人でも15%の軽減税率は使えますか

租税特別措置法42条の3の2の条文には、青色申告の要件はありません。資本金1億円以下などの要件を満たせば白色申告でも対象になり、その場合も適用額明細書の添付が必要です。一方、少額減価償却資産の特例は青色申告書を提出する法人が対象です。

e-Taxで申告する場合、明細書はどう出しますか

適用額明細書はe-Taxで送信できます。国税庁の手引は、別表一等の「適用額明細書提出の有無」欄で「有」にチェックし、明細書の条項・区分番号・適用額などを入力するよう案内しています。書面で出す場合は、ホチキスどめをせず申告書に挟み込んで提出します。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。