税金の基礎

特別障害者手当・障害児福祉手当の扶養義務者の所得制限と法人化

結論

特別障害者手当(月30,450円)と障害児福祉手当(月16,560円)は、生計を維持する扶養義務者の所得が限度額以上だと全額止まります。特別障害者の母と同居する単身の事業主なら、個人事業は事業所得701.6万円で止まり、法人化後は役員報酬が月76万円に届くまで止まりません(当サイト試算)。

  • 扶養義務者・配偶者の限度額は扶養親族等0人で628.7万円、2人で674.9万円(所得額・以上で停止)。本人の限度額375.8万円とは別の表
  • 扶養義務者の所得額は、所得から定額8万円と特別障害者1人40万円を引く。給与所得ならさらに10万円を引くため、同じ利益でも法人化後は所得額が下がる
  • 重度障害児の親は、特別児童扶養手当では本人として、障害児福祉手当では扶養義務者として判定される。止まる事業所得は583.6万円と722.9万円で別々

特別障害者手当と障害児福祉手当は、障害のある本人に支給される手当です。所得制限は本人だけでなく、本人の配偶者と、本人の生計を維持する扶養義務者(同居する親・子・兄弟姉妹など)にもかかります。 事業主が障害のある家族を養っている世帯では、判定されるのは本人の年金ではなく、事業主の所得です。

扶養義務者の所得額は、給与所得にだけ10万円の控除が付く式で計算します。このため、同じ事業の利益でも、個人事業の事業所得として受け取るか、法人化して役員報酬の給与所得として受け取るかで、手当が止まる線がずれます。

手当は月30,450円と月16,560円。扶養義務者の所得で全額止まる

厚生労働省によれば、令和8年4月からの手当月額は次のとおりです。支払いは原則として毎年2月・5月・8月・11月に、前月分までがまとめて振り込まれます。

手当対象月額年額
特別障害者手当20歳以上で、著しく重度の障害のため常時特別の介護が必要な在宅の人30,450円36万5,400円
障害児福祉手当20歳未満で、重度の障害のため常時の介護が必要な在宅の児童16,560円19万8,720円

障害者支援施設に入所している人や、病院に3か月を超えて入院している人には特別障害者手当は支給されません(特別児童扶養手当等の支給に関する法律26条の2)。特別障害者手当は、要介護度の高い高齢の親を自宅で介護している世帯も対象になり得る手当です。

所得制限の限度額は、受給資格者本人と、配偶者・扶養義務者で別の表になっています。

扶養親族等の数受給資格者本人(超えると停止)配偶者・扶養義務者(以上で停止)
0人3,758,000円6,287,000円
1人4,138,000円6,536,000円
2人4,518,000円6,749,000円
3人4,898,000円6,962,000円

※ 厚生労働省「特別障害者手当について」「障害児福祉手当について」(令和8年8月以降適用)。所得額で判定する

法律は、本人の所得が限度額を「超えるとき」(20条)、配偶者・扶養義務者の所得が限度額「以上であるとき」(21条)に、その年の8月から翌年7月までの手当を支給しないと定めています。一部だけ減る仕組みはありません。扶養義務者の所得が1円でも限度額に届けば、1年分がまとめて止まります。

扶養義務者の限度額は、扶養親族等に老人扶養親族がいると上の表より高くなります。施行令2条2項の式では、扶養親族等が70歳以上の親1人だけなら653.6万円で表と同じですが、配偶者と70歳以上の親の2人なら680.9万円です(表の2人より6万円高い)。

扶養義務者の所得額は、本人とは別の式で計算する

所得額の計算は施行令5条に書かれています。障害児福祉手当・特別障害者手当の扶養義務者には、この条文がそのまま準用されます(施行令8条4項・12条5項)。

扶養義務者の所得額 = 所得 −(給与所得・公的年金等があるときは10万円)− 8万円 − 障害者控除(1人27万円、特別障害者は40万円)− 医療費控除・小規模企業共済等掛金控除などの実額

一方、受給資格者本人の所得額は読み替えが入っていて、式が違います(施行令8条3項・12条4項)。

項目本人配偶者・扶養義務者
定額控除8万円引かない引く
社会保険料実際の社会保険料控除額を引く実額は引かない(代わりに定額8万円を引く)
障害者控除扶養している障害者の分だけ控除を受けた障害者1人につき27万円・40万円
非課税の年金(特別障害者手当)国民年金・厚生年金などの年金給付を所得に含める含めない

扶養義務者の側で効くのは、10万円の控除が給与所得と公的年金等にしか付かないことです。事業所得には付きません。また社会保険料は一律8万円なので、法人化して厚生年金・健康保険の保険料が増えても所得額は変わりません。

特別障害者手当の本人の側では、非課税の障害年金や遺族年金も所得に数えます(施行令11条)。本人の年金で止まるかどうかは、事業主の法人化とは関係なく決まります。

個人事業は事業所得700万円台で止まり、法人化後は月76万〜78万円まで止まらない

扶養義務者である事業主が手当を止める線を、家族の型ごとに出しました。障害のある家族は事業主の扶養親族で、特別障害者控除(手当の計算では40万円)の対象になっている前提です。

家族の型手当扶養親族等限度額(所得額・以上で停止)個人:止まる事業所得(青色控除後)同・事業の利益(青色控除前)法人:止まる役員報酬
重度障害児(16歳未満)と配偶者を扶養する親障害児福祉手当2人6,749,000円722.9万円787.9万円月78万円(年936.0万円)
特別障害者の親(70歳以上)と同居する単身の子特別障害者手当1人(うち老人扶養1人)6,536,000円701.6万円766.6万円月76万円(年912.0万円)
特別障害者の成人の子と配偶者を扶養する親特別障害者手当2人6,749,000円722.9万円787.9万円月78万円(年936.0万円)
特別障害者の親(70歳以上)と配偶者を扶養する子特別障害者手当2人(うち老人扶養1人)6,809,000円728.9万円793.9万円月78万円(年936.0万円)

※ 役員報酬は1万円刻みで、給与所得が限度額+58.0万円(10万円+8万円+40万円)以上になる最初の月額。令和8年分の給与所得控除で計算。扶養親族等の数え方は申請先の市区町村で確認が必要

個人事業では、限度額に8万円と40万円を足した事業所得で手当が止まります。法人化後は、給与所得から10万円も引けるうえ、給与所得控除が先に効きます。止まる線は、事業の利益766.6万円に対して役員報酬年912万円と、145万円以上ずれます。

役員報酬を年912万円払うには、会社負担の社会保険料も出せるだけの利益が要ります。判定ツールの最適報酬は、下の試算のとおりこの線よりかなり低いところにあります。

特別障害者の親と同居する単身の事業主なら、売上1,000万円が分かれ目

特別障害者の母(70歳以上)と同居し、母の生計を維持している40〜64歳の単身の事業主で、売上別に計算しました。法人化後の役員報酬は、判定ツールが手取り最大として選ぶ額です。

売上事業所得個人:手当ツールの最適報酬給与所得法人:手当実質差額(手当なし)実質差額+手当
800万円535.0万円支給月42万円359.2万円支給−34.0万円−34.0万円
900万円635.0万円支給月45万円388.0万円支給−26.2万円−26.2万円
1,000万円735.0万円停止月45万円388.0万円支給−18.9万円+17.6万円
1,100万円835.0万円停止月45万円388.0万円支給−13.2万円+23.3万円
1,200万円935.0万円停止月45万円388.0万円支給−10.0万円+26.6万円
1,400万円1,135.0万円停止月54万円474.4万円支給−4.3万円+32.2万円
1,600万円1,335.0万円停止月54万円474.4万円支給+16.0万円+52.5万円

※ 東京23区・40〜64歳・単身(母は扶養親族)・経費200万円・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み・合同会社/2026年(令和8年)分基準。手当は特別障害者手当 月30,450円の12か月分。判定ツールは母の扶養控除・障害者控除を計算に入れていない

売上1,000万〜1,400万円の帯では、手当を考えなければ法人化は年4.3万〜18.9万円の損です。手当の年36.5万円を足すと、年17.6万〜32.2万円のプラスに変わります。 売上900万円以下では個人事業のままでも手当は止まらないので、手当は法人化の比較に影響しません。

重度障害児の親は、2つの手当で別々の線にかかる

重度の障害のある子を育てる親は、特別児童扶養手当と障害児福祉手当の両方の対象になり得ます。このとき親の立場が手当ごとに違います。特別児童扶養手当では親が受給資格者本人で、障害児福祉手当では子が受給資格者、親は扶養義務者です。

配偶者(無収入)と1級の障害のある16歳未満の子を扶養する事業主で計算しました。特別児童扶養手当の本人の限度額は535.6万円、障害児福祉手当の扶養義務者の限度額は674.9万円で、どちらも以上で停止です。

売上事業所得個人:特児扶/障害児福祉ツールの最適報酬給与所得法人:特児扶/障害児福祉実質差額(手当なし)実質差額+手当
800万円535.0万円支給/支給月42万円359.2万円支給/支給−17.8万円−17.8万円
900万円635.0万円停止/支給月48万円416.8万円支給/支給−10.9万円+59.3万円
1,000万円735.0万円停止/停止月54万円474.4万円支給/支給−3.8万円+86.2万円
1,100万円835.0万円停止/停止月54万円474.4万円支給/支給−3.9万円+86.1万円
1,200万円935.0万円停止/停止月54万円474.4万円支給/支給−1.4万円+88.6万円
1,400万円1,135.0万円停止/停止月54万円474.4万円支給/支給+12.7万円+102.7万円

※ 東京23区・40歳未満・配偶者(無収入)・16歳未満の子1人・経費200万円・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み・合同会社/2026年(令和8年)分基準。手当は特別児童扶養手当1級 月58,450円、障害児福祉手当 月16,560円の12か月分。手当の所得額は特別障害者控除40万円を引いた額

個人事業のままだと、事業所得583.6万円で特別児童扶養手当が、722.9万円で障害児福祉手当が止まります。2つ合わせて年90.0万円です。法人化後は、ツールの最適報酬のままで両方が続きます。特別児童扶養手当だけの計算は特別児童扶養手当の所得制限は、法人化で超えにくくなるにあります。この表は子の国保の均等割も含めているので、手当なしの実質差額が少し違います。

配偶者を役員にすると、配偶者も1人ずつ判定される

判定は、本人の配偶者と、生計を維持する扶養義務者の1人ずつについて行われます。障害児福祉手当なら父母のどちらの所得も見られます。配偶者を役員にして報酬を払うと、配偶者の所得もそれぞれの限度額と比べられます。配偶者に扶養親族がいなければ、限度額は628.7万円です。

判定に使うのは前年の所得です。法人化した年は、個人事業の期間の事業所得と、法人から受けた役員報酬の給与所得が合算されます。その年の所得が判定に乗るのは、翌年8月分からです。

障害者控除そのものは、所得税と住民税の計算でも引けます。控除の効き方が法人化でどう変わるかは障害者控除に所得制限はない。それでも法人化で減税額が縮む理由で計算しています。

まとめ

  • 特別障害者手当は月30,450円、障害児福祉手当は月16,560円。扶養義務者の所得が限度額以上なら1年分が全部止まる
  • 扶養義務者の所得額は、所得から8万円と特別障害者1人40万円を引き、給与所得ならさらに10万円を引く。社会保険料は実額にかかわらず8万円
  • 特別障害者の親と同居する単身の事業主では、個人事業は事業所得701.6万円、法人化後は役員報酬月76万円で手当が止まる
  • 重度障害児の親は、特別児童扶養手当(本人)と障害児福祉手当(扶養義務者)で別々の線にかかり、個人事業なら583.6万円と722.9万円で順に止まる
  • 法人に残した利益は判定に入らないが、配偶者を役員にすると配偶者の所得も判定される

判定ツールは手当を計算に入れていません。一般論の数字ではなく、自分の売上と経費で実質差額を出したうえで、家族の手当が止まる線を上の式で確かめてください。

よくある質問

別居している親の所得も、特別障害者手当の判定に入りますか?

法律が対象にしているのは、民法877条1項の扶養義務者(直系血族と兄弟姉妹)のうち、受給資格者の生計を維持している人です。別居して仕送りをしている子が生計を維持していると扱われるかどうかは、申請先の市区町村が個別に判断します。

特別障害者手当と障害児福祉手当は、同時に受け取れますか?

受け取れません。障害児福祉手当は20歳未満の重度障害児、特別障害者手当は20歳以上の特別障害者が対象で、年齢で切り替わります。20歳になると改めて特別障害者手当の認定を受ける必要があります。

法人に残した利益は、扶養義務者の所得に入りますか?

入りません。判定に使うのは扶養義務者個人の前年の所得で、法人の利益は法人のものです。ただし法人から配当を受け取ると、配当所得として個人の所得に入ります。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。