税金の基礎

東京都で会社を休業しても均等割はかかるか。審査会3件の決め手は帳簿

結論

東京都の審査会が扱った「休業中なのに均等割を課された」という不服3件(2018〜2020年)は、すべて棄却されました。3件とも、休業していると主張する期間に売上や経費が計上されていたため、都内に事務所等を持ち継続して事業を行っていたと判断されています。23区の会社なら年7万円、市町村部の会社なら法人都民税の2万円に市町村民税の均等割が加わります。

  • 均等割の課税要件は利益ではなく『都内に事務所等を有すること』。事務所等とは、事業の必要から設けた人的・物的設備で、継続して事業が行われる場所(総務省の取扱通知)
  • 答申は、休業届(異動届出書・現況説明書)よりも、法人税申告書や事業概況説明書に計上された売上・販管費を重く見た。現況説明書の『自宅の1室を事務所として温存』という記載も、事務所等がある根拠にされた
  • 東京都の都税条例は、事務所等を廃止したときは10日以内に申告する義務を定めている(答申の引用による)

会社を畳むほどではないので、しばらく休ませておく。休業届を出したから、均等割も止まるはずだ――。この考えで東京都と争った会社が、東京都行政不服審査会の答申に3件出てきます。結論はすべて棄却でした。

休眠と均等割の扱いは自治体によって違い、東京都は休業中の均等割の扱いを公表していません(休眠会社の均等割はかからない?3市の公式回答が割れる)。その東京都の実際の判断を、答申から読みます。

均等割の課税要件は「事務所等があること」

法人住民税の均等割は、所得ではなく事務所又は事業所(事務所等)を有することで課されます。答申が引用する総務省の取扱通知は、事務所等を次のように定義しています。

自己の所有に属するものであるか否かにかかわらず、事業の必要から設けられた人的及び物的設備であって、そこで継続して事業が行われる場所

本来の事業でなくても、それに直接・間接に関連する付随的な事業が社会通念上そこで行われていれば、事務所等として扱ってよいともされています。利益が出ているかどうかは課税要件に入っていません。 答申も「法人の事業により利益が発生していることは何ら要件とされていない」と明言しています。

均等割は、事業年度のうち事務所等を有していた月数で月割します(地方税法52条3項・312条4項)。

3件の答申と、決め手になった事実

答申日会社の所在均等割会社の主張決め手になった事実
平成30年6月27日市町村部(代表者の自宅)年2万円×2年度平成27年4月から休業状態で利益もない売上と販管費が計上されていた。現況説明書に「自宅の1室を事務所(室)として温存」
平成30年10月15日23区年7万円×2年度事業は行っていない。収入・経費は代表者の個人的な事情によるもの売上・雑収入と、車両諸掛・地代家賃・通信交通費・接待交際費などを法人税申告に計上
令和2年12月24日市町村部年2万円9月から休業しており、お金もない休業後も事業概況説明書に断続的に売上が計上。事務所等がないことを示す書証もない

※ 東京都行政不服審査会の各答申。市町村部の2万円は法人都民税(道府県民税に相当する部分)で、市町村民税の均等割は別

休業届より、法人税の申告書が重く見られた

3件とも、会社は東京都に異動届出書や現況説明書で休業を届け出ていました。それでも答申は、法人税の確定申告書や法人事業概況説明書に売上や経費が載っていることから、その期間も継続して事業を行っていたと判断しています。届出の内容と申告の内容が食い違えば、申告の数字が勝つということです。

平成30年6月27日の答申では、会社自身が出した現況説明書に「自宅の1室を事務所(室)として温存」と書いていたことが、事務所等がある根拠として使われました。休業を伝えるつもりで書いた一文が、事務所等を維持していることの証拠になっています。

「社長の個人的な収支」は通らない

平成30年10月15日の答申の会社は、帳簿に載っている収入と経費は代表者の個人的な事情によるもので、会社の事業ではないと主張しました。保険代理店の手数料も、すでに代理店を営業していないので事業の収入ではないと述べています。

答申は、代表者の個人の活動と会社の業務の経理は厳に区別されるべきだとしたうえで、会社の収入・経費として法人税を申告した以上、会社の事業と認めるほかないと結論づけました。一人社長が休業中に、個人の車や通信費を会社の経費にし続けていると、そのこと自体が「会社は事業を続けている」証拠になります。

休業中でもかかる金額

答申の事案から分かる東京都の均等割の額は次のとおりです。

会社の所在法人都民税の均等割(資本金等1,000万円以下・従業者50人以下)別にかかるもの
23区年7万円(道府県分と市町村分を合わせた都民税)なし
市町村部(多摩・島しょ)年2万円(道府県民税に相当する部分)市町村民税の均等割

※ 東京都行政不服審査会の答申(平成30年6月27日・10月15日、令和2年12月24日)の算定による。23区は地方税法734条により道府県民税と市町村民税に相当する税を合わせて都民税として課す

休業している間も事務所等があると判断されれば、23区の会社は毎年7万円です。3年休ませれば21万円、5年なら35万円になります。均等割が損益分岐をどれだけ動かすかは均等割7万円は法人化の損益分岐を70万円押し上げるで計算しています。

事務所等をやめたら、10日以内に申告する

平成30年10月15日の答申は、東京都の都税条例が、事務所等を廃止した場合はその事実が生じた日から10日以内に都知事に申告する義務を定めていることにも触れています(条例114条の2第2項)。本店の所在場所を変えた場合は、会社法上の登記も必要です。

答申は、どういう状態なら事務所等がないと認めるかを示していません。ただ3件の判断から読み取れるのは、少なくとも次の状態では「休業」と認められにくいということです。

  • 休業期間に売上や雑収入が計上されている
  • 家賃・通信費・車両費などの経費を会社の経費として申告している
  • 届出書に、事務所を残していると読める記載がある

休ませるより、畳むか続けるかを決める

休眠を考える局面では、均等割の7万円より大きな固定費があります。税理士報酬、法人の申告、登記の維持です。休業中の扱いが自治体ごとに違うことと、休眠会社を維持するコストの全体像は休眠会社の均等割はかからない?3市の公式回答が割れる、赤字でもかかる均等割の基本は法人住民税の均等割は赤字でも年7万円にまとめています。会社を畳む年の均等割がいつまでかかるかは、営業終了から解散までの1年分を課された答申をもとに会社をたたむ年の均等割はいつまでかかる?で計算しています。

まとめ

  • 東京都の審査会で「休業中なのに均等割」を争った3件は、すべて棄却された
  • 均等割の課税要件は、利益ではなく都内に事務所等があること。継続して事業が行われている場所かどうかで判断される
  • 決め手は休業届ではなく、法人税申告書・事業概況説明書の売上と経費。「自宅の1室を事務所として温存」という記載も根拠にされた
  • 代表者の個人的な収支だという主張は、会社の収支として申告している以上通らない
  • 23区の会社は年7万円、市町村部は法人都民税2万円+市町村民税の均等割。事務所等の廃止は10日以内に申告する

会社を休ませる前に、帳簿と届出が休業の実態と合っているかを確かめてください。法人を続けるかどうかは、自分の売上と経費で比べてから決めるのが確実です。

よくある質問

東京都に休業届を出せば、均等割は止まりますか?

答申3件では、休業届を出していても、その期間に売上や経費が計上されていたため課税が維持されました。答申は、どういう状態であれば事務所等がないと認めるかは示していません。休業届という書類ではなく、事業の実態が判断されます。

休業中の会社の均等割はいくらですか?

23区内の会社は、資本金等1,000万円以下・従業者50人以下なら法人都民税として年7万円です(答申の事案もこの額)。市町村部の会社は、法人都民税(道府県民税に相当)が年2万円で、別に市町村民税の均等割がかかります。事務所等を有していた月数で月割します。

社長の個人的な収入や経費が会社の帳簿に入っていても、会社の事業になりますか?

平成30年10月15日の答申は、代表者の個人的な事情で生じた収入・経費だという主張を退け、会社の収入・経費として法人税を申告した以上、会社の事業と認めるほかないとしました。会社と個人の経理を分けておくことが、事業の有無を判断される前提になります。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。