役員報酬
役員賞与の源泉徴収はいくら?前月給与の10倍を超えると天引きが倍になる
結論
役員賞与の源泉徴収は、前月の給与(社会保険料等控除後)で決まる率を賞与(社会保険料等控除後)にかけて計算します。ただし賞与が前月給与の10倍を超えると、賞与を6で割って月額表に当てる特例計算になります。年648万円を月30万円+賞与288万円で払うと、賞与からの天引きは33.3万円、年間の源泉徴収は41.0万円で、年税額19.8万円との差21.3万円が年末調整で戻ります。
- 月54万円だけで払う場合の年間の源泉徴収は26.8万円。賞与を厚くすると、同じ年収でも途中の天引きが14.2万円多くなる
- 前月給与が月40万円(社保控除後34.2万円前後)なら賞与の税率は8.168%、月45万円なら12.252%。前月の額で率が段階的に上がる
- 定期の給与を受けていない役員に毎年所定の時期に定額を払う事前確定届出給与は、源泉徴収上の賞与から除かれる(国税庁 No.2523)
事前確定届出給与を使って役員賞与を出すと、社会保険料の計算が変わることはよく知られています(事前確定届出給与で社会保険料は下がる?)。一方で、賞与から源泉徴収する所得税がいくらになるかは、意外に知られていません。毎月の給与とは計算方法がまったく違い、払い方によっては年末まで大きく取りすぎになります。
賞与の源泉徴収は、前月の給与で率が決まる
国税庁 No.2523 によると、賞与の源泉徴収税額は「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を使って、次のように計算します(扶養控除等申告書を出している場合の甲欄)。
- 前月の給与から社会保険料等を差し引く
- その金額と扶養親族等の数から、算出率の表で率を求める
- 賞与から社会保険料等を差し引いた金額に、その率をかける
賞与そのものの額ではなく、前月の給与の額で率が決まるのが特徴です。令和8年分の表(甲欄・扶養親族等0人)の主な行を抜き出します。
| 前月の給与(社会保険料等控除後) | 賞与にかかる税率 |
|---|---|
| 82千円未満 | 0.000% |
| 94千円以上260千円未満 | 4.084% |
| 260千円以上309千円未満 | 6.126% |
| 309千円以上342千円未満 | 8.168% |
| 342千円以上372千円未満 | 10.210% |
| 372千円以上402千円未満 | 12.252% |
| 433千円以上520千円未満 | 16.336% |
| 605千円以上684千円未満 | 20.420% |
| 922千円以上1,318千円未満 | 32.672% |
| 3,495千円以上 | 45.945% |
※ 国税庁「令和8年分 源泉徴収税額表」の賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表(甲欄・扶養親族等の数0人)から抜粋。当サイトで抽出(scripts/yakuin-shoyo-gensen.mjs ritsu)
前月給与の10倍を超える賞与と、前月に給与がない場合
例外が2つあります(国税庁 No.2523)。
- 賞与(社保控除後)が前月の給与(社保控除後)の10倍を超える場合:賞与を6で割り、前月の給与と足した額を月額表に当てはめて税額を出します。そこから前月の給与の税額を引いて6倍した額が、賞与の源泉徴収税額です
- 前月に給与の支払がない場合:賞与を6で割った額を月額表に当てはめ、その税額を6倍します
賞与の計算期間が6か月を超える場合は、どちらも6の代わりに12を使います。
月額を低く、賞与を厚くする払い方をすると、この「10倍超」に入りやすくなります。月額表は累進なので、賞与を6分割して上乗せすると、高い税率の部分で計算されることになります。
年648万円を4通りに払って比べる
東京都(協会けんぽ)・40歳未満・扶養親族なしの一人社長が、年648万円の役員給与を4つのパターンで受け取った場合です。賞与は年1回、事前確定届出給与として届け出ている前提です。
| 払い方(年648万円) | 毎月の源泉徴収 | 賞与の源泉徴収(計算方法) | 1年間の源泉徴収 | 年税額 | 年末調整 | 社会保険料(本人・年) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 月54万円のみ | 22,310円 | — | 267,720円 | 186,400円 | 還付 81,320円 | 90.2万円 |
| 月45万円+賞与108万円 | 14,670円 | 113,545円(算出率12.252%) | 289,585円 | 186,400円 | 還付 103,185円 | 90.2万円 |
| 月40万円+賞与168万円 | 11,000円 | 119,095円(算出率8.168%) | 251,095円 | 184,500円 | 還付 66,595円 | 92.0万円 |
| 月30万円+賞与288万円 | 6,430円 | 333,000円(10倍超の特例) | 410,160円 | 197,500円 | 還付 212,660円 | 79.3万円 |
※ 東京都(協会けんぽ)・40歳未満・扶養親族等0人・令和8年分。賞与の社会保険料は標準賞与額に料率をかけ、健康保険は年度累計573万円・厚生年金は1回150万円が上限。源泉徴収は令和8年分の月額表・算出率の表(甲欄)、年税額は令和8年分の給与所得控除・基礎控除で計算。当サイトで計算(scripts/yakuin-shoyo-gensen.mjs)
読み取れることは3つあります。
1. 月30万円+賞与288万円は、途中で41.0万円も天引きされる。 賞与(社保控除後約260万円)が前月の給与(社保控除後約25.7万円)の10倍を超えるので特例計算になり、賞与だけで33.3万円が引かれます。年税額は19.8万円なので、21.3万円を年末まで余分に預けることになります。
2. 月額の率が上がると、賞与の率も上がる。 月40万円なら賞与の税率は8.168%ですが、月45万円では12.252%です。前月の給与が算出率の表の段を1つ上がるだけで、賞与全体にかかる率が上がります。
3. どの払い方でも年末調整で戻る。 令和8年分は、基礎控除の引上げが12月の年末調整で反映され、11月までの源泉徴収には反映されません(国税庁)。そのため月54万円だけでも8.1万円が戻ります。賞与を入れた払い方ではそれに上乗せして取りすぎが生じ、最大で21.3万円になりました。
住民税は賞与から引かれない
源泉徴収されるのは所得税(令和8年分は復興特別所得税を含む)だけです。住民税の特別徴収は、市区町村から通知された年税額を毎月の給与から12回に分けて引く仕組みなので、賞与から追加で引かれることはありません。賞与の分は、翌年度の住民税の額に反映されます。手取りの内訳は役員報酬の手取り早見表で扱っています。
定期の給与がない役員の「年1回払い」は賞与ではない
もう1つ注意したいのは、源泉徴収の上で賞与に当たらない事前確定届出給与があることです。国税庁 No.2523 は、事前確定届出給与を賞与に含めつつ、「他に定期の給与を受けていない者に対して継続して毎年所定の時期に定額を支給する旨の定めに基づき支給されるもの」を除いています。
月々の役員報酬を払わず、毎年決まった時期に決まった額を1回だけ払う形は、源泉徴収の上では賞与の算出率の表を使う対象から外れる、ということです。この形を検討する場合の計算は、この記事の範囲を超えるので扱いません。
払い方を決めるときの考え方
源泉徴収は、年税額の前払いにすぎません。取りすぎても年末調整で戻るので、1年間の税額そのものは払い方で大きくは変わりません。上の表でも、年税額は18.5万〜19.8万円の幅に収まっています。
違いが出るのは次の2点です。
- 資金繰り:賞与を厚くすると、賞与の月にまとまった源泉所得税を納め、12月に戻す流れになる。納期の特例(半年ごとの納付)を使っていれば、会社の口座から出るのは1月か7月
- 社会保険料:月30万円+賞与288万円は、厚生年金の標準賞与額の上限(1回150万円)が効いて社会保険料が年10.9万円少ない。その代わり、将来の厚生年金も少なくなる
役員報酬を月額と賞与にどう分けるかは、社会保険料と将来の年金の比較で決めるもので、源泉徴収の大きさで決めるものではありません。まずは月額だけの前提で、最適な役員報酬の目安をシミュレーターで確かめてください(役員報酬はいくらが最適か)。
まとめ
- 役員賞与の源泉徴収は、前月の給与(社保控除後)で決まる率を、賞与(社保控除後)にかけて計算する
- 賞与が前月給与の10倍を超えると、賞与を6で割って月額表に当てる特例計算になり、天引きが大きくなる
- 年648万円を月30万円+賞与288万円で払うと、1年間の源泉徴収は41.0万円で、年税額との差21.3万円が年末調整で戻る
- 住民税は賞与から引かれない。定期の給与がない役員の年1回払いは、源泉徴収上の賞与から除かれる
- 年税額はどの払い方でもほぼ同じ。違うのは資金繰りと社会保険料
よくある質問
役員賞与から住民税も引かれますか
住民税の特別徴収は、市区町村から通知された年税額を6月から翌年5月の12回に分けて毎月の給与から引く仕組みなので、賞与から追加で引かれることはありません。賞与の額が反映されるのは、翌年度の住民税です。
前月に役員報酬を払っていない場合はどう計算しますか
賞与(社会保険料等控除後)を6で割った額を月額表に当てはめて税額を求め、それを6倍した額が源泉徴収税額です(賞与の計算期間が6か月を超える場合は12で割って12倍)。
取りすぎた源泉所得税はいつ戻りますか
その年の12月の年末調整で、年間の給与と賞与の合計から計算した年税額との差が精算されます。一人社長の会社なら、会社が自分に戻すことになります。
出典
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。