税金の基礎

防衛特別法人税は一人会社も申告。税額0円でも必要

令和8年4月1日以後に始まる事業年度から防衛特別法人税が始まりました。基準法人税額から年500万円を控除して4%を掛け、0円でも申告が必要です。

防衛特別法人税は、大企業だけが気にすればよい制度ではありません。税額は多くの一人会社で0円になり得ますが、対象事業年度では0円でも申告書の提出が必要です。

この記事で切り分けるのは、「納税がある会社」と「申告だけ必要な会社」です。売上では判定できません。法人税を計算した後の基準法人税額を見るため、同じ売上でも役員報酬や経費によって結果が変わります。

令和8年4月1日以後に始まる事業年度が対象

基準は決算日ではなく、事業年度の開始日です。

事業年度対象
令和8年3月31日以前に開始対象外
令和8年4月1日以後に開始対象

3月決算法人なら、令和8年4月1日から令和9年3月31日までの事業年度が最初です。設立初年度も、設立日が令和8年4月1日以後なら対象になります。

決算月別に最初の対象期を確認する

制度開始日の「令和8年4月1日」は納付日ではありません。その日以後に始まる事業年度が対象です。

決算月最初に対象となる通常の1年決算申告期限の目安
3月決算令和8年4月1日〜令和9年3月31日令和9年5月31日
6月決算令和8年7月1日〜令和9年6月30日令和9年8月31日
9月決算令和8年10月1日〜令和9年9月30日令和9年11月30日
12月決算令和9年1月1日〜令和9年12月31日令和10年2月末日

期限が土日祝日に当たれば翌開庁日になります。設立初年度はこの表ではなく、登記上の設立日から最初の決算日までを一つの事業年度として見ます。

たとえば令和8年3月20日に設立し、令和8年12月31日を最初の決算日にした会社は、開始日が4月1日前なので初年度は対象外です。令和8年4月10日設立で同じ12月決算なら初年度から対象です。決算月だけを見て判断すると、この境目を取り違えます。

計算は「法人税額-500万円」に4%

基本の式は次のとおりです。

防衛特別法人税 =(基準法人税額 − 基礎控除額)× 4%

基礎控除額は年500万円です。ここで引くのは所得500万円ではなく、一定の税額控除前の基準法人税額500万円です。会社の利益から直接500万円を引く計算ではありません。

事業年度が1年未満なら基礎控除も月割りです。500万円を12で割り、事業年度の月数を掛けます。1月未満の端数は切り上げます。設立初年度の短い決算期では、控除額も短くなる点に注意が必要です。

「所得500万円まで非課税」ではない

最も起きやすい誤解は、法人所得から500万円を引くと思うことです。実際に500万円を引く相手は、法人所得ではなく基準法人税額です。

中小法人の法人税率を単純に当てはめた概算では、年800万円以下の所得部分には15%、800万円超の部分には23.2%が使われます。税額控除などを考えない単純例は次のとおりです。

法人の課税所得単純計算した法人税額500万円控除後防衛特別法人税
800万円120万円0円0円
1,500万円282.4万円0円0円
2,000万円398.4万円0円0円
2,400万円491.2万円0円0円
2,500万円514.4万円14.4万円5,760円

この前提では課税所得が約2,438万円を超えるあたりで基準法人税額が500万円に届きます。一人会社でも利益が大きい会社は納税が発生し得ますが、年商2,438万円が境目という意味ではありません。役員報酬や経費を引いた後の法人所得が出発点です。また、実際の基準法人税額は一定の税額控除を適用しないで計算するため、申告書上の最終的な法人税納付額だけでは判定できません。

短い初年度は500万円控除も小さくなる

設立初年度が7か月と10日なら、1月未満を切り上げて8か月として扱います。基礎控除の概算は500万円×8÷12=333万3,333円です。通常の1年決算より入口が下がります。

事業年度の月数基礎控除額の概算
3か月125万円
6か月250万円
8か月333万3,333円
12か月500万円

短期決算では所得も短い期間分になることが多いため、控除が小さいだけで直ちに納税が増えるわけではありません。ただし、設立直後に大口案件の利益が集中する会社では確認が必要です。

税額0円でも別葉を落とさない

国税庁の案内は、基準法人税額が0円の場合や基礎控除以下の場合でも申告が必要と明記しています。法人税・地方法人税の申告書と一体の様式ですが、別表一では防衛特別法人税の記載欄が別葉です。

申告実務では、次の3段階を分けると整理できます。

  1. その事業年度が令和8年4月1日以後に開始しているか
  2. 基準法人税額と月割り後の基礎控除額を計算する
  3. 差額が0円以下でも、防衛特別法人税の申告欄を含めて提出する

「納付書が0円だから何もしない」という流れにはなりません。会計ソフトを使う場合も、防衛特別法人税に対応した年度版か、別葉が出力対象になっているかを確認します。

申告期限は原則として事業年度終了日の翌日から2か月以内です。法人税の実効税率を読むときも、令和8年4月以後開始事業年度ではこの税目が加わることを押さえてください。

中間申告は令和9年4月1日以後開始事業年度から

確定申告と中間申告では開始時期が異なります。国税庁の案内では、防衛特別法人税の中間申告書は令和9年4月1日以後に開始する事業年度から必要です。

したがって令和8年4月1日開始の最初の課税事業年度では、防衛特別法人税の確定申告は必要でも、この税目についての中間申告はまだありません。翌事業年度以降は、法人税の中間申告と合わせて確認します。

ここでも「税額が出た初年度から半年後に必ず中間納付」と短絡しないことが重要です。制度の適用開始に経過措置があります。

判定ツールへの影響は税額だけではない

当サイトの計算は2026年の税率データを基準にしていますが、防衛特別法人税の別表作成という事務は手取り額に現れません。税額0円の会社でも申告作業は増えます。法人化の費用で見積もる税理士報酬に、対応範囲が含まれるか確認する価値があります。

なお、個人側にも名前の似た防衛特別所得税が令和9年1月1日以後に生ずる所得から始まります。こちらは所得税額の1%で、開始時期も課税標準もこの記事の防衛特別法人税とは別です。

法人化の比較では、税額と事務負担を分けます。上の単純例のように課税所得2,400万円なら税額は0円でも、別表の確認は残ります。課税所得2,500万円でも防衛特別法人税そのものは5,760円ですが、法人税・地方法人税・地方税を含む全体の申告作業は別に必要です。

また、当サイトの判定ツールが示す差額は概算です。防衛特別法人税の課税標準に影響する個別の税額控除までは入力項目にありません。利益が2,400万円前後に達する会社や、外国税額控除などを使う会社は、ツールの差額に一律4%を足すのではなく、申告書の基準法人税額から確認してください。

決算前に確認するチェックリスト

確認事項見る資料・数字
対象年度か事業年度の開始日
短期事業年度か設立日と決算日、月数
税額が出るか基準法人税額、月割り後の基礎控除
申告様式が対応しているか会計ソフトの年度版、別表一の別葉
中間申告が必要か令和9年4月1日以後開始か、前期実績
税理士報酬に含まれるか契約書・見積書の対応税目

売上や会社規模ではなく、日付と基準法人税額で判定します。自分の売上・経費・役員報酬を判定ツールへ入れ、まず法人側に残る所得の規模を確認してください。

一人会社で起きる3つのケース

ケース1:利益800万円で税額0円

役員報酬や経費を引いた後の法人所得が800万円なら、単純計算の法人税額は120万円です。500万円の基礎控除に届かないため、防衛特別法人税は0円です。ただし対象事業年度なら申告欄は省略できません。

ケース2:短い初年度に利益が集中する

設立から決算まで6か月で、大口案件により法人所得が2,000万円になったとします。基礎控除は年500万円ではなく6か月分の250万円です。通常の1年決算より税額が出る入口が低くなります。設立日と決算月を決める段階で、最初の売上計上時期も確認します。

ケース3:最終法人税が500万円以下でも確認が必要

一定の税額控除を使った結果、納付する法人税が500万円以下になっていても、防衛特別法人税の基礎となる基準法人税額は同じとは限りません。最終納付額から逆算せず、法人税申告書の計算過程をたどります。

この3ケースに共通するのは、売上高だけでは答えが出ないことです。事業年度の長さ、法人所得、税額控除の有無が必要です。

まとめ

  • 令和8年4月1日以後に開始する事業年度から対象
  • 基準法人税額から年500万円を控除し、残額へ4%を掛ける
  • 1年未満の事業年度は500万円の控除も月割り
  • 税額が0円でも申告書は必要
  • 法人税申告の別葉を提出し忘れない

よくある質問

防衛特別法人税が0円でも申告は必要ですか?

必要です。対象事業年度では、基準法人税額が基礎控除以下で税額0円でも確定申告書を提出します。

令和8年3月決算の会社はいつから対象ですか?

令和8年4月1日以後に開始する事業年度が対象です。通常の3月決算法人なら令和8年4月1日開始の事業年度からです。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。