社会保険

大建国保は法人化すると保険料の表が変わる。適用除外事業主の区分と分岐点

結論

大建国保の令和8年度の医療保険料は、住民税の課税総所得金額で第1類(非課税)9,100円〜第9類(600万円超)27,400円に分かれ、法人化して適用除外承認で残る事業主は同じ類でも11,900円〜41,000円の別の表になります。第9類なら月13,600円、年16.3万円の上乗せです。大阪市・単身で組合に残る場合の法人化の損益分岐点は1,326万〜1,329万円で、判定ツールの1,261万〜1,283万円より43万〜68万円高く、協会けんぽに移ると1,588万〜1,755万円です。

  • 保険料は医療分(類で決まる)+後期高齢者支援金5,500円+子ども・子育て支援金400円。40〜64歳は介護3,300円、家族は1人3,000円+後期1,000円が加わる
  • 法人事業所の新規加入は不可。組合員が法人を設立した場合は、法人設立日から14日以内に年金事務所へ健康保険の適用除外承認を申請すれば継続できる
  • 組合に残ると類は役員報酬で決まる。40〜64歳・単身なら月50万円で第5類、月100万円で第9類で、組合の保険料は年42.7万円と60.2万円

大阪府内の大工・左官・とび・電気工などの一人親方が入る大阪建設国民健康保険組合(大建国保)は、保険料が所得で変わる国保組合です。ただし市区町村の国保のような料率ではなく、住民税の課税総所得金額で9つの「類」に分け、類ごとに月額を決めています。

法人化して組合に残る場合、この類の表そのものが切り替わります。組合の保険料表には「一般組合員」と並んで「適用除外事業主」の列があり、同じ類でも額が高く設定されています。ここが、事業主の区分が1つの定額で法人でも変わらない全国左官タイル塗装業国保との違いです。

同じ類でも、適用除外事業主は月2,800〜13,600円高い

組合が公表している令和8年度の月額保険料から、本人1人分(40歳未満)を並べます。医療保険料に、後期高齢者支援金5,500円と子ども・子育て支援金400円を足した額です。

類住民税の課税総所得一般組合員適用除外事業主差(月)差(年)
第1類非課税15,000円17,800円+2,800円+3.4万円
第2類50万円以下17,300円21,400円+4,100円+4.9万円
第3類100万円以下19,600円25,100円+5,500円+6.6万円
第4類200万円以下21,900円28,700円+6,800円+8.2万円
第5類300万円以下24,100円32,300円+8,200円+9.8万円
第6類400万円以下26,400円36,000円+9,600円+11.5万円
第7類500万円以下28,700円39,600円+10,900円+13.1万円
第8類600万円以下31,000円43,300円+12,300円+14.8万円
第9類600万円超33,300円46,900円+13,600円+16.3万円

※ 大阪建設国保「月額国民健康保険料(令和8年度)」から計算(scripts/daiken-kokuho-houjinka.mjs)

40〜64歳は1人につき介護保険料3,300円が加わります。家族は1人3,000円と後期高齢者支援金1,000円で、18歳以上なら子ども・子育て支援金400円が加わります。25歳から69歳までの男性の家族(学生・障害者・60歳以上で年金収入のみの人を除く)は「特別家族」として1人11,500円です。家族の保険料は一般組合員と適用除外事業主で同じ額です。

類を決めるのは住民税の課税総所得金額です。組合の保険料シミュレーションは、市区役所から届く納税通知書か課税証明書に載っている課税標準額で、確定申告書の所得額とは異なると説明しています。所得から社会保険料控除や基礎控除などを引いた後の額なので、払った組合の保険料も翌年の類を下げる側に効きます。

新規加入は不可。継続は法人設立日から14日以内

組合の加入資格は、大阪府内に住民票があり、府内の事業所で大工・左官・とび工・電気工など49職種に従事し、一人親方か従業員5人未満の個人事業所で働く75歳未満の人です。そのうえで、法人事業所の新規加入はできないと明記しています。

法人化しても残れるのは、組合員のうちに法人を作った場合です。組合のよくある質問は、次の点を挙げています。

  • 法人を設立しても引き続き加入できる。厚生年金保険の加入手続きと健康保険の適用除外承認申請が必要で、法人設立日から14日以内に年金事務所へ申請する
  • すでに株式会社などで健康保険(社会保険)の適用を受けている人は、後から適用除外承認で組合に入ることはできない
  • 健康保険を組合に残しても、厚生年金保険には必ず加入する。適正加入の確認のため、毎年1回、事業主に標準報酬決定通知書の提出を求めている
  • 非常勤の取締役は社会保険が強制適用されないため申請は不要。常勤で報酬を得る役員は申請が必要
  • 同じ事業所の中で、協会けんぽの人と組合員(適用除外)が混在してもよい

手続きの順番は、事業主が適用除外承認申請書を組合に出し、組合が証明欄に記入・押印して返送し、事業主が年金事務所に出す流れです。組合を経由する分だけ日数がかかるため、14日の期限には余裕がありません。期限の考え方と遅れたときの扱いは、国保組合の適用除外承認で整理しています。

残ると類は役員報酬で決まる

法人化して組合に残ると、本人の所得は事業所得から役員報酬の給与所得に変わります。類を決める課税総所得も、給与所得から厚生年金保険料・組合の保険料・基礎控除を引いた額になります。40〜64歳・単身で、役員報酬と類の関係を計算しました。

役員報酬(月)給与所得課税総所得類組合の保険料(年)
20.0万円160.0万円61.0万円第3類34.1万円
30.0万円244.0万円129.7万円第4類38.4万円
40.0万円340.0万円209.3万円第5類42.7万円
50.0万円436.0万円295.4万円第5類42.7万円
60.0万円538.0万円383.1万円第6類47.2万円
70.0万円646.0万円480.2万円第7類51.5万円
80.0万円765.0万円594.7万円第8類55.9万円
100.0万円1,005.0万円830.4万円第9類60.2万円

※ 40〜64歳・単身。適用除外事業主の表+介護保険料。課税総所得は同じ報酬が毎年続く前提で、前年に払った組合の保険料を控除して計算(scripts/daiken-kokuho-houjinka.mjs)

個人のままでも、売上−経費800万円以上では本人は第9類(40〜64歳で年43.9万円)に入ります。法人化して報酬を月100万円にすると、同じ第9類でも適用除外事業主の表で年60.2万円です。一方、報酬を月50万円に抑えれば第5類の年42.7万円で、個人のときより保険料が下がる帯もあります。保険料の類と、所得税・住民税・法人税の負担を同時に動かすことになるため、最適な報酬は組合の表を入れて計算し直す必要があります。

組合に残れば分岐点は判定ツールより43万〜217万円高い

判定ツールは、個人側を大阪市の国保、法人側を協会けんぽ+厚生年金で計算します。大建国保の組合員なら、個人側の健康保険は組合の一般組合員の保険料です。そこで次の3通りを比べました。

  1. 判定ツールの結果(大阪市の国保 → 協会けんぽ)
  2. 大建国保に残る(一般組合員 → 適用除外事業主+厚生年金)
  3. 協会けんぽに移る(一般組合員 → 協会けんぽ+厚生年金)

いずれも単身・経費300万円・青色申告(e-Tax)・請負業(個人事業税5%)・インボイス登録済み・合同会社・協会けんぽ大阪支部です。役員報酬は、組合に残る場合も1万円刻みで手取りが最大になる額を探しました。

売上−経費大阪市の国保大建国保(個人)類・年額判定ツール大建国保に残る残る場合の報酬・類・年額協会けんぽに移る
600万円87.1万円第7類・38.4万円−24.9万円−47.4万円月45.0万円・第5類・42.7万円−58.8万円
800万円108.5万円第9類・43.9万円−11.9万円−41.1万円月54.0万円・第6類・47.2万円−56.8万円
1,000万円111.7万円第9類・43.9万円−11.6万円−41.0万円月54.0万円・第6類・47.2万円−56.7万円
1,200万円112.0万円第9類・43.9万円−6.1万円−19.3万円月93.0万円・第9類・60.2万円−44.5万円
1,500万円112.0万円第9類・43.9万円+24.3万円+21.6万円月107.0万円・第9類・60.2万円−14.0万円
2,000万円112.0万円第9類・43.9万円+63.3万円+76.9万円月107.0万円・第9類・60.2万円+25.5万円

※ 40〜64歳・単身。差額は法人化した場合の年間手取りの差(3年目以降、税理士報酬の差を含む)。2026年(令和8年)分基準(scripts/daiken-kokuho-houjinka.mjs)

損益分岐点を1万円刻みで出すと次のとおりです。

条件判定ツール大建国保に残る協会けんぽに移る
40歳未満・単身1,283万円1,326万円1,588万円
40〜64歳・単身1,261万円1,329万円1,755万円
40〜64歳・配偶者(40〜59歳・収入なし)966万円1,183万円1,397万円

※ 売上−経費の額。前提は上表と同じ

組合に残っても、分岐点は判定ツールより43万〜68万円(単身)高くなります。理由は2つあります。個人のままの組合の保険料が大阪市の国保より大幅に安いこと(売上−経費1,000万円で年43.9万円と111.7万円)と、法人化すると適用除外事業主の高い表に切り替わることです。

配偶者がいる世帯では差がさらに開き、判定ツールの966万円に対して組合に残る場合は1,183万円です。判定ツールの法人側では配偶者が協会けんぽの被扶養者になり保険料がかかりませんが、組合に残ると配偶者の保険料(40〜59歳で月7,700円)がかかり続けるためです。

協会けんぽに移ると、分岐点は1,588万〜1,755万円まで上がります。売上−経費1,500万円の40〜64歳・単身なら、組合に残る場合は年21.6万円の法人有利、協会けんぽに移る場合は年14.0万円の個人有利と、結論が逆になります。法人化するなら組合に残れるかどうかが、判断の前提を変えます。

協会けんぽと違うところ

組合に残ることには、保険料以外の違いもあります。

  • 傷病手当金:大建国保は組合員本人が病気で4日以上休業したときに日額2,100〜4,500円(入院は1,000円加算)を、通院35日・入院60日(通院35日を含む)まで支給します。業務上・交通事故・外傷は対象外で、加入3か月以内の発症には支給がありません。協会けんぽは標準報酬月額をもとにした日額の3分の2を、支給開始から通算1年6か月まで支給するので、額も期間も違います
  • 家族の保険料:協会けんぽでは収入要件を満たす被扶養者は何人いても保険料がかかりません。組合では家族1人ごとに保険料がかかる一方、組合は適用除外の被保険者なら妻の収入は影響しないとしています
  • 厚生年金:組合に残っても厚生年金には加入します。将来の年金が増える点は協会けんぽに移る場合と同じです

単年の手取りだけでなく、こうした給付の違いも含めて比べることになります。法人化で増える社会保険料の全体像は一人社長の社会保険料、大阪市の国保の水準は国民健康保険料の自治体別比較にまとめています。自分の売上と経費で判定ツールの結果を確かめたうえで、組合に残る場合は表の分だけ分岐点が上にずれると読んでください。

まとめ

  • 大建国保の医療保険料は住民税の課税総所得で第1〜9類に分かれ、法人化して残る事業主は「適用除外事業主」の高い表になる。第9類で月13,600円・年16.3万円の差
  • 法人事業所の新規加入は不可。組合員が法人を設立した場合は、法人設立日から14日以内の適用除外承認で継続できる
  • 残る場合の類は役員報酬で決まり、40〜64歳・単身で月50万円なら第5類(年42.7万円)、月100万円なら第9類(年60.2万円)
  • 大阪市・単身の損益分岐点は、判定ツール1,261万〜1,283万円、組合に残る1,326万〜1,329万円、協会けんぽに移る1,588万〜1,755万円

よくある質問

法人を作ってから大建国保に入ることはできますか?

できません。組合は法人事業所の新規加入はできないとしています。すでに株式会社などで健康保険(社会保険)の適用を受けている人も、後から適用除外承認を受けて組合に入ることはできないと案内しています。組合員のうちに法人を設立し、14日以内に申請することが前提です。

非常勤の取締役になるだけでも、適用除外の申請は必要ですか?

組合は、非常勤の取締役は社会保険が強制適用されないため申請は不要としています。常勤の役員で報酬を得ている場合は、厚生年金保険の加入手続きと健康保険の適用除外承認の申請が必要です。

組合に残っている間、妻のパート収入が年130万円を超えたらどうなりますか?

組合は、適用除外を受けた国保組合の被保険者であれば、妻の収入は影響しないとしています。協会けんぽの被扶養者の収入要件とは別の仕組みで、家族は収入にかかわらず1人ごとの保険料を払います。

類を決める課税総所得は、確定申告書の所得と同じですか?

違います。組合の保険料シミュレーションは、類を決めるのは住民税の課税総所得金額(課税標準額)で、市区役所の納税通知書や課税証明書に載っている額だと説明しています。所得から社会保険料控除や基礎控除などを引いた後の額です。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。