社会保険

共働きの子はどちらの扶養?個人事業主の親が国保に入れる帯と法人化

結論

厚生労働省の通知(令和3年8月適用)では、夫婦の一方が国保なら、会社員側の年間収入と、個人事業主側の直近の所得から見込んだ年間収入を比べ、多い方が子を扶養します。個人事業主のほうが多ければ子は国保に入り、東京23区で子2人(未就学1人・小学生1人)なら年97,800円かかります。法人化すると夫婦とも被用者保険になり、どちらの健康保険に入っても子の保険料は0円です。

  • 法人化後は役員報酬と配偶者の給与を比べ、差が多い方の1割以内なら届出で主として生計を維持する方を選べる。配偶者の給与500万円なら役員報酬は月38万〜46万円がこの帯
  • 個人事業主の所得が1,000万円になると、子2人を国保に入れても保険料は上限に達していて増えない。子の保険料が法人化で消える効果は所得500万〜800万円の帯に集中する
  • 国保側の比較額は所得なので、青色申告特別控除65万円で下がる。協議が整わないときは課税証明書の所得金額で決める

配偶者が会社員で、自分は個人事業主。この世帯では、子どもの健康保険は「配偶者の会社の健康保険」に入っていると思い込みがちです。実際には、夫婦の収入の比べ方で、子が国保に入る帯があります。

国保に入る子には1人ずつ均等割がかかります。法人化すると夫婦とも被用者保険になるので、子の保険料は消えます。どの帯でそれが起きるかを、厚生労働省の通知に沿って計算しました。

子はどちらの保険か:令和3年の通知で決め方が明文化された

夫婦が共同で子を扶養している場合の認定は、厚生労働省の「夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定について」(令和3年4月30日、同年8月1日から適用)で決まっています。年収がほぼ同じ夫婦の子が、保険者間の調整の間に無保険になる事態を防ぐために基準が具体化されました。

夫婦の保険比べる額子が入る保険
夫婦とも被用者保険(会社員×会社員、社長×会社員)双方の年間収入(今後1年の見込み)多い方。差が多い方の1割以内なら、届出で主として生計を維持する方
一方が国保(個人事業主×会社員)会社員は年間収入、個人事業主は直近の年間所得で見込んだ年間収入多い方(1割の規定はない)
一方が国保で、協議が整わない直近の課税(非課税)証明書の所得金額多い方

個人事業主の側が多ければ、子は会社員の健康保険の被扶養者になれず、個人事業主の国保の世帯に入ります。国保には扶養という考え方がないので、子1人ずつに均等割がかかります。

個人事業主のままだと、子が国保に入る帯

個人事業主の所得と配偶者の給与の組み合わせで、子2人(未就学1人・小学生1人)がどちらに入るかと、国保に入った場合の保険料を計算しました。

個人事業主の所得配偶者の給与400万円配偶者の給与500万円配偶者の給与600万円
300万円配偶者の健保(0円)配偶者の健保(0円)配偶者の健保(0円)
400万円配偶者の健保(0円)配偶者の健保(0円)配偶者の健保(0円)
500万円国保(97,800円)配偶者の健保(0円)配偶者の健保(0円)
600万円国保(97,800円)国保(97,800円)配偶者の健保(0円)
700万円国保(97,800円)国保(97,800円)国保(97,800円)
800万円国保(80,293円)国保(80,293円)国保(80,293円)
1,000万円国保(0円)国保(0円)国保(0円)

※ 個人事業主の所得は青色申告特別控除後の額を比較に使った。配偶者の給与は額面の年収。所得と給与が同額の行は配偶者側とした ※ 国保は東京23区・令和8年度・40歳未満。子2人を加えたときに増える額(未就学児の均等割5割軽減、18歳までの子ども・子育て支援金分の軽減を反映) ※ 計算は当サイトの計算エンジン(scripts/fufu-kyodo-fuyo.mjs)による

所得500万〜700万円の帯では、子2人で年97,800円かかります。所得800万円では上限に近づいて80,293円、1,000万円では医療分・支援金分とも上限に達しているので、子を加えても保険料は増えません。

給与は額面、事業は所得で比べる非対称

この比較には癖があります。会社員の側は給与の年収(額面)で、個人事業主の側は所得です。所得は売上から経費を引いた後の数字なので、同じ生活水準の夫婦でも、個人事業主の数字は小さく出ます。

さらに青色申告特別控除65万円は所得から差し引く控除です(国税庁No.2072)。控除前の所得530万円の個人事業主は、控除後なら465万円になり、配偶者の給与500万円を下回ります。協議が整わないときに使う課税証明書の所得金額は控除後の額なので、青色申告の控除が子の保険の行き先を変えることがあります。原則の比較で「年間所得で見込んだ年間収入」をどの段で取るかは保険者の判断になるので、境目にいる世帯は両方の数字を手元に用意しておくと話が早く進みます。

法人化すると、子の保険料はどちらに入っても0円

法人化して社長が協会けんぽに入ると、夫婦とも被用者保険です。比べるのは役員報酬の年額と配偶者の給与で、どちらに入っても子の保険料は0円です。

役員報酬(月額)年額配偶者の給与500万円との比較
30万円360万円配偶者の健康保険
38万円456万円差が1割以内:届出で主として生計を維持する方
42万円504万円差が1割以内:届出で主として生計を維持する方
46万円552万円差が1割以内:届出で主として生計を維持する方
50万円600万円社長の協会けんぽ

保険料の面ではどちらでも同じです。違いが出るのは保険料以外の部分です。配偶者の会社の健康保険組合に独自の付加給付がある場合、子が社長の協会けんぽに移ると、それを受けられなくなります。報酬を決めると子の行き先も決まる、という関係を知っておけば、役員報酬の額で行き先を選ぶ余地があります。

通知は、年間収入が逆転して子を移す場合、収入が多くなった側の保険者が認定することを確認してから、元の保険から外すとしています。役員報酬を上げて社長の側が多くなっても、子が一時的に無保険になることはありません。

法人化の判定にどう効くか

当サイトの判定ツールは、子を扶養家族として入力すると、個人事業主の側では子を国保に入れて計算します。配偶者が会社員で、子がすでに配偶者の健康保険に入っている世帯では、その分だけ個人事業主のままの保険料を多く見積もることになります。

効果が出るのは所得500万〜800万円の帯です。当サイトの基本条件で法人化が有利になる事業所得1,266万円では、子が国保に入っていても保険料は上限に吸収されているので、法人化による子の分の減少はほぼ0円です。国保の均等割が子の人数でどう積み上がるかは子どもが多いほど法人化が有利?で、法人化後の保険料そのものは一人社長の社会保険料で計算しています。

配偶者が会社員の世帯では、判定ツールで「配偶者なし」を選び、子が今どちらの保険に入っているかに合わせて扶養家族の人数を入れると、実際に近い試算になります。配偶者を扶養に入れる側の要件は役員報酬を下げると配偶者が扶養から外れる?で扱っています。

まとめ

  • 夫婦の一方が国保なら、会社員の年間収入と個人事業主の所得から見込んだ年間収入を比べ、多い方が子を扶養する(厚生労働省 令和3年4月30日通知)
  • 個人事業主のほうが多いと子は国保に入り、東京23区で子2人なら年97,800円。所得1,000万円では上限に達していて増えない
  • 会社員は額面、個人事業主は所得で比べる。青色申告特別控除65万円で比較額が下がり、行き先が変わる帯がある
  • 法人化後は役員報酬と配偶者の給与を比べ、差が1割以内なら届出で選べる。どちらに入っても子の保険料は0円
  • 配偶者が会社員なら、子が今どちらの保険にいるかを確かめてから、自分の売上と経費で試算してください

よくある質問

夫婦の年収がほぼ同じとき、子はどちらの保険に入りますか。

夫婦とも被用者保険なら、年間収入の差が多い方の1割以内のとき、届出により主として生計を維持する方の被扶養者にできます。一方が国保の場合はこの1割の規定はなく、多い方が主たる生計維持者です。

社長が育児休業を取ったら、子の保険は配偶者側に移りますか。

通知は、主として生計を維持する人が育児休業等を取得した場合、休業期間中は被扶養者を異動しないとしています。ただし一人社長は原則として育児休業の対象外で、この特例を使う場面はほとんどありません。

会社員の配偶者の健康保険が子の認定を断ったら、どうなりますか。

認定しない保険者は理由を書いた通知を出し、それを添えて国保に届け出ます。国保側に疑義があれば5日以内に協議し、整わなければ直近の課税(非課税)証明書の所得金額が多い方が主たる生計維持者になります。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。