社会保険
遺族年金・障害年金は扶養の収入に入る?税では0円、健康保険では満額
結論
遺族年金・障害年金・雇用保険の基本手当は、所得税では非課税で扶養控除の判定にも入りませんが、健康保険の被扶養者の年間収入には含まれます。老齢基礎年金80万円と遺族厚生年金100万円を受ける70歳の母は、税では所得0円で扶養控除の対象ですが、健康保険では年間収入180万円で「180万円未満」に届かず扶養に入れません。法人化すると母は1人で国保に入り、東京23区で年67,073円がかかります。
- 日本年金機構は、被扶養者の収入に雇用保険の失業等給付、公的年金、健康保険の傷病手当金・出産手当金も含むと明記している
- 個人事業主のままなら、事業所得1,200万円では親が国保に加わっても保険料は増えない(上限に達しているため)。法人化で親が扶養に入れないと、親の国保が新たに発生する
- 配偶者が退職して基本手当を受ける間は、日額3,611円以上なら扶養に入れない。税の配偶者控除は基本手当を数えないので残る
このテーマの全体像 一人社長の社会保険料はいくらか
法人化して協会けんぽに入ると、家族を保険料0円の被扶養者にできます。親や配偶者の年金や給付の額を見て「税の扶養に入っているから大丈夫」と判断すると、ここで食い違いが出ます。
税と健康保険では、同じ年金を数えるかどうかが違うためです。遺族年金・障害年金・失業給付は、税では0円、健康保険では満額で数えます。
税で数えない給付を、健康保険は数える
所得税で非課税とされる給付のうち、扶養の判定に関係するのは次の3つです。
| 給付 | 所得税 | 根拠 | 健康保険の被扶養者の年間収入 |
|---|---|---|---|
| 遺族基礎年金・遺族厚生年金 | 非課税 | 国税庁No.1605(所得税法9条) | 含む |
| 障害基礎年金・障害厚生年金 | 非課税 | 国民年金法25条ほか(公課の禁止。老齢基礎年金と付加年金は除外) | 含む |
| 雇用保険の基本手当 | 非課税 | 雇用保険法12条(公課の禁止) | 含む |
| 健康保険の傷病手当金・出産手当金 | 非課税 | 健康保険法62条(公課の禁止) | 含む |
| 老齢基礎年金・老齢厚生年金 | 雑所得 | 国税庁No.1600 | 含む |
日本年金機構は、被扶養者の収入には「雇用保険の失業等給付、公的年金、健康保険の傷病手当金や出産手当金も含まれます」と案内しています。公的年金と書かれていて、老齢・遺族・障害を分けていません。
税の扶養控除と配偶者控除は、合計所得金額(令和8年分は62万円以下)で判定します。非課税の給付は合計所得金額に入りません。同じ年金を、税は0円、健康保険は満額で数えることになります。
親の年金収入について、親を健康保険の扶養に入れるとでは「健康保険には入れるが税の扶養控除は使えない」組み合わせを扱いました。老齢年金が公的年金等控除で所得に変わるためです。非課税の年金はその逆で、税の扶養控除は使えるが健康保険には入れない組み合わせを生みます。
判定が分かれる組み合わせ
親と配偶者の典型的な受給の組み合わせで、税と健康保険の判定を並べました。
| 家族 | 収入の内訳 | 税の判定に使う所得 | 税の扶養 | 健保の年間収入 | 健保の扶養 | 外れたときの国保(1人) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 母(70歳・同居) | 老齢基礎70万+遺族厚生80万 | 0万円 | ○ | 150万円 | ○ | — |
| 母(70歳・同居) | 老齢基礎80万+遺族厚生100万 | 0万円 | ○ | 180万円 | × | 67,073円 |
| 母(70歳・同居) | 老齢基礎100万+遺族厚生120万 | 0万円 | ○ | 220万円 | × | 67,073円 |
| 配偶者(45歳・障害2級) | パート90万+障害基礎2級84.73万 | 16万円 | ○ | 174.73万円 | ○ | — |
| 配偶者(45歳・障害2級) | パート100万+障害基礎2級84.73万 | 26万円 | ○ | 184.73万円 | × | 67,073円 |
| 配偶者(45歳) | 退職後に基本手当 日額5,000円 | 0万円 | ○ | 182.5万円 | × | 67,073円 |
※ 税の判定に使う所得:老齢年金は65歳以上の公的年金等控除110万円を差し引いた額、パートは給与所得控除後の額(令和8年分)。遺族年金・障害年金・基本手当は含めない
※ 健保の扶養:60歳以上と障害者は180万円未満、それ以外は130万円未満。社長は同居で、役員報酬が家族の年間収入の2倍を超えている前提
※ 外れたときの国保:社長が擬制世帯主のまま1人で加入。東京23区・令和8年度・均等割の軽減は見込まない。基本手当日額5,000円は年額換算
※ 計算は当サイトの計算エンジン(scripts/hifuyosha-hikazei-nenkin.mjs)による
180万円「未満」なので、ちょうど180万円は外れる
2行目の母は、老齢基礎年金80万円と遺族厚生年金100万円で合計180万円です。税では老齢基礎年金80万円が公的年金等控除110万円の内側に収まり、所得は0円です。同居の70歳以上の親なので、同居老親等として58万円の扶養控除が使えます。
健康保険では、2つの年金の合計180万円を年間収入として見ます。基準は180万円未満なので、1円も超えていなくても届きません。遺族年金は年額が改定されるたびに動くため、境目にいる世帯では改定通知書を見て毎年確かめることになります。
障害年金の配偶者は、パートの額で線をまたぐ
障害基礎年金2級は令和8年4月分から年847,300円です。障害者の基準は180万円未満なので、パート収入に使える余地は95万2,700円を下回る額までです。パート100万円で線を越え、扶養から外れます。
外れても、障害基礎年金を受けている人は国民年金保険料の法定免除の対象になります(日本年金機構)。配偶者に新しくかかるのは国民健康保険だけです。
退職した配偶者は、基本手当を受ける間だけ外れる
雇用保険の基本手当は、日額で判定します。日本年金機構の案内では、雇用保険等の受給者は日額3,611円以下が目安です。日額5,000円を受けている間は扶養に入れず、受給が終わればまた入れます。
会社員の配偶者が退職して家業を手伝う、という形で法人化に合わせて働き方を変える世帯では、受給期間中だけ配偶者の国民健康保険が必要になります。税の配偶者控除は基本手当を数えないので、その年の給与次第で残ります。
法人化すると、親の国保が新たに発生することがある
ここが損益の計算で見落としやすい点です。
個人事業主のままなら、親は社長と同じ世帯の国民健康保険に入ります。国民健康保険料には上限があるため、所得が高い世帯では、親が1人加わっても保険料はほとんど増えません。
| 社長の事業所得 | 親が国保に加わったときの保険料の増加(個人事業主のまま) |
|---|---|
| 400万円 | 67,073円 |
| 600万円 | 67,073円 |
| 800万円 | 21,006円 |
| 1,000万円 | 415円 |
| 1,200万円 | 0円 |
※ 東京23区・令和8年度・社長40歳未満・配偶者あり。親は65歳以上(介護分は国保ではなく介護保険の第1号として別に払う)
法人化が有利になるのは、当サイトの基本条件で事業所得1,266万円からです。その所得帯では、親がいても国保は上限で止まっていて、親の分は実質0円です。
法人化すると社長は協会けんぽに移り、親は被扶養者になれれば0円のままです。ところが遺族年金で180万円に届いている親は被扶養者になれず、1人で国保に入ります。社長が擬制世帯主になる仕組みは法人化しても国保は残るで扱っていますが、この場合は親1人分の均等割が年67,073円、法人化によって新たに発生します。
金額は大きくありませんが、方向が逆です。親を扶養に入れられる前提で法人化を試算していると、有利のはずの差額から毎年この分が消えます。判定ツールの「配偶者あり」「扶養家族」は被扶養者になれる前提で計算しているので、遺族年金・障害年金を受ける家族がいる場合は、その人を扶養の人数から外して試算すると実際に近くなります。
届出の段階で何を見せるか
被扶養者の届出では、年金の受給額を示す書類として年金額改定通知書や年金振込通知書の写しを添えます。非課税の年金は源泉徴収票が出ないため、税の書類だけをそろえていると、健康保険の判定に必要な額が抜けます。
毎年の被扶養者の確認でも同じ書類を求められます。年金額は毎年4月分から改定されるので、180万円の近くにいる親は、改定のたびに外れる可能性があります。一人社長の保険料そのものは一人社長の社会保険料で一覧にしています。
まとめ
- 遺族年金・障害年金・雇用保険の基本手当・傷病手当金は、所得税では非課税で扶養控除の判定に入らないが、健康保険の被扶養者の年間収入には含まれる
- 老齢基礎年金80万円と遺族厚生年金100万円の70歳の母は、税では所得0円で扶養控除の対象、健康保険では180万円で「未満」に届かず扶養に入れない
- 障害基礎年金2級(847,300円)の配偶者は、パート収入が95万2,700円を下回る額までなら180万円未満に収まる
- 個人事業主のままなら、事業所得1,200万円の世帯で親の国保は上限に吸収されて0円。法人化で親が扶養に入れないと、親の国保が年67,073円新たに発生する
- 遺族年金・障害年金を受ける家族がいるなら、扶養に入れる前提を外して、自分の売上と経費で試算し直してください
よくある質問
遺族年金は年金事務所から源泉徴収票が来ないのに、収入に入るのですか。
入ります。遺族年金は非課税なので源泉徴収票は出ませんが、健康保険の被扶養者の判定では公的年金として年間収入に数えます。届出の際は年金額改定通知書などで受給額を示すことになります。
傷病手当金や出産手当金を受けている配偶者も、扶養の判定で収入に入りますか。
入ります。日本年金機構は、被扶養者の収入に健康保険の傷病手当金や出産手当金も含まれると案内しています。給付の日額が3,611円以上なら、受けている間は扶養に入れないことがあります。
障害年金を受けている配偶者が扶養から外れたら、国民年金も払うのですか。
障害基礎年金を受けている人は国民年金保険料の法定免除の対象です(日本年金機構)。扶養から外れて第1号被保険者になっても、届出をすれば保険料の納付は免除されます。国民健康保険料は別にかかります。
出典
- 日本年金機構 従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き
- 国税庁 タックスアンサー No.1605 遺族の方に支給される公的年金等
- 国税庁 タックスアンサー No.1600 公的年金等の課税関係
- 国税庁 タックスアンサー No.1180 扶養控除
- e-Gov法令検索 国民年金法 第25条(公課の禁止)
- e-Gov法令検索 健康保険法 第62条(租税その他の公課の禁止)
- e-Gov法令検索 雇用保険法 第12条(公課の禁止)
- 日本年金機構 障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額
- 日本年金機構 国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度
- 港区 令和8年度国民健康保険料
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。