社会保険

配偶者の扶養に入っている個人事業主は11.8%、女性は26.5%。法人化で報酬を取ると外れる

結論

令和6年国民生活基礎調査では、20〜59歳で雇人のない自営業主176.7万人のうち、国民年金の第3号被保険者は11.8%(20.8万人)で、女性に限ると26.5%でした。第3号は会社員や公務員などの配偶者に扶養されている人で、自分で国民年金保険料を払いません。この人が法人化して自分の会社から役員報酬を受け取ると、本人が健康保険・厚生年金の被保険者になり、扶養から外れます。当サイトの計算では、役員報酬が月5万円でも社会保険料は本人と会社の合計で年26.7万円(40歳未満)かかります。

  • 会社・団体等の役員でも2.9%、女性の役員では9.2%が第3号。報酬を受けていない役員や、常勤でない役員と考えられる
  • 第3号の個人事業主は今、国民年金も健康保険料も自分では払っていない。法人化の損得は、払っていない保険料が新たに生じる分から出発する
  • 役員報酬を0円にすれば社会保険の被保険者にはならないが、生活費を会社から受け取れず、役員報酬以外で受け取ると課税の問題が生じる

会社員の配偶者として扶養に入りながら、個人事業で働いている人は少なくありません。この働き方では、国民年金保険料も健康保険料も自分では払っていません。売上が伸びて法人化を考えたとき、この人の計算は、国保と国民年金を払っている個人事業主とは出発点が違います。実際にどれくらいの個人事業主が扶養に入っているのか。厚生労働省の国民生活基礎調査で確かめます。

雇人のない自営業主の11.8%が第3号

国民生活基礎調査の第52表は、仕事の種類ごとに公的年金の加入状況を集計しています。国民年金の加入義務がある20〜59歳に絞って計算しました。

仕事人数第1号第2号第3号加入していない
会社・団体等の役員1,842千人4.7%91.5%2.9%0.8%
自営業主(雇人あり)764千人65.3%28.5%4.1%1.7%
自営業主(雇人なし)1,767千人81.2%4.1%11.8%2.9%
会社・団体等の役員・女性523千人5.5%84.3%9.2%1.1%
自営業主(雇人あり)・女性156千人60.3%17.3%16.7%2.6%
自営業主(雇人なし)・女性585千人69.1%1.2%26.5%3.2%

※ 厚生労働省「令和6年国民生活基礎調査」第52表(e-Stat、世帯票)から当サイトが計算。20〜59歳の5歳階級を合計。第1号は自営業者など、第2号は厚生年金の加入者、第3号は第2号に扶養されている配偶者

雇人のない自営業主、つまり一人で事業をしている人のうち、11.8%(20.8万人)が第3号被保険者です。そのうち15.5万人が女性で、女性の一人事業主では26.5%、4人に1人が配偶者の扶養に入っています。

第3号になれるのは、会社員や公務員など厚生年金に入っている人(第2号)に扶養されている配偶者で、年間収入が130万円未満の見込みであることなどが要件です。自分で国民年金保険料を払わなくても、払ったものとして扱われます。

なお、自営業主(雇人あり)の28.5%が第2号になっているのは、別に勤め先がある人などと考えられます。個人事業の事業主本人は、自分の事業所の健康保険・厚生年金には加入できません。

会社の役員でも、女性の9.2%は扶養に入っている

会社・団体等の役員では、91.5%が厚生年金に入る第2号です。法人は社長1人でも社会保険の適用事業所で、報酬を受け取る役員は原則として被保険者になるためです。

それでも、役員の2.9%、女性の役員では9.2%が第3号でした。夫が社長の会社で妻が役員になり、報酬を受け取らずに夫の扶養に入っている、といった形が考えられます。報酬のない役員や、常勤でない役員は被保険者にならないことがあるからです。

法人化して報酬を受けると、扶養から外れる

扶養に入っている個人事業主が法人化し、自分の会社から役員報酬を受け取るようになると、本人がその会社の社会保険の被保険者になります。被保険者になれば、第3号・被扶養者ではなくなり、健康保険料と厚生年金保険料を会社と本人で払うことになります。

当サイトの計算エンジンで、低い役員報酬にかかる社会保険料を出しました。

役員報酬(月額)標準報酬月額(健康保険/厚生年金)本人負担(年)会社負担(年)合計(年)
5万円(40歳未満)5.8万円/8.8万円13.2万円13.5万円26.7万円
5万円(40〜59歳)5.8万円/8.8万円13.7万円14.1万円27.8万円
8.8万円(40歳未満)8.8万円/8.8万円15.0万円15.4万円30.3万円
10万円(40歳未満)9.8万円/9.8万円16.7万円17.1万円33.8万円

※ 協会けんぽ東京支部・令和8年度の料率。会社負担には子ども・子育て拠出金を含む/2026年(令和8年)分基準。厚生年金の標準報酬月額は下限8.8万円

役員報酬が月5万円でも、厚生年金は下限の8.8万円の等級で計算されるため、社会保険料は年26.7万円です。一人会社では会社負担も自分の事業から出ていくお金なので、扶養に入っていたときには0円だった負担が、ここから始まります。その代わり、厚生年金の加入期間が増え、将来の年金は国民年金だけのときより多くなります。

報酬を0円にする方法と、その限界

役員報酬を払わなければ、社会保険の被保険者にはなりません。この場合は扶養に入ったまま法人化することも考えられます。ただし、会社の利益を生活費として受け取れなくなり、別の形で会社からお金を引き出すと、役員給与として課税されたり、役員貸付金として利息の問題が生じたりします。報酬を0円にしたときの社会保険と税の扱いは役員報酬0円なら社会保険はかからないで整理しています。

扶養に入れるかどうかの130万円の線と、法人化後に家族を扶養に入れる側の話は年収の壁と法人化で、社長本人の社会保険料が報酬ごとにいくらになるかは一人社長の社会保険料でまとめています。

扶養に入っている人は、判定ツールの前提と違う

判定ツールは、個人事業主のままなら本人が国保と国民年金を払う前提で計算します。配偶者の扶養に入っている人は、その保険料を払っていないため、ツールの「個人のまま」の手取りより実際の手取りが多く、法人化の差額は表示より不利になります。法人化するなら、新たに生じる社会保険料を自分の数字で足し引きしてください。計算の前提は計算方法にまとめています。

まとめ

  • 令和6年国民生活基礎調査で、20〜59歳の雇人のない自営業主の11.8%(20.8万人)が国民年金の第3号。女性では26.5%
  • 会社の役員は91.5%が第2号。女性の役員の9.2%は第3号で、報酬のない家族役員などと考えられる
  • 扶養に入っている個人事業主が法人化して役員報酬を受け取ると、本人が社会保険の被保険者になり扶養から外れる
  • 役員報酬が月5万円でも、社会保険料は本人と会社の合計で年26.7万円(40歳未満)
  • 判定ツールは国保・国民年金を払う前提。扶養に入っている人は、新たに生じる保険料を自分で足し引きする

よくある質問

個人事業主でも配偶者の扶養に入れますか。

入れる場合があります。健康保険の被扶養者や国民年金の第3号被保険者になるには、年間収入が130万円未満の見込みであることなどが要件です。自営業の場合に収入をどう計算するかは、配偶者が加入している健康保険の保険者の基準によります。

自分の会社で役員報酬を受け取ると、必ず扶養から外れますか。

法人は社長1人でも社会保険の適用事業所で、報酬を受けて常勤で働く役員は原則として被保険者になります。被保険者になれば、配偶者の扶養の第3号・被扶養者ではなくなります。報酬が少なくても、被保険者になるかどうかは報酬の額ではなく働き方で判断されます。

法人化しても扶養に入ったままでいる方法はありますか。

役員報酬を払わなければ社会保険の被保険者にはなりません。ただし、会社の利益を個人の生活費に使えなくなり、会社から別の形でお金を受け取ると、役員給与や役員貸付金として課税や手続きの問題が生じます。報酬を0円にした場合の扱いは別記事で整理しています。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。