設立の手続き
源泉所得税を25万円納め過ぎた。還付請求と充当届出の分かれ目
結論
正しい源泉所得税が5万円なのに30万円を納めたなら、誤納額は25万円です。今後の給与・賞与の源泉税が月15万円なら充当届出で2か月、月10万円なら3か月かかります。国税庁の記載要領は充当が約3か月以上続くときは還付請求を案内しているため、後者は現金還付を検討します。
- 誤納額還付請求の請求権は納付日から5年で消滅。納付書控えと誤納理由が分かる帳簿の写しを添付する
- 給与・賞与に関する誤納だけは、将来の給与・賞与の源泉税へ充てる過納額充当届出を選べる
- 年末調整の還付不足は別手続。翌月から2か月で返しきれない見込み等なら税務署への還付請求ができる
源泉所得税を多く納めたとき、会社の選択肢は「税務署から現金で返してもらう」だけではありません。給与・賞与の源泉税を誤って多く納めた場合は、将来の給与・賞与の納付額から差し引く過納額充当届出も選べます。
ただし、通常の年末調整で社長や従業員へ返す額は、単純な納付ミスとは別の流れです。似た名前の3つの処理を、25万円の設例で分けます。
25万円の誤納は、月15万円なら2か月、月10万円なら3か月
正しい源泉所得税が5万円なのに、桁を誤って30万円納めたとします。差額の25万円が誤納額です。将来発生する給与・賞与の源泉税へ充当した場合の回収期間を計算しました。
| 今後の給与・賞与の源泉税(月額) | 回収に必要な月数 | 3か月目の残額 | 手続の目安 |
|---|---|---|---|
| 3万円 | 9か月 | 19万円 | 還付請求を検討 |
| 5万円 | 5か月 | 15万円 | 還付請求を検討 |
| 10万円 | 3か月 | 5万円 | 還付請求を検討 |
| 15万円 | 2か月 | 0円 | 充当届出で回収可能 |
| 25万円 | 1か月 | 0円 | 充当届出で回収可能 |
※「3か月目の残額」は2か月分を充当した直後の残り。判断欄は国税庁の記載要領にある「長期間(おおむね3か月以上)」を基準にした目安
国税庁の充当届出書の記載要領は、充当が長期間、おおむね3か月以上続くような場合には、充当ではなく還付請求の手続きをするよう案内しています。月10万円なら3回目まで残るため、還付請求側で考えるのが保守的です。
一方、月15万円なら1回目に15万円、2回目に残り10万円を充当して終わります。短期で確実に使い切れるなら、税務署からの入金を待たず、次の納付額を減らす方法が分かりやすいでしょう。
表は node scripts/gensen-gonou-kanpu-juto.mjs で再生成できます。月の源泉税が一定でない会社は、平均ではなく、支給が確定している給与・賞与の税額を月ごとに並べて残額を減らします。
計算ミス・二重払いなら「誤納額還付請求」
誤納額還付請求は、源泉徴収義務者が正しい税額を超えて納めた場合に、その差額を戻してもらう手続です。例として、次のようなケースが該当します。
- 納付書へ5万円と書くところを30万円と記載して支払った
- 同じ対象月・同じ税区分の納付を二重に行った
- 給与計算を訂正し、納付済みの源泉所得税が正しい税額を上回った
請求書は所轄税務署へ提出します。e-Taxでも書面でも手続できます。基本の添付資料は、誤って納付したときの所得税徴収高計算書(納付書)の写しと、誤納が生じた理由を確認できる給与簿・総勘定元帳などの写しです。
帳簿は「多く払った」という結論だけでなく、元の納付30万円、正しい税額5万円、差額25万円へつながる必要があります。銀行の出金記録だけでは、正しい税額を確認できません。納付書、給与台帳、預り金勘定を一組にしておきます。
請求権は納付した日から5年で消滅します。決算の5年後ではなく、誤納した個々の納付日が起点です。古い預り金残高を見つけたら、申告期まで寝かせず、対象月と納付日を特定します。
給与・賞与の誤納なら「過納額充当届出」も選べる
過納額充当届出は、給与や賞与に係る源泉所得税等を多く納めたとき、その過納額を届出後に納付する給与・賞与の源泉所得税等へ充てる手続です。
対象が給与・賞与に限定される点が重要です。税理士報酬、原稿料、配当などの源泉所得税を誤納しても、給与の納付額へ自由に混ぜて差し引く制度ではありません。その場合は誤納額還付請求を検討します。
充当届出にも、誤納した納付書の写しと、誤納理由を示す帳簿の写しを添えます。届出後は、毎回の所得税徴収高計算書で本来税額、充当額、納付額を区別します。25万円の過納に対し、月15万円を充当するなら次の記録になります。
| 月 | 本来の源泉税 | 充当額 | 実際の納付 | 過納残高 |
|---|---|---|---|---|
| 届出時 | — | — | — | 25万円 |
| 1か月目 | 15万円 | 15万円 | 0円 | 10万円 |
| 2か月目 | 15万円 | 10万円 | 5万円 | 0円 |
「納付ゼロだから納付書を作らない」とすると、会社側の過納残高と税務署側の処理がつながりません。充当した対象月、充当額、残額を一つの補助表で追い、徴収高計算書の控えと一緒に保存します。
充当届出の案内ページには固有の提出期限が掲げられていませんが、放置してよい意味ではありません。還付請求には納付日から5年の消滅時効があるため、誤納を確認した時点で速やかにどちらを使うか決めます。
年末調整の超過額は、まず本人へ返して納付書で相殺する
通常の年末調整では、1年間に給与から天引きした税額が年税額を上回ることがあります。これは、会社が税額を間違えて税務署へ納めた「誤納」とは限りません。会社はまず、その超過額を社長・従業員へ還付します。
還付資金は、年末調整を行う月分の給与等から徴収した源泉税から差し引きます。その月分だけで足りなければ、以後の給与、退職手当、税理士報酬などから徴収した源泉税から順次差し引き、会社が本人へ返します。
たとえば、令和8年の年末調整で戻る金額の月額54万円の設例では、年末調整の超過額は81,320円です。毎月の源泉税を22,310円として単純化すると、相殺には4か月かかります。
| 納付方法 | 相殺に使える額 | 81,320円の処理 |
|---|---|---|
| 毎月納付 | 月22,310円 | 3か月で66,930円、4か月目に残り14,390円を相殺 |
| 納期の特例(7〜12月の6か月分) | 133,860円 | 当期分の徴収税額だけで全額相殺可能 |
同じ月22,310円でも、源泉所得税の納期の特例を使って半年分をまとめて納める会社なら、7〜12月分133,860円の範囲で81,320円を差し引けます。銀行口座から税務署へ支払う額は52,540円です。毎月納付か半年納付かで、税務署へ直接還付請求する必要性が変わります。
年末調整用の還付請求ができる3つの場合
国税庁は、年末調整の超過額について、次の場合に「年末調整過納額還付請求書兼残存過納額明細書」を税務署へ提出できると案内しています。
- 解散・廃業などで、今後給与の支払者でなくなる場合
- 徴収して納付する源泉所得税がなく、超過額を還付できない場合
- 超過額が大きく、還付すべきことになった月の翌月から2か月を経過しても還付しきれないと見込まれる場合
月22,310円ずつしか相殺できず、81,320円に4か月かかる毎月納付の設例は、3番目を検討する数字です。ただし、社長本人への還付を4か月後まで待たせる制度ではありません。会社が本人へ還付し、税務署から会社へ戻す残存額を請求します。
年末調整用の請求では、対象者ごとの源泉徴収簿の写しと、請求・受領に関する委任状が基本資料です。翌年へ繰り越した還付額があれば翌年分の源泉徴収簿も添付します。誤納額還付請求の「納付書+帳簿」と添付書類が違うのは、税務署が従業員ごとの年末調整を確認するためです。
また、税務署へ請求した額を、所得税徴収高計算書でも年末調整の超過税額として差し引くことはできません。どちらか一方です。請求日を境に、会社で相殺する額と税務署へ請求した額を分けます。
3つの手続を原因から選ぶ
| 発生原因 | 最初に選ぶ手続 | 金額の戻り方 | 主な資料 |
|---|---|---|---|
| 計算ミス・二重納付などの誤納 | 誤納額還付請求 | 税務署から会社口座へ還付 | 納付書控え、誤納理由の分かる帳簿 |
| 給与・賞与の誤納で短期に使い切れる | 過納額充当届出 | 将来の給与・賞与の納付額を減額 | 納付書控え、誤納理由の分かる帳簿 |
| 通常の年末調整による超過 | 本人へ還付し徴収高計算書で相殺 | 会社が本人へ払い、以後の納付額を減額 | 源泉徴収簿、徴収高計算書 |
| 年末調整分を2か月で返しきれない等 | 年末調整過納額還付請求 | 税務署から会社等へ還付 | 源泉徴収簿、委任状 |
名称だけでなく、なぜ払い過ぎになったかから選びます。「年末調整の結果」と「給与の源泉税を誤計算した結果」は、どちらも会社の預り金が減るように見えても、使う様式が違います。
処理状況はe-Taxの還付金処理状況確認から確認できますが、国税庁の案内では確認可能になるのは還付申告等の提出からおおむね2か月経過後です。これは一律の支払期限ではありません。資金繰り表には入金日未定として置き、還付前に使う運転資金を別に確保します。
一人会社で年末調整から納付書までの通常手順を確認する場合は、一人社長の年末調整も参照してください。
まとめ
- 5万円が正しいのに30万円を納めた場合、誤納額は25万円
- 給与・賞与の誤納は、現金還付または将来の給与・賞与の税額への充当を選べる
- 国税庁は充当が約3か月以上続く場合、還付請求を案内している
- 誤納額還付請求の請求権は納付日から5年で消滅する
- 通常の年末調整の超過額は、まず会社が本人へ返し、徴収高計算書で相殺する
- 年末調整分を翌月から2か月で返しきれない見込み等なら、専用の還付請求を検討する
誤納を見つけたら、対象月、正しい税額、実際の納付額、差額、今後の源泉税を1枚に並べます。25万円という同じ金額でも、2か月で使い切れる会社と9か月かかる会社では適した手続が変わります。
よくある質問
誤納額還付請求と過納額充当届出を同じ25万円に二重で使えますか?
使えません。現金で返してもらう額と、以後の納付額から差し引く額を重ねると二重回収になります。選んだ手続と残額を帳簿・納付書ごとに管理します。
報酬料金の源泉所得税を納め過ぎた場合も、給与の源泉税へ充当できますか?
国税庁が充当届出の対象としているのは給与や賞与に係る源泉所得税等の誤納です。報酬料金など別区分の誤納は、原則として誤納額還付請求で処理します。
還付請求をすればすぐ入金されますか?
一律の入金日数は示されていません。e-Taxでは提出後おおむね2か月を経過してから処理状況を確認できます。資金繰りでは、還付を当月の確定入金として扱わないほうが安全です。
年末調整で社長へ返した額も誤納額ですか?
通常の年末調整で年間税額と月々の源泉徴収額に差が出たものは、計算ミスによる誤納とは別です。まず会社が本人へ還付し、納付書で相殺します。相殺しきれない一定の場合に年末調整用の還付請求書を使います。
出典
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。