設立の手続き

パワハラ・カスハラ防止措置は従業員1人でも義務?2026年10月からの範囲

結論

はい。ハラスメントの防止措置は、雇用する労働者がいれば会社の規模にかかわらず義務で、パートやアルバイト1人でも対象です。2026年10月1日からは、パワハラ・セクハラ・妊娠出産等・育児介護休業等に関するハラスメントに加えて、顧客等からのカスタマーハラスメントと、求職者等へのセクハラの防止措置も義務になりました。

  • 講ずべき措置は、方針の明確化と周知、相談窓口の設置、事後の迅速・適切な対応、プライバシー保護と不利益取扱いの禁止の周知が柱
  • カスハラでは、悪質なカスハラへの対処方針を定め、可能な限り一人で対応させないなどの対処内容を従業員に周知することが求められる
  • 措置の状況について労働局から報告を求められ、報告しない・虚偽の報告をした場合は20万円以下の過料

パワハラ防止は大企業の話だと思われがちですが、法律が義務を課しているのは「労働者を雇用する事業主」で、人数の下限はありません。一人会社がアルバイトを1人雇った時点で対象になります。

しかも、2026年10月1日から対象が広がりました。顧客や取引先からのカスタマーハラスメント(カスハラ)と、採用面接などでの求職者へのセクハラです。

防止措置が義務になっているハラスメント

厚生労働省のパンフレット(令和8年7月作成)が挙げる、事業主の対策が義務になっているハラスメントは次の6つです。

ハラスメント根拠法義務になった時期
パワーハラスメント労働施策総合推進法施行済み
セクシュアルハラスメント男女雇用機会均等法施行済み
妊娠・出産等に関するハラスメント男女雇用機会均等法施行済み
育児・介護休業等に関するハラスメント育児・介護休業法施行済み
カスタマーハラスメント労働施策総合推進法2026年10月1日
求職者等に対するセクシュアルハラスメント男女雇用機会均等法2026年10月1日

ここでいう「労働者」には、正社員だけでなく、パート・アルバイト・契約社員など、その事業主が雇用するすべての労働者が含まれます。従業員が1人でも、その人が保護の対象です。

パワハラの3要素と、講ずべき措置

パワハラは、職場で行われる①優越的な関係を背景とした言動で、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるもの、と定義されています。3つすべてを満たすものがパワハラで、業務上必要かつ相当な範囲の指導はパワハラに当たりません。

事業主が講ずべき措置は、ハラスメントの種類を問わず共通の骨格があります。

柱主な内容
方針の明確化と周知ハラスメントを行ってはならない旨の方針と、行った者への対処を定め、周知する
相談体制の整備相談窓口をあらかじめ定めて周知し、担当者が適切に対応できるようにする
事後の迅速・適切な対応事実関係の確認、被害者への配慮、行為者への措置、再発防止
あわせて講ずべき措置相談者のプライバシー保護、相談したことを理由とする不利益取扱いの禁止を定めて周知

措置の実施状況について労働局から報告を求められることがあり、報告をしない・虚偽の報告をした場合は20万円以下の過料です。

カスハラ:一人会社に重い「一人で対応させない」

カスハラは、①顧客等の言動で、②業務の性質などに照らして社会通念上許容される範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるもの、です。顧客等には取引先も含まれ、電話やSNS上の言動も対象です。

カスハラ特有の措置として、次のものが加わっています。

  • カスハラには毅然と対応し、労働者を保護する旨の方針を明確化して周知する
  • カスハラの内容と、あらかじめ定めた対処の内容を労働者に周知する
  • 特に悪質なカスハラへの対処方針を定め、その対処ができる体制を整える

厚生労働省は対処の内容の例として、管理監督者にその場の対応の指示を仰ぐ、可能な限り労働者を一人で対応させない、犯罪に該当し得る言動は警察へ通報する、などを挙げています。

社長と従業員1人の会社では、社長が外出中に従業員が1人で店番や電話番をする時間が必ずあります。「一人で対応させない」は「可能な限り」とされていますが、その時間帯に何をすればよいか(電話を切ってよい、社長の携帯に連絡する、警察へ通報する)を書面で決めておくことが、一人会社にできる現実的な措置です。

求職者へのセクハラ:採用面接も対象に

2026年10月からは、面接やインターンシップ、会社訪問など、求職者等の求職活動の場面でのセクハラも防止措置の対象になりました。面接の時間や場所、やり取りに使うSNSの種類など、求職活動に関するルールをあらかじめ定めて周知することが求められます。

一人会社の採用は社長が1人で面接することがほとんどです。面接は事業所内で行う、私的なSNSで連絡しない、といったルールを先に決めておけば足ります。

社長が相談窓口で、行為者にもなり得る

一人会社の構造的な難しさは、相談窓口の担当者が社長しかいないことです。そして、パワハラの行為者になり得る「優越的な関係」にあるのも社長です。

社長に関する相談を社長に持ち込むのは現実的ではありません。社会保険労務士などの外部の窓口を相談先として定める方法もあります。外部に委託すると費用が発生するので、人を雇う費用の見積もりに入れておく必要があります。

採用時に書面で渡す項目は労働条件通知書に書く項目で、就業規則との関係は就業規則は10人未満なら不要かで扱っています。ハラスメントの方針は就業規則に書くのが一般的ですが、就業規則がない会社でも、方針を文書にして周知すれば措置になります。

雇い入れ全体の費用は一人社長が初めて従業員を雇う費用で計算しています。人件費が経費に乗ると法人化の損益分岐も動くので、当サイトの判定ツールで自分の数字を確かめてください。

まとめ

  • ハラスメントの防止措置は、従業員が1人でもいれば会社の規模にかかわらず義務。パート・アルバイトも対象
  • 2026年10月1日から、カスタマーハラスメントと求職者等へのセクハラの防止措置も義務になった
  • 措置の柱は、方針の明確化と周知、相談窓口、事後の迅速・適切な対応、プライバシー保護と不利益取扱いの禁止
  • カスハラでは、可能な限り一人で対応させないなどの対処内容を定めて周知する。一人会社では、一人の時間帯の対処を書面で決めておく
  • 社長が相談窓口と行為者を兼ねる構造になるため、外部の相談先を定めることも選択肢になる

よくある質問

社長の家族しか従業員がいない会社でも必要ですか?

法律は「その雇用する労働者」を対象にしているので、家族であっても会社が雇用している労働者がいれば措置の対象になります。役員だけで従業員がいなければ対象外です。

顧客からの苦情はすべてカスタマーハラスメントになりますか?

なりません。業務の性質などに照らして社会通念上許容される範囲を超え、従業員の就業環境が害されるものに限られます。正当な苦情やクレームへの対応は通常の業務です。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。