設立の手続き
外国人雇用状況届出は一人会社も必要?期限が2つある理由
結論
一人会社でも、外国人(特別永住者と在留資格「外交」「公用」を除く)を雇い入れたとき・離職したときは、ハローワークへの外国人雇用状況届出が必要です。雇用保険に入る人なら資格取得届(雇入れの翌月10日まで)・資格喪失届(離職の翌日から10日以内)を出せば届出を兼ね、入らない人は様式第3号を雇入れ・離職とも翌月末日までに出します。怠ると30万円以下の罰金の対象です。
- 期限は雇用保険に入るかどうかで2本立て。月初の離職だと、被保険者は10日以内、被保険者でない人は翌月末(最長60日)と50日の差が出る
- 社長自身が外国籍でも、代表取締役など労働者でない役員は届出の対象外。届出が要るのは雇った側の外国人
- 様式第3号は2027年4月1日から新様式に切り替わる。同じ日に施行される改正入管法で、不法就労助長罪は5年以下の拘禁刑・500万円以下の罰金に上がる
外国人雇用状況の届出は、人数や会社の規模に関係なく、外国人を1人雇った時点から始まります。一人会社が初めて雇う人が留学生のアルバイトでも、永住者の正社員でも同じです。
迷いやすいのは手続きそのものより、雇用保険に入るかどうかで様式と期限が入れ替わる点です。ここを取り違えると、出したつもりで出していない、という状態になります。
届出の対象になる人・ならない人
届出の対象は、外国人のうち特別永住者と、在留資格「外交」「公用」の人を除いた全員です。厚生労働省のQ&Aでは、次の人も対象と明記されています。
| 雇う人 | 届出 |
|---|---|
| 留学生・家族滞在のアルバイト | 必要(資格外活動許可の有無も確認する) |
| 「日本人の配偶者等」「永住者」「定住者」 | 必要(日本国籍を取得していない限り外国人) |
| 雇用保険に入らない短期アルバイト | 必要 |
| 派遣労働者 | 派遣元が必要 |
| 特別永住者 | 不要 |
社長本人が外国籍の場合
一人会社の社長が「経営・管理」の在留資格を持つ外国人というケースもあります。Q&Aは「経営・管理」について、代表取締役など労働者の地位にない役員は除くとしています。社長自身の分は届け出ません。
一方で、Q&Aは事業主が外国人かどうかに関係なく、雇った外国人については届出が必要としています。外国籍の社長が外国人の従業員を雇えば、その従業員の分は届け出ます。
また、雇用契約を結んでいなくても、指揮監督の下で働き、報酬が労務の対価になっているなど労働者性があれば対象になります。業務委託の形にしていても実態で判断される点は、日本人の場合と同じです。
期限は雇用保険に入るかどうかで2本立て
届出の方法は、その外国人が雇用保険の被保険者になるかどうかで分かれます。
| 区分 | 出すもの | 雇入れの期限 | 離職の期限 |
|---|---|---|---|
| 雇用保険の被保険者になる | 雇用保険被保険者資格取得届・資格喪失届 | 翌月10日まで | 離職日の翌日から起算して10日以内 |
| 被保険者にならない | 外国人雇用状況届出書(様式第3号) | 翌月末日まで | 翌月末日まで |
被保険者になる人は、資格取得届に在留カード番号などを書くことで外国人雇用状況の届出を兼ねます。別の様式を出す必要はありません。被保険者にならない人だけが、様式第3号を出します。現在の雇用保険の加入要件(週20時間以上など)と2028年10月からの変更は、雇用保険の週10時間への適用拡大で整理しています。
日付ごとに期限を並べると
雇入れ日・離職日ごとに、期限までの日数を scripts/gaikokujin-koyou-jokyo-todoke.mjs で計算しました(土日祝による繰り下げは考慮していません)。
| 雇入れ日 | 被保険者(資格取得届) | 残り日数 | 被保険者でない(様式第3号) | 残り日数 |
|---|---|---|---|---|
| 2026-10-01 | 11/10 | 40日 | 11/30 | 60日 |
| 2026-10-31 | 11/10 | 10日 | 11/30 | 30日 |
| 2027-01-31 | 2/10 | 10日 | 2/28 | 28日 |
| 2027-03-31 | 4/10 | 10日 | 4/30 | 30日 |
| 離職日 | 被保険者(資格喪失届) | 残り日数 | 被保険者でない(様式第3号) | 残り日数 |
|---|---|---|---|---|
| 2026-10-01 | 10/11 | 10日 | 11/30 | 60日 |
| 2026-10-31 | 11/10 | 10日 | 11/30 | 30日 |
| 2027-01-31 | 2/10 | 10日 | 2/28 | 28日 |
雇入れでは、どちらの区分でも「月末に雇うと期限が近い」という同じ形です。差がはっきり出るのは離職です。月初に辞めた場合、被保険者は10日以内、被保険者でない人は最長60日と、50日の開きが出ます。
被保険者でない人の感覚で「翌月末まででいい」と覚えていると、雇用保険に入っていた人の離職で期限を大きく過ぎます。一人会社で最初に雇う人がアルバイト、次が週20時間以上のパート、という順番だと起きやすい取り違えです。
まとめて出せるケース
雇用保険に入らない短期アルバイトが届出期限の前に辞めた場合は、様式第3号に雇入れ日と離職日を両方書いて、1枚でまとめて届け出られます。同じ人を期限内に何度か雇い入れた場合も、複数の日付を書いてまとめられます。様式は外国人1人につき1枚です。
在留カードは「内定後」に原本で確認する
届出の内容が正しいかを担保するのは、一義的には事業主とされています。届出に在留カードのコピーを添付する必要はありませんが、記入する項目はカードで確認します。
| 届出の項目 | 確認するもの |
|---|---|
| 氏名(ローマ字の本名) | 在留カード(通称名ではなく本名) |
| 在留資格・在留期間 | 在留カード、または旅券の上陸許可証印 |
| 資格外活動許可の有無 | 在留カード裏面の「資格外活動許可」欄、資格外活動許可書 |
| 在留カード番号 | 英字2桁+数字8桁+英字2桁の12桁 |
確認の時期には注意があります。厚生労働省のリーフレットは、採用選考の段階で在留カードを提示させることは、採否に偏見が入り込むおそれがあるとしています。選考中は在留資格や資格外活動許可の有無を口頭・書面で確認し、在留カードで就労可能かを確かめるのは採用内定後、という順番です。
偽造・変造の確認には、出入国在留管理庁の「在留カード等読取アプリケーション」(無料)の活用が勧められています。読み取った情報と券面を見比べる使い方です。
留学生の資格外活動は週28時間以内
留学や家族滞在の在留資格は、本来就労が認められていません。アルバイトをするには資格外活動許可が必要で、許可される範囲は本来の活動を妨げない範囲(1週間あたり28時間以内など)です。
許可の有無と制限の内容は、在留カード裏面の「資格外活動許可」欄や資格外活動許可書で確かめます。届出書にも資格外活動許可の有無を書く欄があるため、許可を確認しないまま雇うと、届出書が正しく書けません。シフトを組む前に、許可の範囲に収まる時間かを確認しておきます。
罰則は2種類あり、2027年4月に一方が重くなる
外国人雇用に関わる罰則は、届出の違反と、不法就労をさせたことへの罰則の2つです。性質がまったく違います。
| 罰則 | 対象となる行為 | 内容 |
|---|---|---|
| 外国人雇用状況の届出違反 | 届出を怠る、虚偽の届出をする | 30万円以下の罰金(指導・勧告の対象にも) |
| 不法就労助長罪(入管法) | 就労できない外国人を働かせる等 | 現行:3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金 |
届出違反について、厚生労働省のQ&Aは「氏名や言語から外国人だと判断できなかった場合」には法違反を問われないとしています。逆に、外国人だと容易に判断できるのに出さなければ罰金の対象です。
改正入管法の施行で何が変わるか
2024年6月に公布された改正入管法(令和6年法律第60号)で、不法就労助長罪の罰則は**5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金(併科可)**に引き上げられます。改正法の施行は、準備行為に関する規定を除き、育成就労制度と同じ2027年(令和9年)4月です。2026年10月時点では、まだ引上げ前の罰則が適用されています。
同じ時期に、外国人雇用状況届出書(様式第3号)も2027年4月1日から新しい様式に切り替わります。厚生労働省の新旧様式を比べると、在留資格欄に特定技能の分野や特定活動の指定内容を括弧書きする指示が削られています。2027年3月31日の雇入れなら期限は4月30日なので、4月に入ってから出すなら新様式を使うことになります。
一人会社の手続きの中での位置づけ
外国人雇用状況の届出は、日本人を雇うときの手続きに上乗せされるものです。雇入れ時の手続き全体は一人社長が初めて従業員を雇うときにまとめています。
| 手続き | 日本人 | 外国人 |
|---|---|---|
| 健康保険・厚生年金の資格取得届 | 要件を満たせば必要 | 同じ |
| 雇用保険の資格取得届 | 要件を満たせば必要 | 同じ(在留カード番号等を記載し、届出を兼ねる) |
| 様式第3号 | 不要 | 雇用保険に入らない場合に必要 |
| 離職時 | 資格喪失届・離職票 | 加えて、雇用保険に入らない人は様式第3号 |
18歳未満の留学生などを雇う場合は、在留資格の確認に加えて労働基準法の年少者の制限もかかります。こちらは高校生をアルバイトで雇うときで扱っています。
人を雇うと、人件費だけでなく社会保険の会社負担も経費に乗ります。法人化の判定が変わるかどうかは、人件費を含めた経費で一度計算しておくと見通しが立ちます。一般論の数字ではなく、自分の売上と経費で確かめてください。
まとめ
- 外国人雇用状況の届出は、特別永住者と「外交」「公用」を除く外国人を1人でも雇えば必要。代表取締役など労働者でない役員は対象外
- 雇用保険に入る人は資格取得届・資格喪失届で兼ね、入らない人は様式第3号。離職の期限は10日以内と翌月末で、最大50日ずれる
- 在留カードの確認は採用内定後に原本で行い、留学生は資格外活動許可と週28時間以内を確認する
- 届出違反は30万円以下の罰金。不法就労助長罪は2027年4月から5年以下の拘禁刑・500万円以下の罰金に上がり、同じ日に様式第3号も新様式になる
よくある質問
留学生を短期のアルバイトで雇い、届出期限の前に辞めました。届出は2回必要ですか?
雇用保険に入らない人なら、様式第3号に雇入れ日と離職日の両方を書いて1回でまとめて届け出られます。厚生労働省のQ&Aで認められている扱いです。
在留カードのコピーを届出に添付する必要はありますか?
添付は不要です。ただし記載内容の正確性は事業主が担保するものとされているため、在留カードの原本で氏名・在留資格・在留期間・カード番号などを確認してから記入します。
日本人と結婚している外国人や永住者を雇う場合も届出は必要ですか?
必要です。日本国籍を取得していない限り外国人として扱われ、「日本人の配偶者等」「永住者」「定住者」といった在留資格の人も届出の対象です。対象外は特別永住者と「外交」「公用」だけです。
出典
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。