設立の手続き

従業員が辞めたら何を出す?退職証明書と離職票、一人会社の期限

結論

従業員が退職したら、会社は①健康保険・厚生年金の資格喪失届を資格喪失日(退職日の翌日)から5日以内、②雇用保険の資格喪失届と離職証明書を離職日の翌々日から10日以内に提出します。離職票はハローワークが発行する失業手当用の書類で、59歳以上の人には必ず交付します。退職証明書は労働基準法22条の書類で、本人から請求されたら遅滞なく交付する義務があります。

  • 退職証明書には、本人が請求した事項(使用期間・業務・地位・賃金・退職の事由)だけを書く。請求していない事項は書いてはならない
  • 退職した人から請求があれば、最後の給与や預かり金は7日以内に払う(労働基準法23条)
  • 社長など役員は雇用保険に入っていないので、役員を辞めても離職票は出ない

一人会社で雇った従業員が辞めることになった。社長が初めてこの場面を迎えると、「離職票」と「退職証明書」の区別がついていないことがよくあります。

離職票は雇用保険の書類、退職証明書は労働基準法の書類で、発行するところも、出す義務がかかる条件も違います。

退職後に会社が出す書類と期限

10月31日付けで退職した場合を例に、会社がする手続きを並べます。

手続き提出先・交付先期限根拠
健康保険・厚生年金 資格喪失届年金事務所・事務センター資格喪失日(11月1日)から5日以内日本年金機構
雇用保険 資格喪失届・離職証明書ハローワーク離職日の翌々日(11月2日)から10日以内=11月11日厚生労働省
離職票ハローワークから本人へ(会社経由またはマイナポータル)上の届出の審査後同上
退職証明書本人請求されたら遅滞なく労働基準法22条
最後の給与・預かり金本人請求されたら7日以内労働基準法23条
源泉徴収票本人退職日以後1か月以内所得税法

健康保険の資格確認書を渡していれば、回収して資格喪失届に添えます。

離職票は雇用保険の書類。会社は「離職証明書」を出す

離職票(正式名称は雇用保険被保険者離職票)は、退職した人が失業手当を受けるためにハローワークへ出す書類です。発行するのはハローワークで、会社が作るのはその元になる離職証明書です。

会社は資格喪失届に離職証明書を添えて提出し、ハローワークの審査後に離職票が交付されます。2025年1月からは、電子申請で手続きをし、本人がマイナポータルの連携設定を済ませていれば、離職票が本人のマイナポータルへ直接送られるようになりました。その場合、会社には離職証明書の事業主控えだけが届きます。

本人が離職票を希望しない場合は「離職票交付なし」で届け出ることもできます。ただし、59歳以上の人には、希望の有無にかかわらず離職票を交付します。

離職証明書の離職理由は、本人の基本手当の給付日数や給付制限を左右します。退職勧奨に応じた退職は自己都合にならない点は、退職勧奨と解雇の違いの記事で詳しく扱っています。

退職証明書は請求されたら出す。書いてよいのは請求された事項だけ

労働基準法22条1項は、退職した人が使用期間、業務の種類、地位、賃金、退職の事由(解雇ならその理由を含む)について証明書を請求したら、遅滞なく交付しなければならないとしています。

離職票と違い、雇用保険に入っていなかった短時間のアルバイトにも適用されます。転職先から求められて請求されることが多い書類です。

同条3項は、本人が請求しない事項を記入してはならないとしています。解雇の理由を書いてほしくないと言われたら、書きません。秘密の記号を入れることも禁じられています(同条4項)。

交付しなかった場合は、労働基準法120条により30万円以下の罰金の対象です。請求できる期間は、賃金以外の請求権の時効と同じ2年です(同法115条)。

解雇を予告した場合は、退職日より前でも、解雇の理由の証明書を請求されたら交付します(22条2項)。解雇の予告と手当については試用期間中なら解雇予告は不要かと解雇予告手当はいくらかで扱っています。

最後の給与は、請求されたら7日以内

給与の締め日と支払日の関係で、最後の給与の支払日が退職の翌月以降になる会社は多いはずです。それ自体は問題ありませんが、労働基準法23条は、退職した人から請求があった場合、7日以内に賃金を払い、積立金や保証金など本人の権利に属する金品を返すことを求めています。

一人会社の場合、従業員が立て替えた経費の精算や、制服・鍵の保証金の返還が残りがちです。退職が決まった時点で、本人の権利に属するものを一覧にしておくと7日以内に対応できます。

社長が辞めても離職票は出ない

社長など役員は雇用保険の被保険者ではないため、役員を辞めても離職票は出ず、失業手当も受けられません。理由と代わりの備えは一人社長は雇用保険に入れるかで説明しました。

従業員には退職時の手続きと給付があり、社長にはない。人を雇うと、雇っている間だけでなく辞めるときにも事務が生じます。帳簿の保存義務は法定三帳簿で、雇い入れ全体の費用は一人社長が初めて従業員を雇う費用で整理しています。

人件費が経費に乗ると法人化の損益分岐も動くので、当サイトの判定ツールで自分の数字を確かめてください。

まとめ

  • 退職後、社会保険の資格喪失届は資格喪失日から5日以内、雇用保険の資格喪失届と離職証明書は離職日の翌々日から10日以内に出す
  • 離職票はハローワークが発行する失業手当用の書類。59歳以上の人には希望にかかわらず交付する
  • 退職証明書は労働基準法22条の書類で、請求されたら遅滞なく交付する。書いてよいのは本人が請求した事項だけ
  • 退職した人から請求があれば、最後の給与や預かり金は7日以内に払う
  • 社長など役員は雇用保険に入っていないので、辞めても離職票は出ない

よくある質問

退職した人から半年後に退職証明書を求められました。応じる必要はありますか?

労働基準法の賃金以外の請求権の時効は2年なので、退職から2年以内の請求であれば、遅滞なく交付する必要があります。

離職票が要らないと言われた場合も、雇用保険の手続きは必要ですか?

必要です。資格喪失届は離職票の要否にかかわらず提出します。離職票が不要なら「離職票交付なし」として届け出ますが、59歳以上の人には本人の希望にかかわらず交付が必要です。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。