社会保険
雇用保険は2028年10月から週10時間以上。パート1人の会社負担
結論
雇用保険の加入要件は、2028年(令和10年)10月1日から週の所定労働時間「20時間以上」が「10時間以上」に下がります。2024年に成立した改正雇用保険法(令和6年法律第26号)で施行日まで法律に書かれており、政令待ちの段階ではありません。令和8年度の料率で計算すると、時給1,177円・週10時間のパート1人の会社負担は雇用保険料が年5,202円です。
- 施行日の時点で週10〜20時間未満で雇っているパートは、契約を変えなくても施行日に雇用されたものとみなされて被保険者になる(改正法附則7条)
- 失業給付の「被保険者期間1か月」の基準も、11日以上→6日以上、80時間以上→40時間以上に下がる。週1日10時間の働き方は、1日休むとその月は数えられない
- 社会保険(健康保険・厚生年金)は週20時間以上のまま。週10〜19時間のパートは2028年10月以降、雇用保険だけに入る層になる
雇用保険の適用拡大は、社会保険(健康保険・厚生年金)の適用拡大と時期も線も違います。混ざりやすいので、この記事では雇用保険だけを扱います。2026年10月4日時点で何がどこまで決まっているかを厚生労働省の公表資料で確かめ、週10〜19時間のパートを雇う会社にいくら乗るかを計算します。
社会保険の企業規模要件の撤廃は一人会社でもパートに社会保険が要る、社長本人が雇用保険に入れない理由は一人社長は雇用保険に入れないで扱っています。
決まっている段階:法律成立済み、施行日も法律に明記
制度改正の記事では、要望・法案・成立・施行のどの段階かを最初に確かめます。週10時間への拡大は次のとおりです。
| 段階 | 内容 | 確認した資料 |
|---|---|---|
| 法案提出 | 2024年2月9日、第213回国会に「雇用保険法等の一部を改正する法律案」を提出 | 厚労省 国会提出法律案ページ |
| 成立・公布 | 令和6年法律第26号として成立。2025年4月施行分はすでに施行済み | 厚労省 給付制限解除の案内ページ |
| 施行日 | 週10時間への拡大は令和10年(2028年)10月1日 | 法律案の概要・要綱(附則1条) |
| 2026年10月時点 | 未施行。現在の加入要件は週20時間以上 | — |
2025年に成立したストレスチェックの改正のように「公布後3年以内に政令で定める日」とされた制度とは違います。雇用保険の適用拡大は、施行日そのものが附則に書かれています。日付を動かすには法律の改正が必要です。
なお、法律案の資料は国会提出時のものです。成立した法律と同じ番号(令和6年法律第26号)で、厚生労働省は2025年4月施行分をこの法律の施行として案内しています。
条文で変わるのは「20時間」の一語
新旧対照条文を見ると、適用除外を定める雇用保険法6条1号の「二十時間」が「十時間」に改められます。6条のほかの号は改正されていません。つまり今回変わるのは週の所定労働時間の線だけで、それ以外の除外要件はそのまま残ります。
65歳以上の複数就業者が申し出て加入する制度(マルチジョブホルダー制度、37条の5)も、1つの事業所での時間の上限と合算の基準が「20時間」から「10時間」に改められます。
週10〜19時間のパート1人で、会社負担はいくらか
雇用保険料は賃金に料率を掛けて計算します。2028年度の料率はまだ公表されていないため、令和8年度の料率(一般の事業:会社8.5/1,000・本人5/1,000)で試算しました。時給は令和8年度の地域別最低賃金の全国加重平均1,177円と、東京の1,280円です。
| 時給 | 週の所定労働時間 | 年間賃金 | 雇用保険料(会社) | 雇用保険料(本人) | 労災保険料(会社・改正前から) |
|---|---|---|---|---|---|
| 1,177円 | 10時間 | 61.2万円 | 5,202円 | 3,060円 | 1,836円 |
| 1,177円 | 15時間 | 91.8万円 | 7,803円 | 4,590円 | 2,754円 |
| 1,177円 | 19時間 | 116.3万円 | 9,884円 | 5,814円 | 3,488円 |
| 1,280円 | 10時間 | 66.6万円 | 5,657円 | 3,328円 | 1,996円 |
| 1,280円 | 15時間 | 99.8万円 | 8,486円 | 4,992円 | 2,995円 |
| 1,280円 | 19時間 | 126.5万円 | 10,749円 | 6,323円 | 3,793円 |
前提:令和8年度の雇用保険率(一般の事業)、労災保険率3/1,000(その他の各種事業)、年52週・賞与残業なし。年額賃金に料率を掛けた概算です。
会社負担は1人あたり年5千円〜1万円台です。金額としては小さく、法人化の損益を動かす規模ではありません。会社負担が本人負担より大きいのは、雇用保険二事業の3.5/1,000を会社だけが負担するためです。
労災保険料の列は、改正の前から発生しています。労災保険は週の労働時間に関係なく、労働者を1人でも雇えば対象だからです。
社会保険の線と並べると、負担の段差は週20時間にある
同じ時給1,177円で、週20時間に延ばした場合と並べます。社会保険は、企業規模要件・賃金要件が撤廃されたあとの扱い(週20時間以上で加入)で計算エンジンから出しました。
| 働き方(時給1,177円) | 月額賃金 | 雇用保険料(会社・年) | 健康保険・厚生年金(会社・年) | 会社負担の合計(年) |
|---|---|---|---|---|
| 週10時間 | 51,003円 | 0.5万円 | 対象外 | 0.5万円 |
| 週19時間 | 96,906円 | 1.0万円 | 対象外 | 1.0万円 |
| 週20時間 | 102,007円 | 1.0万円 | 18.2万円 | 19.2万円 |
前提:協会けんぽ東京支部・40歳未満、会社負担に子ども・子育て拠出金を含む。
2028年10月以降、週10〜19時間のパートは雇用保険だけに入る層になります。会社の保険料負担の大きな段差は、引き続き週20時間の線にあります。週10時間の線で増えるのは、保険料よりも手続きのほうです。
施行日に、契約を変えていないパートも被保険者になる
見落としやすいのが改正法附則7条です。施行日の前から引き続き雇っている週10時間以上20時間未満の人は、施行日に雇用されたものとみなして改正後の法律を適用します。
つまり、2028年9月までに週15時間で雇っているパートは、契約も時間も変えないまま、2028年10月1日に雇用保険の被保険者になります。新しく雇った人だけが対象になるわけではありません。会社は、その人たちの資格取得の手続きをすることになります。
従業員が社長だけの会社や、同居の家族だけを雇う会社には、もともと雇用保険の被保険者がいません(理由は配偶者だけを雇う一人会社に労災・雇用保険はない)。こうした会社が週10〜19時間のパートを1人雇っている場合、施行日を境に初めて雇用保険の被保険者を抱えることになります。
被保険者が出ると、労働保険の年度更新で雇用保険分の賃金総額を申告する必要が出ます。年度更新の仕組みは労働保険の年度更新は2階建てにまとめました。
失業給付の「1か月」の数え方も半分になる
週10時間で働く人が被保険者になっても、失業給付の受給資格を満たせなければ意味が薄くなります。そこで、被保険者期間の数え方も同時に変わります(改正後14条)。
| 項目 | 現行 | 2028年10月1日以降 |
|---|---|---|
| 被保険者期間1か月の日数基準 | 賃金支払基礎日数11日以上 | 6日以上 |
| 同じく時間数の基準 | 80時間以上 | 40時間以上 |
| 賃金日額の下限額(法律上の額) | 2,460円 | 1,230円 |
被保険者期間の新しい数え方は、離職日が施行日以後の人に適用されます(附則8条)。施行日前に離職した人は、従前の基準のままです。
週10時間でも、働き方で「1か月」に数えられない月が出る
週10時間ちょうどの働き方を3通り、改正後の基準に当てはめました。日数6日以上か、時間数40時間以上のどちらかを満たせば1か月です。
| 働き方(週10時間以上) | 勤務が4週の月:日数/時間 | 判定 | 1日休んだ月:日数/時間 | 判定 |
|---|---|---|---|---|
| 週2日×5時間 | 8日/40時間 | 1か月 | 7日/35時間 | 1か月 |
| 週1日×10時間 | 4日/40時間 | 1か月 | 3日/30時間 | 数えない |
| 週3日×4時間 | 12日/48時間 | 1か月 | 11日/44時間 | 1か月 |
週1日10時間の働き方は、日数基準(6日)に届かず、時間数の基準40時間にちょうど乗っているだけです。1日休むと、その月は被保険者期間に数えられません。同じ週10時間でも、週2日以上に分けた働き方のほうが日数基準で拾われやすい計算です。
40時間という数字は、週10時間×4週から来ています。新しい加入ラインの人がちょうど1か月と数えられるように置かれた線なので、加入ラインぎりぎりの働き方では余裕がありません。
2026年10月時点で未定のこと
法律で決まっているのは、加入の線と施行日、被保険者期間の基準までです。次の点は、2026年10月4日時点で当サイトが一次情報で確認できていません。
- 2028年度(令和10年度)の雇用保険料率
- 施行日に向けた資格取得届の具体的な様式・提出期限の案内
- 賃金日額の下限額の実額(法律上の1,230円は毎年の自動変更の対象)
料率は毎年度案内されます。上の表の金額は令和8年度の料率での試算で、2028年度の金額ではありません。確定した段階で、この記事を更新します。
法人化の判断との関係
週10〜19時間のパートを1人雇う場合、雇用保険で増える会社負担は年1万円前後です。法人化の損益を左右するのは、社長本人の役員報酬にかかる社会保険料と税のほうです。
ただし、週20時間以上で雇うと、社会保険の規模要件が撤廃されたあと会社負担は年19万円台に上がります。パートの時間設計と法人化の時期が重なる場合は、両方の線を並べて見る必要があります。従業員を雇い始めたときの会社負担の全体は一人社長が初めて従業員を雇うとで計算しています。
法人化そのものの損益は、一般論の数字ではなく、自分の売上と経費で確かめてください。
まとめ
- 雇用保険の加入要件は2028年10月1日から週10時間以上。令和6年法律第26号で施行日まで法律に明記されている
- 時給1,177円・週10〜19時間のパート1人の雇用保険料(会社負担)は、令和8年度料率で年5,202〜9,884円
- 施行日前から週10〜20時間未満で雇っている人は、施行日に雇用されたものとみなされ被保険者になる
- 被保険者期間1か月の基準は6日以上または40時間以上。週1日10時間の働き方は1日休むとその月は数えない
- 2028年度の料率や手続きの様式は未公表。会社負担の大きな段差は、社会保険の週20時間の線に残る
よくある質問
週10時間未満のパートは2028年10月以降も雇用保険に入らなくてよいですか?
改正後の雇用保険法6条は、週の所定労働時間が10時間未満の人を適用除外としています。週10時間未満で雇う限り、雇用保険の被保険者にはなりません。労災保険は時間に関係なく対象です。
2028年10月より前から週15時間で働いているパートは、手続きが要りますか?
改正法附則7条で、施行日前から引き続き雇用されている週10時間以上20時間未満の人は、施行日に雇用されたものとみなされます。契約が変わらなくても被保険者になるため、資格取得の手続きが必要になります。
2028年度の雇用保険料率はもう決まっていますか?
決まっていません。雇用保険料率は年度ごとに案内され、2026年10月時点で公表されているのは令和8年度(2026年4月〜2027年3月)の13.5/1,000(一般の事業)です。この記事の金額はその料率での試算です。
出典
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。