設立の手続き

海外在住の外注先に源泉徴収は要る?20.42%がかかる支払いの見分け方

結論

海外在住のフリーランス(非居住者)に払う報酬は、国内源泉所得に当たるものだけが源泉徴収の対象で、令和8年中の税率は20.42%です。海外で行った作業そのものの対価は国内源泉所得に当たりませんが、翻訳・デザインなどの著作物を買い取る契約は、作業地が海外でも著作権の譲渡の対価(使用料)に当たり得て、その場合は源泉徴収が必要です。租税条約で軽減・免除を受けるには、支払日の前日までに届出書を出します。

  • 国税庁の質疑応答事例は、韓国在住の教授に買取契約で依頼した翻訳料を著作権の譲渡の対価とし、源泉徴収が必要と回答している
  • 手取り10万円を保証する契約なら、税込み125,659円に逆算して25,659円を源泉徴収する。会社の負担は手取り額の25.7%増
  • 非居住者への支払いから徴収した税は納期の特例の対象外で、翌月10日までに納める

国内の外注先なら、源泉徴収するかどうかは「報酬・料金等に当たるか」で決まります(外注費と給与の判定)。海外在住の相手(非居住者)では物差しが替わり、国内源泉所得に当たるかどうかで決まります。作業した場所と、払っているお金の性質の2つを見ます。

非居住者に源泉徴収が要るのは「国内源泉所得」だけ

非居住者は、日本国内で稼いだ国内源泉所得だけが日本で課税されます。国税庁 No.2878 は国内源泉所得を15種類挙げ、そのうち大半が源泉徴収の対象になるとしています。一人会社が海外の外注先に払うお金で関係するのは、主に次の3つです。

国内源泉所得の種類(No.2878の番号)一人会社で起きる例税率(令和8年中)
(4)国内で行う人的役務の提供を事業とする者の対価専門家が来日して行う作業・指導20.42%
(9)著作権の使用料または譲渡の対価(国内業務に係るもの)翻訳・デザイン・イラストの買取り、ソフトウエアの利用許諾料20.42%
(10)国内で行う勤務・人的役務の提供に基因する報酬日本に滞在して行う作業の報酬20.42%

居住者に払う原稿料・デザイン料なら100万円以下は10.21%ですが、非居住者は金額にかかわらず20.42%です。

支払額(1回)非居住者:源泉徴収税額(20.42%)非居住者の受取額参考:居住者の原稿料・デザイン料などの税額差
50,000円10,210円39,790円5,105円5,105円
100,000円20,420円79,580円10,210円10,210円
300,000円61,260円238,740円30,630円30,630円
500,000円102,100円397,900円51,050円51,050円
1,000,000円204,200円795,800円102,100円102,100円
2,000,000円408,400円1,591,600円306,300円102,100円

※ 令和8年中の支払い。非居住者は租税条約の軽減・免除を受けない場合。居住者の欄は国税庁 No.2795 の報酬・料金等の計算式(100万円以下10.21%)。税額の1円未満切捨て

令和9年分以後は、所得税・復興特別所得税に防衛特別所得税が加わる形に変わります(No.2884)。この記事の税率は令和8年中の支払いのものです。

海外での作業の対価は対象外。ただし著作権の買取りは別

国内源泉所得の定義は「国内で行う」人的役務です。海外に住む外注先が、海外で行った作業の対価は、原則としてこれに当たりません。所得税基本通達161-36の注も、人的役務の提供の対価に当たるものは、通常その役務が行われた地に源泉がある所得になるとしています。

ところが、成果物に著作権があると話が変わります。国税庁の質疑応答事例「非居住者に支払う翻訳料」では、韓国在住の大学教授に日本語論文の韓国語訳を買取契約で依頼したケースについて、翻訳文は二次的著作物で、買取りの対価は著作権の譲渡の対価=使用料に当たるとし、源泉徴収が必要と回答しています。翻訳作業は韓国で行われていても結論は同じです。

海外在住の外注先への支払い源泉徴収
海外で行う調査・分析・事務作業の対価原則として不要
来日して行う作業・指導の対価必要(国内で行う人的役務)
翻訳・デザイン・イラスト・文章を買い取る契約の対価必要になり得る(著作権の譲渡の対価。翻訳は国税庁の事例あり)
既存の作品・ソフトウエアの利用を許諾してもらう対価必要(著作権の使用料)
海外在住の役員に払う役員報酬必要(No.1929)

※ 国内源泉所得に当たるかは、契約の中身で決まります。著作権を誰に帰属させるかの条項を必ず確認してください。租税条約で国内法と異なる定めがある場合は条約が優先されます

作業を頼むつもりの契約でも、「成果物の著作権は発注者に移転する」という条項が入っていれば、支払いの性質が変わり得ます。クラウドソーシングで海外のデザイナーに依頼するときも、規約上の著作権の扱いを確認します。

判断に迷う契約は、支払う前に所轄の税務署に確認する価値があります。源泉徴収は支払う側の義務で、漏れていれば会社が納めることになるからです。

手取り保証の契約は、会社の負担が25.7%増える

海外の外注先は、日本の源泉徴収を差し引かれることを想定していない場合が多く、「手取りで10万円」と約束しがちです。支払額が税引手取額で定められている場合は、手取り額を税込みに逆算して源泉徴収します(所得税基本通達181〜223共-4)。

契約上の手取り額税込みに逆算した支払額源泉徴収税額会社の負担増(手取り額に対する割合)
100,000円125,659円25,659円25,659円(25.7%)
300,000円376,978円76,978円76,978円(25.7%)
500,000円628,298円128,298円128,298円(25.7%)
1,000,000円1,256,596円256,596円256,596円(25.7%)

※ 非居住者への支払いで、租税条約の軽減・免除を受けない場合。所得税基本通達181〜223共-4により、手取り額を税込みに逆算した額を支払額として源泉徴収する。支払調書の支払金額は手取り額と源泉徴収税額の合計

単純に手取り額×20.42%ではなく、税込みに戻した額に20.42%をかけるので、負担は20.42%ではなく**25.7%**増えます。年間で手取り300万円分を海外に発注していれば、約77万円が上乗せになる計算です。上乗せ分も外注費として経費になりますが、出ていく現金はそのまま増えます。

外注費の水準は、法人化の損得にも効きます。判定ツールには、税込みに逆算した後の外注費を経費として入れてください。

租税条約で下げるなら、支払日の前日までに届出

相手の居住国と日本の間に租税条約があれば、税率が軽減または免除されることがあります。そのためには、支払日の前日までに「租税条約に関する届出書」等を、支払者(あなたの会社)を経由して、支払者の納税地の所轄税務署長に出します(No.2884)。

届出が間に合わなければ、いったん20.42%で源泉徴収することになります。**届出書を用意するのは外注先ですが、提出の窓口は発注した会社です。**初回の支払いの前に、相手の居住国と条約の有無を確認しておきます。

条約の税率が国内法の税率以下になる部分には、復興特別所得税を上乗せしません。軽減税率は条約と所得の種類ごとに違うので、条約本文と国税庁の届出書の様式で確認してください。

納期の特例は使えない。翌月10日までに納める

源泉所得税を年2回にまとめる納期の特例を使っている一人会社は多いはずです。ところが納期の特例の対象は、給与・退職金と、税理士・弁護士など一定の報酬から徴収した税に限られます(No.2505)。

非居住者への支払いから徴収した税は、原則として徴収した日の属する月の翌月10日までに、「非居住者・外国法人の所得についての所得税徴収高計算書(納付書)」で納めます(No.2885)。給与の分とは納付書も期限も別です。

役員報酬の源泉所得税を7月と1月にまとめて納めている会社が、同じ感覚で海外への支払い分を翌年1月に回すと、法定納期限を過ぎます。遅れると不納付加算税の対象です。

まとめ

  • 非居住者への支払いで源泉徴収が要るのは国内源泉所得だけ。令和8年中の税率は金額にかかわらず20.42%
  • 海外で行った作業そのものの対価は原則として対象外。ただし著作権を買い取る・利用許諾を受ける対価は、作業地が海外でも使用料として対象になり得る(翻訳の買取りは国税庁の事例で対象)
  • 手取り保証の契約は税込みに逆算して徴収するので、会社の負担は手取り額の25.7%増
  • 租税条約の軽減・免除は、支払日の前日までに会社経由で届出書を出した場合に受けられる
  • 非居住者分は納期の特例の対象外で、翌月10日までに専用の納付書で納める

海外への外注費は、源泉徴収の扱い次第で実質のコストが変わります。税込みに逆算した外注費を経費に入れたうえで、自分の条件で法人化の損得を確かめてください。

よくある質問

外注先へ外貨で払う場合、源泉徴収税額はどの為替レートで計算しますか?

円に換算してから源泉徴収します。換算は支払期日の電信買相場(TTB)が原則で、支払が著しく遅延していない場合は、実際に支払った日の電信買相場でも差し支えないとされています(国税庁 No.2884)。

租税条約で税率が下がる場合、復興特別所得税も上乗せしますか?

条約の税率が国内法の税率以下になるものについては、復興特別所得税(令和9年分以後は防衛特別所得税と復興特別所得税)を併せて源泉徴収する必要はありません(国税庁 No.2884)。

海外に住んでいる家族を役員にして報酬を払う場合も源泉徴収が必要ですか?

必要です。内国法人の役員として国外で勤務した場合の報酬は、日本国内で生じたものとして20.42%で源泉徴収されます。役員が内国法人の使用人として常時海外で勤務する場合は例外です(国税庁 No.1929)。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。