設立の手続き

法人事業概況説明書の書き方。一人社長が迷う7つの欄と記入例

結論

法人事業概況説明書は、法人税の確定申告書に添付する「事業等の概況に関する書類」で、社長1人の会社でも省略できません。金額は原則千円単位(千円未満切捨て)ですが、18欄の源泉徴収税額だけは円単位、海外取引の取引金額は百万円単位です。一人社長が迷いやすいのは、4欄の代表者家族数に社長本人を数えないこと、11欄に代表者への報酬・貸付金・借入金・賃借料などを書くこと、8欄で現金と通帳の管理者を書くことです。

  • 現行の様式と記載要領は「令和6年3月1日以後終了事業年度分」。電帳法の適用状況と年末調整書類の電子化の欄が改訂された
  • 売上1,200万円・経費200万円・役員報酬月54万円の合同会社なら、10欄の役員報酬は6,480千円、税引前当期損益は2,594千円、18欄の月の源泉徴収税額は22,310円
  • 11欄は同族会社の場合に書く欄で、代表者に対する報酬・貸付金・仮払金・賃借料・支払利息と、代表者からの借入金・仮受金を千円単位で書く

法人の確定申告書に付ける書類のうち、決算書や勘定科目内訳明細書は会計ソフトがほぼ自動で作ります。法人事業概況説明書は、手で埋める欄が多い書類です。国税庁の記載要領は「特に記載要領を明らかにしておく必要があると思われる項目のみ」をまとめたもので、社長1人の会社ならではの迷いどころには触れていない部分もあります。

どの書類に当たり、どの版を使うか

法人税の確定申告書には、貸借対照表・損益計算書、勘定科目内訳明細書とともに「事業等の概況に関する書類」を添付します。その様式が法人事業概況説明書です(法人の決算申告で作るもの)。

国税庁の申告書様式のページでは、法人事業概況説明書は「税務署所管法人用」、会社事業概況書は「調査課所管法人用」と分かれています。現行の版は令和6年3月1日以後終了事業年度分です。この改訂で「5 PCの利用状況」の「(7) 電帳法適用状況」と、「20 年末調整関係書類の電子化の状況」が変わりました。

全体に共通する書き方は3つです。

ルール内容
金額の単位千円単位(千円未満切捨て)。「取引金額」欄は百万円単位、「源泉徴収税額」欄は円単位
マイナスの書き方「△」または「-」。「▲」は使わない
提出の仕方ホチキス止めなどをせず、申告書に挟み込む

一人社長が迷う7つの欄

様式の欄は20あります。社長1人・従業員なしの会社で手が止まりやすいのは次の7つです。

4 期末従事員等の状況:代表者家族数に社長は入れない

「常勤役員」の欄には社長自身を数えます。一方、その下の「計のうち代表者家族数」は、期末従事員のうち代表者の家族の人数で、代表者本人は含みません。家族を役員や従業員にしていなければ0人です。同居・別居は問いません。

8 経理の状況:現金と通帳の管理者

「(1) 管理者」には、現金出納と預金通帳の管理責任者の氏名と、代表者との関係(親族か他人か)を書きます。一人会社なら社長本人です。「(2) 試算表の作成状況」は、毎月・おおむね月ごと・決算時のみから選びます。

「(3) 源泉徴収対象所得」には、給与・報酬料金・利子等・配当・非居住者・退職の欄があります。海外在住の外注先に源泉徴収の対象になる支払いがあった年は、「非居住者」に該当の印を付けます(海外在住の外注先に源泉徴収は要る?)。

「(4) 消費税」は当期の課税売上高を千円単位で書き、経理方式を税抜・税込から選びます。売上だけ税抜で経費を税込で処理している場合は、「税抜」を選びます。

3 海外取引状況:輸出入以外の取引もある

海外取引は輸入・輸出だけでなく、「(2) 輸出入以外の海外取引」として手数料、ロイヤルティー、役務の提供、証券の売買、金銭の貸借、不動産の売買の有無を聞いています。海外の取引先から受託している会社(海外向け売上と1,000万円の判定)は、ここを「無」のままにしないよう確認します。取引金額は百万円単位です。

5 PCの利用状況:電帳法の「優良」「一般」「スキャナ」

「(7) 電帳法適用状況」は、過少申告加算税の軽減措置の要件を満たす優良な電子帳簿で保存していれば「優良」、それ以外の電子保存なら「一般」、スキャナ保存をしていれば「スキャナ」に印を付けます。帳簿を電子データで保存していても、優良な電子帳簿の要件を満たしていなければ「一般」です。

10 主要科目:申告調整後の額を書く

主要科目は基本的に決算額ですが、別表四・別表五(一)で加算・減算した科目は、交際費を除き、調整後の額を書きます。交際費は支出額の合計です。個人借入金の欄には、銀行・信用金庫・信用組合以外からの借入金の合計を書くので、社長からの借入金はここに入ります。

11 代表者に対する報酬等の金額:同族会社はすべて書く

同族会社の場合は、代表者に対する「報酬」「貸付金」「仮払金」「賃借料」「支払利息」と、代表者からの「借入金」「仮受金」を千円単位で書きます。社長1人が全株式・全持分を持つ会社は同族会社です。

欄一人会社で金額が入る例
報酬役員報酬の年額
貸付金会社から社長への貸付けの残高(役員貸付金の認定利息)
仮払金精算前の立替え・仮払いの残高
賃借料社長の自宅の一部を会社が借りて払う家賃
支払利息社長からの借入金に会社が払う利息
借入金社長から会社への貸付けの残高(役員借入金の返済と利息)
仮受金内容未確定の入金の残高

10欄の役員報酬と11欄の報酬は、一人会社なら同じ額です。10欄の個人借入金と11欄の借入金も、社長以外に銀行以外からの借入れがなければ同じ額になります。食い違っていれば、どちらかの転記を見直します。

18 月別の売上高等の状況:源泉徴収税額だけ円単位

月ごとに売上(収入)金額、仕入金額、外注費、人件費、源泉徴収税額、従事員数を書きます。人件費には役員に払った給与・賞与を含み、従事員数にも役員を含みます。源泉徴収税額は、人件費に対して源泉徴収して納めるべき税額を円単位で書き、年末調整で精算した月は精算後の額にします。

納期の特例で半年ごとに納めていても、この欄は徴収した月ごとの額です。

売上1,200万円の一人会社で埋めると

設例の会社で、数字が決まる欄を計算エンジンと令和8年分の源泉徴収税額表から埋めました。

10 主要科目(千円)

欄記入する額この設例での出どころ
売上(収入)高12,000税抜売上1,200万円
役員報酬6,480月54万円×12か月
従業員給料(空欄)従業員なし
税引前当期損益2,594売上−経費200万円−役員報酬−会社負担の社会保険料925千円

11 代表者に対する報酬等の金額(千円)

欄記入する額
報酬6,480
貸付金・仮払金・賃借料・支払利息・借入金・仮受金期末残高・年額があれば記入。なければ空欄

18 月別の売上高等の状況(各月の欄)

人件費(千円)源泉徴収税額(円)従事員数(人)
54022,3101

※ 合同会社・東京23区・40歳未満・社長1人(扶養親族等0人)・売上1,200万円・経費200万円・インボイス登録あり。役員報酬は手取り(法人に残る利益を含む)が最大になる月54万円(当サイトの計算エンジン)。源泉徴収税額は令和8年分 源泉徴収税額表 月額表・甲欄で、社会保険料(本人負担 月75,207円)控除後の464,793円から引いた。年末調整の精算がある月は精算後の額を書く。金額は千円未満切捨て

税引前当期損益の2,594千円には、会社負担の社会保険料925千円がすでに引かれています。役員報酬を月54万円から動かすと、10欄・11欄・18欄の3か所が同時に変わります。役員報酬の額そのものは、自分の売上と経費で判定ツールを使うと手取り最大の額が分かります。

16欄と19欄は、自分で申告するなら短くてよい

「16 税理士の関与状況」は、申告書の作成、調査立会、税務相談、決算書の作成、伝票の整理、補助簿の記帳、総勘定元帳の記帳、源泉徴収関係事務について、税理士が関与しているかを選びます。自分で申告する場合は、税理士の欄を空けたまま関与状況を「非該当」にします。「20 年末調整関係書類の電子化の状況」は、16欄の源泉徴収関係事務に「該当」を付けた場合に協力を求める欄です。

「19 当期の営業成績の概要」は、経営状況の変化や経営方針の変更で影響のあった事項を具体的に書く欄です。同じ内容の書類を別に作っていれば、添付して記載を省略できます。前期と売上が大きく変わった年は、理由を1〜2行で書いておくと、数字だけが独り歩きしません。

まとめ

  • 法人事業概況説明書は確定申告書の添付書類で、現行の版は令和6年3月1日以後終了事業年度分
  • 金額は千円単位だが、18欄の源泉徴収税額は円単位、海外取引の取引金額は百万円単位
  • 4欄の代表者家族数に社長本人は入れない。8欄の現金・通帳の管理者は一人会社なら社長本人
  • 11欄には代表者への報酬・貸付金・賃借料などと、代表者からの借入金・仮受金を書く。10欄の役員報酬・個人借入金と突き合わせる
  • 海外への支払いで非居住者の源泉徴収があった年は、8欄(3)の「非居住者」に印を付ける

自分で申告するか税理士に頼むかは、法人化後の手取りにそのまま効きます。税理士報酬を差し引いた実質の差額を、自分の売上と経費で確かめてください。

よくある質問

法人事業概況説明書は、申告書とホチキスで留めて出しますか?

留めません。記載要領は、記載を終えた法人事業概況説明書を他の書類とホチキス止め等をしないで、申告書に挟み込んで提出するよう求めています。

記載すべき金額がマイナスのときはどう書きますか?

「△」または「-」を付けます。「▲」は使わないよう記載要領に書かれています。千円未満を切り捨てた結果、書く金額がなくなった場合や、もともと金額がない場合は空欄のままにします。

会社事業概況書という別の様式もありますが、どちらを使いますか?

国税庁は、法人事業概況説明書を税務署所管法人用、会社事業概況書を調査課所管法人用として分けています。一般的な一人会社は税務署所管として法人事業概況説明書を使うことが多いですが、所管が分からなければ所轄の税務署に確認できます。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。