社会保険

人を雇っている個人事業主は52.4万。従業員5人以上でも飲食業は3割が個人のまま

結論

令和6年経済センサス‐基礎調査では、雇用者のいる個人経営は524,018で、常用雇用者0〜4人が428,489(81.8%)、5人以上が95,529でした。常用雇用者5人以上の事業者(個人・株式会社等・合同会社)に占める個人経営の割合は全産業で11.9%ですが、宿泊業・飲食サービス業は29.0%、医療・福祉は47.5%と高く、建設業は1.2%です。飲食業などは、個人事業所なら従業員が5人以上でも社会保険に入らなくてよい非適用業種で、法人にすると従業員1人目から社会保険がかかります。

  • 常用雇用者0〜4人では事業者の29.0%が個人経営、5〜9人では19.4%、10〜19人では11.0%。規模が大きいほど会社の割合が高い
  • 社会保険が強制になる法定の17業種(建設・物の販売など)は、5人以上の個人経営が少ない。非適用業種の飲食業は、5人以上でも個人のままの事業者が多い
  • 月給30万円の正社員を5人雇う会社なら、健康保険・厚生年金の会社負担は年262万円(40歳未満)。飲食店の法人化は、この負担が判断を左右する

一人で始めた事業も、人を雇うと社会保険の扱いが問題になります。個人事業所なら、従業員が5人未満のうちは社会保険に入らなくてよく、飲食業などは5人以上でも対象外です。法人にすると、従業員1人目から社会保険がかかります。実際に、人を雇っている個人事業主はどれくらいいて、どの業種で個人のまま続けているのか。令和6年経済センサス‐基礎調査で確かめます。

人を雇っている個人事業主は52.4万。8割は4人以下

令和6年の基礎調査は、雇用者のいる個人経営を調査の対象にしていて、雇用者のいない個人経営は数えていません。常用雇用者の規模別に、個人経営と会社の数を並べました。

常用雇用者個人経営(雇用者あり)株式会社等合同会社個人経営の割合
総数524,0181,669,13085,13523.0%
0~4人428,489976,23171,65329.0%
5~9人67,028271,8897,14319.4%
10~19人22,899181,3303,84611.0%
20~29人4,27075,4651,2285.3%
30~49人1,09465,6557861.6%
50~99人20049,5243150.4%

※ 総務省・経済産業省「令和6年経済センサス‐基礎調査」第1表(e-Stat、2024年6月1日現在)から当サイトが計算。個人経営は雇用者のいる個人経営のみ。株式会社等は株式会社・有限会社・相互会社。会社の0〜4人には常用雇用者0人(役員だけ)の会社を含む

人を雇っている個人事業主は52.4万で、そのうち81.8%は常用雇用者4人以下です。5人以上は9.6万、10人以上は2.9万で、規模が大きくなるほど会社の割合が高くなります。

5人以上の事業者に占める個人は、業種で大きく違う

常用雇用者5人以上の事業者に限って、個人経営の割合を産業別に出しました。

産業個人経営(雇用者あり)うち常用雇用者5人以上5人以上の事業者に占める個人0〜4人の事業者に占める個人
全産業524,01895,52911.9%29.0%
医療、福祉93,44633,47547.5%74.9%
宿泊業、飲食サービス業113,92118,91529.0%71.9%
学術研究、専門・技術サービス業46,8367,51219.6%29.1%
卸売業、小売業101,77321,30112.6%25.8%
生活関連サービス業、娯楽業62,2903,25810.9%62.2%
サービス業(他に分類されないもの)11,7857751.5%17.6%
建設業30,9641,5131.2%13.7%

※ 出典は上の表と同じ。5人以上の事業者は個人経営・株式会社等・合同会社の合計

宿泊業・飲食サービス業では、常用雇用者5人以上の事業者の29.0%が個人経営です。卸売業・小売業(12.6%)の2倍以上で、建設業(1.2%)とは比べものになりません。

飲食業は、個人なら5人以上でも社会保険の対象外

この差には、社会保険の適用のルールが関係していると考えられます。個人事業所が常時5人以上を使うとき、社会保険が強制になるのは法律で定める17業種(製造、土木・建設、運送、物の販売、金融・保険、医療、社会福祉、士業など)に限られます。飲食サービス業・宿泊業・理美容業・農林漁業などは非適用業種で、5人以上でも対象外です(個人事業所の社会保険の適用拡大)。

建設業や卸売業・小売業では、5人以上になると個人でも社会保険に入る義務があり、会社にしても負担はあまり変わりません。飲食業では、個人のままなら5人以上でも社会保険の会社負担がなく、法人にすると1人目から負担が生じます。法人化で増える負担が大きい業種ほど、規模が大きくても個人のままでいる事業者が多い、という形が統計に出ています。

医療・福祉の47.5%は別の理由です。医療は法定業種なので、個人の診療所でも5人以上なら社会保険は強制です。それでも個人が多いのは、診療所を法人にするには医療法人でなければならないなど、業種固有の制約があるためと考えられます(診療所の医療法人化の推移)。

なお、非適用業種の解消を定めた年金制度改正法により、2029年10月以後に開業する個人事業所は、飲食業などでも常時5人以上なら強制適用になります。施行時に存在する事業所は当分の間対象外です。

従業員5人なら、会社負担は年262万円

法人化した飲食店が、月給30万円の正社員を雇う場合の社会保険料の会社負担を計算しました。

正社員の人数会社負担(40歳未満)会社負担(40〜64歳)
1人52.4万円55.3万円
3人157.1万円165.9万円
5人261.9万円276.5万円

※ 月給30万円(標準報酬月額30万円)・協会けんぽ東京支部・令和8年度の料率。健康保険・介護保険・厚生年金・子ども・子育て拠出金の会社負担。雇用保険・労災保険は含まない/当サイトの計算エンジンで1人分を計算して人数を掛けた

個人事業所の飲食店のままなら、5人以上でもこの負担はありません。法人化で社長自身の手取りが年数十万円増えても、従業員の社会保険料が年200万円を超えて加われば、結論は逆転します。1人目を雇う費用の全体は一人社長が初めて従業員を雇う費用で整理しています。

従業員がいるなら、社長の分と合わせて比べる

判定ツールは、社長1人の会社を前提に、社長の役員報酬にかかる社会保険料で比べています。従業員を雇っているなら、法人化で新たにかかる従業員の社会保険料の会社負担を、経費に上乗せして考えてください。社長の社会保険料が報酬ごとにいくらになるかは一人社長の社会保険料にまとめています。計算の前提は計算方法で確かめられます。

まとめ

  • 令和6年経済センサスで、人を雇っている個人事業主は52.4万。81.8%は常用雇用者4人以下、5人以上は9.6万
  • 常用雇用者5人以上の事業者に占める個人経営は全産業11.9%。宿泊業・飲食サービス業29.0%、建設業1.2%
  • 飲食業などは個人なら5人以上でも社会保険の対象外で、法人化で増える負担が大きい業種ほど個人のまま続ける事業者が多い
  • 医療・福祉(47.5%)は、医療法人でしか法人化できない業種固有の制約による
  • 月給30万円の正社員5人なら会社負担は年262万〜277万円。従業員がいる人は、その分を加えて法人化を判断する

よくある質問

経済センサスの「常用雇用者5人以上」は、社会保険の「常時5人以上」と同じですか。

同じではありません。経済センサスの常用雇用者は、期間を定めずに雇っている人や1か月以上の期間で雇っている人の数です。社会保険の「常時5人以上」は、適用事業所かどうかを判定するための使用人数で、数え方の基準が違います。統計の規模は目安として読む必要があります。

飲食店でも、従業員を社会保険に入れなければならない場合はありますか。

法人の飲食店は、従業員の人数にかかわらず適用事業所です。個人の飲食店は、今は常時5人以上でも対象外ですが、2029年10月以後に開業する事業所は5人以上で強制適用になります。施行時に存在する事業所は当分の間対象外とされています。

医療・福祉で個人経営の割合が高いのはなぜですか。

医療は社会保険の法定業種で、個人の診療所でも常時5人以上なら強制適用です。それでも個人が多いのは、診療所を法人にするには医療法人でなければならず、株式会社にはできないといった、業種固有の制約があるためと考えられます。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。