税金の基礎

小さい会社の法人税負担率38.6%は誤解のもと。1社の実額は24.4%

結論

財務省の法人企業統計(2025年度)で、資本金1千万円未満の会社の法人税・住民税・事業税の合計は税引前当期純利益の38.6%でした。ただしこれは赤字の会社の損失と黒字の会社の利益を足し合わせた合計で割った比で、1社の負担率ではありません。同じ階級の1社あたり税引前利益230.6万円を計算エンジンにかけると、法人税等は56万2,400円で負担率は24.4%です。

  • 比が高く出る理由は2つ。赤字の会社の損失が分母を小さくすること、赤字の会社も均等割を払うこと
  • 資本金1千万円未満の221.3万社が均等割の最低額7万円を払うと約1,549億円で、この階級の法人税等の7.9%にあたる
  • 同じ比は2010年度に208.6%、2009年度は合計が赤字で計算できない。税率ではなく、赤字と黒字の混ざり方を映す数字

「中小企業は大企業より法人税の負担率が高い」という話を見かけることがあります。根拠にされやすいのが、財務省の法人企業統計で法人税等を税引前利益で割った数字です。実際に計算すると、資本金1千万円未満の会社は2025年度に38.6%、資本金10億円以上は**17.0%**でした。けれども、この比は1社が負っている税率ではありません。法人化を考える人がこの数字を自分の負担と受け取ると、見積もりを大きく誤ります。

統計の比は、規模が小さいほど高く見える

法人企業統計は、会社の損益計算書から税引前当期純利益と「法人税、住民税及び事業税」を集め、資本金の階級ごとに合計した推計値を出しています。合計どうしの比を2025年度で計算すると、次のようになります。

資本金1社あたり税引前当期純利益1社あたり法人税等法人税等÷税引前当期純利益均等割7万円×社数が法人税等に占める割合
1千万円未満230.7万円89.2万円38.6%7.9%
1千万〜2千万円1,361.4万円491.6万円36.1%1.4%
2千万〜5千万円4,314.5万円1,414万円32.8%0.5%
5千万〜1億円11,495.3万円4,398.8万円38.3%0.2%
1億〜10億円74,412.1万円22,075.4万円29.7%0.0%
10億円以上1,679,880.9万円286,331万円17.0%0.0%
全規模4,046.8万円948.8万円23.4%0.7%

※ 財務省「法人企業統計調査」時系列データ(年次別・金融業、保険業以外の業種・原数値)から当サイトが計算。右端は、全社が均等割の最低額(年7万円)を払ったと仮定した額の割合

資本金1億円以下はどの階級も30%台です。一方、資本金1千万円以下の会社の法人税の軽減税率は、所得800万円以下の部分で15%です(国税庁 No.5759)。地方税を足しても、黒字の会社1社の負担が利益の40%近くになるのは、利益が数十万円しかない場合に限られます(後の表)。

理由1:赤字の会社の損失が、分母を小さくする

統計の税引前当期純利益は、黒字の会社の利益から赤字の会社の損失を差し引いた合計です。ところが法人税は、黒字の会社だけが利益に応じて払います。赤字の会社の損失は、黒字の会社の税額を減らしてはくれません。

単純な例で考えます。2社のうち、A社は利益1,000万円で法人税等を246万9,200円払い(後の表の計算)、B社は800万円の赤字で均等割7万円だけを払ったとします。2社の合計の税引前利益は200万円、法人税等は253万9,200円で、比は127.0%になります。A社の負担率は24.7%のままです。

資本金の小さい会社ほど赤字の会社の割合が高いので、この効果は大きく出ます。国税庁の会社標本調査では、欠損法人の割合は資本金の小さい階級ほど高くなっています(「法人の6割が赤字」は本当か)。

理由2:赤字でも均等割を払う

もう1つは、利益がなくてもかかる法人住民税の均等割です。資本金等の額1,000万円以下・従業者50人以下の法人の均等割は、標準税率で道府県民税2万円と市町村民税5万円の年7万円です。

資本金1千万円未満の221.3万社がすべてこの最低額を払ったとすると、合計は約1,549億円で、この階級の法人税等1兆9,736億円の**7.9%**にあたります。資本金10億円以上では、同じ計算をしても0.0%です。均等割は、小さい会社の統計上の負担率だけを押し上げる固定費です。赤字の年にもかかる仕組みは法人住民税の均等割は赤字でも7万円で扱っています。

年度によっては200%を超える

この比が税率ではないことは、推移を見るとはっきりします。

年度1社あたり税引前当期純利益1社あたり法人税等法人税等÷税引前当期純利益
2000年度34万円40.1万円117.9%
2005年度71.5万円39.9万円55.8%
2009年度-45.8万円34.7万円計算できない(合計が赤字)
2010年度20.8万円43.3万円208.6%
2015年度155.3万円55.2万円35.5%
2020年度139.6万円58.9万円42.2%
2022年度241万円72.6万円30.1%
2023年度223.4万円81.3万円36.4%
2024年度201.7万円90.8万円45.0%
2025年度230.7万円89.2万円38.6%

※ 資本金1千万円未満。財務省「法人企業統計調査」時系列データから当サイトが計算

2010年度は208.6%、2009年度は合計の税引前利益が赤字で、比そのものが計算できません。1社あたりの法人税等は34万〜91万円の範囲でなだらかに動いているのに、比が大きく振れるのは分母のほうが動くからです。赤字の会社がどれだけ損を出したかで比が上下するので、景気の悪い年ほど「負担率」は高く見えます。

1社で計算すると、230.6万円の利益に24.4%

では、黒字の会社1社の負担はどのくらいか。計算エンジンで、税引前利益ごとに法人税・地方法人税・法人住民税・法人事業税・特別法人事業税を出しました。

税引前利益法人税等の合計うち均等割税引前利益に対する負担率
0万円70,000円70,000円—
50万円176,400円70,000円35.3%
100万円283,400円70,000円28.3%
230.6万円562,400円70,000円24.4%
300万円710,500円70,000円23.7%
500万円1,152,400円70,000円23.0%
800万円1,847,600円70,000円23.1%
1,000万円2,469,200円70,000円24.7%
2,000万円5,827,600円70,000円29.1%

※ 計算エンジン(資本金1千万円以下・均等割は標準の7万円)。230.6万円は資本金1千万円未満の1社あたり税引前当期純利益(2025年度)に近い値

統計の1社あたり税引前利益とほぼ同じ230.6万円の会社なら、負担率は**24.4%**です。統計の比38.6%との差の14ポイントは、税率の差ではなく、赤字の会社との相殺と均等割から生まれています。

負担率は利益300万〜800万円で23%前後と最も低く、800万円を超えると軽減税率の範囲を出るため上がり始めます。利益が小さいときに率が高いのは均等割が固定額だからで、利益50万円なら35.3%です。利益別の実効税率の詳しい計算は法人税は15%では済まないにまとめています。

法人化の判定に使う数字はどちらか

法人化で問題になるのは、自分の会社に残す利益にかかる税です。統計の38.6%を当てはめると、法人に利益を残すことの負担を1.5倍以上に見積もり、法人化が実際より不利に見えます。

逆に「法人税は15%」とだけ覚えていると、地方税と均等割の分を見落とします。判定ツールは、役員報酬を決めたあとに会社に残る利益について、均等割を含めた法人税等をこの表と同じ方法で計算しています。統計の平均ではなく、自分の売上と経費から出る利益で比べてください。

まとめ

  • 資本金1千万円未満の会社の「法人税等÷税引前当期純利益」は2025年度で38.6%、資本金10億円以上は17.0%
  • この比は1社の税負担率ではない。赤字の会社の損失が分母を小さくし、赤字でも払う均等割が分子に入る
  • 均等割の最低額7万円を全社が払うと約1,549億円で、資本金1千万円未満の法人税等の7.9%にあたる
  • 同じ比は2010年度に208.6%、2009年度は計算不能。景気が悪いほど高く見える
  • 1社あたり税引前利益230.6万円の会社を計算エンジンで計算すると負担率は24.4%

法人に利益を残したときの税は、自分の利益の水準で計算すると統計の印象と大きく違います。判定ツールで、自分の売上と経費から確かめてください。

よくある質問

法人企業統計の「法人税、住民税及び事業税」には何が含まれますか。

その事業年度の利益に対してかかる法人税・地方法人税・法人住民税(法人税割と均等割)・法人事業税(所得割など)を、損益計算書に計上した額です。税効果会計の法人税等調整額は別の項目になっています。

大企業の比が17.0%と低いのはなぜですか。

この統計の比は税率そのものではないので、低い理由を1つには絞れません。大企業は赤字の会社の比重が小さく、均等割の重みもほぼゼロです。そのうえ、受取配当の益金不算入や税額控除の影響が大きく、海外子会社からの配当なども利益に含まれます。

法人化した後の自分の税負担は、どの数字で見ればよいですか。

統計の比ではなく、自分の会社に残る見込みの利益で計算します。資本金1千万円以下・所得800万円以下なら、法人税の軽減税率15%に地方税を加えて利益の23〜25%前後で、利益が小さいほど均等割の重みで率が上がります。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。