税金の基礎

土地・建物を売ったときの税は個人と法人どちらが軽い?所有5年で逆転

結論

個人が所有5年超の土地・建物を売ると、譲渡益に所得税・住民税あわせて20.315%の分離課税です(国税庁No.3208)。法人で持って売ると本業の利益と合算され、東京23区で譲渡益1,000万円なら本業の利益0円の会社で239.9万円、800万円の会社で330.8万円で、個人の長期203.2万円より重くなります。逆に所有5年以下なら個人は39.63%で396.3万円となり、法人のほうが軽くなります。

  • 個人の譲渡損は他の土地・建物の譲渡益からしか引けず、事業所得や給与所得とは通算できない(国税庁No.3203、居住用の特例を除く)。法人なら本業の利益と相殺できる
  • 本業の利益1,500万円の会社で不動産の譲渡損1,000万円が出ると、東京23区で税は約300万円減る
  • 法人の土地譲渡益に追加で課税する重課制度は、令和11年3月31日まで適用が停止されている

不動産を個人で持つか、会社で持つかは、毎年の賃料収入の税だけで比べられがちです。ところが売ったときの課税の仕組みは、個人と法人でまったく違います。個人は他の所得と切り離した分離課税、法人は本業の利益と一緒に課税されます。

どちらが軽いかは、所有期間と、会社の本業の利益で入れ替わります。

個人は分離課税、法人は合算課税

国税庁によると、個人が土地や建物を売ったときの譲渡所得は、事業所得や給与所得と分けて税額を計算します(No.3202)。譲渡所得は、売却代金から取得費と譲渡費用を引いた額です。

個人法人
課税のしかた他の所得と分ける(分離課税)本業の利益と合算
所有期間5年超所得税15%+住民税5%(復興特別所得税を含め20.315%)区分なし
所有期間5年以下所得税30%+住民税9%(同39.63%)区分なし
所有期間の判定譲渡した年の1月1日時点—
譲渡損他の土地・建物の譲渡益から引くだけ。他の所得とは通算できない本業の利益と相殺できる

※ 国税庁No.3202・No.3208・No.3211・No.3203。法人の土地譲渡益の重課制度は令和11年3月31日まで適用停止(埼玉県の案内)

個人の税率は、譲渡益の額に関係なく一定です。法人の税率は、本業の利益と合わせた所得の水準で決まります。所得800万円までの軽減税率と、地方税を含めた実際の負担の水準は法人税15%は実質17.6%で整理しています。

譲渡益別に税額を比べる

譲渡益の額と、法人の本業の利益の組み合わせで計算しました。法人の欄は、譲渡益がない場合と比べて増える税の額です。

譲渡益個人・長期(5年超)個人・短期(5年以下)法人・本業の利益0円法人・本業の利益500万円法人・本業の利益800万円
300万円609,450円1,188,900円640,500円695,200円957,100円
1,000万円2,031,500円3,963,000円2,399,200円2,995,800円3,308,200円
3,000万円6,094,500円11,889,000円9,115,800円9,712,500円10,024,500円
5,000万円10,157,500円19,815,000円15,832,200円16,429,000円16,741,100円

※ 個人は譲渡益×20.315%(長期)・39.63%(短期)。特別控除は考慮しない ※ 法人は東京23区・資本金1,000万円以下の中小法人。法人税・地方法人税・法人住民税・事業税・特別法人事業税の増加額で、当サイトの計算エンジンで算出 ※ 計算は scripts/fudosan-baikyaku-kojin-houjin.mjs による

所有5年超なら、どの組み合わせでも個人のほうが軽くなります。法人の税率は所得800万円までの軽減税率を使い切ると上がり、譲渡益が大きくなるほど、増える税の割合は33%台に近づきます。本業の利益0円の会社でも、譲渡益3,000万円では30.4%で、個人の20.315%を大きく上回ります。

所有5年以下なら逆です。個人の39.63%に対し、法人は本業の利益800万円の会社でも33%台に収まります。

法人の税は「会社に残るまで」の税

表の法人の税額は、売却代金が会社に残る段階までの税です。そのお金を社長個人が使うには、役員報酬・役員退職金・配当などで受け取る必要があり、そこでもう一度個人の税がかかります。会社に残した利益を引き出すときの負担の考え方は法人に残した利益は、退職金で引き出すと負担率3%で計算しています。

逆に、売却代金を会社の事業や次の不動産に再投資するなら、引き出さない分の個人の税は発生しません。比べるときは、売った後のお金をどこで使うかまで決めておく必要があります。

損が出たときは、法人のほうが取り戻せる

値下がりした不動産を売って譲渡損が出た場合、扱いの差はもっと大きくなります。

個人の譲渡損は、同じ年の他の土地・建物の譲渡益から引けるだけで、引ききれない分を事業所得や給与所得と通算することはできません(No.3203)。居住用財産の一定の特例を除き、損は切り捨てです。

法人なら、譲渡損はその期の損金で、本業の利益と相殺されます。本業の利益1,500万円の会社で譲渡損1,000万円が出ると、東京23区で税は414.8万円から115.2万円へ、約300万円減ります。赤字が残れば、欠損金として翌期以降に繰り越すことも、前期に繰り戻して還付を受けることもできます(赤字の年に前期の法人税が戻る)。

個人で売ると、翌年の国保も上がる

個人事業主が個人で売ると、税とは別に、翌年の国民健康保険料が上がります。分離課税の譲渡所得も国保の所得割の計算には入るためです。事業所得との組み合わせで最大年79.5万円増える計算は土地や建物を売った翌年の国保は上限まで跳ねるで扱いました。一人社長で協会けんぽに入っていれば、保険料は変わりません。

法人化と、不動産の持ち方の判断

個人で持っている不動産を、法人化を機に会社へ移す場合は、移す段階で登録免許税・不動産取得税と、個人側の譲渡所得の税がかかります(法人成りで建物・土地を法人名義に)。将来売る予定がある不動産を、売るときの税率だけを理由に会社へ移すと、移す段階の税が先に出ていきます。

判断の順番は、まず本業の法人化の損得を判定ツールで自分の売上と経費から確かめ、そのうえで不動産を個人に残すか会社へ移すかを、所有期間と売却の時期から比べることです。売却の時期と金額が具体的なら、個別の条件で税理士に確認する価値があります。

まとめ

  • 個人の土地・建物の譲渡益は分離課税で、所有5年超なら20.315%、5年以下なら39.63%。所有期間は譲渡した年の1月1日で判定する
  • 法人は本業の利益と合算。譲渡益1,000万円なら、東京23区で本業の利益0円の会社239.9万円、800万円の会社330.8万円
  • 所有5年超なら個人のほうが軽く、5年以下なら法人のほうが軽い。法人の税は会社に残るまでの税で、引き出すときに個人の税がもう一度かかる
  • 個人の譲渡損は他の所得と通算できない。法人なら本業の利益と相殺でき、1,000万円の損で約300万円の税が減る
  • 不動産を会社へ移すには、移す段階の税がかかる。売却の予定と所有期間を先に確かめてから持ち方を決める

よくある質問

所有期間の5年は、いつ時点で数えますか。

個人の場合は、譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えるかで判定します(国税庁No.3202)。たとえば2020年5月に取得した不動産は、2025年中に売ると1月1日時点の所有期間が4年7か月で短期、2026年1月1日以後に売ると長期になります。

法人の場合、所有期間で税率は変わりますか。

法人の譲渡益は本業の利益と合算して法人税等の税率がかかり、所有期間による区分はありません。土地の譲渡益に追加課税する重課制度はありますが、令和11年3月31日まで適用が停止されています。

法人が売って残ったお金を社長が使うには、さらに税がかかりますか。

会社のお金を個人に移すには、役員報酬・役員退職金・配当などの形を取ることになり、その段階で個人の所得税・住民税がかかります。比較表の法人の税額は、会社に残る段階までの税です。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。