社会保険

土地や建物を売った翌年の国保は上限まで跳ねる。最大年79.5万円増、一人社長は0円

結論

土地・建物の譲渡所得は分離課税ですが、国保の所得割の算定には特別控除後の譲渡所得が入ります。東京23区・40〜64歳・事業所得300万円の個人事業主なら、特別控除後の譲渡所得300万円で翌年度の国保が年39万300円、1,000万円で年79万5,335円増え、上限113万円に張り付きます。居住用財産の3,000万円特別控除で譲渡所得が0になれば影響はありません。協会けんぽに入る一人社長の健康保険料は役員報酬だけで決まるので、譲渡所得では1円も変わりません。

  • 新宿区の案内では、長期・短期譲渡所得は特別控除適用後の金額で国保の所得割の基礎に入る
  • 国保は上限(賦課限度額)があるため、事業所得が大きい人ほど増え方は小さく、事業所得900万円なら東京23区で年5万4,991円
  • 増えるのは売った年の翌年度の1年分。翌々年度は譲渡所得がなければ元に戻る

土地や建物を売って利益が出た年、所得税と住民税は分離課税で計算されるので、事業の所得とは別の話だと思われがちです。しかし個人事業主の場合、もう1つ見落としやすい負担があります。翌年度の国民健康保険料です。

譲渡所得は特別控除後の額で国保に入る

国保の所得割は、前年の「総所得金額等」から基礎控除43万円を引いた額に料率を掛けて計算します。新宿区の案内では、この総所得金額等に、申告分離課税の所得として**長期・短期譲渡所得の金額(特別控除適用後)**が含まれるとしています。岡山市も、国保の所得割の部分には所得税・住民税で選んだ特別控除が適用されると案内しています。

つまり、マイホームを売って3,000万円の特別控除を使い、譲渡所得が0になれば国保は増えません(国税庁 No.3302)。一方、投資用の土地や、控除を使っても所得が残る売却では、その所得が翌年度の国保に乗ります。

なお岡山市は、保険料の軽減(低所得世帯の均等割の軽減)の判定には特別控除前の譲渡所得を使うので、軽減が受けられないことがあると注意しています。

事業所得と譲渡所得の組み合わせ別の増加額

計算エンジンで、事業所得に特別控除後の譲渡所得を足して、翌年度の国保を出しました。

東京23区・40〜64歳

事業所得(青色控除前)譲渡所得なし+300万円+500万円+1,000万円+2,000万円
300万円334,665円724,965円(+390,300円)969,209円(+634,544円)1,130,000円(+795,335円)1,130,000円(+795,335円)
500万円594,865円969,209円(+374,344円)1,125,957円(+531,092円)1,130,000円(+535,135円)1,130,000円(+535,135円)
700万円855,065円1,125,957円(+270,892円)1,130,000円(+274,935円)1,130,000円(+274,935円)1,130,000円(+274,935円)
900万円1,075,009円1,130,000円(+54,991円)1,130,000円(+54,991円)1,130,000円(+54,991円)1,130,000円(+54,991円)

東京23区・40歳未満

事業所得(青色控除前)譲渡所得なし+300万円+500万円+1,000万円+2,000万円
300万円270,209円587,609円(+317,400円)799,209円(+529,000円)960,000円(+689,791円)960,000円(+689,791円)
500万円481,809円799,209円(+317,400円)955,957円(+474,148円)960,000円(+478,191円)960,000円(+478,191円)
700万円693,409円955,957円(+262,548円)960,000円(+266,591円)960,000円(+266,591円)960,000円(+266,591円)
900万円905,009円960,000円(+54,991円)960,000円(+54,991円)960,000円(+54,991円)960,000円(+54,991円)

大阪市・40〜64歳

事業所得(青色控除前)譲渡所得なし+300万円+500万円+1,000万円+2,000万円
300万円407,905円871,105円(+463,200円)1,085,005円(+677,100円)1,120,000円(+712,095円)1,120,000円(+712,095円)
500万円716,705円1,085,005円(+368,300円)1,116,817円(+400,112円)1,120,000円(+403,295円)1,120,000円(+403,295円)
700万円1,022,903円1,116,817円(+93,914円)1,120,000円(+97,097円)1,120,000円(+97,097円)1,120,000円(+97,097円)
900万円1,114,017円1,120,000円(+5,983円)1,120,000円(+5,983円)1,120,000円(+5,983円)1,120,000円(+5,983円)

※ 単身・青色申告特別控除65万円・令和8年度の料率(子ども・子育て支援金分を含む)。全国平均の概算・40〜64歳・事業所得300万円では、譲渡所得1,000万円で+785,675円。表は scripts/fudosan-baikyaku-kokuho.mjs で再生成できる

東京23区・40〜64歳で事業所得300万円の人は、譲渡所得が1,000万円あれば国保が上限の113万円に張り付き、年79万5,335円増えます。譲渡所得をそれ以上増やしても、上限で止まるので国保は増えません。

事業所得が大きい人ほど、もともと国保が上限に近いので増え方は小さくなります。事業所得900万円なら、譲渡所得がいくらでも増加は年5万4,991円です(国保の上限に届く所得)。

協会けんぽの一人社長は保険料が変わらない

法人化して協会けんぽに入っている一人社長の健康保険料は、標準報酬月額(役員報酬)と標準賞与額だけで決まります。社長個人の名義の不動産を売って譲渡所得が出ても、健康保険料・厚生年金保険料は変わりません。所得税・住民税の分離課税は個人事業主と同じようにかかります。

不動産の売却で国保が跳ねるのは1年だけですが、事業所得300万〜500万円の人なら数十万円の負担になります。株の譲渡益を申告したときと同じ構造です(株の譲渡益を確定申告すると国保が上がる)。

法人化の判断との関係

国保とは別に、売ったときの税そのものも個人と法人で仕組みが違います。所有期間と会社の利益で、どちらが軽くなるかは土地・建物を売ったときの税は個人と法人どちらが軽い?で比べています。

1回きりの不動産の売却のために法人化する、という判断は現実的ではありません。会社を作る費用と毎年の固定費(均等割・税理士報酬)がかかり続けるからです。ただし、すでに法人化を検討していて、近いうちに個人名義の土地を売る予定がある人は、売る年が国保の年か協会けんぽの年かで翌年度の負担が変わることを知っておく価値があります。

65歳以上の人は、譲渡所得が介護保険料の所得段階の判定にも使われます(65歳以降の介護保険料)。国保の自治体ごとの料率は国民健康保険料の自治体比較で確かめられます。

まとめ

  • 土地・建物の譲渡所得は、特別控除後の金額が翌年度の国保の所得割に入る
  • 東京23区・40〜64歳・事業所得300万円なら、譲渡所得300万円で国保+39万円、1,000万円で+79.5万円(上限113万円)
  • 居住用の3,000万円特別控除で譲渡所得が0になれば、国保は増えない
  • 軽減の判定には特別控除前の譲渡所得を使う自治体がある
  • 協会けんぽに入る一人社長の健康保険料は、譲渡所得では変わらない

よくある質問

家を売ったら国民健康保険料は上がりますか。

譲渡所得が出れば、特別控除後の金額が翌年度の国保の算定に入ります。マイホームの売却で3,000万円の特別控除を使い、譲渡所得が0になれば国保は増えません。控除を使っても所得が残れば、その分だけ増えます。

譲渡所得で国保が上がるのは何年間ですか。

国保は前年の所得で計算するため、売った年の翌年度の1年分です。翌々年度の保険料は、その年に譲渡所得がなければ元の水準に戻ります。

法人化していれば影響はありませんか。

社長個人の名義の不動産を売った場合、協会けんぽの健康保険料は役員報酬で決まるため変わりません。所得税・住民税は個人として課税されます。会社の名義の不動産を売った場合は、売却益が法人の所得になり法人税等がかかります。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。