インボイス・消費税

インボイスの本名公表は法人化で消える?代わりに出るのは住所

結論

インボイス登録した個人事業主は、公表サイトに氏名(本名、または選べば旧姓)が必ず載り、住所は載りません。法人化して法人で登録すると、載るのは法人名と本店所在地で、社長の本名は公表事項から外れます。ただし本店が自宅なら自宅の住所が出ます。個人で登録していた番号は失効後も7年間、本名と一緒に掲載が続きます。

  • 個人事業者の公表事項は氏名・登録番号・登録年月日・取消(失効)年月日。屋号と事務所の所在地は本人が申し出た場合だけ公表され、住所は公表されない
  • 法人の公表事項は法人名・本店所在地・登録番号・登録年月日。本店所在地は申出に関係なく公表される
  • 取消・失効した登録も7年間は公表サイトに残る。法人成りしても、個人の本名と番号がすぐに消えるわけではない

個人事業主がインボイスに登録すると、国税庁の公表サイトで、登録番号から本名を確認できるようになります。ペンネームや屋号で活動しているライター、デザイナー、配信者にとっては、取引先に本名を知られること自体が負担になり得ます。

法人化すれば本名は出なくなる、という話も耳にします。半分は正しく、半分は違います。 法人化で公表サイトから本名は外れますが、代わりに必ず公表されるものがあります。

個人事業主は「氏名」が必ず載り、住所は載らない

国税庁の「適格請求書発行事業者公表サイトの運営方針」は、公表事項を次のように定めています。個人事業者と法人で、必ず載るものと、申し出たときだけ載るものが違います。

公表事項個人事業者法人
氏名または名称必ず公表(本名。選べば旧姓・通称)必ず公表(法人名)
登録番号必ず公表必ず公表
登録年月日・取消(失効)年月日必ず公表必ず公表
本店または主たる事務所の所在地申し出た場合だけ公表必ず公表
屋号申し出た場合だけ公表—(法人名そのもの)
住所(自宅)公表されない—(本店が自宅なら所在地として出る)
代表者の氏名公表事項ではない

出典:国税庁「適格請求書発行事業者公表サイトの運営方針」「公表サイトに関するよくある質問」

国税庁のよくある質問は、個人事業者について「住所は公表されません」と明記しています。屋号(ペンネーム等)も、本人が申し出なければ公表されず、公表サイトの情報で屋号と氏名が直接結びつくことはないとしています。

ただし、公表サイトは請求書に書かれた登録番号から検索する仕組みです。請求書に登録番号を印字して取引先に渡せば、取引先は番号からあなたの本名を確認できます。屋号で請求書を出していても、番号の先には本名があります。

本名の代わりに出せるのは旧姓だけ

個人事業者が氏名の代わりに公表できるのは、住民票に記載された旧姓(外国人住民は通称)だけです。国税庁は、婚姻で姓が変わった人が仕事上の旧姓を公表し続ける手続きを案内しています。ペンネームや屋号を氏名の代わりに載せることはできません。

法人化すると、本名が外れて本店所在地が出る

法人で登録した場合の公表事項は、法人名・本店所在地・登録番号・登録年月日です。代表者の氏名は公表事項に含まれていません。取引先が登録番号から確認できるのは、法人名と本店の所在地だけになります。

その代わり、個人事業者なら申し出ない限り出なかった「所在地」が、法人では必ず公表されます。本店を自宅に置いた一人会社なら、自宅の住所が公表サイトに載ることになります。

つまり法人化は、プライバシーを守る方向に一方的に働くわけではありません。守られるものと、新たに出るものが入れ替わります。

個人事業主のまま登録法人化して法人で登録
本名公表サイトに出る公表サイトには出ない
自宅の住所出ない本店が自宅なら出る
屋号・法人名申し出なければ出ない法人名が出る

本名は登記簿には残る

公表サイトから本名が外れても、会社の代表者の氏名は商業登記簿に記録されます。商業登記法10条は「何人も、手数料を納付して」登記事項証明書の交付を請求できるとしています。取引先が調べようと思えば、法人名から代表者の本名にたどり着けます。

登記簿に載る代表者の住所は、株式会社なら2024年10月からの住所非表示措置で隠せますが、合同会社は対象外です。この違いは社長の住所を登記簿で隠す制度は、合同会社には使えないで整理しています。

個人の登録は、失効しても7年間残る

法人成りして個人事業を廃止すると、個人の登録は失効します。ただし、失効した瞬間に公表サイトから消えるわけではありません。

運営方針は、過去の取引の時点で取引先が登録していたかを確認できるよう、登録の取消や失効があった場合でも「取消・失効後7年間」は事業者の情報と取消・失効年月日を掲載し、7年経過後に削除するとしています。

法人成りした年に失効した個人の登録は、その後7年間、本名と登録番号の組み合わせで公表サイトに残ります。すでに個人で登録している人にとって、法人化は本名を今すぐ消す手段にはなりません。これから新たに登録する人が、最初から法人で登録する場合に初めて、本名が公表サイトに出ない状態を作れます。

法人成りすると登録番号が変わり、法人として新たに登録申請が要ります。その手順は法人成りでインボイス番号は変わるで扱っています。

本名を理由に法人化すると、毎年いくらの差になるか

本名を公表サイトから外すことだけを目的に法人化する場合、税金と社会保険料の差がそのまま「その目的のための費用」または「おまけの得」になります。当サイトの計算エンジンで、インボイス登録済みの前提で出した差額は次のとおりです。

売上単身・2年目以降単身・初年度配偶者あり・2年目以降配偶者あり・初年度
800万円−37.6万円−47.6万円−23.0万円−33.0万円
1,000万円−24.1万円−34.1万円−8.4万円−18.4万円
1,200万円−14.7万円−24.7万円−1.4万円−11.4万円
1,400万円−6.6万円−16.6万円+12.7万円+2.7万円
1,600万円+13.7万円+3.7万円+33.0万円+23.0万円

※ 経費200万円、東京23区・40歳未満・インボイス登録済み・青色申告(e-Tax)・合同会社・最適役員報酬。税理士報酬の差(年20万円)を控除後、初年度は設立費用10万円も控除。配偶者ありは扶養に入る前提/2026年(令和8年)分基準。スクリプト:scripts/invoice-kohyo-honmyo.mjs

売上800万円・単身なら、本名を公表サイトから外すために毎年37.6万円を払う計算です。売上1,000万円でも毎年24.1万円かかります。一方、この表では単身なら売上1,600万円、配偶者ありなら1,400万円の行から法人化そのものが得になり、本名の件はおまけになります。

売上が小さいうちは、本名の公表を避ける方法として法人化は割高です。旧姓を使える人は旧姓の公表、そうでない人は登録するかどうかの判断そのものが先に来ます。登録をやめる場合の手続きと期限はインボイス登録をやめるにはにまとめています。

名前で検索されない仕組みと、ダウンロードデータ

公表サイトの検索は、登録番号でしかできません。国税庁は、氏名や法人名から検索できない理由を、請求書に書かれた番号が有効かを確かめるためのサイトだからだと説明しています。

公表サイトには、全件のデータをまとめて取得できるダウンロード機能もあります。国税庁のよくある質問によれば、このダウンロードデータからは個人事業者の氏名・屋号・所在地・旧姓などが削除されています。法人は名称と本店所在地が含まれます。

法人の本店所在地は、インボイスとは別に、法人番号公表サイトでも公表されています。公表サイトの検索結果から法人番号公表サイトへ直接移れる仕組みもあります。法人の名称と所在地は、インボイス登録の有無にかかわらず公開情報になると考えておく必要があります。

まとめ

  • 個人事業主は公表サイトに本名(または旧姓)が必ず載る。住所は載らず、屋号と所在地は申し出たときだけ
  • 法人で登録すると本名は公表事項から外れるが、法人名と本店所在地が必ず載る。本店が自宅なら自宅の住所が出る
  • 代表者の本名は商業登記簿に残り、登記事項証明書は誰でも請求できる
  • 個人の登録は失効後も7年間、本名と番号が公表サイトに残る
  • 本名を外すためだけの法人化は、売上800万円・単身で毎年37.6万円の負担になる。まず自分の売上で差額を確かめてから判断する

よくある質問

公表サイトで、名前から個人事業主の登録番号を検索されることはありますか?

公表サイトは登録番号でしか検索できません。国税庁は、請求書に書かれた番号が有効かを確かめるためのサイトなので、氏名や法人名からは検索できないとしています。また、データダウンロード機能のデータからは、個人事業者の氏名や屋号は削除されています。

個人事業主のまま、本名ではなく屋号だけを公表することはできますか?

できません。屋号は申し出れば氏名に加えて公表されますが、氏名に代えて公表することはできません。氏名に代えて公表できるのは、住民票に記載された旧姓(外国人住民は通称)です。

法人で登録すると、社長の名前は公表サイトに出ますか?

法人の公表事項は法人名・本店所在地・登録番号・登録年月日などで、代表者の氏名は含まれていません。ただし代表者の氏名は商業登記簿に記録されており、登記事項証明書は手数料を納めれば誰でも請求できます(商業登記法10条)。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。