社会保険

一人社長が海外に住むと介護保険料だけ止まる。適用除外の届出で年10.3万円

結論

40〜64歳の一人社長が役員のまま海外に住所を移すと、健康保険・厚生年金保険は国内の住所の有無を問わず続きますが、介護保険は国内に住所がある人だけが加入するため第2号被保険者から外れます。会社が住民票の除票を付けて「介護保険適用除外等該当届」を年金事務所へ出すと介護保険料(1.62%)の上乗せがなくなり、役員報酬月54万円なら労使合計で年10.3万円です。

  • 届出は事業主を経由して日本年金機構へ。提出期限は「遅滞なく」、国外居住が理由なら住民票の除票(コピー不可・個人番号の記載がないもの)を添付する
  • 一人社長は本人負担と会社負担の両方を自分で払っているので、止まる額は労使合計で見る。報酬月30万円で年5.8万円、月100万円で年19.1万円
  • 個人事業主が海外に住所を移すと、国民健康保険と国民年金(第1号)の加入資格そのものがなくなる。法人化していれば健康保険が日本に残る

役員報酬を受け取り続けたまま、社長が海外に住む。一人会社では珍しくない形です。このとき社会保険は「全部続く」わけでも「全部止まる」わけでもありません。健康保険と厚生年金は続き、介護保険だけが外れます。外れたことは自動では反映されないので、会社が届け出る必要があります。

健康保険・厚生年金は続き、介護保険だけが外れる

日本年金機構は、健康保険と厚生年金保険について「適用事業所に勤務する限り、国内における住所の有無を問わず加入します」と案内しています。一方で介護保険は「国内に住所がある方のみ加入します」としています。

制度社長が海外に住所を移したとき
健康保険続く(被保険者のまま)
厚生年金保険続く(被保険者のまま)
介護保険(40〜64歳の第2号被保険者)外れる。届出が必要
子ども・子育て拠出金(会社負担)続く

40〜64歳の健康保険の被保険者は、健康保険料に介護保険料(全国一律1.62%)が上乗せされています。この上乗せは、介護保険の第2号被保険者であることが前提です。住所が国外に移れば前提が外れるので、上乗せもなくなります。

止まる介護保険料は、報酬月54万円で年10.3万円

介護保険料は標準報酬月額×1.62%を、会社と本人が半分ずつ負担します。一人社長は両方を自分のお金で払っているので、止まる額は労使合計で見ます。

役員報酬(月)標準報酬月額介護保険料・本人分(年)介護保険料・会社分(年)労使合計(年)
20万円20万円1.9万円1.9万円3.9万円
30万円30万円2.9万円2.9万円5.8万円
42万円41万円4.0万円4.0万円8.0万円
54万円53万円5.2万円5.2万円10.3万円
65万円65万円6.3万円6.3万円12.6万円
80万円79万円7.7万円7.7万円15.4万円
100万円98万円9.5万円9.5万円19.1万円

※ 介護保険料率1.62%(令和8年度・全国一律)を標準報酬月額に掛けて12か月分で計算。賞与なし。介護保険料の額は都道府県の健康保険料率に関係しない

報酬月54万円は、当サイトの判定ツールで事業所得1,000万〜1,600万円あたりの最適報酬として出やすい額です。この帯の一人社長なら、年10万円前後が届出1枚で止まる計算です。一人社長の社会保険料の全体像は一人社長の社会保険料で整理しています。

届出の手順:会社が年金事務所へ出す

項目内容
届書介護保険適用除外等該当・非該当届
届け出る人被保険者が事業主に出し、事業主が日本年金機構へ提出(一人会社では社長が両方を兼ねる)
提出先事務センターまたは管轄の年金事務所
提出方法電子申請・郵送・窓口持参
提出期限遅滞なく
添付書類(国外居住が理由の場合)住民票の除票(コピー不可・個人番号の記載がないもの)

届書は被保険者・被扶養者ごとに1枚ずつ作ります。40歳になったとき・65歳になったときの切り替えは届出がいりませんが、海外への転居は自動では反映されません。届け出なければ、介護保険料は上乗せされたまま徴収され続けます。

住民票の除票は、市区町村に海外転出の届出をしたあとで取れます。出国前に転出届を出しておくと、手続きの順番が組みやすくなります。

帰国したら、同じ届書で戻す

国内に住所を戻したら、同じ届書で「非該当」から「該当」に戻す届出をします。日本年金機構は、帰国して国内に住所を戻したときも同じ書類で手続きするよう案内しています。

個人事業主が海外に住む場合との違い

同じように海外へ住所を移しても、個人事業主と一人社長では、日本の公的保険との関係が大きく違います。

個人事業主一人社長(法人の役員)
医療保険国民健康保険は国内に住所がある人が対象。海外転出で加入資格がなくなる健康保険は続く
年金国民年金の第1号被保険者でなくなる(任意加入はできる)厚生年金は続く
介護保険国保と一緒に外れる介護保険だけ外れる。会社が届出
届出市区町村への転出届に伴う国保・国民年金の手続き介護保険適用除外等該当届(年金事務所)

個人事業主は、海外に住所を移すと日本の医療保険そのものがなくなります。一時帰国中に病気になれば、全額自己負担です。法人化していれば健康保険が残り、一時帰国中の受診や、海外での治療費の一部払い戻し(海外療養費)の対象になります。

ただし、海外に住む社長の役員報酬には、非居住者として所得税の源泉徴収(20.42%)がかかるなど、税金の側でも大きな変化があります。その扱いは海外在住の社長の役員報酬と源泉徴収で、住む国の社会保険との二重加入は社会保障協定と海外在住の役員で扱っています。

まとめ

  • 一人社長が役員のまま海外に住所を移すと、健康保険・厚生年金は続き、介護保険(第2号)だけが外れる
  • 会社が「介護保険適用除外等該当届」を住民票の除票とともに遅滞なく出すと、介護保険料1.62%の上乗せがなくなる
  • 止まる額は労使合計で、報酬月54万円なら年10.3万円、月100万円なら年19.1万円
  • 届け出なければ徴収は続く。帰国したら同じ届書で戻す
  • 個人事業主は海外転出で国保・国民年金の資格ごとなくなる。法人化していれば日本の健康保険が残る

海外に住む予定があるかどうかは、法人化の判断にも効きます。判定ツールで自分の売上と経費の比較を出したうえで、住む場所の変化も重ねて確かめてください。

よくある質問

海外に住んでいる間、日本の健康保険は使えますか?

健康保険の被保険者のままなので、一時帰国したときに日本の医療機関で受診できます。海外で受けた治療は、条件を満たせば海外療養費として後から一部の払い戻しを受けられます。

日本に戻ったら、どうなりますか?

国内に住所を戻すと再び介護保険の第2号被保険者になります。同じ「介護保険適用除外等該当・非該当届」を使って、該当しなくなった理由がなくなったことを届け出ます。

一緒に海外へ行く配偶者の分も届け出ますか?

届書は被保険者・被扶養者ごとに1枚ずつ作ります。日本年金機構は、被保険者が外国に住み、被扶養者も一緒に外国に住む場合は2枚の届書を出すよう案内しています。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。