社会保険
名古屋市の国民健康保険料(令和8年度)。個人事業主の法人化の分岐点は1,270万円
結論
名古屋市の令和8年度の国民健康保険料は、単身・40歳未満・事業所得600万円で年71万8,257円で、収録63市区の中で16番目に高い水準です。ただし扶養家族1人につき33万円×料率を所得割から引く市独自の控除があり、40歳未満なら1人年38,511円下がります。夫婦と子2人・事業所得500万円では年68.7万円となり、東京23区(74.8万円)より6.1万円安くなります。単身・40歳未満なら、法人化の損益分岐は売上−経費1,270万円です。
- 所得割の合計は11.67%、均等割は大人1人68,238円。どちらも東京23区より高く、平等割はない
- 独自控除の対象は確定申告などで申告した同一生計配偶者・扶養親族(16歳未満を含む)。配偶者特別控除の対象者は含まない
- 法人化の損益分岐は名古屋市・協会けんぽ愛知支部で1,270万円。分岐点付近では国保が上限に近く、独自控除の効果はほぼ残らない
このテーマの全体像 国民健康保険料の自治体別比較
名古屋市の国保は、単身の人にとっては収録63市区の中でも高い側です。ところが家族がいると話が変わります。扶養家族1人につき「33万円×料率」を所得割から差し引く、市独自の控除があるためです。国保は本来、配偶者控除や扶養控除を計算に入れない制度なので、この控除は珍しい仕組みです。
以下の数字は、名古屋市の令和8年度の公表料率で計算したものです。市区ごとの比較は国民健康保険料が高い市・安い市を比較にあります。この記事では名古屋市だけを、単身と家族の両方で追います。
令和8年度の料率
| 区分 | 所得割 | 均等割(1人) | 平等割 | 賦課限度額 |
|---|---|---|---|---|
| 医療分 | 8.83% | 50,591円 | なし | 67万円 |
| 後期高齢者支援金分 | 2.58% | 15,784円 | なし | 26万円 |
| 介護分(40〜64歳) | 2.34% | 16,120円 | なし | 17万円 |
| 子育て支援金分 | 0.26% | 1,771円+18歳以上1人92円 | なし | 3万円 |
※ 名古屋市 令和8年度分の国民健康保険料。子育て支援金分は「子ども・子育て支援金分」
40歳未満の3区分を合わせると、所得割11.67%、均等割は大人1人68,238円です。東京23区(10.58%・67,073円)より、所得割も均等割も高くなっています。平等割はありません。
所得割は「旧ただし書所得」(総所得金額等−43万円)に掛けます。個人事業主なら、青色申告特別控除を引いた後の事業所得が出発点です。
単身・事業所得600万円で年71.8万円
旧ただし書所得は600万円−43万円=557万円です。
| 区分 | 所得割 | 均等割 | 小計 |
|---|---|---|---|
| 医療分 | 491,831円 | 50,591円 | 542,422円 |
| 後期高齢者支援金分 | 143,706円 | 15,784円 | 159,490円 |
| 子ども・子育て支援金分 | 14,482円 | 1,863円 | 16,345円 |
| 合計 | 718,257円 |
年71万8,257円です。国民年金(年21万5,040円)を足すと93万3,297円になります。東京23区の同条件は65万6,379円なので、年6万1,878円高い計算です。
40〜64歳なら介護分が加わり86万4,715円です。
所得別では、745万円付近で東京23区との差が最大
近い政令市として浜松市も並べました。
| 事業所得 | 名古屋市 | 浜松市 | 東京23区 | 東京23区との差 |
|---|---|---|---|---|
| 100万円 | 13.5万円 | 12.4万円 | 12.7万円 | +0.7万円 |
| 300万円 | 36.8万円 | 32.2万円 | 33.9万円 | +2.9万円 |
| 500万円 | 60.2万円 | 52.0万円 | 55.1万円 | +5.1万円 |
| 600万円 | 71.8万円 | 61.8万円 | 65.6万円 | +6.2万円 |
| 700万円 | 83.5万円 | 71.7万円 | 76.2万円 | +7.3万円 |
| 800万円 | 90.3万円 | 81.6万円 | 86.8万円 | +3.5万円 |
| 900万円 | 93.1万円 | 91.4万円 | 95.3万円 | −2.2万円 |
| 1,000万円 | 95.7万円 | 94.4万円 | 95.8万円 | −0.1万円 |
※ 単身・40歳未満・青色申告特別控除後の事業所得/2026年(令和8年)分 基準
単身なら、収録63市区の中で事業所得300万円では18番目、600万円では16番目に高い水準です(600万円で最も高いのは大阪市・堺市)。東京23区との差は事業所得744万円で最大の年7.8万円になります。
845万円を超えると東京23区より安くなります。名古屋市は医療分の所得割が高いので、医療分が上限の67万円に事業所得745万円で届きます。東京23区は872万円まで医療分が伸び続けるので、その間に追い越されるわけです。
同じ愛知県の豊田市は所得割の合計が9.51%で、名古屋市より2.16ポイント低く、単身・事業所得600万円で11.8万円安くなります(豊田市の国民健康保険税)。
隣県の津市は所得割の合計11.16%で、事業所得785万円までは名古屋市より安く、600万円で2.6万円の差です(津市の国民健康保険料)。
扶養家族1人で年3.9万円下がる「独自控除」
名古屋市は、所得割から次の額を差し引きます。
- 扶養家族1人につき:33万円×料率(障害者控除の対象なら86万円×料率)
- 本人が障害者控除・寡婦控除・ひとり親控除の対象なら:92万円×料率
対象になる扶養家族は、確定申告や市県民税の申告に載せた同一生計配偶者と扶養親族です。16歳未満の子も含みます。配偶者特別控除の対象になる配偶者は含みません。料率は医療分・支援金分・子育て支援金分・介護分のすべてに掛かります。
40歳未満の3区分なら、扶養家族1人あたり33万円×11.67%=年38,511円です。40〜64歳は介護分を足して46,233円になります。
| 世帯 | 扶養の人数 | 事業所得300万円 | 500万円 | 700万円 | 1,000万円 |
|---|---|---|---|---|---|
| 単身 | 0人 | 36.8万円 | 60.2万円 | 83.5万円 | 95.7万円 |
| 夫婦 | 1人 | 39.8万円 | 63.1万円 | 86.5万円 | 95.8万円 |
| 夫婦+子2人(小学生) | 3人 | 45.4万円 | 68.7万円 | 89.5万円 | 95.6万円 |
※ 名古屋市の独自控除を入れて計算。40歳未満・青色申告特別控除後の事業所得/2026年(令和8年)分 基準
家族の均等割は1人6.8万円ほどかかりますが、独自控除がその半分以上を打ち消します。夫婦と子2人・事業所得500万円では年68.7万円で、東京23区の74.8万円より6.1万円安くなりました。単身では東京23区より5.1万円高いので、家族の有無で東京との大小が逆になります。
独自控除が効くのは、所得割が上限に届く前の所得帯だけです。事業所得700万円では差が2.8万円に縮み、1,000万円ではほぼ消えます。上限に張り付いていれば、所得割をいくら引いても保険料は上限のままだからです。
上限に達するのは単身で事業所得1,126万円
単身・40歳未満の場合、医療分は745万円、後期高齢者支援金分は990万円で上限に達します。全区分の合計が上限の年96万円に届くのは1,126万円です。子育て支援金分の所得割が0.26%と低く、最後まで上限に届かないためです。ただ、1,000万円の時点で95.7万円なので、900万円を超えたあたりから実質的には頭打ちと見てよいでしょう。
法人化の分岐点は東京23区とほぼ同じ1,270万円
| 条件 | 損益分岐(売上−経費) |
|---|---|
| 東京23区・協会けんぽ東京支部 | 1,266万円 |
| 名古屋市の国保のみ(協会けんぽは東京支部) | 1,266万円 |
| 名古屋市・協会けんぽ愛知支部 | 1,270万円 |
| 名古屋市・配偶者(無収入)あり | 1,016万円 |
| 名古屋市・単身・40〜64歳 | 1,249万円 |
※ 単身・40歳未満(注記以外)・経費200万円・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み・合同会社。損益分岐は青色申告特別控除の前の金額。独自控除は入れていない/2026年(令和8年)分 基準
国保の部分だけを名古屋市に変えても、分岐点は東京23区と同じ1,266万円でした。分岐点の付近では、どちらの市も国保が上限に近いためです。4万円上がるのは、協会けんぽ愛知支部の健康保険料率(令和8年度9.93%)が東京支部(9.85%)より高いことと、法人住民税の均等割に愛知県の「あいち森と緑づくり税」1,000円が上乗せされて年71,000円になることによります。
配偶者がいると分岐点は1,016万円まで下がります。この計算には独自控除を入れていませんが、その所得帯ではもともと国保が上限近くにあり、独自控除による個人側の負担減は年0.1万〜0.3万円程度です。結論はほとんど動きません。均等割の自治体差は法人住民税の均等割は自治体で違うで比べています。
まとめ
- 名古屋市の令和8年度の国保は、所得割11.67%・均等割68,238円(40歳未満)。平等割はない
- 単身・事業所得600万円で年71万8,257円。収録63市区で16番目に高く、東京23区より6.2万円高い
- 扶養家族1人につき33万円×料率を所得割から引く独自控除がある。40歳未満で1人年38,511円
- 夫婦と子2人・事業所得500万円なら年68.7万円で、東京23区より6.1万円安い
- 法人化の分岐点は1,270万円。分岐点付近では国保が上限近くにあり、独自控除の差はほぼ消える
家族がいるかどうかで、名古屋市の国保の見え方は大きく変わります。法人化の判断は、家族構成を入れたうえで自分の売上と経費で確かめてください。
よくある質問
名古屋市の独自控除は申請が必要ですか?
独自控除そのものの申請書はありませんが、確定申告や市県民税の申告で配偶者・扶養親族を申告しておく必要があります。16歳未満の子は所得税の扶養控除の対象外ですが、扶養親族として申告欄に記入しておくと独自控除の対象になります。
共働きで配偶者に収入がある場合も独自控除は使えますか?
対象は同一生計配偶者と扶養親族です。配偶者特別控除の対象になる配偶者や、所得要件を超える配偶者は含まれません。子どもを夫婦のどちらの扶養として申告しているかも確認してください。
名古屋市の国保は区で違いますか?
違いません。料率は市内16区で共通です。
出典
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。