社会保険

障害年金の3級は厚生年金だけ。法人化で年63.5万円の下支えが付く

障害基礎年金には1級と2級しかなく、3級と障害手当金は厚生年金にしかありません。役員報酬別の受給額、加入1年でも300月とみなされる仕組み、3級の額が月38万円台まで変わらない理由を、令和8年度の年金額で計算しました。

障害年金には1級から3級までがあります。ただし3級があるのは厚生年金だけです。個人事業主が加入している国民年金の障害基礎年金は、1級と2級しかありません。

日本年金機構は3級を「労働が著しい制限を受ける、または、労働に著しい制限を加えることを必要とするような状態」と説明しています。日常生活にはほとんど支障がないが、働くことには制限がある状態です。個人事業主にとって、いちばん現実味のある段が、いちばん給付の穴になっています。

1階と2階で、対象になる等級が違う

公的年金は2階建てです。障害年金では、階ごとに対象となる等級が違います。

1級2級3級障害手当金(一時金)
障害基礎年金(国民年金)なしなし
障害厚生年金(厚生年金)

障害手当金は、初診日から5年以内に傷病が治り、障害厚生年金を受けるより軽い障害が残ったときに支給される一時金です。これも厚生年金だけの給付です。

つまり個人事業主のままだと、3級相当と、それより軽い障害には、公的年金からの給付が1円もありません。 法人化して厚生年金の被保険者になると、この2つが新しく付きます。

令和8年4月分からの障害基礎年金の額は、1級が1,059,125円、2級が847,300円(いずれも昭和31年4月2日以後生まれ、子の加算前)です。子の加算は第1子・第2子が1人につき243,800円、第3子以降が1人につき81,300円です。

役員報酬別に、いくら受け取れるか

障害厚生年金の額は報酬比例です。厚生年金保険法43条1項の算式「平均標準報酬額 × 5.481 ÷ 1000 × 被保険者期間の月数」で計算します。

役員報酬(月)厚年の標準報酬月額1級(基礎+厚生)2級(基礎+厚生)3級(厚生のみ)障害手当金(一時金)
月20万円200,000円1,470,200円1,176,160円635,500円1,271,000円
月30万円300,000円1,675,738円1,340,590円635,500円1,271,000円
月40万円410,000円1,901,829円1,521,463円674,163円1,348,326円
月50万円500,000円2,086,813円1,669,450円822,150円1,644,300円
月54万円530,000円2,148,474円1,718,779円871,479円1,742,958円
月60万円590,000円2,271,796円1,817,437円970,137円1,940,274円
月65万円650,000円2,395,119円1,916,095円1,068,795円2,137,590円
個人事業主(国民年金のみ)1,059,125円847,300円0円0円

令和8年4月分からの年金額。子の加算・配偶者加給年金額(243,800円)は含めていません。賞与なし・報酬額が全期間一定・再評価率1.000として計算した概算で、実際の額は毎年の改定率と再評価率で変わります。表は scripts/shogai-nenkin-houjinka.mjs で再生成できます。

当サイトの試算で最適になりやすい役員報酬(月54万円)だと、2級は年171万8,779円です。個人事業主のままなら84万7,300円なので、年87万1,479円多くなります。3級は法人が年87万1,479円、個人事業主は0円です。どちらの差額も報酬比例部分そのもので、同じ額になります。

加入して1年でも、25年加入したものとして計算される

老齢年金との決定的な違いがここです。厚生年金保険法50条1項は、障害厚生年金の計算の基礎となる被保険者期間の月数が300に満たないときは、これを300とすると定めています。

厚生年金の加入月数みなし後の月数報酬比例の年金額(標準報酬月額50万円)
12か月(1年)300か月822,150円
60か月(5年)300か月822,150円
120か月(10年)300か月822,150円
240か月(20年)300か月822,150円
300か月(25年)300か月822,150円
360か月(30年)360か月986,580円
420か月(35年)420か月1,151,010円

法人化して1年で障害の状態になっても、25年加入していた場合と同じ額です。老齢厚生年金は加入した月数がそのまま効くので、法人化が遅いほど増える額は小さくなります。障害厚生年金にはその関係がありません。

厚生年金の被保険者になった瞬間から、最大の水準の保障が立ち上がります。 保険料を払った期間の長さで割り引かれないという点で、老齢年金とは性質が違う給付です。

老齢年金のほうは加入期間に比例します。法人化で厚生年金がいくら増えるかは法人化で厚生年金は年69万円増えるで計算しています。

3級は、役員報酬を上げても月38万円台までは額が変わらない

3級には最低保障額があります。厚生年金保険法50条3項は、障害基礎年金を受けられない場合に、障害厚生年金の額が障害基礎年金の額の4分の3に満たないときは、その額とすると定めています。令和8年4月分からは635,500円(昭和31年4月2日以後生まれ)です。

報酬比例の額がこの水準に届くまで、3級の年金額は動きません。

厚年の標準報酬月額報酬比例の年金額(300月)3級の年金額最低保障が効いているか
200,000円328,860円635,500円効いている
300,000円493,290円635,500円効いている
320,000円526,176円635,500円効いている
340,000円559,062円635,500円効いている
360,000円591,948円635,500円効いている
380,000円624,834円635,500円効いている
410,000円674,163円674,163円
440,000円723,492円723,492円
500,000円822,150円822,150円
650,000円1,068,795円1,068,795円

報酬比例が最低保障額と一致するのは標準報酬月額38万6,487円です。等級で見ると、標準報酬月額38万円までは635,500円で一定、41万円から報酬比例が上回ります。

役員報酬を月20万円にしても月38万円にしても、3級の額は同じ635,500円です。 保険料は月20万円なら労使合計で月5万6,760円、月38万円なら月10万7,844円と倍近く違うのに、3級の給付だけを見れば差がありません。報酬を上げることで増えるのは、老齢年金と1級・2級の報酬比例部分のほうです。

役員報酬別の保険料額は一人社長の社会保険料はいくらかにまとめています。

初診日がどこにあるかで、受けられる給付が決まる

ここが実務でいちばん重い条件です。障害厚生年金は、厚生年金保険法47条により、傷病について初めて医師の診療を受けた日(初診日)において被保険者であった者に支給されます。

つまり、法人化する前から通院している病気については、法人化後に症状が悪化しても障害基礎年金の枠内です。厚生年金が乗ることはありません。

初診日の時点障害の状態になったとき受けられる給付
個人事業主のとき個人事業主のまま障害基礎年金(1級・2級のみ)
個人事業主のとき法人化した後障害基礎年金(1級・2級のみ)
法人化した後法人化した後障害基礎年金+障害厚生年金(3級・障害手当金も)

この保障は、法人化した「あと」に始まる病気やけがにしか効きません。 すでに治療中の傷病について、法人化で給付が増えることはありません。

もう1つ、保険料納付要件があります。初診日の前日において、初診日がある月の前々月までの被保険者期間のうち、保険料納付済期間と免除期間を合わせた期間が3分の2以上あることが必要です。ただし初診日が令和18年3月末日までのときは、初診日において65歳未満であれば、直近1年間に未納がなければよいとされています。

国民年金の保険料を未納のまま法人化すると、この要件で引っかかることがあります。 未納と免除では扱いが違い、免除は納付要件を満たす期間に入ります。免除と追納の損得は国民年金の免除で減る年金は年1万円で計算しました。

保険料の増加分と、どう見比べるか

役員報酬を月50万円にすると、健康保険と厚生年金の保険料は労使合計で年170万2,800円です。個人事業主の国民年金は年21万5,040円(月17,920円)なので、年金部分だけを取り出しても負担ははっきり増えます。

その負担に対して増える給付は、少なくとも次の3つです。

  • 老齢厚生年金(加入期間に比例して増える)
  • 障害厚生年金の3級と障害手当金(国民年金には存在しない)
  • 1級・2級の報酬比例部分の上乗せ

役員報酬が月54万円なら、2級の上乗せも3級の新規発生も年87万1,479円です。役員報酬が月30万円まで下がると、3級は最低保障額の年63万5,500円になります。ただしこれは障害の状態になった場合にだけ受け取るもので、毎年受け取れる額ではありません。保険料の増加分と単純に引き算できる性質のものではないという意味で、判定ツールの手取り比較には入っていません。

同じ性質の給付として、健康保険の傷病手当金があります。こちらは役員報酬を止めないと支給されないという条件があり、一人社長には使いにくい面があります。金額と条件は一人社長の傷病手当金はいくらかで扱いました。雇用保険が使えない点は一人社長は雇用保険に入れないにまとめています。

当サイトの判定ツールは単年の手取りで比較します。前提は計算方法についてに置いています。差額が僅差なら、この記事のような単年に写らない要素を手で足し引きしてください。

まとめ

  • 障害基礎年金は1級と2級だけ。3級と障害手当金は厚生年金にしかない
  • 3級は「労働が著しい制限を受ける」状態。日常生活は送れるが働けない段で、個人事業主には給付がない
  • 3級の最低保障額は年635,500円、障害手当金の最低保障額は1,271,000円(令和8年4月分から)
  • 障害厚生年金は被保険者期間が300月未満でも300月として計算する。加入1年でも25年と同額
  • 3級の額は標準報酬月額38万6,487円まで最低保障額のまま。報酬を上げても3級の給付は増えない
  • 初診日に厚生年金の被保険者であることが条件。法人化前からの傷病には効かない

よくある質問

個人事業主が障害年金を受け取れないことはありますか?

障害の程度が3級にとどまる場合、国民年金だけでは支給されません。障害基礎年金の等級は1級と2級だけで、3級と障害手当金は厚生年金保険の給付だからです。日本年金機構は3級を「労働が著しい制限を受ける、または、労働に著しい制限を加えることを必要とするような状態」と説明しています。

法人化した直後に障害を負っても、年金額は少ないのですか?

少なくなりません。厚生年金保険法50条1項は、障害厚生年金の計算の基礎となる被保険者期間の月数が300に満たないときは300とする、と定めています。加入して1年でも25年加入したものとして計算されます。

法人化する前からの病気でも障害厚生年金の対象になりますか?

対象になりません。障害厚生年金は初診日において厚生年金保険の被保険者であった人に支給されます。法人化より前に初診日がある傷病は、その後で症状が悪化しても国民年金の扱いになります。初診日がどこにあるかで、受けられる給付が変わります。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。