税金の基礎

所得税の延納は半分を3月に払えばOK。利子税は年1.3%でいくら?

結論

令和7年分の所得税は、第3期分の2分の1以上を令和8年3月16日までに納めれば、残りを6月1日まで延納できます。利子税は年1.3%で、延納額36.9万円(第3期分73.8万円)までは端数処理で0円です。事業所得1,000万円・単身の例でも、延納できる56.2万円にかかる利子税は1,500円でした。

  • 延納の手続は申告書第一表の「延納の届出」欄に延納届出額を書くだけ。延納届出額は第3期分の2分の1以下で、千円未満は切り捨てる
  • 利子税は本税を1万円未満切捨て、結果を100円未満切捨て。1,000円未満は0円になるため、延納額36.9万円までは6月1日に払っても利子税がかからない
  • 届出をせずに6月1日に払うと延滞税(2か月までは年2.8%、その後は年9.1%)になり、事業所得1,000万円の例で4,800円と利子税の約3倍

延納は「税金を払えない人の救済制度」と思われがちですが、実際は申告書の欄に金額を書くだけで使える、ごく普通の支払い方法です。しかも令和8年の利子税は年1.3%と低く、端数処理の仕組みで少額なら利子税そのものが0円になります。

この記事では、事業所得別に「3月に払う額」「6月まで延ばせる額」「利子税」を計算エンジンで出し、利子税が0円で済む境目を示します。最後に、法人化すると延納という選択肢がなくなる点にも触れます。

延納の要件は「2分の1以上を期限内に払う」だけ

国税庁の令和7年分の確定申告の手引きは、延納を次のように説明しています。

  • 申告書第一表の「第3期分の税額」の2分の1以上を、令和8年3月16日(月)までに納付する
  • 振替納税を使う場合は、振替日(令和8年4月23日)に振替納付する
  • そうすれば、残りの額を令和8年6月1日(月)まで延納できる
  • 延納期間中は、年7.3%と利子税特例基準割合のいずれか低い割合で利子税がかかる

本来の延納期限は5月31日です。令和8年は5月31日が日曜日のため、翌営業日の6月1日になります。

手続は、申告書第一表の「延納の届出」欄の記入です。手引きの計算欄では、第3期分の税額をA、延納届出額をBとし、Bは「A×0.5以下の金額(千円未満の端数切捨て)」、申告期限までに納める額はA−Bとしています。千円未満を切り捨てる分、3月に払う額は半分よりわずかに多くなります。

利子税の割合は令和8年が年1.3%

法律上の割合は年7.3%です。ただし利子税特例基準割合がそれを下回る年は、その割合が使われます。国税庁の確定申告Q&A(Q35)は、所得税の延納期間中の利子税を**年1.3%**と案内しています。

1.3%は、銀行の短期貸出金利の平均(平均貸付割合、令和8年は0.8%)に0.5%を足した水準です。同じQ&Aでは、贈与税の延納の利子税(特例割合)を年1.1%としています。税目によって算式が違う点は押さえておきたいところです。

対象は所得税の確定申告分だけ

延納できるのは、所得税及び復興特別所得税の確定申告で納める第3期分です。消費税(令和7年分の納期限は3月31日)には同じ制度がありません。住民税や個人事業税は市区町村・都道府県からの通知で納めるもので、これも別の話です。

事業所得別:延納できる額と利子税

計算エンジンで、事業所得別の所得税(復興特別所得税込み)を出し、延納できる上限と6月1日に払った場合の利子税を計算しました。比較として、延納の届出をせずに同じ額を6月1日に払った場合の延滞税も並べています。

延納期間 77日(3/17〜6/1)、利子税 年1.3%

事業所得(青色控除前)第3期の所得税3/16までに納める額延納できる上限利子税(6/1納付)届出せず6/1に納めた場合の延滞税
400万円87,700円44,700円43,000円0円0円
500万円167,200円84,200円83,000円0円0円
600万円355,200円178,200円177,000円0円1,400円
800万円730,500円365,500円365,000円0円3,100円
1,000万円1,125,700円563,700円562,000円1,500円4,800円
1,200万円1,650,700円825,700円825,000円2,200円7,100円
1,500万円2,661,500円1,331,500円1,330,000円3,600円11,500円
2,000万円4,346,200円2,173,200円2,173,000円5,900円18,800円

※ 東京23区・単身・40歳未満・青色申告65万円控除(e-Tax)。源泉徴収税額・予定納税額はないものとし、第3期分=年税額とした。延滞税は3/17〜5/16を年2.8%、5/17〜6/1を年9.1%で計算。いずれも概算。計算は scripts/shotokuzei-ennou-rishizei.mjs

事業所得2,000万円でも、217万円を2か月半遅らせて利子税は5,900円です。延納額の大きさに比べると、利子税は小さな額にとどまります。

予定納税がある人は第3期分が小さくなる

この表は、前年の納税額が少なく予定納税がなかった人(独立1〜2年目など)を想定しています。前年の所得税額(予定納税基準額)が15万円以上の人は、7月と11月に予定納税を済ませているため、3月に納める第3期分はその分だけ小さくなります。延納できるのは第3期分の半分なので、延納額も小さくなります。予定納税の仕組みと金額は予定納税はいくらから?で計算しています。

独立した年の翌年は、前年の税金と当年の予定納税が重なって資金繰りが苦しくなりやすい時期です。その全体像は独立1年目の税金にまとめています。延納はその山を2か月半ほど後ろにずらす手段の1つです。

延納額36.9万円までは利子税が0円になる

表の800万円の行では、36万5,000円を延納しても利子税は0円です。これは国税通則法の端数処理によるものです。

段階処理
計算の基礎になる本税1万円未満を切り捨てる
計算した利子税100円未満を切り捨てる
利子税の全額1,000円未満なら0円

6月1日まで77日延納した場合を1,000円刻みで調べると、境目は次のとおりです。

  • 延納額36万9,000円:基礎36万円×1.3%×77日÷365=987円 → 0円
  • 延納額37万円:基礎37万円で1,014円 → 1,000円

延納額36万9,000円は、第3期分73万8,000円の半分にあたります。つまり第3期分が約73万円までの人は、満額を延納して6月1日に払っても利子税は0円です。上の表では事業所得800万円(第3期73万500円)までがこの範囲に入ります。

早めに払えば0円の範囲は広がる

利子税は延納期間の日数に比例します。6月1日を待たずに払えば、0円で済む延納額の上限は上がります。

延納額を払う日(3/16からの日数)利子税0円で済む延納額の上限
30日後(4/15)93万9,000円
45日後(4/30)62万9,000円
60日後(5/15)46万9,000円
77日後(6/1)36万9,000円

※ 年1.3%、端数処理は上の表のとおり。同じスクリプトの zero で計算

国税通則法基本通達64条関係でも、利子税の計算の終期は延納の期限で、その前に納付があればその納付の日とされています。たとえば確定申告で第3期分が180万円ほどになった人でも、残り半分(約90万円)を4月中旬までに払えば利子税はかかりません。

届出なしで遅れると、延滞税は利子税の約3倍

延納の届出をしないまま半分だけ払い、残りを後で納めた場合は、延納ではなく単なる納付遅れです。延滞税は令和8年の場合、納期限の翌日から2か月までが年2.8%、それ以降が年9.1%です(No.9205)。

事業所得1,000万円の例で比べると、同じ56万2,000円を6月1日に払っても、届出をすれば利子税1,500円、しなければ延滞税4,800円です。差はわずかに見えますが、延滞が2か月を超えると割合が9.1%に跳ね上がるため、期間が延びるほど開きます。

延滞税が膨らんだ後で分割納付を検討する場合の考え方は、法人の例ですが換価の猶予と延滞税で計算しています。ただ、個人事業主の所得税なら、まず延納の届出欄を埋めることが最も手間の少ない対策です。

振替納税と組み合わせると、半分の納付は4月23日

振替納税を使う場合、2分の1以上の納付は「振替日に振替納付すること」で満たします。令和7年分の所得税の振替日は令和8年4月23日です。

支払い方半分以上の納付残りの納付
窓口・e-Tax等で納付3月16日まで6月1日まで(延納)
振替納税4月23日(振替日)6月1日まで(延納)

振替納税を使えば、そもそも所得税の引落しは4月下旬です。延納と組み合わせると、3月16日の段階では所得税の支払いがゼロで、4月と6月に分けて払う形になります。ただし、振替日に残高不足で引き落とせなかった場合は、納期限(3月16日)の翌日からの延滞税がかかると国税庁のQ&A(Q38)は案内しています。

法人になると、確定申告の延納はなくなる

所得税の延納は、個人の確定申告に固有の制度です。法人税には、確定申告で納める税額の半分を後払いにする同じ仕組みはありません。法人が決算後の納付を後ろへずらす手段は、主に次の2つです。

  • 申告期限の延長の特例:申告期限を1か月延ばせるが、延長期間の税額には利子税・延滞金がかかる。詳しくは法人の申告期限を1か月延長
  • 換価の猶予:納付が困難な場合の分割納付。申請が必要で、延滞税は年1.3%まで軽減される

一方で、法人化すると個人の側の所得税は役員報酬から毎月源泉徴収されます。年1回の確定申告でまとまった額を納める構造そのものがなくなるため、延納の出番は小さくなります。その代わり、決算後2か月で法人税・消費税・地方税をまとめて納める山ができます。

どちらの納付の形が資金繰りに合うかは、税額の大きさで変わります。延納の利子税は数千円単位なので、法人化の損得を左右するのは利子税ではなく、税と社会保険料の総額です。自分の売上と経費で、個人と法人の手取りの差を確かめてみてください。

まとめ

  • 所得税の確定申告分は、第3期分の2分の1以上を3月16日までに納めれば、残りを6月1日まで延納できる(令和7年分)
  • 手続は申告書第一表の「延納の届出」欄の記入で、延納届出額は千円未満切捨て
  • 利子税は令和8年が年1.3%。延納額36.9万円(第3期分73.8万円)までは6月1日払いでも0円、事業所得2,000万円の例でも5,900円
  • 届出をせず遅れると延滞税になり、2か月を超えると年9.1%に上がる
  • 法人税に同じ延納制度はなく、決算後の納付をずらすには申告期限の延長(利子税あり)か換価の猶予になる

よくある質問

延納するには税務署へ申請書を出す必要がありますか?

所得税の確定申告分の延納は、申告書第一表の「延納の届出」欄に延納届出額と申告期限までに納付する金額を記入する形です。相続税や贈与税の延納のような担保提供や許可の手続は、国税庁の手引きには示されていません。

延納した残りを6月1日より前に払うと利子税は減りますか?

減ります。利子税は延納期間の日数に応じて計算されるため、早く払えばその分の日数だけ少なくなります。延納額が多いほど早払いの効果は大きくなります。

消費税や住民税も延納できますか?

この延納は所得税及び復興特別所得税の確定申告分の制度です。消費税(令和7年分は3月31日納期限)や、市区町村から届く住民税・個人事業税には同じ仕組みはありません。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。