税金の基礎

予定納税はいくらから?個人事業主の入口は事業所得482万円

予定納税の対象になるのは、前年の所得税額(予定納税基準額)が15万円以上の人です。その線に実際どの所得で届くのかを計算エンジンで出し、条件別の入口と法人化の損益分岐点を並べました。令和8年分は基礎控除の引上げが予定納税額に反映されない点も扱います。

予定納税の対象になるのは、前年の所得税額(予定納税基準額)が15万円以上の人です。ただし「所得税15万円」が売上や所得でいくらなのかは、国税庁のどこにも書いてありません。計算エンジンで1万円刻みに探すと、この記事の条件では事業所得482万円が最初の入口でした。そして、その1万円手前と後ろで、翌年に先払いする金額が0円と10.1万円に分かれます。

予定納税の基準は「前年の所得税額15万円」であって、売上ではない

国税庁は予定納税を、その年の5月15日現在で確定している前年分の所得や税額をもとに計算した金額(予定納税基準額)が15万円以上になる人について、税額の一部をあらかじめ納付する制度だと説明しています。目的は、一度に納める負担感を和らげることと、国の歳入を平準化することの2つです。

予定納税基準額は、原則として前年分の申告納税額と同じ金額になります。山林所得や退職所得などの分離課税の所得、譲渡所得、一時所得、雑所得、平均課税を受けた臨時所得が含まれている場合や、外国税額控除・災害減免法の適用を受けている場合だけ、それらを除いて計算し直した金額になります。事業所得だけで申告している個人事業主なら、前年の確定申告で納めた所得税及び復興特別所得税の額がそのまま基準額だと考えて差し支えありません。

納付は2回です。予定納税基準額の3分の1ずつを、第1期分と第2期分として納めます。

区分納期令和8年分の実際の期間
第1期分その年の7月1日から7月31日まで令和8年7月1日〜7月31日
第2期分その年の11月1日から11月30日まで令和8年11月2日〜11月30日

※ 納期限が土曜日・日曜日・祝日等の場合は翌日が納期限になります。令和8年11月1日は日曜日のため、国税庁の案内では11月2日からとされています

つまり、前年の所得税額の3分の2を、その年の7月と11月に前倒しで払うのが予定納税です。ここまでは制度の話で、問題は「自分がその15万円に届くのか」が事前に分からない点にあります。

入口は事業所得482万円。1万円の差で10.1万円の先払いが生まれる

判定ツールの計算エンジンで、事業所得を1万円刻みに動かしながら所得税及び復興特別所得税を出しました。事業所得は売上から経費を引いた金額で、青色申告特別控除を引く前の値です。

事業所得所得税及び復興特別所得税予定納税第1期・第2期の各回年間の先払い額
440万円112,400円不要
460万円130,600円不要
470万円139,700円不要
480万円148,900円不要
481万円149,800円不要
482万円150,800円必要50,267円100,533円
500万円167,200円必要55,733円111,467円
520万円185,400円必要61,800円123,600円
540万円203,600円必要67,867円135,733円

※ 経費200万円・東京23区・40歳未満・独身・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み/2026年(令和8年)分基準 ※ 各回の金額は予定納税基準額を3で割った値です。税務署から通知される金額には端数処理が入ることがあります ※ 源泉徴収された税額がある場合は、その分が予定納税基準額から差し引かれます

481万円と482万円の差は事業所得で1万円、所得税で1,000円です。それだけの差で、翌年の7月と11月に10.1万円を先に納めるかどうかが変わります。予定納税は最終的な税額を増やす制度ではなく、翌年3月の確定申告で精算されます。増えるのは税金ではなく、手元から現金が出ていく時期の前倒しです。

この段差が効くのは、事業を始めて2〜3年目で所得が伸びてきた時期です。1年目の所得が440万円で予定納税がなく、2年目が500万円になった人は、3年目の7月に初めて通知を受け取ります。しかもその年は、前年分の残りの確定申告の納税を3月に済ませた直後です。

配偶者がいると、入口が基礎控除の段差と重なる

同じ条件で配偶者(無収入)を加えると、入口は555万円まで下がります。配偶者控除の分だけ所得税が減るので、これ自体は当然です。おかしいのはその手前と後ろの動き方です。

事業所得所得税及び復興特別所得税予定納税第1期・第2期の各回年間の先払い額
520万円117,800円不要
540万円136,000円不要
550万円145,200円不要
553万円147,900円不要
554万円148,800円不要
555万円187,500円必要62,500円125,000円
560万円192,100円必要64,033円128,067円
580万円210,400円必要70,133円140,267円

※ 上の表に配偶者あり(無収入)を加えただけで、他の条件は同じ

554万円から555万円へ1万円動いただけで、所得税が148,800円から187,500円へ38,700円跳ねています。青色申告特別控除65万円を引いた後の合計所得が489万円を超え、基礎控除が104万円から67万円へ37万円落ちるためです。この段差は令和8年・9年分限りの特例加算によるもので、令和8年分の基礎控除104万円で詳しく扱っています。

結果として、配偶者がいる人は予定納税の入口をまたいだ瞬間の先払い額が、独身の10.1万円ではなく12.5万円から始まります。基礎控除の段差と予定納税の入口を、ほぼ同時に踏むからです。

予定納税の入口と、法人化の分岐点は逆方向に動く

条件を変えて、予定納税が始まる事業所得を同じ計算エンジンで探し直しました。右の列は、同じ条件で法人化が有利に転じる損益分岐点です。

条件予定納税が始まる事業所得法人化の損益分岐点
基本(独身・インボイス登録済み・青色申告65万円)482万円1,266万円
配偶者あり(無収入)555万円1,016万円
配偶者あり+扶養1人564万円1,066万円
インボイス未登録(消費税は免税)431万円1,266万円
40〜64歳(介護保険あり)494万円1,243万円
大阪市494万円1,283万円
名古屋市486万円1,270万円
白色申告417万円793万円

※ 経費200万円・東京23区・40歳未満・独身・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み・合同会社/2026年(令和8年)分基準 ※ インボイス未登録の行は、受け取った消費税が利益に乗るため、売上から経費を引いた金額が同じでも課税される所得は大きくなります

損益分岐点の列は、判定ツールが出す条件別の分岐点をそのまま並べたものです。

条件損益分岐となる事業所得
基本(独身・インボイス登録済み)1,266万円
株式会社で設立1,266万円
配偶者あり(無収入)1,016万円
配偶者あり+扶養1人1,066万円
インボイス未登録1,266万円
40〜64歳(介護保険あり)1,243万円
大阪市1,283万円
名古屋市1,270万円
白色申告793万円

※ 経費200万円・東京23区・40歳未満・独身・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み・合同会社/2026年(令和8年)分基準 ※ 表示した条件以外は基本条件と同じ。実質差額がプラスに転じる事業所得 ※ いずれも3年目以降の定常状態。設立1〜2期の消費税免税(インボイス未登録の場合のみ)は含まない

読み取れるのは、同じ条件変更が2つのラインを逆方向に動かすことです。配偶者ありは予定納税の入口を73万円後ろへ押しやる一方、法人化の分岐点は250万円手前へ引き寄せます。配偶者控除で所得税が減れば予定納税は遅れて始まりますが、法人化すれば配偶者の国民年金保険料と国民健康保険料が不要になるので、法人化の有利さは早く来るためです。

自治体の差も同じ向きに効きます。事業所得490万円で比べると、国民健康保険料は東京23区が47.1万円、大阪市が58.3万円です。差の11.2万円はそのまま社会保険料控除になるので、大阪市のほうが所得税は1.1万円低く、予定納税の入口は12万円後ろの494万円になります。自治体ごとの保険料は国民健康保険料が高い自治体はどこかで9市区の実データを比較しています。

言い換えると、予定納税の通知が届いたことは、法人化を考える合図ではありません。基本条件では入口の482万円から分岐点の1,266万円まで770万円の開きがあります。法人化の目安は所得800万円かで扱ったとおり、この2つは別の制度の別の線です。

令和8年分は、引き上げられた基礎控除が予定納税額に反映されない

令和8年分に限った注意点が1つあります。国税庁は予定納税の説明で、令和8年度税制改正における基礎控除の見直しは、予定納税額の計算上、考慮されていないと明記しています。基礎控除の見直しは確定申告の際に考慮され、最終的な年間の所得税額において精算される、という扱いです。

予定納税基準額は令和7年分の申告納税額なので、令和8年から広がった基礎控除の効果は入っていません。その分だけ多めに先払いすることになります。

さらに、これは減額申請の理由にもなりません。減額申請ができるのは、廃業・休業・失業、業況不振、災害等による損害、所得控除額や税額控除額が前年より増える場合などですが、国税庁は基礎控除の見直しについて「申告納税見積額の計算上、考慮されませんので、所得控除額が前年分と比較して増加する場合には含まれません」としています。基礎控除が増えたことだけを理由に減額申請はできないということです。

減額申請そのものの提出時期は決まっています。第1期分及び第2期分は7月1日から7月15日まで、第2期分のみは11月1日から11月15日までです。令和8年分については、国税庁の案内で7月の申請が令和8年7月15日(水)まで、11月の申請が令和8年11月16日(月)までとされています。法人成りした年の減額申請は法人成りしたときの廃業届と手続きで金額とあわせて扱っています。

法人化すると予定納税は消えるが、前払いそのものは残る

法人化して所得が役員報酬だけになると、所得税は毎月の給与から源泉徴収され、年末調整で精算されます。確定申告で納める申告納税額が生じないので、予定納税基準額も生じません。この意味では予定納税はなくなります。

ただし、前払いの仕組みが消えるわけではありません。個人・法人それぞれに別の制度があります。

制度基準となる金額対象
所得税の予定納税予定納税基準額が15万円以上個人
消費税の中間申告直前の課税期間の消費税の年税額が48万円超個人・法人の両方
法人税の予定申告前事業年度の確定分法人税額が20万円超法人

数字が3つ並ぶので、どれがどの制度の基準かを取り違えないでください。15万円は所得税、48万円は消費税、20万円は法人税です。

消費税の中間申告の基準となる48万円は、国税分の消費税額で、地方消費税額を含みません。個人は前年、法人は前事業年度が「直前の課税期間」になります。この制度は個人事業主にもあるので、インボイス登録済みで消費税を納めている人は、法人化してもしなくても中間申告が続きます。48万円が売上でいくらにあたるのか、法人成りの前後で誰にいつ来るのかは消費税の中間申告はいくらから?法人成り2期目に始まる前払いで計算しています。

法人税の予定申告は、前事業年度の確定分法人税額が20万円を超える場合に義務が生じます。提出期限は、事業年度開始の日以後6か月を経過した日から2か月以内です。地方法人税の中間申告書も同じ期限になります。設立1期目は前事業年度がないので、この予定申告は生じません。設立2期目から、前期の実績しだいで始まります。

役員報酬から源泉徴収した所得税の納付は、給与の支給人員が常時10人未満なら納期の特例で年2回にまとめられます。届出の一覧は会社設立を自分でやる手順にまとめています。

法人化を考えている人にとって意味があるのは、次の順序です。予定納税が始まる所得(この条件では482万円)と、法人化が有利に転じる所得(同1,266万円)は別の線であり、前者に届いたことは後者の判断材料になりません。計算の前提は計算の根拠に載せています。一般論の数字ではなく、自分の売上と経費で確かめてください。

まとめ

  • 予定納税の対象は、前年の所得税及び復興特別所得税の額(予定納税基準額)が15万円以上の人。この条件では事業所得482万円が入口になる
  • 481万円と482万円の差は所得税で1,000円だが、翌年の先払い額は0円と10.1万円に分かれる
  • 配偶者がいる場合の入口は555万円で、基礎控除が104万円から67万円へ落ちる段差と重なる。先払い額はいきなり12.5万円から始まる
  • 予定納税の入口と法人化の損益分岐点は、条件によって逆方向に動く。基本条件では482万円と1,266万円で770万円離れている
  • 令和8年分は、引き上げられた基礎控除が予定納税額に反映されず、それを理由にした減額申請もできない
  • 法人化すると予定納税はなくなるが、消費税の中間申告(国税分48万円超)は個人・法人の両方に、法人税の予定申告(20万円超)は法人に残る

よくある質問

予定納税の通知はいつ届きますか

国税庁は、予定納税額を所轄の税務署長からその年の6月15日までに書面またはe-Taxで通知するとしています。納期限が延長される見込みの場合は、通知の時期が別に定められています。

予定納税を払わないとどうなりますか

それぞれの納期限の翌日から納付日まで延滞税がかかります。令和8年分の第1期分では、令和8年8月1日から9月30日までが年2.8%、10月1日から12月31日までが年9.1%と国税庁が示しています。

予定納税で払いすぎた分は戻りますか

翌年の確定申告で、計算した税額から予定納税額を差し引いて精算します。差し引ききれない分は還付されますが、戻るのは申告後です。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。