税金の基礎
ソーシャルレンディングの分配金は雑所得。源泉20.42%で終わらない理由
結論
匿名組合型のソーシャルレンディングの分配金は、個人では雑所得として事業所得と合算され、源泉徴収20.42%のあと確定申告で精算します。東京23区・単身の試算では、分配金50万円に増える所得税・住民税・国保料は事業所得200万円で24.1%、1,200万円で43.7%です。法人で受けると21.3〜33.6%で、源泉税は法人税から全額控除されます。
- 匿名組合員が営業者から受ける利益の分配は、原則として雑所得(所得税基本通達36・37共-21)。株式の20.315%のような分離課税ではない
- 源泉徴収の20.42%は所得税と復興特別所得税だけ。住民税と国保料は確定申告の所得から別に計算され、事業所得200万円でも合計の負担は20.42%を超える
- 雑所得の赤字は事業所得と損益通算できない。法人が匿名組合員なら、負担すべき損失は計算期間末日の事業年度の損金になる(法人税基本通達14-1-3)
ソーシャルレンディングの分配金は、受け取った時点で20.42%が引かれています。株式の配当や譲渡益の20.315%と似た数字なので、「これで課税は終わり」と考えがちです。しかし、個人の分配金は分離課税ではなく雑所得で、事業所得と合算して確定申告で精算します。住民税と国保料は源泉徴収の外にあるため、実際の負担は事業所得の水準しだいで24〜51%まで動きます。法人で受けた場合と並べて、判定ツールの計算エンジンで出しました。
ソーシャルレンディングは匿名組合契約の出資
金融庁は、ソーシャルレンディング(融資(貸付)型クラウドファンディング)を、インターネットでファンドを募集し、投資者からの出資をファンド業者を通じて企業等に貸し付ける仕組みと説明しています。金融庁の図では、ファンド業者が匿名組合の営業者である場合、投資者と業者の間は匿名組合契約、業者と借り手の間は金銭消費貸借契約です。
つまり投資家は、借り手にお金を貸しているのではありません。業者に出資し、業者の貸付事業から利益の分配を受けている立場です。課税の扱いはこの「匿名組合の利益の分配」で決まります。自分が結んだ契約が匿名組合契約かどうかは、業者から交付される契約書面で確認できます。この記事は匿名組合型を前提にしています。
個人は雑所得、法人は益金
所得税基本通達36・37共-21は、匿名組合員が営業者から受ける利益の分配を雑所得としています。例外は、匿名組合員が重要な業務執行の決定を行うなど、営業者と共に事業を経営していると認められる場合だけです。ファンドに出資するだけの投資家は雑所得になります。
| 個人が出資 | 法人が出資 | |
|---|---|---|
| 所得の区分 | 雑所得(総合課税) | 益金(本業の利益と合算) |
| 源泉徴収 | 20.42%(所得税20%+復興特別所得税2.1%分) | 20.42%(同じ) |
| 源泉税の扱い | 確定申告で所得税から差し引いて精算 | 法人税の額から全額控除 |
| 住民税・国保料 | 総所得に入るため増える | 社会保険料は変わらない |
| 赤字が出たとき | 他の所得と損益通算できない | 負担すべき損失は損金 |
源泉徴収の根拠は、個人向けが所得税法210条・211条(税率20%)、法人向けが212条3項・213条2項2号(利益の分配は20%)です。復興特別所得税は、源泉徴収する所得税に2.1%を掛けた額が併せて徴収されます(復興財源確保法28条)。20%×1.021で20.42%です。
源泉20.42%は「所得税の前払い」
個人の分配金にかかる20.42%は、所得税と復興特別所得税の前払いです。確定申告では、分配金を雑所得として事業所得と合算して所得税を計算し直し、源泉徴収された額を差し引きます。累進税率の低い人には戻り、高い人は追加で納めます。
そして住民税と国保料は源泉徴収されていません。 雑所得は住民税の総所得に入り、国保料の所得割の基礎にもなります。横浜市の説明でも、保険料の計算に使う総所得金額等に雑所得が含まれています。個人事業税は事業所得にだけかかるので、分配金では増えません。
分配金50万円で増える税と国保料
事業所得(青色申告特別控除の後)の水準ごとに、分配金50万円を足したときに増える額を計算しました。右端は、源泉徴収された10.2万円と、実際に増える所得税との差額です。
| 事業所得 | 所得税 | 住民税 | 国保 | 合計(分配金に対する割合) | 確定申告での精算 |
|---|---|---|---|---|---|
| 200万円 | 2.3万円 | 4.5万円 | 5.3万円 | 12.1万円(24.1%) | 7.9万円の還付 |
| 400万円 | 4.6万円 | 4.5万円 | 5.3万円 | 14.3万円(28.7%) | 5.6万円の還付 |
| 600万円 | 9.1万円 | 4.5万円 | 5.3万円 | 18.9万円(37.8%) | 1.1万円の還付 |
| 800万円 | 9.2万円 | 4.5万円 | 5.3万円 | 18.9万円(37.8%) | 1.1万円の還付 |
| 1,200万円 | 16.9万円 | 5.0万円 | 0.0万円 | 21.9万円(43.7%) | 6.6万円の追加納付 |
| 2,000万円 | 20.4万円 | 5.0万円 | 0.0万円 | 25.4万円(50.8%) | 10.2万円の追加納付 |
分配金200万円の場合
| 事業所得 | 所得税 | 住民税 | 国保 | 合計(分配金に対する割合) | 確定申告での精算 |
|---|---|---|---|---|---|
| 200万円 | 10.9万円 | 17.9万円 | 21.2万円 | 50.0万円(25.0%) | 29.9万円の還付 |
| 400万円 | 33.9万円 | 17.9万円 | 21.2万円 | 72.9万円(36.4%) | 7.0万円の還付 |
| 600万円 | 37.5万円 | 17.9万円 | 21.2万円 | 76.6万円(38.3%) | 3.3万円の還付 |
| 800万円 | 42.9万円 | 19.1万円 | 9.0万円 | 71.0万円(35.5%) | 2.0万円の追加納付 |
| 1,200万円 | 67.4万円 | 20.0万円 | 0.0万円 | 87.4万円(43.7%) | 26.6万円の追加納付 |
| 2,000万円 | 81.7万円 | 20.0万円 | 0.0万円 | 101.7万円(50.8%) | 40.8万円の追加納付 |
※ 東京23区・40歳未満・単身/2026年(令和8年)分基準。事業所得は青色申告特別控除の後。分配金は必要経費0円の雑所得として合算し、所得税・復興特別所得税・住民税・国民健康保険料の増加額を計算。個人事業税は変わらない前提(scripts/social-lending-bunpaikin.mjs で計算)
表から読み取れることは3つあります。
- 所得税だけ見れば、多くの人は払いすぎている。 精算が追加納付に転じるのは、分配金50万円なら事業所得450万円、200万円なら470万円からです。それより下の人は、申告すれば源泉税の一部が戻ります
- それでも合計の負担は20.42%を下回らない。 住民税と国保料が加わるため、分配金50万円なら事業所得110万円、200万円なら50万円の時点で20.42%を超えます。表の最も低い水準でも24〜25%です
- 事業所得が多い層では国保料が止まり、所得税が効く。 事業所得1,200万円以上は国保料が賦課限度額に達していて増えません。代わりに所得税の限界税率が上がり、合計は43.7〜50.8%になります
「源泉で20%引かれているから株と同じ」と考えると、事業所得が少ない人は精算の還付を見落とし、多い人は追加納付と国保料の両方を見落とします。どちらに転ぶかは本業の所得で決まります。
法人で受けると、本業の利益と合算される
法人が匿名組合員になる場合、分配金は益金として本業の利益と合算され、法人税・地方法人税・法人住民税・法人事業税がかかります。役員報酬を払った後に会社に残る利益の水準ごとに、増える法人税等を出しました。
| 会社に残る利益(分配金の前) | 分配金50万円 | 分配金200万円 |
|---|---|---|
| 0万円 | 10.6万円(21.3%) | 42.7万円(21.3%) |
| 200万円 | 10.7万円(21.3%) | 42.7万円(21.4%) |
| 400万円 | 11.3万円(22.5%) | 46.0万円(23.0%) |
| 600万円 | 11.6万円(23.2%) | 46.4万円(23.2%) |
| 800万円 | 11.8万円(23.6%) | 62.2万円(31.1%) |
| 1,200万円 | 16.8万円(33.6%) | 67.2万円(33.6%) |
| 2,000万円 | 16.8万円(33.6%) | 67.2万円(33.6%) |
※ 東京23区・合同会社/2026年(令和8年)分基準。法人税・地方法人税・法人住民税(法人税割)・法人事業税・特別法人事業税の増加額。均等割は利益に関係なく発生するため含まない。源泉徴収された所得税は法人税から全額控除されるため、負担には数えていない。会社から個人へ引き出すときの税は含まない
源泉税は全額が法人税から引ける
法人税法68条は、所得税法174条各号の利子・配当・利益の分配などに課された所得税を、法人税の額から控除するとしています。匿名組合契約の利益の分配は174条9号に入っています。
配当の場合は、元本を持っていた期間に応じて控除額を按分します。しかし法人税法施行令140条の2の按分の対象は剰余金の配当や集団投資信託の収益の分配などで、匿名組合の分配は「それ以外の所得税」として全額が控除対象です。控除するには、申告書に明細書(別表六(一))を付けます。書き方は法人の受取利息と所得税額控除で扱っています。
計上時期は「受け取った日」ではない
法人税基本通達14-1-3は、法人が匿名組合員である場合、実際に分配を受けていなくても、契約で分配を受けるべき金額を、匿名組合の計算期間の末日が属する事業年度の益金にするとしています。ファンドの計算期間と会社の決算期がずれると、入金は翌期でも利益は今期に入ります。決算の前に、運用中のファンドの計算期間を確かめておく必要があります。
比べると、どちらが軽いか
2つの表を並べると、分配金の負担は法人のほうが低く出ます。個人は事業所得200万円でも24〜25%、法人は会社に残る利益が600万円以下なら21〜23%です。個人は所得が増えると50.8%まで上がりますが、法人の上限は33.6%です。
ただし法人の数字は、会社の中に税引後のお金が残った段階の比較です。社長個人が使うには、役員報酬・退職金・配当で引き出す必要があり、そこでもう一度税がかかります。当サイトの判定ツールはこの引出コストを20%と置いています(計算の前提)。
法人で出資するなら、出資するお金そのものが会社の資金である必要もあります。会社の預金で社長個人の名義の口座に出資すれば、役員への貸付や給与の問題になります(役員貸付金の認定利息)。
なお、法人化した後に社長個人として出資を続ける場合、分配金は役員報酬(給与所得)と合算されます。国保から健康保険に切り替わるので、分配金で保険料が増えることはなくなります。また、給与を1か所から受けて年末調整を受けている人は、給与以外の所得の合計が20万円以下なら所得税の確定申告が不要です(国税庁 No.1900)。この場合、源泉の20.42%がそのまま所得税の負担として残ります。
赤字やデフォルトのときに差が出る
ソーシャルレンディングには、借り手の返済遅延やデフォルトで分配が止まったり、元本が戻らなかったりするリスクがあります。金融庁も、高い利回りの商品ほど返済遅延やデフォルトのリスクが高いことを認識するよう注意を促しています。
税の面では、損失が出たときの扱いが個人と法人で大きく違います。
- 個人:国税庁 No.2250 によれば、雑所得の金額の計算上生じた損失は、他の各種所得の金額から控除できません。分配金の雑所得で赤字が出ても、事業所得の黒字とは相殺されません
- 法人:法人税基本通達14-1-3により、匿名組合契約で負担すべき損失の額は、計算期間の末日が属する事業年度の損金になります。本業の利益と相殺されます
法人で株式投資すると税金は20.315%より高いかでも、損失が出たときは法人のほうが有利になると整理しました。ソーシャルレンディングも同じ構造です。金地金のような総合課税の譲渡所得との違いは金地金の売却益は個人と法人どちらが軽いかで扱っています。
まとめ
- 匿名組合型のソーシャルレンディングの分配金は、個人では雑所得として事業所得と合算され、法人では益金になる
- 源泉徴収の20.42%は所得税の前払いで、住民税と国保料は含まれない。個人の実際の負担は東京23区・単身で24〜51%
- 所得税だけ見ると、事業所得450万円前後より下の人は確定申告で源泉税の一部が戻る
- 法人では負担が21〜34%で、源泉税は法人税から全額控除される。ただし個人へ引き出すときの税が別にかかる
- 雑所得の赤字は他の所得と通算できないが、法人なら負担すべき損失は損金になる
分配金の税負担を決めるのは利回りより本業の所得です。一般論の数字ではなく、自分の売上と経費で、法人化した場合に会社に残る利益と役員報酬の水準を確かめてください。
よくある質問
分配金から20.42%引かれていれば、確定申告は要りませんか?
個人事業主はもともと確定申告をするので、分配金も雑所得として申告書に入れ、源泉徴収された所得税を差し引いて精算します。給与所得者でも、給与以外の所得の合計が20万円を超えると確定申告が必要です(国税庁 No.1900)。
分配金は事業所得にできますか?
所得税基本通達36・37共-21は、匿名組合員が営業者と共に事業を経営していると認められる場合に限り、営業の内容に従って事業所得などにするとしています。ファンドに出資するだけの投資家は、原則どおり雑所得です。
法人で受け取った分配金の源泉税は戻りますか?
法人税法68条により、法人税の額から控除されます。匿名組合契約の利益の分配は、配当のような元本所有期間による按分の対象外で、全額が控除対象です(法人税法施行令140条の2第1項2号)。控除しきれない分は還付されますが、申告書に明細(別表六(一))を付ける必要があります。
出典
- 金融庁 ソーシャルレンディングへの投資にあたってご注意ください
- 金融庁 ソーシャルレンディングの仕組み(匿名組合契約・金銭消費貸借契約の図、2019年5月)
- 国税庁 所得税基本通達 36・37共-21(匿名組合契約による組合員の所得)
- e-Gov法令検索 所得税法(第174条・第210条・第211条・第212条・第213条)
- e-Gov法令検索 東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法(第28条)
- e-Gov法令検索 法人税法(第68条)
- e-Gov法令検索 法人税法施行令(第140条の2)
- 国税庁 タックスアンサー No.5760 所得税額控除
- 国税庁 法人税基本通達 14-1-3(匿名組合契約に係る損益)
- 国税庁 タックスアンサー No.2250 損益通算
- 国税庁 タックスアンサー No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人
- 横浜市 保険料に関する用語説明(基準総所得金額に雑所得を含む)
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。