社会保険
家族が海外にいると扶養に入れる?留学中の子は法人化で保険が残る
結論
協会けんぽの被扶養者は令和2年4月から日本国内に住所(住民票)があることが要件ですが、留学中の学生、海外赴任する被保険者に同行する家族、一時的な渡航者などは「海外特例要件」で認定されます。国民健康保険は住民票がある人だけが対象で、1年以上の留学で転出届を出すと子の保険はなくなります。一人社長なら、留学中の子を保険料0円のまま健康保険に残せます。
- 国保で住民票を残したまま留学させると、海外にいる間も子1人分の保険料がかかる(東京23区・令和8年度で年67,073円)。1年以上の滞在は転出届が必要
- 親が海外に住んでいる場合は、国保でも協会けんぽでも扶養に入れない。法人化で変わるのは、日本に生活の基礎がある家族が一時的に海外にいる場合だけ
- 配偶者が子の留学に同行する場合は類型に当たらず個別判断。認められなければ配偶者は第3号から外れ、国民年金の在外任意加入なら年215,040円
このテーマの全体像 一人社長の社会保険料はいくらか
被扶養者の国内居住要件は、海外に移住する社長本人の話として語られることが多い制度です。ところが実際に効くのは、社長は日本にいて家族だけが海外にいる場面です。典型は子の海外留学です。
この場面では、個人事業主の国民健康保険と、一人社長の協会けんぽとで、家族の保険の残り方が逆になります。社長本人が海外に住む場合の扱いは海外療養費は法人化で申請先が変わるで扱っているので、ここでは家族の側に絞ります。
被扶養者は原則「住民票がある人」に限られた
令和2年4月1日から、健康保険の被扶養者(国民年金の第3号被保険者を含む)には、生計維持の要件に加えて日本国内に住所を有することが求められています。日本年金機構は、住所を住民票があることと並べて説明しています。
例外が「海外特例要件」です。日本年金機構の案内では、次の5つに当たる人は届出によって被扶養者になれます。
| 類型 | 対象 | 確認に使う書類の例 |
|---|---|---|
| (1) | 外国で留学をする学生 | 査証、学生証、在学証明書、入学証明書等の写し |
| (2) | 外国に赴任する被保険者に同行する者 | 査証、海外赴任辞令、海外の公的機関が発行する居住証明書の写し |
| (3) | 観光、保養、ボランティア活動など就労以外の目的で一時的に海外に渡航する者 | 査証、ボランティア派遣期間の証明、参加同意書等の写し |
| (4) | 被保険者の海外赴任中に身分関係が生じ、(2)と同等と認められる者 | 出生や婚姻等を証明する書類の写し |
| (5) | (1)〜(4)のほか、渡航目的などを考慮して日本国内に生活の基礎があると認められる者 | 個別に判断 |
どの類型も「日本に生活の基礎があり、一時的に海外にいる人」を想定しています。労働目的や渡航先への永住に変わったときは、海外特例要件に当たらなくなり、被扶養者から外す届出が必要です。
収入の要件はそのまま残ります。年間収入130万円未満(19歳以上23歳未満で配偶者でない人は150万円未満)で、海外で同居している場合は被保険者の収入の半分未満、別居なら仕送り額未満です。仕送りの事実は振込依頼書か通帳の写しで確認されます。
国保は住民票と一緒に動く
国民健康保険は、市区町村に住所がある人の制度です。江戸川区は、海外に移住する場合や1年以上海外に滞在する場合は転出届が必要だと案内しています。転出すれば国保の資格はなくなります。
逆に住民票を残したままにしておくと、海外にいる間も国保の保険料がかかります。国保の保険料は世帯の人数で均等割が積み上がるので、留学中の子の分も毎年請求されます。
同じ場面を、個人事業主と一人社長で並べると次のようになります。
| 家族の状況 | 個人事業主(国保) | 一人社長(協会けんぽ) |
|---|---|---|
| 子が1年以上海外に留学し、住民票を抜く | 子の国保の資格がなくなる。保険料は0円だが、日本の公的医療保険がない | 海外特例要件(1)で被扶養者のまま。保険料は0円 |
| 子が1年未満の短期留学で、住民票を残す | 国保のまま。子1人分の保険料がかかる | 被扶養者のまま。保険料は0円 |
| 社長が海外に移り、配偶者と子が同行する | 世帯全員の国保の資格がなくなる | 社長は被保険者のまま。家族は(2)に当たれば被扶養者(社長の移住が「赴任」に当たるかは実態による) |
| 配偶者が子の留学に付き添う(社長は日本) | 配偶者が転出すれば国保の資格がなくなる | (1)〜(4)に当たらず、(5)の個別判断 |
| 親が海外に住んでいる | 国保の対象外 | 被扶養者になれない |
一人社長の側で変わるのは、日本に生活の基礎がある家族が一時的に海外にいる場合だけです。親が海外に住んでいる場合はどちらの制度でも保険に入れられず、法人化しても何も変わりません。
留学中の子にかかる保険料
国保のまま子を短期留学させると、子1人分の保険料がかかり続けます。所得500万円の世帯(40歳未満)で、家族が1人増えたときに増える額を計算しました。
| 自治体 | 家族1人分の国保 |
|---|---|
| 東京23区 | 67,073円 |
| 名古屋市 | 68,146円 |
| 横浜市 | 55,940円 |
| 大阪市 | 47,926円 |
| 福岡市 | 31,287円 |
| 札幌市 | 27,980円 |
※ 令和8年度・40歳未満・子は19歳以上(子ども・子育て支援金分の軽減対象外)。世帯の所得は500万円で、上限に達している区分は家族が増えても増えない
※ 計算は当サイトの計算エンジン(scripts/hifuyosha-kaigai-kyoju.mjs)による
東京23区なら年67,073円です。1年以上の留学なら転出届を出すことになり、この保険料はなくなる代わりに、子は日本の公的医療保険の外に出ます。現地で病気をしたときに頼れるのは、留学先の保険や民間の保険だけです。
一人社長の子なら、海外特例要件(1)に当たる限り、保険料0円のまま協会けんぽの被扶養者に残ります。海外で受けた治療は、日本で同じ治療を受けた場合の額(実際に払った額のほうが低ければその額)を基準に、自己負担分を引いて海外療養費として戻ります。治療目的で渡航した場合は対象外で、支払いの翌日から2年で時効になります。
国保の均等割がそもそも家族の人数でどう積み上がるかは、子どもが多いほど法人化が有利?で計算しています。
配偶者が海外に出るときは、年金のほうが大きい
配偶者が子の留学に付き添う、社長の海外移住に同行する、という場面では、健康保険より国民年金の差が大きくなります。
個人事業主の配偶者は国民年金の第1号被保険者です。江東区の案内では、海外転出届を出すと転出日の翌日付で第1号の資格を失い、日本国籍なら在外任意加入の手続きで納付を続けられます。続けるなら保険料は令和8年度で年215,040円です。
一人社長の配偶者が被扶養者として認められれば、第3号被保険者のまま保険料0円で加入期間が積み上がります。第3号の期間は老齢基礎年金の額に反映され、満額847,300円(令和8年度)を480月で割ると、1年分で年金が年21,183円増える計算です。
| 配偶者が海外にいる1年 | 個人事業主の配偶者 | 一人社長の配偶者(被扶養者と認められた場合) |
|---|---|---|
| 国民年金の扱い | 第1号の資格を失う。在外任意加入は本人の選択 | 第3号のまま |
| 保険料 | 在外任意加入なら215,040円 | 0円 |
| 1年で増える老齢基礎年金 | 在外任意加入なら21,183円/年 | 21,183円/年 |
※ 令和8年度の国民年金保険料(月17,920円)と老齢基礎年金の満額(昭和31年4月2日以後生まれ)で計算
ただし配偶者の付き添いは、5つの類型のうち(1)〜(4)に当たりません。(5)の個別判断になり、認められなければ配偶者は被扶養者からも第3号からも外れます。社長自身が海外に移る場合は、配偶者と子は(2)の同行家族に当たりえますが、確認書類に海外赴任辞令が挙がっているとおり、会社の業務として赴任していることが前提です。社長本人の健康保険と社会保障協定の扱いは社会保障協定で海外在住の役員は二重加入を避けられるかで扱っています。
法人化の判定にどう効くか
当サイトの判定ツールは、家族全員が日本に住んでいる前提で国保と社会保険料を計算しています。家族の海外滞在は、損益分岐の計算そのものには入っていません。
効くのは、計算の外にある「家族の保険の残り方」です。子の留学を控えている世帯では、法人化すると子が保険料0円で日本の健康保険に残り、国保なら転出で保険がなくなるか、残して保険料を払い続けるかの二択になります。金額は年数万円でも、留学期間中の医療費の受け皿が変わります。法人化そのものの損得は一人社長の社会保険料と判定ツールで、自分の売上と経費を入れて確かめてください。
認定は届出の時点で日本年金機構が書類を見て判断します。とくに(5)の個別判断は基準額が公表されていないため、家族が出国する前に年金事務所へ確認しておくと、出国後に遡って外れる事態を避けられます。
まとめ
- 協会けんぽの被扶養者は令和2年4月から国内居住要件があるが、留学生・赴任への同行・一時的な渡航者などは海外特例要件で認定される
- 国保は住民票と一緒に動く。1年以上の留学で転出すれば子の保険はなくなり、残せば子1人分の保険料(東京23区で年67,073円)がかかり続ける
- 一人社長なら、留学中の子は保険料0円のまま被扶養者に残り、海外での治療は海外療養費の対象になる
- 配偶者の付き添いは個別判断。認められれば第3号のまま、外れれば在外任意加入で年215,040円
- 親が海外に住んでいる場合は、どちらの制度でも扶養に入れない。法人化で変わるのは一時的な海外滞在だけ
よくある質問
留学中の子を扶養に入れるには、どんな書類が要りますか。
日本年金機構の案内では、査証、学生証、在学証明書、入学証明書等の写しで海外特例要件を確認します。あわせて被保険者が作る被扶養者現況申立書と、続柄を確認できる書類が必要です。
留学先で現地の仕事を始めたら、扶養はどうなりますか。
労働目的や渡航先への永住などに変わると、海外特例要件に当たらなくなります。日本年金機構は、その場合は被扶養者から外す届出が必要としています。
子が海外にいる間の国民年金はどうなりますか。
20歳以上の子は第3号被保険者にならないため、親が個人事業主でも一人社長でも扱いは同じです。住民票を抜けば第1号の資格を失い、日本国籍なら在外任意加入を選べます。住民票を残していれば第1号のまま納付義務が続きます。
出典
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。