社会保険

介護施設の食費・居住費の軽減は社長の役員報酬で外れる?配偶者要件の線

結論

負担限度額認定は、入所者本人の世帯が住民税非課税で、配偶者も(別世帯でも)住民税非課税であることが条件です。社長の役員報酬が年175万円(特別区基準・配偶者を扶養する場合)を超えると配偶者要件で外れます。多床室なら軽減は年18.6万〜59.9万円で、売上800万・経費200万の会社では報酬を下げたときの手取り減18.7万円とほぼ同じ規模です(当サイト試算)。

  • 令和8年8月以降の多床室の食費+居住費は、第4段階(基準費用額)の日額2,460円に対し、第3段階②1,950円・第3段階①1,110円・第2段階820円
  • 段階の所得基準は、年金収入(非課税年金を含む)とその他の合計所得の合計で82万6,500円・120万円。預貯金等は第3段階②で単身500万円・夫婦1,500万円以下
  • 社長の報酬を最適額から月14.5万円に下げると、手取り(法人の税引後利益を含む)は売上600万で9.7万円、1,800万で67.4万円減る(当サイト試算)

この制度の正式名は特定入所者介護サービス費(介護保険法51条の3)で、自治体の窓口では「補足給付」「負担限度額認定」と呼ばれます。対象は特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護医療院と、ショートステイの食費・居住費です。

一人社長にとって問題になるのは、入所するのが自分でなくても、配偶者である社長の住民税で認定が外れることです。

認定の条件は3つ。配偶者は世帯が別でも数える

広島市の案内では、次のすべてを満たす人が対象です。

  1. 本人が住民税非課税世帯であること
  2. 配偶者(同一世帯・別世帯を問わない)が住民税非課税であること
  3. 本人と配偶者の預貯金等が基準以内であること

施設に入所して住民票を移すと、世帯は分かれます。それでも2の配偶者要件は残ります。同居の子の所得は世帯を分ければ外れますが、配偶者の所得は世帯の分け方では外せません。国保の世帯分離の損得は国保の世帯分離と法人化で別に扱っています。

有効期間は毎年8月1日から翌年7月31日までで、継続には毎年の申請が必要です(北九州市)。

段階ごとの食費・居住費(令和8年8月以降)

段階は、入所者本人の「課税年金収入+非課税年金収入(遺族年金・障害年金)+その他の合計所得金額」で決まります。令和7年8月に80万円から80万9,000円に変わった境目は、令和8年8月から82万6,500円になりました。

段階所得の合計預貯金等(単身/夫婦)居住費(多床室・日額)食費(日額)
第2段階82万6,500円以下650万円/1,650万円以下430円390円
第3段階①82万6,500円超120万円以下550万円/1,550万円以下430円680円
第3段階②120万円超500万円/1,500万円以下530円1,420円
第4段階上記以外—915円1,545円

※ 広島市が示す令和8年8月以降の額。第4段階は国の基準費用額で、実際の額は施設との契約で決まる。第1段階(生活保護・老齢福祉年金受給者)は省略

この日額から、第4段階との差を年額にしました。

段階食費+居住費(日額)第4段階との差(年額)
第3段階②1,950円18.6万円
第3段階①1,110円49.3万円
第2段階820円59.9万円

※ 当サイト計算(365日入所の場合)。scripts/hosoku-kyufu-yakuin-hoshu.mjs

配偶者の年金が年120万円を超えていれば第3段階②で年18.6万円、120万円以下なら第3段階①で年49.3万円の軽減です。

社長の住民税が非課税になる報酬の線

配偶者要件を満たすには、社長自身が住民税非課税でなければなりません。特別区の基準では、同一生計配偶者がいる場合、合計所得金額が「35万円×2+31万円=101万円」以下なら均等割もかかりません(世田谷区)。

役員報酬だけで考えると、令和8年分の給与所得控除の最低保障額74万円を足して**年175万円(月14.5万円程度)**です。家族構成ごとの線は役員報酬を下げて住民税非課税にできるかで一覧にしています。

当サイトの計算エンジンは住民税の非課税限度額を判定しないため、この線は本文で別に計算しました。また、65歳以上の社長が老齢年金を受け取っていれば、その所得も合計所得に加わるため、報酬の線はさらに下がります。年金額は人によって違うので、ここでは報酬だけの場合を示しています。

報酬を下げたときの手取り減と並べる

社長の報酬を、手取りが最大になる額(総当たり)から月14.5万円まで下げた場合の手取りの減少です。手取りは社長個人の手取りに法人の税引後利益を足したものです。

売上・経費最適報酬(月)最適時の手取り月14.5万時の手取り手取りの減少
売上600万・経費200万28.0万円280.0万円270.3万円9.7万円
売上800万・経費200万42.0万円414.9万円396.1万円18.7万円
売上1200万・経費200万54.0万円669.6万円642.2万円27.3万円
売上1800万・経費300万54.0万円979.2万円911.8万円67.4万円

※ 当サイトの計算エンジンによる試算(令和8年分の税率データ)。東京23区・協会けんぽ東京・65歳以上・配偶者あり・インボイス登録あり・合同会社。設立費用・税理士報酬は含めない。住民税の非課税は反映していないため、月14.5万時の手取りは実際より最大で均等割の分だけ少なく出る

売上600万円の会社なら、配偶者が第3段階②(軽減18.6万円)でも手取り減9.7万円を上回ります。売上800万円では軽減18.6万円と手取り減18.7万円がほぼ並び、売上1,800万円では第2段階の59.9万円でも手取り減67.4万円に届きません。報酬を下げても会社の利益は法人税等を払って残るだけなので、事業の利益が大きいほど下げる損が大きくなります。

ここに挙げた手取り減には、低い報酬で受け取る将来の厚生年金の減少は入っていません。

預貯金の基準と、法人に残る利益

所得が基準内でも、本人と配偶者の預貯金等が基準を超えれば認定されません。報酬を下げて法人に利益を残すと、個人の預貯金は増えにくくなりますが、法人名義の預金が判定でどう扱われるかは、確認した自治体の案内に記載がありませんでした。申請先で確認が必要な点です。

なお、住民税が課税される世帯でも、2人以上の世帯で施設費用を除いた世帯収入が82万6,500円以下、預貯金等450万円以下などの要件を満たすと、第3段階②の負担限度額が適用される特例があります(広島市)。

高額介護サービス費(利用者負担の月上限)は課税所得で区分が動く別の制度で、高額介護サービス費と法人化で計算しています。報酬の額でどの区分に入るかは制度ごとに違うので、まず判定ツールで自分の売上と経費の最適報酬を出し、その額で各制度の線と比べてください。

まとめ

  • 負担限度額認定は、入所者の世帯が住民税非課税で、配偶者も(別世帯でも)非課税であることが条件
  • 令和8年8月以降、段階の境目は82万6,500円と120万円。多床室の軽減は第4段階比で年18.6万〜59.9万円
  • 配偶者を扶養する社長が非課税になる報酬の目安は、特別区基準で年175万円。年金収入があれば線は下がる
  • 最適報酬から月14.5万円に下げた手取り減は、売上600万で9.7万円、800万で18.7万円、1,800万で67.4万円

よくある質問

施設に住民票を移して世帯を分ければ、社長の所得は関係なくなりますか?

世帯が分かれても、配偶者が住民税非課税であることは別の条件として残ります。配偶者以外の子などであれば、世帯を分けるとその所得は判定から外れます。

法人に残した預金は、本人の預貯金等に含まれますか?

判定の対象は本人と配偶者の預貯金等です。法人名義の預金の扱いは自治体の案内で明示されていないため、申請先の市区町村に確認してください。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。