社会保険

入院中の食費は1食550円。役員報酬で非課税270円にする損得

結論

入院時の食事代は令和8年6月1日から1食550円(一般)で、住民税非課税なら90日までは270円です。1日3食で840円、30日の入院で2万5,200円の差になります。ただし売上800万・経費200万の単身の一人社長が役員報酬を非課税ライン(月9.9万円)まで下げると、手取りは最適報酬より22.3万円減り、食費の差で取り返すには266日の入院が要る試算です(当サイト試算)。

  • 食事代は高額療養費の対象外。月の医療費が限度額に達しても、1食550円は別にかかり続ける
  • 協会けんぽの減額は「被保険者の市区町村民税が非課税」で判定。国保は世帯主と国保加入者全員が非課税であることが条件
  • 非課税ラインまで報酬を下げた手取り減は、売上600万〜1,000万円で9.7万〜26.3万円。食費の差で取り返すには116〜314日の入院が要る(当サイト試算)

入院すると、医療費の3割とは別に食事代がかかります。この食事代の自己負担を標準負担額といい、健康保険法85条の入院時食事療養費から差し引かれる額として厚生労働大臣が定めています。

1食510円と書かれた資料がまだ多く出回っていますが、それは令和8年5月までの額です。令和8年6月1日から一般は1食550円になりました。役員報酬の額でこの負担が変わるのは、住民税非課税になる帯だけです。

令和8年6月から1食550円。非課税なら270円

協会けんぽが示す1食あたりの標準負担額です。大田区の国民健康保険の案内も同じ額を示しています。

区分令和7年4月〜令和8年5月令和8年6月1日から
一般510円550円
指定難病・小児慢性特定疾病の患者(住民税非課税世帯を除く)300円330円
住民税非課税(過去1年の入院が90日まで)240円270円
住民税非課税(過去1年の入院が90日超)190円220円
住民税非課税で所得が基準未満の70歳以上110円130円

1日の負担は3食分が上限です。指定難病などの医療費助成と所得区分の関係は難病の医療費助成と法人化で扱いました。

食事代は高額療養費の外にある

協会けんぽの記入の手引きは、高額療養費の自己負担限度額の対象外として「入院時の食事負担額等」を挙げています。医療費が月の限度額に達しても、食事代は1食550円のまま積み上がります。

入院日数ごとの食事代を当サイトのスクリプトで出しました。

入院日数一般(550円)住民税非課税(270円)差
7日11,550円5,670円5,880円
14日23,100円11,340円11,760円
30日49,500円24,300円25,200円
60日99,000円48,600円50,400円
90日148,500円72,900円75,600円

※ 1日3食で計算。90日を超える入院(長期該当)では非課税の額が220円になり、1日の差は990円に広がる

高額療養費の区分は役員報酬の等級で決まり、報酬が高いほど限度額も上がります(高額療養費の区分は法人化で入れ替わる)。一方で食事代は、課税か非課税かの二択です。月40万円の報酬でも月90万円の報酬でも、1食550円で変わりません。

判定の単位が、協会けんぽと国保で違う

減額を受けるための「住民税非課税」を、誰について見るかが保険者によって違います。

個人事業主(国民健康保険)法人の役員(協会けんぽ)
判定の対象世帯主と国保加入者全員が住民税非課税被保険者の市区町村民税が非課税など
減額の受け方マイナ保険証、または限度額適用・標準負担額減額認定証減額認定申請書を支部に提出し、認定証を窓口に提出
90日超の扱い過去12か月に90日を超えた入院で、認定証が必要過去1年の入院が90日超で220円

大田区は、非課税世帯の条件を「世帯主と国保加入者全員が住民税非課税」としています。協会けんぽの手引きは対象を被保険者の市区町村民税が非課税などによる低所得者としています。国保は世帯で、協会けんぽは被保険者本人で判定する書き方です。

法人化すると、この判定の単位が世帯から社長本人に移ります。国保の世帯の数え方は、国保の世帯分離と法人化で扱いました。

国保は判定の年度が8月で切り替わる

大田区は、8月から翌年7月までの食事代をその年度の住民税の所得で判定するとしています。住民税は前年の所得で決まるので、今年報酬を下げても、減額されるのは翌年8月以降の入院です。

また、マイナ保険証を使わない非課税世帯は減額認定証が必要で、マイナ保険証を使っていても90日を超える入院では認定証が要ります。減額なしで払った場合は、申請で差額が支給されることがあり、支払いから2年で時効になります(大田区)。

役員報酬をいくらにすれば非課税になるか

特別区の基準では、単身なら合計所得45万円以下で住民税は均等割も所得割もかかりません。令和8年分の給与所得控除の最低保障額74万円を足すと、役員報酬で年119万円(月9万9,000円程度)です。配偶者を扶養していれば年175万円(月14万5,000円程度)が均等割もかからない目安になります。計算の過程は役員報酬を下げて住民税非課税にできるかにまとめました。

協会けんぽの手引きは対象を「市区町村民税が非課税」としているため、ここでは均等割もかからない線を使います。所得割だけがかからない線では足りない点に注意が必要です。

報酬を下げた手取り減を、食費の差で取り返せるか

売上別に、手取りが最大になる役員報酬と、非課税ラインまで下げた報酬の手取りを比べました。右端は、手取りの減少を非課税の食費の差(1日840円)で割った入院日数です。

条件最適報酬(月)最適時の手取り非課税ラインその手取り手取りの減少取り返すのに要る入院日数
単身・売上600万28.0万円274.5万円月9.9万円262.2万円12.4万円148日
単身・売上800万42.0万円409.7万円月9.9万円387.4万円22.3万円266日
単身・売上1,000万54.0万円536.6万円月9.9万円510.3万円26.3万円314日
配偶者あり・売上600万28.0万円280.0万円月14.5万円270.3万円9.7万円116日
配偶者あり・売上800万42.0万円414.9万円月14.5万円396.1万円18.7万円224日
配偶者あり・売上1,000万54.0万円543.8万円月14.5万円519.3万円24.4万円291日

※ 経費200万円・東京23区・協会けんぽ東京・40歳未満・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み・合同会社/2026年(令和8年)分基準。手取りは社長の手取り+法人に残る額(引き出しコスト20%控除後)。計算エンジンは住民税の非課税を判定しないため、非課税ラインの手取りは住民税の分(最大2万円程度)だけ低めに出る。食費の差だけで割った日数で、高額療養費の区分の変化は含めない(scripts/nyuin-shokuji-hyojun-futan.mjs)

最も条件のよい配偶者ありの売上600万円でも、年116日の入院でようやく並びます。食事代の軽減だけを理由に報酬を下げると、ほとんどの場合に手取り全体が減る試算です。

非課税になると高額療養費の区分もオ(月36,900円)に下がるため、長期の入院や治療が続く年は差が縮みます。ただし役員報酬は事業年度の途中で下げると定期同額給与の問題が生じ(役員報酬を期中に変更すると)、前述のとおり減額に反映されるのは翌年8月以降です。入院が決まってから報酬を下げても、その入院には間に合いません。

65歳以上で療養病床に入ると、居住費も加わる

65歳以上の人が療養病床に入院した場合は、入院時食事療養費ではなく入院時生活療養費の対象になり、食費に加えて居住費がかかります。大田区の案内では、一般は食費1食550円(一部の医療機関は510円)と居住費1日430円です。住民税非課税で過去1年の入院が90日を超えると、食費220円・居住費220円になります。

介護保険施設に入所する場合は、別の制度(特定入所者介護サービス費)で食費・居住費が軽減され、こちらは配偶者の非課税まで見られます(介護施設の負担限度額認定と役員報酬)。

まずは判定ツールで自分の売上と経費から最適な役員報酬を出し、その額が非課税ラインからどれだけ離れているかを確かめてください。

まとめ

  • 入院時の食事代は令和8年6月1日から1食550円(一般)、住民税非課税なら90日まで270円、90日超は220円
  • 食事代は高額療養費の対象外で、課税か非課税かの二択。役員報酬の高低では変わらない
  • 協会けんぽは被保険者の市区町村民税が非課税かで判定し、国保は世帯主と国保加入者全員の非課税が条件
  • 非課税ラインまで報酬を下げた手取り減は、売上600万〜1,000万円で9.7万〜26.3万円。食費の差で取り返すには116〜314日の入院が要る
  • 国保の判定は8月から翌年7月までをその年度の住民税で行うため、報酬を下げても減額は翌年8月以降

よくある質問

入院中の食事代は高額療養費で戻ってきますか?

戻りません。協会けんぽの案内は、高額療養費の自己負担限度額の対象外として入院時の食事負担額を挙げています。食事代は医療費とは別に、1食ごとの標準負担額を払います。

住民税非課税なのに減額されずに払った食事代は取り戻せますか?

大田区の国民健康保険では、マイナ保険証や認定証を出さずに減額なしで払った場合、申請により差額が支給されることがあり、支払いから2年で時効になるとしています。協会けんぽの差額支給の扱いは、加入している支部に確認してください。

配偶者が働いていて住民税がかかっていても、社長が非課税なら減額されますか?

協会けんぽの記入の手引きは、対象を「被保険者の市区町村民税が非課税などによる低所得者」としています。国民健康保険のように世帯全員の非課税を条件とする書き方ではありません。個別の扱いは協会けんぽの支部で確認してください。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。