税金の基礎

法人事業税の損金算入はいつ?翌期になる理由と1期目の差

結論

法人事業税と特別法人事業税は、納税申告書を提出した日の属する事業年度の損金になります(法人税基本通達9-5-1)。確定申告は決算後2か月以内に出すため、通常は翌期の損金です。利益800万円が毎期続く場合、1期目は損金に入る事業税が0円のため法人税等が定常状態より11.2万円多く、3期目にはほぼ同額に収束します(東京23区・中小法人の概算)。

  • 中間申告書で納めた事業税は、その申告書を出した期(当期)の損金。確定申告分だけが翌期にずれる
  • 決算で未払計上した事業税は、その期の申告で加算し、申告した翌期に減算する。計上しても損金の時期は早まらない
  • 利益1,500万円の翌期に300万円へ落ちると、前期分の事業税等115.3万円が翌期の所得を184.6万円まで下げる

決算で法人税等を計算すると、損益計算書の「法人税、住民税及び事業税」には当期分の事業税も入っています。それでも当期の所得からは引けません。引けるのは前期分です。この1期のずれが、1期目と利益が動いた年の税額にどう効くかを順に見ます。

損金になるのは「申告書を出した期」

法人税基本通達9-5-1は、損金になる国税・地方税の時期を課税方式ごとに定めています。法人事業税と特別法人事業税は申告納税方式です。

課税方式例損金になる事業年度
申告納税方式法人事業税・特別法人事業税・事業所税納税申告書を提出した日の属する期。更正・決定分はその日の属する期
賦課課税方式固定資産税・自動車税賦課決定のあった期。納期開始日や納付日の期に損金経理すればその期
特別徴収方式ゴルフ場利用税など納入申告書を出した期
利子税・一部の延滞金納期限延長の利子税納付した期。未払計上して損金経理すればその期

法人事業税の確定申告期限は、事業年度終了の日から2か月以内です(東京都主税局)。3月決算なら5月に申告します。申告書を出すのは翌事業年度の中なので、当期分の事業税は翌期の損金になります。

固定資産税は「未払計上して損金経理すれば早められる」余地があります。事業税にはこの選択肢がありません。表の上下で扱いが違うのは、税額が確定する仕組みが違うためです。賦課課税は自治体が税額を決めた時点で債務が確定します。申告納税は申告して初めて税額が確定します。

法人税・住民税はそもそも損金にならない

国税庁のタックスアンサーNo.5300は、損金不算入の租税として法人税、地方法人税、道府県民税・市町村民税の本税を挙げています。つまり時期の問題が生じるのは事業税側だけです。

税目損金算入時期
法人税・地方法人税不可—
法人住民税(法人税割・均等割)不可—
法人事業税(所得割)可申告書を提出した期
特別法人事業税可申告書を提出した期

中小法人の利益にかかる税は、損金になる税と、ならない税の2層です。それぞれの税率は法人税15%は本当かでまとめています。

中間申告分と未払計上分の扱い

中間申告で納めた分は当期の損金

前期の法人税額が一定額を超えると、期の途中で中間申告をします。中間申告書も納税申告書です。9-5-1の規定どおり、中間申告書を提出した期の損金になります。

その結果、1つの期の損金に入る事業税は2つの部分からなります。

  • 前期分の確定申告で納めた額
  • 当期分の中間申告で納めた額

確定申告で納める額は、年税額から中間納付額を差し引いた残りです。ずれるのはこの残りだけです。中間申告が必要になる境界は法人税の中間申告は20万円超から?で計算しています。

未払計上しても損金の時期は早まらない

決算では、当期分の事業税を「未払法人税等」として負債に計上するのが一般的です。しかし事業税は申告納税方式です。損金経理で未払計上しても、9-5-1の時期は動きません。

申告書の別表四では次のように調整します。

期会計上の処理別表四での調整
計上した期当期分の事業税を費用に計上損金にならないため加算
申告した翌期未払法人税等を取り崩して納付(費用に出ない)損金になるため減算

別表四の記載の仕方は、費用に計上したが当期の損金にならないものを加算、費用に計上しなかったが当期の損金になるものを減算とする、と説明しています。事業税の未払計上はこの典型です。会計ソフトで「法人税等」を一括計上している場合、翌期の減算を忘れると、前期分の事業税をどの期でも損金にしないまま申告することになります。自分で申告する場合のつまずきどころは法人の決算申告は自分でできるかにまとめています。

前期分が申告前でも当期の損金にできる特例

法人税基本通達9-5-2は、直前年度分の事業税・特別法人事業税について、当期末までに申告していなくても当期の損金にできるとしています。申告期限の延長や決算期の変更で、申告が当期末より後になる場合に効きます。後で申告額との過不足が出たら、申告等のあった期の益金・損金で調整します。

毎期同じ利益なら3期目でほぼ追いつく

利益が毎期同じなら、前期分の事業税と当期分の事業税はほぼ同じです。1期ずれても差はほとんど残りません。ずれが目立つのは、前期が存在しない1期目です。

税率・端数処理は判定ツールの計算エンジンと同じにして、時期を正しく再現しました。

期税引前利益損金になる前期分の事業税等所得当期分の事業税等法人税等(実際の時期)法人税等(定常状態の近似)差
1期目800万円0.0万円800.0万円48.2万円196.0万円184.8万円11.2万円
2期目800万円48.2万円751.7万円44.7万円183.9万円184.8万円-0.8万円
3期目800万円44.7万円755.2万円45.0万円184.8万円184.8万円0.1万円
4期目800万円45.0万円755.0万円44.9万円184.8万円184.8万円0.0万円

※ 東京23区・資本金1,000万円以下の中小法人。中間申告なし。法人税等は法人税・地方法人税・法人住民税(均等割7万円を含む)・法人事業税・特別法人事業税の合計。scripts/houjin-jigyozei-sonkin-jiki.mjs

1期目は所得から引ける事業税がないため、法人税等が11.2万円多くなります。利益400万円で同じ計算をすると、1期目の差は4.1万円です。2期目は前期分48.2万円を引くので、逆に0.8万円少なくなります。3期目からは差が0.1万円以内に収まります。

1期目の差は消えるわけではありません。会社を続ける限り、最後の期の事業税は常に翌期へ送られます。解散するまで、1期分の事業税の損金が後ろにずれ続けるのが実態です。

判定ツールは定常状態の近似で計算している

当サイトの計算エンジンは、法人事業税・特別法人事業税について、当期発生額を当期の損金とみなす近似を置いています。毎年同程度の利益が続く定常状態を比べるためです。上の表の「定常状態の近似」の列がその値です。

この近似は3期目以降の実際の税額とほぼ一致します。一方、設立1期目の法人税等は、表示より少し多くなります。利益800万円なら11.2万円、400万円なら4.1万円です。計算の前提は当サイトについてでも公開しています。

利益が大きく動く年は1期のずれが効く

前期と当期の利益が大きく違うと、前期分の事業税の大きさが当期の所得に対して不釣り合いになります。

期税引前利益損金になる前期分の事業税等所得当期分の事業税等法人税等(実際の時期)法人税等(定常状態の近似)差
1期目1500万円0.0万円1500.0万円115.3万円453.6万円414.8万円38.8万円
2期目300万円115.3万円184.6万円8.8万円48.3万円71.0万円-22.7万円
3期目800万円8.8万円791.1万円47.6万円193.7万円184.8万円9.0万円
4期目800万円47.6万円752.4万円44.8万円184.1万円184.8万円-0.7万円

※ 前提は上の表と同じ。scripts/houjin-jigyozei-sonkin-jiki.mjs

利益1,500万円の期の事業税等115.3万円は、翌期の損金です。翌期の利益が300万円に落ちると、所得は184.6万円まで下がります。2期目の法人税等は48.3万円で、同じ300万円を定常状態で計算した71.0万円より22.7万円少なくなります。反対に、利益が戻った3期目は前期分の事業税が8.8万円しかなく、9.0万円多くなります。

前期分の事業税で赤字になったら欠損金になる

好調の翌期に赤字になると、前期分の事業税はその期の欠損を広げます。

期税引前利益損金になる前期分の事業税等所得当期分の事業税等法人税等(実際の時期)
1期目1200万円0.0万円1200.0万円86.6万円343.2万円
2期目-100万円86.6万円0.0万円0.0万円7.0万円
3期目600万円0.0万円413.4万円20.1万円99.9万円

※ 欠損金は翌期以降の所得から控除する前提。前提は上の表と同じ。scripts/houjin-jigyozei-sonkin-jiki.mjs

2期目の欠損は100万円に事業税等86.6万円を加えた186.6万円です。これが3期目の利益600万円から引かれ、所得は413.4万円になります。前期分の事業税は消えずに、欠損金の繰越しを通じて後の期で効きます。欠損金を繰り越すには青色申告などの要件があります。詳しくは欠損金の繰越しは10年を参照してください。

個人事業税は「払った年」の必要経費

個人事業主の個人事業税も、前年の所得に対して翌年課税されます。国税庁のタックスアンサーNo.2210は、事業税を全額必要経費になる租税として挙げています。継続中の事業では、実際に納付した年の必要経費とするのが原則です。

区分損金・必要経費になる時期時期を早める方法
法人事業税・特別法人事業税申告書を提出した期(通常は翌期)なし(直前年度分は9-5-2の特例)
個人事業税納付した年(通常は翌年)廃業年分は見込額をその年に算入できる

法人成りして個人事業を廃止すると、翌年の個人事業税を受け止める事業所得がなくなります。そのため廃業年分は見込額を前倒しで必要経費にできます。手順は法人成りした年の個人事業税は見込額を経費にできるで整理しています。法人化した年は、個人側で見込控除、法人側で1期目の損金ゼロという2つの時期のずれが同時に起きます。

まとめ

  • 法人事業税・特別法人事業税は、申告書を提出した期の損金です。確定申告分は通常翌期になります
  • 中間申告分はその期の損金です。未払計上分は計上した期に加算し、申告した翌期に減算します
  • 法人税・地方法人税・法人住民税の本税は、いつ払っても損金になりません
  • 利益800万円が毎期続く場合、1期目の法人税等は定常状態より11.2万円多く、3期目でほぼ一致します
  • 利益が大きく動いた翌期は、前期分の事業税で所得が大きく下がり、赤字なら欠損金として繰り越されます

判定ツールの数字は定常状態の概算です。1期目の上振れも含めて、ご自分の売上と経費で比較してみてください。

よくある質問

法人事業税は払った期と申告した期のどちらの損金ですか?

申告納税方式の税金なので、原則は納税申告書を提出した日の属する事業年度の損金です(法人税基本通達9-5-1)。申告と納付が同じ期に行われることが多いため、実務上はほとんど一致します。

法人税や法人住民税も翌期の損金になりますか?

なりません。法人税、地方法人税、法人住民税(道府県民税・市町村民税)の本税は、いつ払っても損金不算入です。損金になるのは法人事業税・特別法人事業税などに限られます。

前期分の事業税の申告がまだでも、当期の損金にできますか?

法人税基本通達9-5-2により、直前の事業年度分の事業税・特別法人事業税は、当期末までに申告されていなくても当期の損金にできます。後で申告額との過不足が出たら、申告等のあった期で調整します。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。