税金の基礎
法人化すると領収書に印紙が要る業種。医師・士業・治療院と医療法人の違い
結論
医師・歯科医師・柔道整復師・はり師などの医療系の資格者と、弁護士・税理士・司法書士・行政書士・建築士・技術士などの士業が個人で業務上出す領収書は、国税庁の通達で「営業に関しない受取書」とされ、印紙税がかかりません。株式会社・合同会社や士業法人で受け取ると営業に関する受取書になり、5万円以上100万円以下の売上代金の領収書1通に200円の印紙が要ります。医療法人の領収書は非課税のままです。
- それ以外の個人事業主(デザイナー、エンジニア、小売など)は個人でも営業者なので、法人化しても印紙税の扱いは変わらない
- 紙で出す5万円以上の領収書が年120通なら年2万4,000円。金額は小さいが、法人化で新しく生じる費用になる
- PDFを電子メールで送る領収書は課税文書の作成に当たらず、印紙は要らない
このテーマの全体像 会社設立の手続き(自分でやる手順と届出)
法人化の費用として設立登記や税理士報酬はよく挙げられますが、業種によっては、領収書の印紙税が法人化した時点から新しくかかります。個人のうちは非課税だった資格者の領収書が、株式会社や士業法人にすると課税文書になるからです。どの業種が対象で、どの法人の形なら変わらないのかを、国税庁の通達で確かめます。
印紙税がかからないのは「営業に関しない受取書」
領収書は印紙税法の第17号文書「金銭又は有価証券の受取書」に当たり、売上代金の受取書なら受取金額5万円以上で印紙税がかかります。ただし、営業に関しない受取書は非課税です。
国税庁のタックスアンサー(No.7105)は、ここでいう営業を「おおむね営利を目的として同種の行為を反復継続して行うこと」とし、株式会社などの営利法人や個人である商人の行為は営業になる一方、公益法人や商人以外の個人の行為は営業に当たらないと説明しています。
つまりふつうの個人事業主は、個人でも営業者です。デザイナー、エンジニア、小売店、飲食店が5万円以上の売上代金を受け取って紙の領収書を出せば、個人でも印紙が要ります。この人たちは、法人化しても印紙税の扱いは変わりません。
医療系の資格者と士業は、個人なら非課税
印紙税法基本通達は、業務上作る受取書を営業に関しないものとして扱う資格者を列挙しています。
| 区分 | 通達が挙げる資格者 |
|---|---|
| 医師等(別表第一 第17号文書 25) | 医師、歯科医師、歯科衛生士、歯科技工士、保健師、助産師、看護師、あん摩・マッサージ・指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師、獣医師等 |
| 弁護士等(同 26) | 弁護士、弁理士、公認会計士、計理士、司法書士、行政書士、税理士、中小企業診断士、不動産鑑定士、土地家屋調査士、建築士、設計士、海事代理士、技術士、社会保険労務士等 |
※ 国税庁「印紙税法基本通達 別表第一 第16号〜17号文書」より
開業医、歯科医、整骨院・鍼灸院の先生、税理士・行政書士・社労士、一人で設計事務所を営む建築士、技術士やコンサルタントとして働く中小企業診断士などは、個人のうちは何通領収書を出しても印紙が要りません。
法人の形で、印紙税の扱いが分かれる
この人たちが法人化すると、法人の形によって扱いが分かれます。
| 法人の形 | 受取書の扱い | 根拠 |
|---|---|---|
| 株式会社・合同会社 | 営業に関する受取書(課税) | 営利法人は営業者 |
| 営利法人組織の病院等・営利法人が経営する病院等 | 営業に関する受取書(課税) | 通達 第17号文書 27 |
| 医療法人(医療法39条) | 営業に関しない受取書(非課税) | 通達 第17号文書 27 なお書き |
| 士業法人(税理士法人・行政書士法人など) | 営業に関する受取書(課税) | 会社法の利益の配当の規定を準用する法人 |
| 公益法人 | 営業に関しない受取書(非課税) | 通達 第17号文書 22 |
医師が医療法人を作る場合は、領収書は非課税のままです。一方、整骨院や鍼灸院、歯科技工所、設計事務所を株式会社や合同会社にすると、5万円以上の領収書から課税になります。施術の窓口でもらう少額の領収書は5万円未満で非課税なので影響しませんが、回数券やまとめ払い、法人顧客への請求で5万円を超える受領があれば、その領収書には印紙が要ります。
士業の場合は、株式会社では業務ができない資格が多く、税理士法人・行政書士法人などの士業法人を作ることになります。士業法人は会社法の利益の配当の規定を準用しているため、その受取書は営業に関するものとされます。行政書士法人・社労士法人の設立と印紙税は士業の法人化で詳しく扱っています。
建築士・技術士・中小企業診断士・不動産鑑定士のように株式会社で業務ができる資格は、株式会社や合同会社にした時点で課税になります。
年額にすると数千円〜数万円
売上代金の受取書の印紙税は、受取金額で決まります(No.7105)。
| 受取金額 | 印紙税 |
|---|---|
| 30,000円 | 非課税 |
| 49,999円 | 非課税 |
| 50,000円 | 200円 |
| 330,000円 | 200円 |
| 1,000,000円 | 200円 |
| 1,500,000円 | 400円 |
| 2,500,000円 | 600円 |
| 4,000,000円 | 1,000円 |
| 8,000,000円 | 2,000円 |
※ 売上代金の受取書。1,000万円を超えるものは No.7141 の税額による。消費税額等が区分記載されていれば税抜金額で判定する
年間売上1,200万円を毎月同額で受け取る場合、受け取り方によって年額は次のようになります。
| 受け取り方 | 1通の金額 | 1通の印紙税 | 年間 |
|---|---|---|---|
| 月1回・顧問料など1件 | 1,000,000円 | 200円 | 2,400円 |
| 月10件 | 100,000円 | 200円 | 24,000円 |
| 月40件 | 25,000円 | 非課税 | 0円 |
※ すべて紙で交付した場合。電子メールのPDFや、振込で領収書を出さない場合は0円
1件あたりが5万円以上で件数が多い業種ほど、年額は大きくなります。月10件・1件10万円の受取りを紙の領収書で続ければ年2万4,000円です。法人化の判定を動かすほどではありませんが、個人のときにはなかった費用であり、会計処理と印紙の管理という事務も増えます。
電子メールのPDFなら印紙は要らない
印紙税は紙の文書にかかる税です。国税庁の質疑応答事例「取引先にメール送信した電磁的記録に関する印紙税の取扱い」は、注文請書の代わりに電子メールで送った電磁的記録について、課税の対象は課税物件表に掲げる文書であり、電磁的記録は文書に含まれないとしています。領収書も同じ考え方で、PDFの領収書をメールで送る、請求書の発行サービスで電子的に交付するといった方法なら、法人化しても印紙は要りません。
ただし、電子メールで送った後に、同じ内容の紙の領収書を手渡したり郵送したりすれば、その紙は課税文書になります。また、振込で入金を受ける取引は、相手が求めなければ領収書を出さないことも多く、その場合は文書そのものがありません。
なお、5万円の判定は、領収書に消費税額等を区分して書いていれば税抜金額で行えます(No.7124)。税抜48,000円・消費税4,800円と書けば非課税です。
法人化の費用として何を足すか
医療系の資格者と士業が法人化を検討するときは、判定ツールの固定費(設立費用・税理士報酬・均等割)に加えて、次を確認しておくと漏れがありません。
- 紙で出している5万円以上の領収書の枚数と金額(法人化後の印紙税)
- 医療法人・士業法人の場合の設立手続と、株式会社とは違う費用(定款認証、会の入会金など)
- 個人で非課税だった事業税・消費税の扱い(医療の保険診療は個人事業税が非課税など、業種ごとの差)
整骨院・鍼灸院の法人化の損得は整骨院・鍼灸院の法人化で、開業医の医療法人化は開業医の医療法人化と概算経費で扱っています。法人化に伴って新しく生じる費用と手続きの全体像は、会社設立を自分でやる手順にまとめています。
まとめ
- 医師・歯科医師・柔道整復師などの医療系の資格者と、弁護士・税理士・建築士・技術士などの士業が個人で出す領収書は、営業に関しない受取書で非課税
- 株式会社・合同会社・士業法人で受け取ると課税になり、5万円以上100万円以下の領収書1通に200円の印紙が要る。医療法人は非課税のまま
- ふつうの個人事業主は個人でも営業者なので、法人化しても印紙税の扱いは変わらない
- 年額は紙の領収書の枚数と金額で決まり、1件10万円・月10件で年2万4,000円
- PDFを電子メールで送る領収書には印紙税がかからない
業種ごとの事情を除いた税と社会保険の損得は、自分の売上と経費で判定ツールにかけて確かめてください。
よくある質問
個人のデザイナーやエンジニアの領収書には、印紙が要りますか。
要ります。営業に関しない受取書になるのは、医師・弁護士などの限られた資格者や、店舗を持たない農林漁業者の自家生産物の販売などです。それ以外の個人事業主は「商人」として営業に当たり、5万円以上の売上代金の領収書には個人でも印紙が要ります。
5万円の判定は税込みですか、税抜きですか。
領収書に消費税額等が区分して書かれていれば、税抜きの金額で判定します。たとえば税抜4万8,000円・消費税4,800円と分けて書いた領収書は5万円未満で非課税です。税込金額だけを書くと、税込額で判定されます。
医師がMS法人(株式会社)を作った場合はどうなりますか。
医療法人ではなく株式会社なので、その会社が作る受取書は営業に関する受取書です。国税庁の通達は、営利法人組織の病院等や営利法人の経営する病院等が作成する受取書は営業に関しない受取書に該当しないとしています。
出典
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。