社会保険
医師国保は月4万900円の定額。医療法人化しても残れる条件と差額
結論
東京都医師国保の保険料は医師本人で月40,900円(40〜64歳は46,900円)の定額で、年49.1万円(同56.3万円)です。事業所得1,000万円以上の個人開業医なら、東京23区の国保(限度額で年96.0万円)より年46.9万円安くなります。医療法人の役員になっても、14日以内に適用除外承認を受ければ健康保険は医師国保に残れ、役員報酬月100万円なら協会けんぽの労使合計242.7万円との差は年193.6万円です。
- 医師国保は所得割がなく、第1種組合員は医療34,500円+後期高齢者支援金等5,000円+子ども・子育て支援納付金1,400円の月40,900円
- 医療法人は社会保険の強制適用事業所。適用除外承認申請は事実の発生から14日以内、厚生年金の資格取得届は5日以内に年金事務所へ出す
- 組合は、新規加入時にすでに法人事業所を開設している場合は加入できないとしている。医療法人化の前に組合員であることが前提
このテーマの全体像 国民健康保険料の自治体別比較
開業医が医療法人化を考えるとき、税の比較はよく語られますが、健康保険の違いは見落とされがちです。医師国保の保険料は所得にかかわらず定額で、所得の高い医師ほど区市町村の国保や協会けんぽとの差が大きくなります。
この差は、医療法人化した後も残せます。ただし手続きの期限が短く、加入の順番を間違えると取り返しがつきません。
医師国保は所得割のない定額
東京都医師国民健康保険組合の保険料は、種別ごとの均等割だけです。組合は「所得割、日割りの計算はありません」と案内しています。令和8年4月からの月額は次のとおりです。
| 種別 | 医療給付費 | 後期高齢者支援金等 | 子ども・子育て支援納付金 | 合計 | 40〜64歳(介護6,000円を加算) |
|---|---|---|---|---|---|
| 第1種組合員(医師) | 34,500円 | 5,000円 | 1,400円 | 40,900円 | 46,900円 |
| 第2種組合員(従業員) | 13,500円 | 5,000円 | 700円 | 19,200円 | 25,200円 |
| 家族(18〜74歳) | 7,500円 | 5,000円 | 300円 | 12,800円 | 18,800円 |
年額にすると、医師本人は40歳未満で49.1万円、40〜64歳で56.3万円です。この額は事業所得が600万円でも3,000万円でも変わりません。
加入できるのは、東京都医師会会員である医師などで、規約の住所地に住民票がある75歳未満の人です。開業医は地区医師会から東京都医師会へ加入している人に限られます。
個人開業医なら、区の国保より年47万〜57万円安い
個人開業医のまま区の国保に入ると、所得割がかかり、高所得では賦課限度額に達します。当サイトの計算エンジンで東京23区(特別区統一保険料率)と比べました。
個人開業医(単身)の健康保険料
| 事業所得(青色申告特別控除後) | 年齢 | 東京23区の国保 | 医師国保 | 差(国保−医師国保) |
|---|---|---|---|---|
| 600万円 | 40歳未満 | 65.6万円 | 49.1万円 | 16.6万円 |
| 1,000万円 | 40歳未満 | 95.8万円 | 49.1万円 | 46.7万円 |
| 1,500万円以上 | 40歳未満 | 96.0万円 | 49.1万円 | 46.9万円 |
| 600万円 | 40〜64歳 | 81.0万円 | 56.3万円 | 24.7万円 |
| 1,000万円 | 40〜64歳 | 112.8万円 | 56.3万円 | 56.5万円 |
| 1,500万円以上 | 40〜64歳 | 113.0万円 | 56.3万円 | 56.7万円 |
東京23区の国保は令和8年度の特別区統一保険料率で、医療分・支援金分・介護分・子ども・子育て支援金分の合計(世帯は本人だけ)。2026年(令和8年)度の料率による概算。再計算は
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事業所得1,000万円を超えると、区の国保は限度額に張り付き、差は年47万円(40〜64歳は57万円)で一定になります。多くの開業医の所得水準では、医師国保は区の国保のおよそ半額です。区市町村ごとの国保の違いは国民健康保険料の自治体別比較で確かめられます。
医療法人化すると原則は協会けんぽ。適用除外承認で残れる
医療法人は法人なので、健康保険・厚生年金の強制適用事業所になります。理事長である医師も、役員報酬を受け取れば被保険者です。
ここに例外があります。国民健康保険組合の組合員が適用事業所の被保険者になるとき、年金事務所に「健康保険被保険者適用除外承認申請書」を出して承認を受ければ、健康保険だけは国保組合に残れます。東京都医師国保も、承認を得れば医師国保に「加入・継続することができます」と案内しています。
外れるのは健康保険だけで、厚生年金には加入します。承認の4つの要件と考え方は国保組合は法人化後も続けられる?適用除外承認の4要件と14日の期限にまとめています。
期限は14日と5日
東京都医師国保は、適用事業所になった場合に年金事務所へ出す2つの書類の期限が違うことを注意しています。
| 書類 | 期限 |
|---|---|
| 健康保険被保険者適用除外承認申請書 | 事実の発生した日から14日以内 |
| 厚生年金保険の資格取得届 | 5日以内 |
法人化の手続きで新しく従業員が入らない場合は、適用除外承認申請書・事業所変更届・預金口座振替依頼書などを組合に送り、組合が理事長印を押して返送したものを年金事務所に出す流れです。組合を経由するぶん、14日の期限には余裕がありません。
法人を作ってからでは入れない
もう1つの落とし穴が加入の順番です。東京都医師国保は、新規加入時にすでに法人事業所を開設している場合は加入できないとしています。適用除外承認は「今、組合員であること」が前提なので、医療法人を設立してから医師国保に入ろうとしても間に合いません。
役員報酬月100万円なら、協会けんぽとの差は年194万円
医療法人の役員になった医師が協会けんぽに入る場合と、適用除外承認で医師国保に残る場合の健康保険料を比べました。協会けんぽは労使折半なので、法人負担分を含めた合計で見ます。
医療法人の役員の健康保険料(東京)
| 役員報酬(月額) | 年齢 | 協会けんぽ(労使合計・年) | うち法人負担 | 医師国保(年) | 差(協会けんぽ−医師国保) |
|---|---|---|---|---|---|
| 50万円 | 40歳未満 | 125.3万円 | 62.6万円 | 49.1万円 | 76.2万円 |
| 80万円 | 40歳未満 | 196.7万円 | 98.4万円 | 49.1万円 | 147.7万円 |
| 100万円 | 40歳未満 | 242.7万円 | 121.3万円 | 49.1万円 | 193.6万円 |
| 150万円以上 | 40歳未満 | 341.9万円 | 170.9万円 | 49.1万円 | 292.8万円 |
| 50万円 | 40〜64歳 | 144.7万円 | 72.4万円 | 56.3万円 | 88.4万円 |
| 80万円 | 40〜64歳 | 227.4万円 | 113.7万円 | 56.3万円 | 171.2万円 |
| 100万円 | 40〜64歳 | 280.8万円 | 140.4万円 | 56.3万円 | 224.5万円 |
| 150万円以上 | 40〜64歳 | 395.9万円 | 198.0万円 | 56.3万円 | 339.6万円 |
協会けんぽは令和8年度の東京支部の健康保険料率(40〜64歳は介護保険料率を含む)に子ども・子育て支援金を加えた労使合計。標準報酬月額の上限(139万円)に達する月150万円以上は同額。厚生年金は医師国保に残っても加入するので含めていない。再計算は
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協会けんぽの保険料は報酬に比例し、標準報酬月額の上限に達する月150万円前後まで増え続けます。医師国保は定額なので、報酬が高いほど差が開きます。月100万円・40〜64歳なら年224.5万円で、本人負担分(140.4万円)だけと比べても医師国保のほうが安くなります。
一般の法人化の判定では、社会保険料の増加が法人化の最大のコストになります(一人社長の社会保険料はいくらか)。医師国保に残れる医師は、そのコストのうち健康保険の部分がほぼ消えるので、判定の前提そのものが変わります。
定額の安さと引き換えに、ないもの
医師国保の保険給付の案内には、療養の給付、高額療養費、出産育児一時金、葬祭費などが並び、傷病手当金・出産手当金の項目はありません。協会けんぽの被保険者なら、病気で働けないときに傷病手当金を受けられます。医師国保に残るかどうかは、この保障の差も合わせて考えることになります。
医療法人そのものの要件(知事の認可、配当の禁止など)や、社会保険診療報酬の概算経費の特例は、開業医の概算経費と医療法人で扱っています。医師国保と同じ「国保組合の定額保険料」で判定が動く例として、文芸美術国保と法人化の分岐点もあります。
当サイトの判定ツールは、法人側を協会けんぽ+厚生年金で計算していて、医師国保の適用除外は反映していません。表の差額を、判定結果の法人側に足し戻して読んでください。
まとめ
- 東京都医師国保は所得割のない定額で、医師本人は月40,900円(40〜64歳は46,900円)、年49.1万円(同56.3万円)
- 個人開業医なら、事業所得1,000万円以上で東京23区の国保より年47万円(40〜64歳は57万円)安い
- 医療法人化しても、適用除外承認(14日以内)を受ければ健康保険は医師国保に残れる。厚生年金は加入する
- 役員報酬月100万円なら協会けんぽの労使合計との差は年194万円(40〜64歳は225万円)
- 法人を作ってからでは医師国保に新規加入できない。傷病手当金・出産手当金は給付の案内にない
よくある質問
医療法人化すると医師国保はやめなければいけませんか?
医療法人は健康保険・厚生年金の強制適用事業所になるため、原則は協会けんぽなどの健康保険に入ります。ただし健康保険被保険者適用除外承認申請書を年金事務所に出して承認を受ければ、健康保険は医師国保に加入・継続できます。厚生年金には加入します。
医療法人を作ってから医師国保に入ることはできますか?
東京都医師国保は、新規加入時にすでに法人事業所を開設している場合は加入できないとしています。適用除外承認も、医療法人化の時点で組合員であることが前提になります。
医師国保に家族や看護師も入れますか?
東京都医師国保では、家族(18〜74歳)は月12,800円、看護師・医療事務などの従業員(第2種組合員)は月19,200円です。40〜64歳はそれぞれ介護保険料6,000円が加わります。
出典
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。