インボイス・消費税

アパートの駐車場代は1戸1台でも別建てなら課税。共益費は非課税

結論

住宅の家賃と共益費は消費税が非課税ですが、駐車場は「1戸当たり1台分以上を自動車の保有にかかわらず割り当て、家賃と別に使用料を受け取っていない」場合に限って非課税です(消費税法基本通達6-13-3)。30戸全てに1台ずつ付けていても、月1万円を別建てで受け取れば年360万円が課税売上高になります。

  • 共益費・管理費は、共用部分の費用を入居者が応分に負担するものなら名称を問わず非課税。各戸の水道・電気を使用量で別に請求する分は課税
  • 課税売上高1,000万円の判定に家賃は入らない。別建ての駐車場代が月1万円なら84台、月2万円なら42台で超える(免税事業者だった基準期間)
  • 判定ツールに家賃込みの売上を入れて「インボイス未登録」を選ぶと、家賃にない消費税の免税益が乗り、売上3,027万円の設例で初年度の差が121.3万円膨らむ

入居者から見れば同じ「月1万円の駐車場」でも、契約書の書き方と請求の分け方で消費税の区分が変わります。家賃が何千万円あっても課税売上高はゼロのままの大家がいる一方、駐車場代の受け取り方1つで課税売上が数百万円単位で生まれます。

法人成りを考える大家にとっては、ここが「設立2期の免税」に意味があるかどうかの分かれ目です。家賃に消費税がない以上、免税で得をするのは課税される部分だけだからです。

住宅の貸付けに含まれるもの、含まれないもの

住宅の貸付けが非課税になるのは、契約で人の居住の用に供することが明らかにされている場合(用途が明らかでなくても、貸付け等の状況から居住用が明らかな場合を含む)に限られます(消費税法別表第二第13号)。貸付期間が1か月未満の場合と、旅館業法の旅館業に当たる施設の貸付けは除かれます。民泊(住宅宿泊事業)も旅館業に当たるので非課税になりません。

そのうえで、家賃と一緒に受け取るお金のどこまでが「住宅の貸付け」に入るかを、国税庁は通達とタックスアンサー No.6226 で次のように示しています。

受け取るもの区分根拠
月決めの家賃非課税別表第二第13号
敷金・保証金・一時金等のうち返還しない部分非課税(家賃に含まれる)基本通達6-13-9
共益費(エレベーターの運行費用、廊下等の光熱費、集会所の維持費等の応分負担)非課税(家賃に含まれる)基本通達6-13-9、No.6226
庭・塀・給排水施設など住宅の一部と認められるもの非課税基本通達6-13-1
家具・照明・冷暖房設備など、住宅と一体で貸す附属設備非課税。ただし使用料を別に定めれば課税基本通達6-13-1
駐車場条件付きで非課税(次の節)基本通達6-13-3
プール・アスレチック施設等居住者以外も有料で使えるなら課税基本通達6-13-2
家賃とは別に受け取る専有部分の電気・ガス・水道の利用料課税No.6226

判断の軸は「住宅への従属性」です。国税庁の質疑応答事例は、倉庫や家具のようにもともと居住用としての従属性が認められるものは、全体を家賃として受け取る限り非課税としています。これに対し、駐車場やプールのように通常単独で賃貸借の目的物になる施設は、全住宅に付属する場合や住人のみの利用が前提になっている場合など、従属性がより強い場合にだけ非課税とされます。

駐車場は「全戸に1台以上」かつ「別に取らない」の両方が要る

駐車場付き住宅として全体が住宅の貸付けになる駐車場は、一戸建住宅の駐車場のほか、集合住宅では次の2つを両方満たすものです(基本通達6-13-3)。

  • 入居者について1戸当たり1台分以上の駐車スペースが確保されており、自動車の保有の有無にかかわらず割り当てられる等の場合であること
  • 住宅の貸付けの対価とは別に駐車場使用料等を収受していないこと

見落とされやすいのは2つ目です。国税庁の質疑応答事例の別紙は、賃料とは別の名目で受け取る駐車場利用料を、「車所有の有無にかかわらず1戸につき1台分以上の駐車場が付属する場合」も含めて課税と整理しています。さらに、契約書で賃料の明細として「駐車場利用料××円を含む。」と金額を表示した場合は、その金額は賃料とは別の名目で受け取る金銭に当たるとしています。

つまり、全戸に1台ずつ割り当てていても、駐車場代の金額を切り出した時点で課税に変わります。逆に、1戸1台に満たない駐車場を希望者に貸す場合は、家賃に含めて受け取っても駐車場料金を合理的に区分して課税です。

アパートとは別の土地で月極駐車場を経営している場合は、住宅の貸付けとは関係なく判定します。駐車場として地面の整備やフェンス・区画・建物の設置をして利用させる場合は施設の貸付けとして課税で、何も整備せず車両の管理もしていない場合だけ土地の貸付けとして非課税です(基本通達6-1-5の注1、タックスアンサー No.6213)。

30戸のアパートで、受け取り方ごとに課税売上高を出すと次のとおりです。

受け取り方年額消費税の区分課税売上高に入る額
家賃(月7万円×30戸)2,520.0万円非課税0.0万円
共益費(月5千円×30戸、共用部分の費用)180.0万円非課税(家賃に含まれる)0.0万円
A 全戸に1台ずつ割当て、駐車場代を取らず家賃に含める(家賃を月8万円にする)360.0万円非課税(住宅の貸付けに含まれる)0.0万円
B 全戸に1台ずつ割当て、駐車場代月1万円を家賃と別に受け取る360.0万円課税360.0万円
C 希望する20戸にだけ貸し、家賃に含めて受け取る240.0万円課税(合理的に区分)240.0万円
D 各戸の水道代を使用量に応じて別に受け取る(月平均3千円)108.0万円課税108.0万円

※ 家賃と共益費は年2,700.0万円。A〜Dは駐車場・水道の受け取り方の選択肢で、AとBは同じ30台を別の契約にした場合。当サイトで計算(scripts/jutaku-chushajo-kyoekihi.mjs)

AとBは、入居者が払う総額も駐車場の使われ方も同じです。違うのは請求の分け方だけで、Bでは年360万円の課税売上が生まれます。

共益費・管理費は名称でなく中身で決まる

共益費は、共同住宅の共用部分に係る費用を入居者が応分に負担するものなら家賃に含まれ、非課税です(基本通達6-13-9)。国税庁の質疑応答事例は、住宅を共同で利用するうえで居住者が共通に使用する部分の費用を応分に負担させる性格のものは、共益費、管理費等その名称にかかわらず非課税としています。

同じ判定表から、大家が受け取りやすい項目を拾うと次のようになります。

賃料とは別の名目で受け取るもの区分
共用部分の管理料(1戸当たり均一額でも、実績を専有面積で按分しても)非課税
マンション全体の警備料非課税
修繕積立金(共用部分と専用部分の配管・配線・バルコニー等の修繕に充てるもの)非課税
衛星放送共同アンテナ・CATVの利用料(各戸に配線済み)非課税
電気・ガス・水道使用料(使用実績で請求しても、一定額で請求しても)課税
給湯施設の利用料(各戸の使用実績でも一定額でも)課税
ハウスキーピング料・ルームメインテナンス料課税
家具・エアコン等の使用料、倉庫使用料課税

注意したいのは、共益費の中に課税となる施設の費用が混ざっている場合です。基本通達6-13-9は、住宅の貸付けに含まれないとされる施設等に係る費用部分を共益費から除いています。共益費の中で駐車場の照明や清掃の費用を賄っていて、その駐車場が上の条件を満たさないなら、その部分は非課税の共益費になりません。

水道光熱費については、テナントビルの事例で国税庁が別の答えも出しています。管理者が毎月一定額を共益費として受け取り、その中から経費を払う方法なら課税の対象です。一方、メーター等でもともと各テナントごとに区分され、集めたお金を預り金として処理して電力会社等へ支払うにすぎないと認められる場合は、その預り金は課税売上に当たりません。各戸のメーター分を大家が立て替えて精算している場合は、どちらの形かを契約と経理の処理で確認しておく必要があります。

課税売上高1,000万円の判定に、家賃はいくらあっても入らない

消費税の納税義務は、基準期間(個人は前々年、法人は原則として前々事業年度)の課税売上高が1,000万円以下なら免除されます(タックスアンサー No.6501)。課税売上高は課税資産の譲渡等の対価なので、非課税の家賃・共益費は1円も入りません。家賃収入が3,000万円ある大家でも、別建ての駐車場代が年360万円だけなら、課税売上高は360万円です。

基準期間に免税事業者だった場合は、受け取った金額の全額がそのまま課税売上高になります(基本通達1-4-5)。110分の100にはしません。この扱いは免税事業者の売上は税込で1,000万円判定で詳しく扱っています。

別建ての駐車場代だけで1,000万円を超える台数は次のとおりです。

1台の月額1台の年額1,000万円を超える台数そのときの課税売上高
5,000円6.0万円167台1,002.0万円
10,000円12.0万円84台1,008.0万円
15,000円18.0万円56台1,008.0万円
20,000円24.0万円42台1,008.0万円
30,000円36.0万円28台1,008.0万円

※ 基準期間に免税事業者だった場合。受け取った全額で判定する(消費税法基本通達1-4-5)。住宅の家賃・共益費はいくらあっても算入しない。当サイトで計算(scripts/jutaku-chushajo-kyoekihi.mjs)

実際の判定では、駐車場代だけでなく、店舗・事務所の賃料、各戸に別請求する水道代、課税される施設の使用料などを合計します。また、基準期間が1,000万円以下でも、特定期間(個人は前年1月1日〜6月30日、法人は原則として前事業年度開始の日以後6か月)の課税売上高が1,000万円を超えると免除されません。この判定は給与等支払額の合計額で行うこともできます。

課税事業者になると、家賃が多いほど仕入れの消費税は戻らない

課税事業者になった場合(インボイス登録をした場合を含む)は、課税売上割合の低さが効いてきます。分母に非課税の家賃が入るため、住宅中心の大家では割合が10%前後まで下がり、課税売上割合95%未満として個別対応方式か一括比例配分方式で計算することになります(タックスアンサー No.6401)。

一方で、簡易課税は基準期間の課税売上高5,000万円以下なら選べます。この5,000万円にも家賃は入りません。駐車場の賃貸は日本標準産業分類で不動産業(大分類K「不動産業,物品賃貸業」の小分類693 駐車場業)に分類され、簡易課税の事業区分は不動産業として第6種(みなし仕入率40%)です(タックスアンサー No.6509、基本通達13-2-4)。

表1のBの形で課税事業者になった場合の納付税額を比べます。

項目金額
駐車場代(税抜)327.3万円
家賃・共益費(非課税)2,700.0万円
課税売上割合10.81%
売上にかかる消費税32.7万円
課税仕入れの消費税(税込440万円の仕入れ)40.0万円
一般課税(一括比例配分方式)の納付税額28.4万円
簡易課税(第6種・みなし仕入率40%)の納付税額19.6万円
差(一般課税 − 簡易課税)8.8万円

※ 消費税は国・地方合計10%の概算。駐車場代は税込で受け取った前提。管理委託料・共用部分の電気代・修繕費などの仕入れは住宅と駐車場に共通するものとして扱った(個別対応方式でも共通部分は課税売上割合を掛ける)。簡易課税は基準期間の課税売上高5,000万円以下が条件で、家賃は算入しない。当サイトで計算(scripts/jutaku-chushajo-kyoekihi.mjs)

仕入れの消費税は40.0万円あっても、課税売上割合10.81%を掛けると控除できるのは4万円台にとどまります。家賃の多い大家ほど一般課税で控除できる部分が小さく、売上の60%を納める簡易課税のほうが納付額が少なくなりやすい構造です。ただし簡易課税制度選択届出書は、適用を受けたい課税期間の初日の前日までに出す必要があり(タックスアンサー No.6505)、2年間はやめられません。事業区分ごとの比較は簡易課税のみなし仕入率、按分方式の選び方は個別対応方式と一括比例配分方式にまとめています。

法人成りの判定では「インボイス登録済み」で入れる

法人を新しく作ると、設立1期・2期は基準期間がないため、資本金1,000万円以上の場合などを除いて原則として免税事業者です(タックスアンサー No.6501)。この免税で得をするのは課税される売上の消費税だけです。住宅の家賃にはもともと消費税がないので、家賃部分には免税の効果がありません。

表1のBの設例を個人で続ける場合も、課税売上高は360万円なのでインボイス登録をしなければ免税事業者です。法人に移しても免税のままなので、駐車場代の消費税は個人と法人の差を生みません。

当サイトの判定ツールは、入力された売上の全額を課税売上として扱います。家賃・共益費と駐車場代の合計をそのまま入れた場合、インボイス登録の選び方で結果が次のように変わります。

入力したインボイス登録個人の手取り法人の手取り(最適報酬)実質差額(初年度)実質差額(2年目)実質差額(3年目以降)設立2期の免税として乗った額
登録済み911.4万円951.9万円10.5万円20.5万円20.5万円0.0万円
未登録911.4万円951.9万円131.8万円141.8万円20.5万円209.1万円

※ 売上3,027.3万円(家賃・共益費2,700.0万円+駐車場代327.3万円)・経費1,560万円。東京23区・40歳未満・独身・青色申告(e-Tax)・合同会社・個人事業税5%(不動産貸付業)/2026年(令和8年)分基準。計算エンジンは売上の全額を課税売上として扱うため、「未登録」では家賃にかかっていない消費税まで設立2期の免税益として乗る。当サイトで計算(scripts/jutaku-chushajo-kyoekihi.mjs)

「未登録」を選ぶと、売上が1,000万円を超えるため個人側は課税事業者として計算され、法人側だけに設立2期の免税益209.1万円が乗ります。初年度・2年目の実質差額は121.3万円膨らみますが、家賃に消費税がない以上、この差は実在しません。住宅中心の大家は「インボイス登録済み」で入れたほうが実態に近く、この設例では3年目以降の差額は年20.5万円です(概算)。課税される売上が大きい場合は、その部分だけの消費税を別に見積もってください。

判定を動かすのは消費税より個人事業税です。不動産貸付業として課税されるかどうかで損益分岐点が大きく動くことは、居住用賃貸建物の消費税の記事で計算しています。不動産貸付業・駐車場業に当たるかどうかの基準は家賃収入の事業的規模と個人事業税を確認してください。一般論の数字ではなく、自分の家賃・駐車場代・経費の内訳で確かめてください。

まとめ

  • 住宅の家賃、返還しない敷金等、共益費(共用部分の費用の応分負担)は非課税です。共益費・管理費は名称にかかわらず中身で判定されます
  • 集合住宅の駐車場が非課税になるのは、1戸1台分以上を自動車の保有にかかわらず割り当て、かつ家賃と別に使用料を受け取っていない場合だけです。契約書で駐車場代の金額を明示すれば別建てに当たります
  • 各戸の電気・ガス・水道使用料、別料金の家具・倉庫・ハウスキーピングなどは課税です
  • 課税売上高1,000万円・5,000万円の判定に家賃は入りません。別建ての駐車場代が月1万円なら84台で1,000万円を超えます(免税事業者だった基準期間)
  • 住宅中心の大家が判定ツールを使うときは「インボイス登録済み」で入れると、家賃にない消費税の免税益が混ざりません(概算)

よくある質問

入居者が車を持っていない部屋にも駐車場を割り当てる必要がありますか

消費税法基本通達6-13-3は、1戸当たり1台分以上の駐車スペースが確保され、自動車の保有の有無にかかわらず割り当てられる等の場合を非課税の条件に挙げています。希望者にだけ貸す形では、家賃に含めて受け取っても駐車場部分は課税になります。

礼金や更新しない敷金の償却分は課税ですか

住宅の貸付けでは、敷金・保証金・一時金等のうち返還しない部分も家賃に含まれる(消費税法基本通達6-13-9)ため、非課税です。事務所や店舗の貸付けで受け取る場合は課税になります。

土地を砂利敷きのまま月極で貸しているだけでも課税ですか

駐車場としての地面の整備やフェンス・区画・建物の設置をせず、車両の管理もしていない場合は、土地の貸付けとして非課税です(消費税法基本通達6-1-5の注1)。区画を作って駐車場として利用させる場合は課税になります。

家具付きの部屋で、家具代を家賃と別に受け取った場合はどうなりますか

家具や冷暖房設備は住宅と一体で貸すなら住宅の貸付けに含まれますが、家賃とは別に使用料等を受け取っている場合、その使用料は非課税になりません(消費税法基本通達6-13-1)。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。