社会保険
法人なのに社会保険未加入。遡及加入は最大2年、役員報酬月40万円で280万円
結論
社会保険料を徴収する権利の時効は2年なので(健康保険法193条・厚生年金保険法92条)、未加入だった法人が加入するとき、保険料はさかのぼって最大2年分を請求されます。東京都・40歳未満で役員報酬が月40万円なら、2年分は労使合計で279万2,592円です。その間に払っていた国民健康保険料と国民年金保険料は還付の対象になり、実質の追加負担は約160万円になります(当サイト試算)。
- 保険料は労使合計で請求される。一人会社では会社負担も本人負担も、結局は同じ社長のお金から出る
- 2年より前の期間は時効で保険料を納められない。その分は厚生年金の加入期間にもならない
- 国保料・国民年金保険料の還付を受ける権利にも時効がある。遡及が決まったら、区市町村と年金事務所に早めに手続きする
法人化はしたが、保険料の負担を避けて社会保険に入っていない。こうした一人会社は少なくありません。しかし法人は、社長1人でも社会保険の強制適用事業所です。加入義務の根拠は法人化すると社会保険の加入は義務かで説明しました。
未加入のまま年金事務所の調査を受けたり、自分から手続きをしたりすると、保険料はさかのぼって請求されます。さかのぼれる上限が2年です。
さかのぼれるのは時効の2年分まで
健康保険法193条と厚生年金保険法92条は、保険料を徴収する権利は、行使できる時から2年を経過すると時効で消滅するとしています。法人が未加入だった期間が3年あっても、請求されるのは直近2年分です。
| 未加入だった期間 | 請求される保険料 | 厚生年金の加入期間 |
|---|---|---|
| 2年以内 | 全期間分 | 全期間が加入期間になる |
| 2年超 | 直近2年分 | 2年より前は加入期間にならない |
「2年より前は払わなくてよい」は負担の面だけを見た話です。保険料を払えなかった期間は、将来の老齢厚生年金の計算に入りません。
年金事務所の調査がどのくらいの頻度で来るかは年金事務所の事業所調査は何年に1回かにまとめています。
役員報酬別の遡及額
役員報酬の額ごとに、2年分の保険料(労使合計)を当サイトの計算エンジンで出しました。東京都・40歳未満で、健康保険料には子ども・子育て支援金、事業主のみが負担する子ども・子育て拠出金を含みます。
| 役員報酬(月) | 保険料(年・労使合計) | 2年分 |
|---|---|---|
| 30万円 | 102万1,680円 | 204万3,360円 |
| 40万円 | 139万6,296円 | 279万2,592円 |
| 60万円 | 200万9,304円 | 401万8,608円 |
※ 令和8年度の料率で2年分を計算した当サイトの試算。実際の遡及額は各年度の料率で計算される
一人会社では、会社負担分も本人負担分も、結局は社長が出すお金です。2年分をまとめて払うと、役員報酬の半年分前後の現金が一度に出ていきます。資金繰りが厳しい場合の納付の猶予は法人の社会保険料が払えないときで整理しました。
払っていた国保・国民年金は戻る
社会保険に加入していなかった間、社長は国民健康保険と国民年金に入っていたはずです。遡及して健康保険・厚生年金の資格を取得すると、同じ期間の国保と国民年金の資格は失われ、払っていた保険料は還付の対象になります。
| 役員報酬(月) | 社会保険料2年分 | 国民年金保険料2年分 | 国保料2年分(東京23区) | 実質の追加負担 |
|---|---|---|---|---|
| 30万円 | 204.3万円 | 43.0万円 | 55.9万円 | 約105万円 |
| 40万円 | 279.3万円 | 43.0万円 | 76.3万円 | 約160万円 |
| 60万円 | 401.9万円 | 43.0万円 | 118.2万円 | 約241万円 |
※ 当サイトの計算エンジンによる試算。国民年金・国保料は令和8年度の額・料率で2年分とした。国保料は役員報酬の給与所得に対する単身・40歳未満の額
還付を受ける権利にも時効があります。遡及加入が決まったら、区市町村に国保の資格喪失を、年金事務所に国民年金の還付を、早めに届け出てください。国保から健康保険への切替手続きは法人成りでマイナ保険証はどうなるかで扱っています。
遡及を避けるより、最初から加入して報酬を設計する
遡及加入の実質負担は、最初から加入していた場合の負担と大きくは変わりません。違うのは、まとめて払う資金繰りの負担と、2年より前の期間が年金に入らないことです。
社会保険料の負担を抑えたいなら、加入を避けるのではなく、役員報酬の額で調整するのが正面からの方法です。当サイトの判定ツールは、社会保険料を含めて手取りが最大になる役員報酬を総当たりで探します。自分の売上と経費で、加入した場合の手取りを確かめてください。
まとめ
- 法人は社長1人でも社会保険の強制適用事業所。未加入でも、本来の適用日にさかのぼって保険料がかかる
- 保険料を徴収する権利の時効は2年なので、請求されるのは最大2年分。それより前は年金の加入期間にもならない
- 東京都・40歳未満で役員報酬月40万円なら、2年分の保険料は労使合計279万2,592円
- その間の国保料・国民年金保険料は還付の対象になり、実質の追加負担は約160万円
- 負担を抑えるなら、加入を避けるのではなく役員報酬の額で調整する
よくある質問
自分から加入手続きをすれば、遡及は免除されますか?
法人は設立のときから適用事業所なので、自分から届け出た場合も、本来の適用日にさかのぼって保険料がかかります。ただし保険料を徴収できるのは時効の2年分までです。
遡及した保険料は損金になりますか?
会社負担分の社会保険料は、納付が確定した事業年度の損金として扱うのが一般的です。本人負担分は役員報酬から控除して社長個人の社会保険料控除の対象になります。経理処理は顧問税理士に確認してください。
出典
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。