社会保険

社宅の現物給与価額は2026年10月から㎡単位。保険料が動く条件

結論

東京の事業所なら住宅の価額は畳1畳2,830円から総床面積1㎡1,330円へ変わり、面積1㎡あたりに換算した単価は約22%下がりますが、台所・浴室・廊下も面積に入るため、日本年金機構の例(居住用の室26.4㎡・総床面積40㎡)では月45,280円から53,200円へ上がります。役員報酬が月20万円・30万円なら労使合計の保険料が年6.8万円増え、月40万円以上では0円のままです。

  • 新旧が入れ替わるのは総床面積が居住用の室の約1.3倍を超えたとき。47都道府県で1.26倍(沖縄)〜1.45倍(和歌山)に収まる
  • 等級の幅が広い高報酬帯では、価額が月7,920円上がっても保険料は1円も動かない
  • 価額が上がっても2等級以上動かなければ随時改定にならず、保険料に乗るのは2027年9月分から

社会保険の住宅の現物給与価額が、2026年10月1日から変わりました。単価は東京で畳1畳2,830円から総床面積1㎡1,330円へ、数字の上では半分以下です。それでも多くの社宅では価額が上がります。数え方が「居住用の室だけ」から「床面積の合計」に変わったためです。

この記事では、間取り別に価額がいくらになるか、標準報酬月額の等級がどこで動くかを、公表された価額表と当サイトの計算エンジンで計算しました。

変わったのは単価ではなく、面積の数え方

報酬の一部を通貨以外のもので支払う場合、その価額は厚生労働大臣が定めます。社宅や寮の貸与、食事、自社製品、通勤定期券などが対象で、通貨に換算して金銭と合算し、標準報酬月額を決めます。

今回の改正は2段階です。厚生労働省告示により、食事の価額は2026年4月1日から、住宅の価額は2026年10月1日から変わりました。住宅についてはさらに、単価の単位そのものが変わっています。

2026年9月30日まで2026年10月1日から
単価の単位居住用の室の畳1畳につき総床面積1平方メートルにつき
東京の単価2,830円1,330円
面積に数える部屋居間、茶の間、寝室、客間、書斎、応接間、仏間、食事室など居住用の室居住する住宅の床面積の合計
面積から除くもの玄関、台所、トイレ、浴室、廊下、営業用の室別棟の物置・車庫、共同で使用している部分

畳数を㎡で表すときの換算は1畳=1.65㎡です。これを使うと、改正前の東京の単価は面積1㎡あたり1,715円でした。改正後は1,330円なので、面積1㎡あたりに換算した単価は約22%下がったことになります。

一方で、数える面積は増えます。台所・浴室・トイレ・廊下・玄関が加わるためです。日本年金機構が公表している例(居住用の室16畳=26.4㎡、総床面積40㎡)では、面積が26.4㎡から40㎡へ1.5倍になります。

【2026年9月30日まで】26.4㎡ ÷ 1.65㎡ × 2,830円 = 45,280円
【2026年10月1日から】40㎡ × 1,330円 = 53,200円

同じ家で月7,920円、年間で95,040円の報酬が増えた扱いになります。単価が下がったのに価額が上がる、という結果です。

間取り別に計算すると、上がる家と下がる家が分かれる

価額が上がるか下がるかは、居住用の室が総床面積の何割を占めるかで決まります。東京の事業所の場合で計算しました。

総床面積居住用の室の割合改正前(畳単価)改正後(㎡単価)差
40㎡55%37,733円53,200円+15,467円
40㎡65%44,593円53,200円+8,607円
40㎡75%51,454円53,200円+1,746円
40㎡85%58,315円53,200円−5,115円
55㎡55%51,883円73,150円+21,267円
55㎡65%61,316円73,150円+11,834円
55㎡75%70,750円73,150円+2,400円
55㎡85%80,183円73,150円−7,033円
70㎡55%66,033円93,100円+27,067円
70㎡65%78,039円93,100円+15,061円
70㎡75%90,045円93,100円+3,055円
70㎡85%102,051円93,100円−8,951円

※ 東京の事業所・本人負担0円。1円未満は切り捨て。改正前は居住用の室の面積を1畳=1.65㎡で畳数に換算して計算

価額が下がるのは、居住用の室が総床面積の8割を超えるような間取りだけです。水まわりと廊下が小さく、居室の比率が高い家です。

逆に言えば、台所・浴室・トイレ・廊下・玄関が合わせて床面積の3割を占める一般的な間取りでは、価額は上がります。1LDK・2LDKの賃貸では居室の比率が55〜65%に収まることが多く、この表では上げ幅が最も大きい帯です。

新旧が入れ替わる倍率は、47都道府県でほぼ同じ

新旧が一致するのは、総床面積が居住用の室の面積の何倍のときでしょうか。各都道府県の単価から逆算しました。

都道府県畳1畳(9月30日まで)1㎡(10月1日から)価額が入れ替わる倍率
沖縄1,290円620円1.26倍
北海道1,110円530円1.27倍
東京2,830円1,330円1.29倍
福岡1,430円670円1.29倍
大阪1,780円820円1.32倍
愛知1,560円710円1.33倍
鳥取1,190円500円1.44倍
和歌山1,170円490円1.45倍

※ 全国現物給与価額一覧表(令和8年4月〜)の住宅欄から算出。倍率=畳単価÷1.65÷㎡単価

47都道府県の倍率は**1.26倍(沖縄)から1.45倍(和歌山)**に収まり、単純平均は1.35倍でした。1.30倍以下が8都道府県、1.30倍超が39都道府県です。

単価そのものは東京2,830円と宮崎1,080円で2.6倍の開きがあるのに、入れ替わりの倍率はほぼそろっています。改正後の単価は、都道府県ごとの水準を保ったまま「居住用の室だけを数えていた面積が、総床面積にするとおよそ1.3倍になる」という想定で引き直されたことになります。

したがって判定はほぼ全国共通で考えられます。総床面積が居住用の室の約1.3倍を超えていれば、10月以降の価額のほうが高い。一般的な賃貸住宅はこの条件に当てはまります。

保険料が動くのは、報酬が低い側だけ

価額が上がっても、保険料が上がるとは限りません。標準報酬月額は等級で区切られていて、報酬月額が同じ等級の幅に収まっている限り、保険料は変わらないためです。

まず前提として、役員報酬の額ごとの保険料を計算エンジンで出しました。

売上1,200万円・経費200万円(事業所得1,000万円)の場合

役員報酬手取り合計役員個人の手取り法人に残る額社会保険料(労使計)
月10万円632.5万円102.8万円529.6万円33.4万円
月20万円642.4万円196.3万円446.1万円68.1万円
月30万円650.8万円289.1万円361.6万円102.2万円
月40万円654.8万円378.8万円276.1万円139.6万円
月50万円659.7万円468.6万円191.1万円170.3万円
月54万円 ←最適662.4万円504.8万円157.6万円180.5万円
月60万円653.6万円547.8万円105.8万円200.9万円
月70万円646.8万円625.4万円21.4万円228.6万円
月80万円615.8万円704.8万円-89.0万円238.3万円
月90万円570.0万円784.4万円-214.4万円249.2万円
月100万円519.7万円860.2万円-340.4万円261.3万円

個人事業主のままの手取りは 657.1万円。最適な役員報酬は月54万円で、そのときの手取り合計は 662.4万円。

※ 経費200万円・東京23区(特別区統一保険料率)・40歳未満・独身・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み・合同会社/2026年(令和8年)分基準 ※ 法人に残る額は、退職金・配当で引き出す際のコスト20%を控除した後の金額

ここに、先ほどの社宅(居住用の室26.4㎡・総床面積40㎡、本人負担0円)を足します。価額は改正前45,280円、改正後53,200円です。

役員報酬(金銭)現物給与なしの等級改正前の等級改正後の等級改正前の保険料(労使計・年)改正後の保険料(労使計・年)10月改正による増加
月20.0万円17等級(20.0万円)19等級(24.0万円)20等級(26.0万円)81.7万円88.5万円+6.8万円
月30.0万円22等級(30.0万円)24等級(34.0万円)25等級(36.0万円)115.8万円122.6万円+6.8万円
月40.0万円27等級(41.0万円)28等級(44.0万円)28等級(44.0万円)149.8万円149.8万円+0.0万円
月54.0万円31等級(53.0万円)33等級(59.0万円)33等級(59.0万円)200.9万円200.9万円+0.0万円
月65.0万円35等級(65.0万円)37等級(71.0万円)37等級(71.0万円)228.6万円228.6万円+0.0万円
月139.0万円50等級(139.0万円)50等級(139.0万円)50等級(139.0万円)310.9万円310.9万円+0.0万円

※ 東京の事業所・40歳未満。健康保険料率・厚生年金保険料率は2026年(令和8年)度

同じ月7,920円の増加でも、役員報酬が月20万円・月30万円なら労使合計で年6.8万円増え、月40万円以上では1円も増えません。直感とは逆に、報酬が低い側ほど重く当たります。

理由は等級の幅です。標準報酬月額の等級は、低い帯では6,000円〜1万円刻みですが、報酬が上がるにつれて2万円、3万円と広がります。月7,920円の増加は、狭い帯では等級を1つ押し上げ、広い帯では同じ等級に収まってしまいます。月139万円は健康保険の上限等級なので、何を足しても動きません。等級の刻み方は標準報酬月額の等級表にまとめています。

なお、改正の影響ではなく社宅を現物給与として報酬に乗せること自体の負担は、どの帯でも小さくありません。

役員報酬(金銭)現物給与なし(労使計・年)社宅ありで報酬に加算(労使計・年)差うち法人負担の増加
月20.0万円68.1万円88.5万円+20.4万円+10.5万円
月30.0万円102.2万円122.6万円+20.4万円+10.5万円
月40.0万円139.6万円149.8万円+10.2万円+5.2万円
月54.0万円180.5万円200.9万円+20.4万円+10.5万円
月65.0万円221.4万円228.6万円+7.3万円+3.6万円

※ 改正後の価額53,200円を報酬月額に加算した場合。法人負担の増加には子ども・子育て拠出金を含む

役員社宅は所得税の面では有利に働きますが、社会保険料は労使合計で年7.3万〜20.4万円増えます。会社負担分はその半分強で、これは損金になります。

本人負担で0円にできるが、所得税の基準とは別物

住宅の現物給与価額は、厚生労働大臣が定める価額から本人の負担額を差し引いた残りです。負担額が価額以上なら0円になります。

本人負担(月)現物給与価額(月)報酬月額(役員報酬 月54.0万円+現物給与)等級保険料(労使計・年)
0円53,200円593,200円33等級(59.0万円)200.9万円
20,000円33,200円573,200円32等級(56.0万円)190.7万円
40,000円13,200円553,200円32等級(56.0万円)190.7万円
53,200円0円540,000円31等級(53.0万円)180.5万円

ここで注意が要るのが、所得税と社会保険で基準がまったく違うことです。

所得税では、国税庁の定める賃貸料相当額を役員から受け取っていれば給与として課税されません。小規模な住宅(法定耐用年数30年以下の建物なら床面積132㎡以下、30年超なら99㎡以下)なら、建物の固定資産税の課税標準額×0.2%、12円×(総床面積㎡÷3.3㎡)、敷地の固定資産税の課税標準額×0.22%の合計です。他から借り受けた住宅を貸す場合は、この算式の額と会社が家主に支払う家賃の50%のうち多いほうになります。

一方、社会保険で使うのは厚生労働大臣が定める現物給与の価額です。固定資産税の課税標準額も、会社が払う家賃も出てきません。都道府県ごとの単価と床面積だけで決まります。同じ「社宅の面積」を扱いながら、所得税の算式は3.3㎡で割り、社会保険は1.65㎡で畳数に換算していました。別々の制度の数字であって、片方を満たしても他方は満たしません。

実務で問題になるのは、家賃の50%を負担して所得税はクリアしているのに、社会保険では現物給与が残るケースです。本人負担が家賃の50%なら、家賃が価額の2倍以上あれば0円になります。価額は総床面積×㎡単価なので、床面積に関係なく「㎡単価×2」が家賃の分岐点になります。

都道府県1㎡あたりの価額家賃がこれを下回ると現物給与が残る(1㎡あたりの月額家賃)40㎡の社宅での家賃の分岐点
東京1,330円2,660円106,400円
神奈川1,010円2,020円80,800円
大阪820円1,640円65,600円
愛知710円1,420円56,800円
福岡670円1,340円53,600円
北海道530円1,060円42,400円
青森460円920円36,800円

※ 本人負担が家賃の50%である場合。全47都道府県では東京の2,660円が最高、青森の920円が最低

東京で40㎡の社宅なら、家賃が月10万6,400円を下回ると、50%負担でも社会保険上の現物給与が残ります。家賃の水準が低い地域や、相場より安く借りられた物件ほど当たりやすくなります。

食事の現物給与には住宅と違うルールがあります。本人負担が価額の3分の2以上なら、現物による食事の供与はないものとして扱われ0円になります。東京の1人1月当たりの食事の額は25,500円なので、3分の2は17,000円です。この食事の価額25,500円に対して17,000円を徴収した場合、食事なら0円、住宅と同じ単純差引のルールなら差額8,500円が残る、という違いが出ます。3分の2のルールは食事だけで、住宅には適用されません。 住宅の価額が53,200円の社宅で17,000円しか徴収していなければ、残る36,200円がそのまま報酬に加算されます。所得税側の扱いは役員の食事補助にまとめています。

価額が上がっても、保険料に乗るのは2027年9月分から

日本年金機構は、現物給与価額の改正は固定的賃金の変動に該当するとしています。固定的賃金が変動すると、随時改定(月額変更届)の検討が必要です。

ただし随時改定には3つの要件がそろう必要があります。

  1. 昇給または降給等により固定的賃金に変動があった
  2. 変動月以後引き続く3か月の報酬の平均額により算出した標準報酬月額と、従前の標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じた
  3. 変動月以後引き続く3か月の報酬の支払基礎日数が17日(特定適用事業所に勤務する短時間労働者は11日)以上である

ここで効くのが2番目です。先ほどの計算では、等級が動いても1等級でした。2等級以上動くのは、よほど広い社宅に限られます。

社宅(総床面積・居住用の室の割合)改正前の価額改正後の価額等級の動き2等級以上か新しい価額が保険料に乗る月
40㎡・66%45,280円53,200円33等級 → 33等級(+0)いいえ2027年9月分から(定時決定)
55㎡・60%56,600円73,150円33等級 → 34等級(+1)いいえ2027年9月分から(定時決定)
70㎡・60%72,036円93,100円34等級 → 34等級(+0)いいえ2027年9月分から(定時決定)
90㎡・60%92,618円119,700円34等級 → 35等級(+1)いいえ2027年9月分から(定時決定)
120㎡・60%123,490円159,600円35等級 → 37等級(+2)はい2027年1月分から(随時改定)

※ 役員報酬は月54.0万円(金銭)で固定。東京の事業所・40歳未満

随時改定に当たる場合、改定されるのは変更後の報酬を初めて受けた月から起算して4か月目です。変動月が2026年10月なら、2027年1月分の標準報酬月額から変わります。

2等級に届かない場合は、次の定時決定を待つことになります。定時決定は毎年7月1日現在で、同日前3か月間(4月・5月・6月)に受けた報酬で標準報酬月額を決め、その年の9月から翌年8月まで使います。2027年4月・5月・6月の報酬には新しい価額が入るので、反映は2027年9月分からです。

つまり、同じ10月の改正でも、2等級以上動いた会社は2027年1月から、動かなかった会社は2027年9月から。8か月のずれが生じます。手続きとしては、月額変更届の対象かどうかを10月〜12月の3か月で確認し、対象でなければ翌年7月の算定基礎届で新しい価額を記載することになります。

価額表は都道府県ごとに違い、保険料率も毎年3月に改定されます。自分の売上と経費、社宅の有無で手取りがどう動くかは、判定ツールで条件を入れて確かめてください。計算の前提は計算の根拠に置いています。

まとめ

  • 社会保険の住宅の現物給与価額は2026年10月1日から、居住用の室の畳1畳単価から総床面積1㎡単価に変わった。東京は2,830円/畳から1,330円/㎡
  • 面積1㎡あたりに換算した単価は約22%下がったが、台所・浴室・廊下が面積に加わるため、総床面積が居住用の室の約1.3倍を超える住宅では価額が上がる。この倍率は47都道府県で1.26〜1.45倍に収まる
  • 価額が上がっても保険料が動くとは限らない。役員報酬が月20万円・30万円なら労使合計で年6.8万円増えるが、月40万円以上では等級が変わらず0円
  • 住宅は本人負担額を単純に差し引く。食事の「3分の2以上なら0円」というルールは住宅にはない
  • 所得税の賃貸料相当額と社会保険の現物給与価額は別の基準。家賃の50%を負担していても、東京40㎡なら家賃が月10万6,400円を下回ると社会保険では現物給与が残る
  • 2等級以上動けば2027年1月分から、動かなければ2027年9月分の定時決定から反映される

よくある質問

社宅の家賃を役員から受け取っていれば、社会保険でも現物給与は0円になりますか?

住宅の場合、厚生労働大臣が定める価額から本人の負担額を差し引いた残りが現物給与価額です。負担額が価額以上なら0円になりますが、下回れば差額が報酬に加算されます。食事のような「3分の2以上なら0円」という扱いは住宅にはありません。

勤務地と社宅が別の都道府県にある場合、どちらの価額を使いますか?

日本年金機構は、人事・労務・給与の管理がなされている事業所が所在する地域の価額で算定するとしています。勤務地が東京で社宅が埼玉なら、東京の価額です。

月の途中で社宅に入居した場合はどう計算しますか?

日割計算を行います。1か月相当の価額に、入居日以降の日数をその月の総日数で割った割合を掛け、1円未満を切り捨てます。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。