社会保険

小さい会社の福利厚生費は給与の7.1%。一人社長の社会保険は報酬の14.3%

結論

財務省の法人企業統計(2025年度)では、資本金1千万円未満の会社の福利厚生費は、役員と従業員の給与・賞与の合計の7.1%でした。社会保険料の事業主負担は福利厚生費に含まれますが、一人社長が役員報酬月54万円(東京・40歳未満)で会社負担する社会保険料は報酬の14.3%(健康保険・厚生年金・子ども・子育て拠出金の合計)で、統計の平均の2倍です。

  • 福利厚生費の割合は資本金が大きいほど高く、10億円以上の会社では17.7%。小さい会社ほど給与のうち社会保険の対象になっていない部分が大きい
  • 資本金1千万円未満の割合は2007年度5.7%から2025年度7.1%へ上がった。厚生年金の保険料率の引上げと短時間労働者の適用拡大が続いた期間と重なる
  • 一人社長の会社負担率は報酬月20万〜54万円で14.2〜14.5%。標準報酬月額の上限に近づく月80万円で12.7%、月100万円で11.1%に下がる

法人化の試算で迷いやすいのが、会社が負担する社会保険料の見積もりです。「人件費の1割強」「15%前後」と目安はばらつきます。財務省の法人企業統計で、実際の小さな会社が給与に対してどれだけ福利厚生費を払っているかを見ると、**資本金1千万円未満では7.1%**でした。一方、一人社長が自分の役員報酬に対して会社負担する社会保険料は、その2倍あります。なぜ差が出るのかを分解します。

統計の福利厚生費は、給与・賞与の7.1%

法人企業統計は、会社の損益計算書から役員給与・従業員給与・福利厚生費などを集め、資本金の階級ごとに合計した推計値を出しています。福利厚生費は、財務省の用語の解説によると「法定福利費、厚生費、福利施設負担額、退職給与引当金額等、給与以外で人件費とみなされるもの」の総額です。社会保険料・労働保険料の事業主負担は法定福利費としてここに入ります。

2025年度の値から、役員給与・役員賞与・従業員給与・従業員賞与の合計に対する福利厚生費の割合を計算しました。

資本金1社あたり従業員数給与・賞与の合計に対する福利厚生費役員・従業員1人あたり福利厚生費
1千万円未満4.1人7.1%21.7万円
1千万〜2千万円14.6人7.4%26.7万円
2千万〜5千万円30.9人9.6%39.4万円
5千万〜1億円89.5人11.5%46.4万円
1億〜10億円268.6人15.4%77.1万円
10億円以上1,584.0人17.7%120.5万円
全規模14.2人11.9%50.7万円

※ 財務省「法人企業統計調査」時系列データ(年次別・金融業、保険業以外の業種・原数値)から当サイトが計算。1人あたりは期中平均役員数と期中平均従業員数の合計で割った値。役員数は常勤・非常勤を問わず給与を受ける人数、従業員数は臨時従業員を常用者の労働時間で換算して含む

資本金が大きいほど割合は高く、10億円以上の会社では17.7%です。大企業は厚生費や退職給与引当金の繰入れが厚いうえに、ほとんどの従業員が社会保険に入っています。資本金1千万円未満は7.1%、役員・従業員1人あたりでは年21.7万円でした。

一人社長の会社負担は、報酬の14.3%

同じ割合を、一人社長の会社で計算エンジンから出します。役員報酬にかかるのは健康保険料・厚生年金保険料の会社負担分と、会社だけが払う子ども・子育て拠出金です。社長は労働者ではないので、労災保険料と雇用保険料はかかりません。

役員報酬(月)会社負担(年)役員報酬に対する率
20万円349,200円14.5%
30万円523,800円14.5%
42万円715,860円14.2%
54万円925,380円14.3%
80万円1,219,572円12.7%
100万円1,334,484円11.1%

※ 協会けんぽ東京支部・40歳未満。子ども・子育て拠出金を含む。40〜64歳(介護保険あり)で月54万円なら15.1%

報酬月20万〜54万円の範囲では14.2〜14.5%でほぼ一定です。月80万円を超えると厚生年金の標準報酬月額の上限にかかり、率が下がり始めます。40歳以上は介護保険料が加わり、月54万円で15.1%になります。報酬別の金額は一人社長の社会保険料の早見表にまとめています。

統計の小さな会社の平均7.1%に対して、一人社長は14.3%。ほぼ2倍です。

平均が低く出る理由:社会保険の外にある給与が多い

統計の割合が低いのは、小さな会社の給与のうち、社会保険料がかからない部分が多いからです。制度の上で、次のような給与には事業主負担の社会保険料がかかりません。

  • 加入要件を満たさないパート・アルバイトの給与:週の所定労働時間や賃金の要件を満たさない短時間労働者は、健康保険・厚生年金の被保険者になりません。資本金1千万円未満の会社は1社あたり従業員4.1人で、パートの比重が高い業種も多く含まれます
  • 年齢で保険料がかからない役員・従業員の報酬:厚生年金は70歳、健康保険は75歳で被保険者でなくなります。高齢の社長が報酬を受け取っている会社では、その分の社会保険料が0円になります(一人社長の社会保険料は70歳と75歳で2段階に消える)
  • 標準報酬月額の上限を超える部分:上限を超えた報酬には保険料がかからないため、高額な役員報酬ほど率が下がります(厚生年金の上限が75万円へ)

加えて、本来加入すべき事業所が加入していない分も平均を下げている可能性はありますが、統計からその大きさを切り分けることはできません。福利厚生費には厚生費や退職給与引当金の繰入れなども入っているので、社会保険料だけの割合は7.1%よりさらに低いことになります。

逆に言えば、社長1人だけで、報酬が上限より低く、70歳未満の会社は、平均を押し下げる要因を1つも持っていません。法人化すると社会保険は強制加入で、一人社長にも例外はありません(法人化すると社会保険は強制加入)。統計の7.1%を使って試算すると、会社負担を半分に見積もることになります。

2007年度の5.7%から7.1%へ。小さい会社でも上がり続けている

資本金1千万円未満の割合を、従業員賞与が公表されている2007年度から並べます。

年度給与・賞与の合計に対する福利厚生費
2007年度5.7%
2010年度5.5%
2013年度5.3%
2016年度6.3%
2019年度7.0%
2021年度7.3%
2023年度6.5%
2024年度6.6%
2025年度7.1%

※ 財務省「法人企業統計調査」時系列データから当サイトが計算

2013年度の5.3%から2019年度の7.0%へ上がりました。厚生年金の保険料率は平成29年9月に18.3%で固定されるまで毎年引き上げられ、平成28年10月からは短時間労働者への適用拡大も段階的に始まっています。統計からは要因を分けられませんが、制度の変化と同じ向きに動いています。

短時間労働者の適用拡大は今後も続き、企業規模の要件は2035年10月までに段階的になくなります。一人会社でも、パートを雇えば社会保険の対象になる場面が増えていきます(一人会社でもパートに社会保険が要る)。

法人化の試算では、統計ではなく報酬額から計算する

法人化で増える社会保険料は、判定の結論を左右する最大の費用です。見積もるときは、統計の平均ではなく、次の順で自分の数字を出すのが確実です。

  1. 想定する役員報酬の月額から、標準報酬月額の等級を決める
  2. 健康保険料率(都道府県ごと、40〜64歳は介護保険料を加える)と厚生年金保険料率を掛ける
  3. 会社負担分に子ども・子育て拠出金を足す
  4. 本人負担分は役員報酬から差し引かれるので、手取りの計算に入れる

判定ツールはこの計算を役員報酬月5万〜100万円の1万円刻みで行い、手取りが最大になる報酬額を出しています。社会保険料の会社負担は法人の損金になるので、法人税が減る分まで含めて比べています。

まとめ

  • 資本金1千万円未満の会社の福利厚生費は、役員・従業員の給与と賞与の合計の7.1%(2025年度)。資本金10億円以上は17.7%
  • 一人社長が役員報酬月54万円で会社負担する社会保険料は報酬の14.3%で、統計の平均の2倍
  • 平均が低いのは、加入要件を満たさないパートの給与、70歳・75歳以上の報酬、上限を超える部分に保険料がかからないため
  • 資本金1千万円未満の割合は2013年度の5.3%から上がり続けている
  • 法人化の試算では、統計の割合ではなく役員報酬の額から社会保険料を計算する

自分の売上と経費で、社会保険料を含めた法人化の手取りを判定ツールで確かめてください。

よくある質問

法人企業統計の福利厚生費には、何が入っていますか。

財務省の用語の解説では、法定福利費、厚生費、福利施設負担額、退職給与引当金額等、給与以外で人件費とみなされるものの総額です。社会保険料の事業主負担はこのうちの法定福利費に入りますが、統計の上では内訳が分かれていないため、社会保険料だけの割合はこれより低くなります。

一人社長でも、労災保険料や雇用保険料はかかりますか。

社長は労働者ではないので、役員報酬には労災保険料も雇用保険料もかかりません。従業員を雇うと、その従業員の給与に対してかかります。

事業計画で社会保険料を見積もるとき、統計の7.1%を使ってよいですか。

一人社長の会社には向きません。統計の平均には社会保険の対象にならないパート・アルバイトの給与や、年齢で保険料がかからなくなった役員の報酬が混ざっています。役員報酬の額から標準報酬月額を出し、保険料率を掛けて見積もるほうが実態に合います。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。