設立の手続き

創業関連保証は法人成りでも使える?期限は個人の開業日から5年

結論

使えます。ただし期限は会社の設立日ではなく、個人で事業を始めた日から5年です(産業競争力強化法129条2項)。法人成りした会社は、個人の開業から5年を過ぎるまでの間だけ創業者とみなされます。保証限度額3,500万円は個人のときに受けた創業関連保証と通算され、開業から5年を過ぎてからの法人成りでは会社は創業者に当たりません。

  • 法人成りの特例は、個人の事業を事業の譲渡で新しい会社に引き継ぐ場合の規定。個人で開業3年後に法人成りすると、会社が創業関連保証を使えるのは残りの約2年だけ
  • 経営者保証なしのスタートアップ創出促進保証は法人だけが対象。個人事業主のままでは使えないが、開業5年以内に法人成りした会社は使える
  • 東京信用保証協会の料率表では、1,000万円・5年・均等返済の保証料は創業関連保証13.75万円、経営者保証なし19.25万円、決算書のない会社の一般保証25.85万円

創業関連保証の対象を確かめると、根拠は中小企業信用保険法そのものではなく、産業競争力強化法に置かれた特例だと分かります。「創業者」の定義も同じ法律の2条にあります。法人成りの扱いを決めているのは129条2項という1つの項で、そこに5年の数え方と限度額の通算の両方が書かれています。

この記事では、条文と全国信用保証協会連合会の案内で対象を確かめたうえで、東京信用保証協会の料率表を使って、法人成りの前後で保証料がどう変わるかを計算します。日本政策金融公庫の創業融資を個人と法人のどちらで借りるかは創業融資は個人事業主と法人どちらで借りるかで扱っています。ここでは、銀行や信用金庫から信用保証協会の保証付きで借りる場合に絞ります。

創業関連保証の「創業者」は6つの型に限られる

創業関連保証は、中小企業信用保険法の無担保保険に、産業競争力強化法129条が上乗せした特例です。保証の対象は「創業者の要する資金」で、施行規則62条が創業に係る事業のための設備資金と運転資金と定めています。

誰が創業者かは、産業競争力強化法2条32項が6つの型で決めています。

号創業者の型期限
1号事業を営んでいない個人で、個人として事業を始めようとする人1か月以内に開始する具体的な計画
2号事業を営んでいない個人が個人として事業を始めた場合のその人事業開始日から5年未満
3号事業を営んでいない個人で、会社を設立して事業を始めようとする人2か月以内に設立・開始する具体的な計画
4号事業を営んでいない個人が設立した会社設立日から5年未満
5号自らの事業を続けながら新しい会社を作ろうとする会社(分社化)具体的な計画
6号分社化で設立された会社設立日から5年未満

1号と3号の期限は、市区町村の認定特定創業支援等事業で支援を受けた人なら6か月以内に延びます。この特例と登録免許税の軽減との関係は会社設立の登録免許税が半額にで扱っています。

表で見落としやすいのは、3号と4号の主語です。どちらも「事業を営んでいない個人」が会社を作る場合に限られています。すでに個人事業を営んでいる人が会社を作っても、この定義には当たりません。法人成りは、この6つの型の外にあるのです。

法人成りは129条2項で「設立5年未満の会社」とみなされる

その外にある法人成りを拾っているのが129条2項です。要件と効果を分けると次のようになります。

  • 対象になる人: 2号の創業者、つまり事業を営んでいない状態から個人で開業し、開業から5年未満の個人事業主
  • 行為: 新たに会社(中小企業者に限る)を設立し、事業の譲渡によって事業の全部または一部をその会社に承継させる
  • 効果: その会社を4号の創業者(設立5年未満の会社)とみなす
  • 期間: 個人が事業を開始した日から起算して5年を経過するまで

全国信用保証協会連合会の案内も、創業関連保証の対象に「事業を営んでいない個人が開始した事業を法人化し、個人創業時から5年未満である」者を挙げています。

5年の時計は会社の設立日では進まない

設立から5年未満の会社(4号)なら、時計は会社の設立日から動きます。法人成りした会社は4号と「みなされる」だけなので、時計は個人の開業日から動いたままです。

個人で開業してから法人成りまで会社が創業関連保証を使える残り期間
1年約4年
3年約2年
4年半約半年
5年以上なし(創業者に当たらない)

開業3年で法人成りした会社は、登記簿上は設立したばかりでも、創業関連保証の上では創業4年目の事業者です。「会社を作れば創業者として扱われる」わけではありません。 法人成り後の借入を創業関連保証で考えているなら、個人の開業日から5年の期限が先に来ることを前提に、設立と借入の順番を組むことになります。

条文が「事業の譲渡により」と書いている点にも注意が要ります。個人の事業を会社に引き継ぐ方法には現物出資などもあります。どの引継ぎ方なら特例の対象になるかは、申込み前に保証協会へ確かめておく必要があります。

3,500万円の枠は個人と会社で通算される

創業関連保証の保証限度額は3,500万円です(129条1項)。法人成りの場合、この枠は個人と会社で別々には使えません。129条2項は、個人で既に創業関連保証の保険関係が成立しているときは、会社の限度額を「3,500万円から当該保険関係における保険価額の合計額を控除した残額」と読み替えています。

たとえば個人のときに創業関連保証で1,000万円の保証を受けていれば、法人成り後の会社が使えるのは、その分の保険価額を差し引いた残りです。法人成りで枠が新しく3,500万円に戻ることはありません。

創業向けの保証制度はほかにもあります。全国信用保証協会連合会によると、創業関連保証・再挑戦支援保証・スタートアップ創出促進保証制度は併用できますが、3制度の合計で3,500万円が保証限度額です。

もう1つ外枠があります。施行令29条は、一般の無担保保険と創業関連保証の保険価額の合計の限度額を8,000万円としています。創業関連保証の3,500万円は、無担保で保証を受けられる8,000万円の内側にある枠です。

経営者保証なしの保証は、法人成りしないと使えない

スタートアップ創出促進保証制度は、創業関連保証の保証料率に0.2%を上乗せすることで、経営者が会社の連帯保証人にならなくてよい制度です。全国信用保証協会連合会の案内で対象を創業関連保証と並べると、違いがはっきりします。

対象創業関連保証スタートアップ創出促進保証
1か月以内に個人で開業する予定の人対象対象外
2か月以内に会社を設立する予定の人対象対象
開業5年未満の個人事業主対象対象外
設立5年未満の会社(事業を営んでいない個人が設立)対象対象
個人で開業し、個人創業時から5年未満で法人化した会社対象対象

個人事業主は、スタートアップ創出促進保証の対象にそもそも入っていません。個人の借入は事業の借金がそのまま本人の借金なので、「経営者保証を外す」という形が成り立たないためです。法人化と有限責任・経営者保証の関係は「法人化すれば有限責任」は本当かで整理しています。

裏返すと、開業5年以内の個人事業主にとって、法人成りは「経営者保証なしで保証付融資を受けられる型」に移る手段にもなります。ただし時計は個人の開業日から進んでいるので、使える期間は法人成りが遅いほど短くなります。

保証料は法人成りの時期で約2倍違う

信用保証料は協会ごとに定められています。ここでは東京信用保証協会の信用保証料率表(2026年6月23日更新)と、同協会が公表している計算式で、同じ借入の保証料を比べました。

比べるのは3つの場面です。開業5年以内に法人成りした会社が創業関連保証を使う場合、同じ会社がスタートアップ創出促進保証を使う場合、そして開業5年を過ぎてから法人成りし、創業関連保証が使えない会社が一般保証を使う場合です。設立直後の会社には決算書がありません。東京信用保証協会の料率表は、直前の決算に貸借対照表がない場合に料率区分5を適用するとしているので、一般保証は区分5で計算しています。

借入額創業関連保証スタートアップ創出促進保証(経営者保証なし)一般保証(決算書なし・料率区分5)
300万円28,875円(0.35%)45,375円(0.55%)63,525円(0.77%)
500万円48,125円(0.35%)75,625円(0.55%)105,875円(0.77%)
1,000万円137,500円(0.50%)192,500円(0.70%)258,500円(0.94%)
2,000万円330,000円(0.60%)440,000円(0.80%)632,500円(1.15%)
3,000万円495,000円(0.60%)660,000円(0.80%)948,750円(1.15%)

※ 東京信用保証協会の信用保証料率表(2026年6月23日更新)で、保証期間5年・据置なし・毎月均等返済(分割係数0.55)の場合。保証付融資がこの1本だけの前提。創業関連保証は100%保証。一般保証は責任共有制度の対象で金融機関も一部のリスクを負うが、料率は融資額に対する率で表示されている。保証料率・区分は協会ごとに異なる

1,000万円を5年で借りる場合、創業関連保証の13.75万円に対して、一般保証は25.85万円で約1.9倍です。経営者保証を外すスタートアップ創出促進保証でも19.25万円で、一般保証より安く収まります。開業5年の期限を過ぎてから法人成りすると、この差をそのまま負担することになります。

なお、東京都や区市町村の制度融資を使う場合は、それぞれの制度の保証料率や保証料補助が適用されます。表は協会の料率表に載っている基本の率で比べたものです。

保証料の経費計上と、個人の保証付融資の後始末

保証料の差額は数十万円の単位で、法人化の損益を逆転させるほどの大きさではありません。ただし、法人成りの前後では処理が2つ変わります。

一括で払った保証料は保証期間で按分する

信用保証料は原則として融資の実行時に一括で払います。5年分をまとめて払っても、法人ではその期の損金にはできません。法人税基本通達2-2-14が支払時の損金算入を認める短期前払費用は、支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るものに限られるためです。保証期間に応じて前払費用から少しずつ損金に振り替えます。消費税の上では、信用保証料は非課税取引です(タックスアンサー No.6201)。

個人の保証付融資を完済すると保証料の一部が戻る

個人事業主のときに保証付融資を受けていても、その借入は法人成りしても会社の債務にはなりません。会社に引き継ぐには債務引受の手続きと債権者の同意が要ります。詳しくは法人成りの借入金は自動的に法人へ移らないで扱っています。

会社で新たに借りて個人の借入を繰上完済する場合、東京信用保証協会は、最終約定期限前に完済すると信用保証料の一部を返戻することがあるとしています。計算の結果が1,000円以下のものは返戻の対象外です。同じ金融機関で、完済を条件とする新規の保証付融資で借り換える場合は、申込み時に返戻先の口座を届け出る手順が案内されています。

まとめ

  • 創業関連保証の根拠は産業競争力強化法129条で、「創業者」は同法2条32項の6つの型。事業を営んでいる個人が会社を作る法人成りは、この6つに入らない
  • 法人成りした会社は129条2項で設立5年未満の会社とみなされるが、期限は個人の開業日から5年。開業5年を過ぎてからの法人成りでは対象外
  • 3,500万円の枠は個人と会社で通算され、再挑戦支援保証・スタートアップ創出促進保証と合わせても3,500万円まで
  • 経営者保証なしのスタートアップ創出促進保証は個人事業主には使えず、開業5年以内に法人成りした会社なら使える
  • 東京信用保証協会の料率で1,000万円・5年の保証料は、創業関連保証13.75万円、経営者保証なし19.25万円、決算書のない会社の一般保証25.85万円

創業関連保証の期限は、法人化の判断を急がせる理由にはなりますが、法人化そのものが得かどうかは別の計算です。自分の売上と経費で法人化の損益分岐を確かめたうえで、借入の時期と名義を決めてください。

よくある質問

個人事業を始めて6年目です。法人成りした会社は創業関連保証を使えますか?

使えません。法人成りした会社を創業者とみなす特例は、個人で事業を始めた日から5年を経過するまでの間に限られています。事業を営んでいる個人が会社を作る行為は、法律上の「創業」(事業を営んでいない個人による会社の設立)にも当たりません。一般の保証制度を使うことになります。

個人のときに創業関連保証で1,000万円借りています。法人成り後の会社はいくらまで保証を受けられますか?

産業競争力強化法129条2項は、個人で既に創業関連保証の保険関係が成立している場合、会社の限度額を3,500万円からその保険価額の合計額を差し引いた残額にすると定めています。個人と会社で枠を別々に使うことはできません。残額の具体的な計算は保証協会で確認してください。

信用保証料は経費になりますか?

事業のための借入れに係る信用保証料は経費になります。ただし保証期間が数年にわたる保証料を一括で払った場合、法人では1年以内の役務に係る短期前払費用(法人税基本通達2-2-14)に当たらないので、保証期間に応じて按分して損金にします。消費税は非課税です。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。