社会保険

東京土建国保の一人親方が法人化すると保険料は月1.28万円上がる

結論

東京土建国保の令和8年度保険料(都内居住者)は、一人親方(材料もち)の第2種が月28,450円、法人事業所の代表者の法人A種が月41,250円で、法人化すると組合の保険料は月1万2,800円(年15.4万円)上がります。適用除外承認を受けて東京土建国保に残れば、単身・40歳未満の法人化の損益分岐点は売上−経費1,318万円で、判定ツールの1,266万円より52万円上です。協会けんぽに移ると1,677万円になります。

  • 法人の代表者は、本人のすべての所得の合計額が200万円以下ならC種32,850円、200万円超400万円以下ならB種37,050円(2026年8月分から上限を拡充)
  • 役員報酬だけで判定すると、C種は月24.7万円まで、B種は月46.2万円まで。売上−経費1,200万円でC種に合わせると、組合の保険料は年10.1万円下がるが、法人化の手取りは最適報酬より年69.6万円少ない
  • 18歳以上は子ども・子育て支援納付金分500円、40〜64歳は介護納付金分4,200円を1人ずつ加算する。加入には東京土建一般労働組合の組合員であることが必要

東京土建国民健康保険組合(東京土建国保)は、東京土建一般労働組合の組合員が入る建設国保です。保険料は所得に比例しない定額ですが、法人の代表者になると保険料の区分が変わり、しかもその区分が本人の所得で3段階に分かれる点が、ほかの国保組合にない特徴です。

この記事では、一人親方が法人化したときに組合の保険料がいくら変わるか、法人化後も東京土建国保に残る場合と協会けんぽに移る場合で損益分岐点がどう動くかを、当サイトの計算エンジンで出しました。全建総連系のもう1つの大手、中建国保の計算は中建国保の一人親方の法人化に、年齢で区分が決まる埼玉の建設国保は埼玉土建国保の法人化にあります。

法人の代表者は法人A種、一人親方より月1万2,800円高い

東京土建国保は、組合員の働き方(就業実態)で保険料区分を決めます。令和8年度の都内居住者の月額は次のとおりです。

区分就業実態月額(都内)月額(都外)
法人A種法人事業所の代表者41,250円43,550円
法人B種代表者のうち、所得200万円超400万円以下37,050円39,350円
法人C種代表者のうち、所得200万円以下32,850円35,150円
第1種個人事業所の事業主34,850円37,150円
第2種代表者以外の役員、一人親方(材料もち)、第1種のうち所得200万円以下28,450円30,750円
第3種雇用されている人、外注・手間請け・日当で働く人23,150円25,450円

医療給付費分と後期高齢者支援金分の合計(組合員本人)。18歳以上は子ども・子育て支援納付金分500円、40〜64歳は介護納付金分4,200円を加算する。所得は組合員個人のすべての所得の合計額で判定し、家族の所得は合算しない。

材料を持って仕事を請ける一人親方が法人を作って代表者になると、第2種から法人A種に変わり、**月1万2,800円(年15.4万円)**上がります。中建国保(第2種27,800円→法人第1種34,200円、差6,400円)と比べて、上がり幅は2倍です。

法人B種の所得の上限は、2026年8月分以降の保険料から250万円以下が400万円以下に広がりました。法人の代表者になっても、所得が400万円以下ならB種、200万円以下ならC種で済みます。

法人化後も残れる条件

法人の代表者・役員は、社長1人の会社でも健康保険に入るのが原則です。東京土建国保は、健康保険の適用除外の承認を受けて組合に加入できる人として、国民健康保険組合の被保険者が法人を設立するなどで健康保険の適用事業所となる場合のその被保険者を挙げています。申請する場合は、事前に組合への確認が必要だとしています。

承認で外れるのは健康保険だけで、厚生年金には加入します。承認は法人化の時点で国保組合の被保険者であることが前提で、期限は法人化から14日以内です(国保組合は法人化後も続けられる?適用除外承認の4要件と14日の期限)。

また、国保組合に加入するには母体の東京土建一般労働組合の組合員であることが必要です。労働組合の組合費は国保の保険料とは別にかかりますが、この記事の計算には入れていません。

役員報酬を下げてC種にしても、手取りは増えない

法人の区分が所得で決まるなら、「役員報酬を低くしてC種にすれば保険料が安い」と考えたくなります。役員報酬以外に所得がない単身の社長について、給与所得控除の後の所得で区分の境目を計算すると、次のとおりです。

区分給与所得役員報酬(月額)の上限
法人C種200万円以下月24.7万円
法人B種400万円以下月46.2万円
法人A種400万円超—

ただし、報酬を下げると、そのぶん法人に利益が残って法人税がかかり、厚生年金も減ります。売上−経費1,200万円・40歳未満で、東京土建国保に残ったまま役員報酬を固定して比べました。

役員報酬(月額)給与所得区分組合の保険料(年)法人化の実質差額
15.0万円106.0万円C種40.0万円−102.1万円
20.0万円160.0万円C種40.0万円−87.3万円
25.0万円202.0万円B種45.1万円−78.8万円
30.0万円244.0万円B種45.1万円−66.7万円
40.0万円340.0万円B種45.1万円−52.9万円
60.0万円538.0万円A種50.1万円−36.9万円

前提は下の表と同じ。手取りが最大になる役員報酬(月93万円・A種)の実質差額は−17.7万円。

C種とA種の保険料の差は年10.1万円ですが、C種に合わせるために報酬を月20万円まで下げると、法人化の実質差額は最適報酬のときより年69.6万円悪くなります。報酬の設計は、組合の区分ではなく法人と個人の税・厚生年金の合計で決めたほうが手取りは大きくなります。

なお、B種・C種の判定には住民税の課税(非課税)証明書などを使い、適用期間は8月分から翌年7月分です。証明書に載るのは前年の所得なので、法人化した直後は個人事業のころの所得で判定されます。

東京土建国保に残るか、協会けんぽに移るか

計算エンジンで、法人化の実質差額を3通りに計算しました。

  • 判定ツール:個人側は区の国保、法人側は協会けんぽ+厚生年金
  • 東京土建国保に残る:個人側は第2種、法人側は適用除外承認を受けて法人A〜C種+厚生年金(区分は役員報酬の給与所得で判定)
  • 協会けんぽに移る:個人側は第2種、法人側は協会けんぽ+厚生年金

40歳未満・単身

売上−経費東京23区の国保東京土建国保(第2種)判定ツール東京土建国保に残る協会けんぽに移る
500万円48.2万円34.7万円−49.8万円−64.6万円−60.5万円
700万円69.3万円34.7万円−31.2万円−51.9万円−55.2万円
900万円90.5万円34.7万円−18.4万円−50.8万円−56.6万円
1,200万円96.0万円34.7万円−6.6万円−17.7万円−41.1万円
1,500万円96.0万円34.7万円+23.9万円+22.7万円−10.6万円
2,000万円96.0万円34.7万円+67.3万円+78.6万円+34.0万円

40〜64歳・単身

売上−経費東京23区の国保東京土建国保(第2種)判定ツール東京土建国保に残る協会けんぽに移る
500万円59.5万円39.8万円−46.0万円−64.8万円−61.7万円
700万円85.5万円39.8万円−26.2万円−52.4万円−58.0万円
900万円107.5万円39.8万円−13.2万円−51.5万円−59.8万円
1,200万円113.0万円39.8万円−4.3万円−18.2万円−45.5万円
1,500万円113.0万円39.8万円+26.1万円+22.6万円−15.0万円
2,000万円113.0万円39.8万円+65.8万円+78.3万円+25.4万円

経費300万円・東京23区(令和8年度の特別区統一保険料率)・都内居住・単身・青色申告65万円(e-Tax)・インボイス登録済み・建設業(請負業=個人事業税5%)・合同会社・協会けんぽ東京支部。実質差額は法人化(最適な役員報酬)の手取りから個人の手取りを引き、税理士報酬の増加分を差し引いた2年目以降の額で、プラスは法人化が有利。組合の保険料は組合員本人が払う前提で、労働組合の組合費は含まない。2026年(令和8年)分の税率・料率による概算。再計算は node scripts/tokyo-doken-kokuho-houjinka.mjs。

損益分岐点を1万円刻みで探し直すと、次のとおりです。

条件判定ツール東京土建国保に残る協会けんぽに移る
40歳未満・単身1,266万円1,318万円1,677万円
40〜64歳・単身1,243万円1,320万円1,758万円

東京土建国保に残る場合でも、分岐点は判定ツールより50万〜80万円上がります。中建国保に残る場合(1,283万円)よりも高いのは、法人化したときの保険料の上がり幅が大きい(月6,400円に対して1万2,800円)ためです。

協会けんぽに移る場合は、分岐点は約410万〜520万円上がります。個人のままなら年34.7万円で済む健康保険が、法人では役員報酬に比例する保険料に変わるからです。

判定ツールの結果の読み方

判定ツールの個人側は、区市町村の国保で計算しています。東京土建国保に入っている一人親方は、次のように読み替えてください。

  • 法人化しても東京土建国保に残る:ツールの実質差額から、売上−経費1,200万〜1,500万円の帯で約1万〜14万円を差し引く(上の表の「判定ツール」と「残る」の差。売上−経費が小さいほど差が大きい)
  • 協会けんぽに移る:売上−経費1,500万円で約34万円を差し引く

建設業許可を持っているなら、法人化で社会保険の加入が許可の要件にかかわります(建設業許可の社会保険の要件と法人成り)。労災の特別加入や許可の承継を含めた全体像は一人親方の法人化は売上いくらから?、区市町村の国保の水準は国民健康保険料の自治体別比較にあります。

一般論の分岐点ではなく、自分の売上と経費で判定ツールを動かし、上の差を当てはめて確かめてください。

まとめ

  • 東京土建国保(都内)は、一人親方(材料もち)の第2種が月28,450円、法人の代表者の法人A種が月41,250円で、法人化すると月1万2,800円上がる
  • 代表者の区分は本人の所得で3段階。給与所得200万円以下(役員報酬 月24.7万円まで)ならC種32,850円、400万円以下(月46.2万円まで)ならB種37,050円
  • C種に合わせて報酬を下げても、売上−経費1,200万円では手取りが最適報酬より年69.6万円少ない
  • 適用除外承認で残れば、単身の分岐点は1,318万円(40〜64歳は1,320万円)。協会けんぽに移ると1,677万円(同1,758万円)
  • 加入には東京土建一般労働組合の組合員であることが必要で、組合費は保険料とは別にかかる

よくある質問

東京土建国保の法人B種・C種は自動で適用されますか?

自動では適用されません。組合は法人B種・法人C種・第2種(所得200万円以下の第1種)を届出が必要な区分としていて、住民税の課税(非課税)証明書などで所得を確かめます。適用期間は8月分から翌年7月分の保険料です。

都外に住んでいると保険料は変わりますか?

変わります。組合は都外居住者は東京都から補助金を受けていないとして、高い金額を設定しています。法人A種は都内41,250円に対し都外43,550円、第2種は28,450円に対し30,750円です。

家族の保険料はいくらですか?

23歳以上60歳未満の男性(成人男性)が12,100円、18歳以上のそれ以外の人(一般)が4,600円、中高生相当3,800円、小学生相当3,000円、幼児・乳児1,800円です。成人男性、一般、高校生相当…の順で4人目まで徴収し、5人目からはかかりません。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。