社会保険
建設業許可は社会保険の加入が要件。一人親方は個人なら対象外、法人なら1人でも必須
結論
建設業法施行規則7条2号は、健康保険・厚生年金保険の適用事業所に当たる全ての営業所について届出をしていることを許可要件にしています(令和2年10月から)。適用事業所は法人の事業所と、常時5人以上の労働者を使う個人の事業所なので、一人親方が個人のまま許可を取る場合は対象外です。法人成りすると社長1人でも適用事業所になり、東京・40〜59歳なら役員報酬月30万円で健康保険と厚生年金に労使あわせて年108万円かかります。
- 建設国保に残りたい場合は、法人化の時点で年金事務所長の承認を受けて健康保険だけ適用除外にできる。厚生年金は外れず、報酬月30万円なら労使計で年65.9万円
- 許可の申請では、直前の保険料の領収証書などで加入を確認され、沖縄県は常勤性の確認に社会保険の標準報酬決定通知書の提示を求めている
- 役員報酬を0円にして社会保険料をなくす設計は、法人が適用事業所のまま被保険者がいない状態になり、許可の確認書類や常勤性の証明とぶつかる
このテーマの全体像 一人社長の社会保険料はいくらか
建設業の一人親方が法人化を考えるとき、税と社会保険の差額は一人親方の法人化は売上いくらから?で計算しました。そこにもう1つ、法人で建設業許可を取る場合だけに効く要件があります。令和2年10月から、社会保険への加入が許可の要件になっているためです。
個人のままなら対象外になる一人親方も、法人にすると社長1人で対象になります。
許可の要件は「適用事業所なら届出していること」
国土交通省の許可要件の案内では、建設業法施行規則7条2号の「適正な社会保険への加入」として、次を求めています。
- 健康保険・厚生年金保険:適用事業所に該当する全ての営業所について、その旨を届け出ていること
- 雇用保険:適用事業の事業所に該当する全ての営業所について、その旨を届け出ていること
新規の許可だけでなく、更新、業種追加、事業承継などでも確認されます(沖縄県の案内)。加入していなければ許可を受けられません。
ポイントは「適用事業所に該当するなら」という書き方です。誰が適用事業所かで、個人と法人の扱いが分かれます。
| 保険 | 個人事業(常時5人未満) | 個人事業(常時5人以上) | 法人 |
|---|---|---|---|
| 健康保険・厚生年金 | 適用事業所ではない(届出不要) | 適用事業所(届出・加入が必要) | 適用事業所(社長1人でも) |
| 雇用保険 | 労働者を1人でも雇えば適用 | 同左 | 同左(社長だけなら対象外) |
※ 沖縄県の建設業許可の社会保険加入要件の案内。個人事業の5人未満は健康保険・厚生年金の適用事業所に当たらない
一人親方が個人のまま許可を取るなら、健康保険・厚生年金の届出はそもそも要りません。国保または建設国保と、国民年金に入っていれば足ります。法人成りすると、この前提が変わります。法人の事業所は人数に関係なく適用事業所なので、社長1人の会社でも健康保険と厚生年金に入ることが許可の前提になります。
法人で許可を取るときの社会保険料
社長が役員報酬を受け取ると、その額に応じた社会保険料がかかります。東京・40〜59歳(介護保険あり)で計算しました。
| 役員報酬(月額) | 健康保険+厚生年金(労使計・年) | うち厚生年金(建設国保に残る場合の負担) |
|---|---|---|
| 10万円 | 352,800円 | 215,208円 |
| 20万円 | 720,000円 | 439,200円 |
| 30万円 | 1,080,000円 | 658,800円 |
| 40万円 | 1,476,000円 | 900,360円 |
| 54万円 | 1,908,000円 | 1,163,880円 |
※ 協会けんぽ東京支部・令和8年度。介護保険料・子ども・子育て支援金を含む。労使計は会社負担と本人負担の合計
※ 計算は当サイトの計算エンジン(scripts/kensetsu-kyoka-shaho.mjs)による
個人のままの一人親方が払う国保と国民年金(東京23区・40〜59歳・単身)と並べると次のとおりです。
| 事業所得(青色申告特別控除後) | 国保(年) | 国民年金(年) | 合計 |
|---|---|---|---|
| 300万円 | 419,230円 | 215,040円 | 634,270円 |
| 500万円 | 679,430円 | 215,040円 | 894,470円 |
| 800万円 | 1,037,979円 | 215,040円 | 1,253,019円 |
| 1,000万円 | 1,127,712円 | 215,040円 | 1,342,752円 |
※ 港区の令和8年度の料率(特別区統一保険料率)で、当サイトの計算エンジンで算出
建設国保に残る道
建設国保などの国保組合に入っている一人親方は、法人化の時点で年金事務所長の承認を受ければ、健康保険だけ適用除外にして国保組合に残れます。許可の申請でも、年金事務所長の承認を受けて全国土木建築国民健康保険組合などに加入している場合は、健康保険の欄を「適用除外」として扱うと案内されています(沖縄県)。
ただし外れるのは健康保険だけで、厚生年金には加入します。役員報酬が月30万円なら、厚生年金だけで労使計年65.9万円です。承認の要件と14日の期限は国保組合は法人化後も続けられる?で扱っています。
役員報酬を0円にする設計とぶつかる
法人化して社会保険料を抑える方法として、役員報酬を0円にする設計があります。報酬がなければ社長は被保険者にならず、保険料もかかりません(役員報酬0円なら社会保険はかからない)。ただし会社は適用事業所のまま残り、被保険者が0人の状態になるだけです。
建設業許可を法人で取る場合、この設計は確認書類とぶつかります。沖縄県の案内では、加入の確認に申請直前の保険料の領収証書か納入証明書の写しを求め、さらに常勤性の確認として社会保険の標準報酬決定通知書の提示を求めています。報酬0円で被保険者がいなければ、どちらの書類も出せません。
許可を法人で取るなら、社長が社会保険に入っていることが事実上の前提になります。0円の報酬で許可を取れるかどうかは、許可行政庁ごとの確認方法によるので、申請前に窓口で確かめる必要があります。
法人成りと許可の順番
個人で持っている建設業許可は、法人成りしても自動では会社に移りません。事前の認可で承継するか、会社で新規に取り直すことになり、その手続きの中で社会保険の加入が確認されます(法人成りで許認可は引き継げるか)。社会保険の新規適用届は設立から5日以内で、遅れて遡って加入すると最大2年分の保険料がまとめて来ます(法人なのに社会保険未加入)。
法人化の損得そのものは、社会保険料を含めて判定ツールで確かめられます。建設業の一人親方は、許可を法人で取る前提なら、社長の報酬を一定以上にして社会保険に入る形を初めから計算に入れておくと、実際に近い結果になります。社会保険料の水準は一人社長の社会保険料で一覧にしています。
まとめ
- 令和2年10月から、建設業許可の新規・更新では健康保険・厚生年金・雇用保険の適用事業所としての届出が要件(建設業法施行規則7条2号)
- 個人で常時5人未満なら健康保険・厚生年金の適用事業所ではなく、一人親方は個人のままなら対象外。法人は社長1人でも適用事業所
- 東京・40〜59歳なら役員報酬月30万円で、健康保険と厚生年金に労使計で年108万円
- 建設国保に残るなら健康保険だけ適用除外の承認を受ける。厚生年金は残り、月30万円で年65.9万円
- 報酬0円の設計は、保険料の領収証書や標準報酬決定通知書を使う許可の確認とぶつかる。法人で許可を取るなら、社会保険に入る前提で試算してください
よくある質問
法人成りした一人親方の会社に、雇用保険の加入も要りますか。
雇用保険の適用事業は労働者を1人でも雇う事業所です。社長だけの会社なら労働者がいないので適用されません。従業員を雇った時点で、許可要件としても雇用保険の届出が要ります。
個人で常時5人以上の職人を雇っている場合はどうですか。
個人でも常時5人以上の労働者を使用する事業所は健康保険・厚生年金の適用事業所なので、許可の申請までに届出と加入が必要です。法人化しなくても社会保険の負担は生じます。
未加入のまま許可の更新を迎えるとどうなりますか。
社会保険への加入は許可の要件なので、加入の届出をしていなければ新規・更新とも許可を受けられません。法人なら設立時点から適用事業所なので、遡って加入する場合の保険料も問題になります。
出典
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。