社会保険
東食国保の飲食店が法人化すると?残れば分岐点は同じ、家族がいると上がる
結論
東食国保の令和8年度保険料は、事業主1人で医療分19,400円+後期高齢者支援金分3,600円の月23,000円(18歳以上は子ども・子育て支援金400円、40〜64歳は介護4,400円を加算)で、法人の事業主の区分はありません。加入中の事業主が法人化して適用除外承認で残れば、単身の損益分岐点は1,246万〜1,249万円で判定ツールとほぼ同じです。配偶者が家族として加入している場合は、協会けんぽなら0円の被扶養者分に月15,100円かかり続けるため、分岐点は判定ツールの865万円から1,113万円に上がります。
- 家族が1人増えるごとに医療分6,700円と後期高齢者支援金分3,600円を加算。夫婦2人で月33,300円、4人で月53,900円(子ども分・介護分を除く)
- 組合は法人事業所の新規加入を受け付けていない。加入中の事業主の法人化は、協会けんぽの適用除外承認(申請は14日以内)を受けて厚生年金に入ることが前提で、申請書には東食国保の証明が要る
- 協会けんぽに移ると、単身の分岐点は1,714万〜1,794万円に上がる
このテーマの全体像 国民健康保険料の自治体別比較
東京都内で飲食店や食品店を営む個人事業主の多くが入っているのが、東京都食品衛生協会を母体とする東京食品販売国民健康保険組合(東食国保)です。保険料は所得に関係ない定額で、家族が1人増えるごとに定額が加わる仕組みです。
法人化を考えるときの結論は、家族の構成で変わります。単身なら組合に残れば判定ツールの結果がほぼそのまま使えますが、配偶者が家族として加入している場合は、協会けんぽの「被扶養者は保険料0円」との差が効いて分岐点が上がります。当サイトの計算エンジンで確かめました。
保険料は人数で決まる定額
令和8年4月からの事業主組合員の月額は次のとおりです。
| 被保険者数 | 医療分 | 後期高齢者支援金分 | 月額合計 | 年額 |
|---|---|---|---|---|
| 1人(事業主のみ) | 19,400円 | 3,600円 | 23,000円 | 27.6万円 |
| 2人 | 26,100円 | 7,200円 | 33,300円 | 40.0万円 |
| 3人 | 32,800円 | 10,800円 | 43,600円 | 52.3万円 |
| 4人 | 39,500円 | 14,400円 | 53,900円 | 64.7万円 |
40〜64歳は1人につき介護納付金分4,400円、4月1日時点で18歳以上は1人につき子ども・子育て支援金分400円を加算。
家族が1人増えるたびに、医療分6,700円と後期高齢者支援金分3,600円、合わせて月10,300円が加わります。40〜64歳の配偶者なら、介護分と子ども分を足して月15,100円です。
表に法人の事業主の区分はありません。法人化しても組合に残れば、事業主本人の保険料は変わりません。
法人事業所の新規加入は不可、継続は適用除外承認で
組合は、加入できる人を「店舗が東京都内にある個人事業主と従業員およびその家族」とし、法人事業所の新規加入は受け付けていないと案内しています。
一方、組合の手引きには、法人事業所の加入の届出として次の条件が書かれています。
- 協会けんぽの適用除外承認を受けて、厚生年金に加入することが前提条件
- 健康保険適用除外承認申請は14日以内、厚生年金保険の資格取得届は5日以内
- 年金事務所での手続きの際、適用除外承認申請書に東食国保の証明が必要
- 14日以内にできないときは、やむを得ない理由を書いた理由書を添付し、年金事務所が認めた場合に限り承認を受けられる
つまり、法人化の時点で加入している事業主が、期限内に組合の証明をもらって年金事務所で承認を受ければ残れます。適用除外承認の4つの要件は国保組合は法人化後も続けられる?適用除外承認の4要件と14日の期限にまとめています。
単身なら、残れば分岐点はほぼ変わらない
計算エンジンで、法人化の実質差額を3通りに計算しました。
- 判定ツール:個人側は東京23区の国保、法人側は協会けんぽ+厚生年金
- 東食国保に残る:個人・法人とも東食国保(法人側は厚生年金だけ加入)
- 協会けんぽに移る:個人側は東食国保、法人側は協会けんぽ+厚生年金
| 条件 | 判定ツール | 東食国保に残る | 協会けんぽに移る |
|---|---|---|---|
| 40歳未満・単身 | 1,266万円 | 1,246万円 | 1,714万円 |
| 40〜64歳・単身 | 1,243万円 | 1,249万円 | 1,794万円 |
| 40〜64歳・配偶者あり | 865万円 | 1,113万円 | 1,394万円 |
損益分岐点(売上−経費、1万円刻み)。経費1,500万円・東京23区(令和8年度の特別区統一保険料率)・青色申告65万円(e-Tax)・インボイス登録済み・飲食店(個人事業税5%)・合同会社・協会けんぽ東京支部。配偶者は40〜59歳・収入なしで、東食国保では家族として加入。組合の保険料は事業主本人が払う前提。法人化(最適な役員報酬)の手取りから個人の手取りと税理士報酬の増加分を引いた2年目以降の実質差額がプラスになる額。2026年(令和8年)分の税率・料率による概算。再計算は
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単身では、組合に残る場合の分岐点は判定ツールとの差が20万円以内です。個人側で安い組合の保険料が、法人側でも同じ額で続くからです。協会けんぽに移ると、分岐点は約450万〜550万円上がります。
40〜64歳・単身
| 売上−経費 | 東京23区の国保 | 東食国保 | 判定ツール | 東食国保に残る | 協会けんぽに移る |
|---|---|---|---|---|---|
| 500万円 | 59.5万円 | 33.4万円 | −46.0万円 | −55.8万円 | −66.8万円 |
| 700万円 | 85.5万円 | 33.4万円 | −26.2万円 | −39.5万円 | −62.5万円 |
| 900万円 | 107.5万円 | 33.4万円 | −13.2万円 | −38.4万円 | −64.1万円 |
| 1,200万円 | 113.0万円 | 33.4万円 | −4.3万円 | −7.3万円 | −49.1万円 |
| 1,500万円 | 113.0万円 | 33.4万円 | +26.1万円 | +32.7万円 | −18.7万円 |
| 2,000万円 | 113.0万円 | 33.4万円 | +65.8万円 | +88.4万円 | +22.3万円 |
前提は上の表と同じ。実質差額はプラスが法人化有利。
配偶者がいると、分岐点は約250万円上がる
判定ツールで配偶者ありの分岐点が865万円と低いのは、法人化すると配偶者が協会けんぽの被扶養者になって保険料が0円になり、さらに第3号被保険者になって国民年金の保険料も不要になるからです。
東食国保に残る場合、年金のほうは同じように配偶者が第3号被保険者になりますが、健康保険は違います。配偶者は家族として組合に入り続け、40〜64歳なら**月15,100円(年18.1万円)**がかかり続けます。
40〜64歳・配偶者あり
| 売上−経費 | 東京23区の国保 | 東食国保(2人) | 判定ツール | 東食国保に残る | 協会けんぽに移る |
|---|---|---|---|---|---|
| 700万円 | 92.2万円 | 51.5万円 | −10.9万円 | −30.3万円 | −39.3万円 |
| 900万円 | 112.2万円 | 51.5万円 | +0.6万円 | −27.5万円 | −41.6万円 |
| 1,200万円 | 113.0万円 | 51.5万円 | +15.0万円 | +13.7万円 | −19.6万円 |
| 1,500万円 | 113.0万円 | 51.5万円 | +45.4万円 | +48.4万円 | +10.8万円 |
前提は上の表と同じ。
配偶者がいる場合、組合に残っても分岐点は865万円から1,113万円へ248万円上がります。判定ツールで「売上−経費900万円なら法人化がわずかに有利」と出ても、東食国保の組合員には年27.5万円の不利になります。家族の人数が多いほど、組合の保険料は人数分増え、協会けんぽ(被扶養者は0円)との差が開きます。
スタッフを雇っている店の注意点
この記事の計算は、事業主(と配偶者)だけの店を前提にしています。手引きは、従業員を常時5人以上雇う製造業・販売業の個人事業所を、適用除外の申請と厚生年金の加入が必要な例に挙げています。飲食店はこの例に入っておらず、個人の飲食店ならスタッフが何人いても社会保険の強制適用ではありません(2029年10月以後に開業する常時5人以上の事業所は対象に加わります)。
法人化すると、スタッフも健康保険・厚生年金の対象になります。東食国保に入っているスタッフは適用除外承認で組合に残れる場合がありますが、厚生年金の事業主負担は残ります。スタッフを雇う店の計算の型は、美容室の例(美容室の法人化はスタッフの社会保険で決まる)と同じです。
判定ツールの結果の読み方
- 単身で東食国保に残る:ツールの結果をほぼそのまま使える
- 配偶者が家族として加入していて残る:分岐点がツールより約250万円上にあると考える
- 協会けんぽに移る:分岐点がツールより500万円前後上にあると考える
ほかの業種の国保組合との比較は、理容国保の法人化や美容国保の法人化にあります。区市町村の国保の水準は国民健康保険料の自治体別比較で確かめられます。
一般論の分岐点ではなく、自分の売上と経費、家族の構成で判定ツールを動かして確かめてください。
まとめ
- 東食国保の保険料は事業主1人で月23,000円の定額で、家族1人ごとに月10,300円が加わる。法人の事業主の区分はない
- 法人事業所の新規加入は不可。加入中の事業主は、組合の証明を付けて14日以内に適用除外承認を受ければ残れる
- 単身で残れば、分岐点は1,246万〜1,249万円で判定ツールとほぼ同じ。協会けんぽに移ると1,714万〜1,794万円
- 配偶者が家族として加入していると、残っても月15,100円がかかり続け、分岐点は865万円から1,113万円に上がる
- 個人の飲食店はスタッフの社会保険が強制でないが、法人化すると対象になる
よくある質問
東食国保に入れるのはどんな人ですか?
食品業に従事し、店舗が東京都内にある個人事業主と従業員、その家族で、東京都(島しょを除く)と神奈川・千葉・埼玉・茨城・栃木・群馬・山梨・静岡の各県に住んでいる人です。移動販売や出張販売の人は加入できず、複数店舗を営業していても登録は1店舗です。
法人を作ってから東食国保に入れますか?
入れません。組合は法人事業所の新規加入を受け付けていないと案内しています。継続できるのは、法人化の時点で加入している人が適用除外承認を受けた場合です。
適用除外の申請が14日以内にできないときは?
組合の手引きは、やむを得ない理由を書いた理由書を添付し、年金事務所がやむを得ないと認めた場合に限り承認を受けられるとしています。14日以内の申請が難しい場合は、事前に管轄の年金事務所へ電話などで相談するよう案内しています。
出典
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。