税金の基礎
養老保険のハーフタックスは一人社長に使えない?半分が給与になる理由
結論
死亡保険金の受取人が被保険者の遺族、満期保険金の受取人が法人の養老保険は、保険料の2分の1を資産、残りを損金にするのが原則です。ただし役員や部課長など特定の人だけを被保険者にしている場合、残りの2分の1はその役員への給与になります(国税庁 No.5363、法人税基本通達9-3-4)。社長しかいない一人会社はこれに当たり、損金になる半分は社長個人の給与所得として課税されます。
- 給与とされた保険料は、毎月おおむね一定なら定期同額給与として損金になる。法人の損金は減らないが、社長個人に所得税・住民税がかかる
- 年120万円の保険料なら、60万円が資産、60万円が社長への給与。法人で60万円の損金を作る代わりに、個人に60万円の所得が生じる
- 給与とされた保険料は、社長個人の生命保険料控除の対象になる
法人の保険でよく紹介される「ハーフタックスプラン」は、養老保険の保険料の半分を損金にできる仕組みです。ところが、社長だけが被保険者の一人会社では、損金になるはずの半分が社長への給与として扱われます。
保険の提案を受ける前に、国税庁の取扱いを確認しておく価値があります。
養老保険の保険料は、受取人で扱いが3通りに分かれる
国税庁 No.5363 は、法人が契約者となり、役員や使用人を被保険者とする養老保険の保険料を、保険金の受取人によって次のように扱うとしています。
| 死亡保険金の受取人 | 満期(生存)保険金の受取人 | 保険料の扱い |
|---|---|---|
| 法人 | 法人 | 全額を資産に計上(損金にならない) |
| 被保険者の遺族 | 被保険者 | 全額がその役員・使用人への給与 |
| 被保険者の遺族 | 法人 | 2分の1を資産、残りは損金(ハーフタックス) |
3段目が、いわゆるハーフタックスです。満期保険金は法人が受け取るので、その分は資産。死亡保険金は遺族が受け取るので、その分は福利厚生のための費用として損金、という考え方です。
役員だけが被保険者なら、損金の半分は給与になる
3段目には但し書きがあります。役員または部課長その他特定の使用人(これらの親族を含む)のみを被保険者としている場合、残りの2分の1は、損金ではなくその役員・使用人への給与になります。
福利厚生の費用として損金を認めるのは、従業員全体を対象にした制度だからです。特定の役員だけを対象にしていれば、それは役員個人への利益の付与と変わりません。
社長1人の会社、社長と配偶者が役員の会社は、被保険者が役員とその親族だけになるので、この但し書きに当たります。
給与になった半分はどう課税されるか
給与とされた保険料については、国税庁が次の点を示しています。
- 役員に対する給与とされる保険料で、法人が経常的に負担するものは、毎月おおむね一定なので定期同額給与になる
- 給与とされた保険料は、その役員の生命保険料控除の対象になる
つまり、法人の側では給与として損金になり、損金の額そのものは減りません。その代わり、社長個人に給与所得が生じます。年120万円の保険料なら、次のようになります。
| 項目 | ハーフタックスが使える場合 | 一人社長の会社(役員のみ加入) |
|---|---|---|
| 資産計上 | 60万円 | 60万円 |
| 法人の損金 | 60万円(福利厚生費) | 60万円(役員給与) |
| 社長個人の所得 | 0円 | 60万円増える |
法人で60万円の損金を作る代わりに、個人に60万円の所得が生じるので、法人税等が下がった分のかなりの部分が、所得税・住民税として社長個人に戻ってきます。法人と個人の税率の差によっては、保険に入らず役員報酬を同額増やした場合と、税負担の構造がほぼ同じになります。
役員報酬をいくらにすれば法人と個人の税負担の合計が最も小さくなるかは、役員報酬の最適額はいくらかで説明しています。
法人の保険を検討するときの順序
一人社長の法人で保険を使う目的は、多くの場合「法人に資金を貯めながら、社長の死亡に備える」ことです。その目的なら、保険の種類ごとに資産計上と損金の割合が決まっています。定期保険や第三分野保険は最高解約返戻率で扱いが変わり、法人の保険と個人の保険の比較は法人の保険と損金算入で、個人の生命保険料控除との違いは生命保険料控除は法人と個人でどう違うかで整理しました。
また、退職金の原資として法人に資金を残す方法には、保険以外に、法人に利益を残して退職金で受け取る方法もあります。法人に残した利益は退職金で引き出すとで負担率を計算しています。
保険の提案で示される「半分が損金」は、従業員全体を加入させた場合の数字です。一人会社では前提が違うことを確認してから、当サイトの判定ツールで、まず保険を考えない状態の法人化の損益を確かめてください。
まとめ
- 死亡保険金を遺族、満期保険金を法人が受け取る養老保険は、原則として保険料の2分の1を資産、残りを損金にする
- 役員や特定の使用人だけを被保険者にしている場合、残りの2分の1はその役員への給与になる。一人社長の会社はこれに当たる
- 給与とされた保険料は定期同額給与として法人の損金になるが、社長個人に給与所得が生じる
- 給与とされた保険料は、社長個人の生命保険料控除の対象になる
- 保険で「半分が損金」と示されるのは従業員全体を加入させた場合。一人会社では前提が違う
よくある質問
従業員を1人雇って全員加入にすれば、ハーフタックスになりますか?
国税庁の取扱いで給与になるのは「役員または部課長その他特定の使用人のみを被保険者としている場合」です。従業員も加入対象にすれば、この但し書きに当たるかどうかの判断が変わります。加入資格の決め方は実態で判断されるため、個別に確認が必要です。
満期保険金を法人が受け取ったら、どう課税されますか?
法人が受け取った満期保険金は益金になり、それまで資産に計上していた保険料(2分の1部分)を取り崩して損金にします。差額が法人の所得になります。
出典
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。