設立の手続き
合同会社に家族を社員として加える手続と費用。登録免許税は0円〜4万円
結論
合同会社に社員を加えるには、総社員の同意で定款を変更し(会社法637条)、新しい社員が出資を払い込みます(604条)。登記が必要なのは、業務を執行する社員にする場合(社員に関する事項の変更・登録免許税1万円)と、出資を資本金に計上する場合(資本金の増加・最低3万円)です。業務を執行しない社員として加え、出資を資本剰余金に計上すれば、登記は要らず登録免許税は0円です。
- 合同会社の定款には各社員の出資の目的と価額を書く(会社法576条1項6号)。出資をしない社員は加えられない
- 社員が出資を履行したとき、資本金に計上する額は会社が定めた額で、零にもできる(会社計算規則30条1項)
- 業務を執行する社員は法人税法上の役員になる。家族に役員報酬を払うなら、業務執行社員として加えて登記する
このテーマの全体像 会社設立の手続き(自分でやる手順と届出)
一人で作った合同会社に、配偶者を役員として加えて報酬を払いたい。社長に万一のことがあっても会社が解散しないよう、家族も社員にしておきたい。理由はさまざまですが、合同会社の「社員」は株式会社の株主と役員を兼ねたような立場なので、加え方によって手続と費用が変わります。
社員を加える2つの手順:定款変更と出資
会社法604条1項は、持分会社は新たに社員を加入させることができるとしています。加入の効力は、その社員についての定款を変更した時に生じます(同条2項)。合同会社の場合、定款変更の時点でまだ出資を払い込んでいなければ、払込みを完了した時に社員になります(同条3項)。
定款の変更は、定款に別段の定めがなければ総社員の同意で行います(637条)。一人会社なら、社長一人の同意で足ります。
定款に書く必要があるのは、少なくとも次の事項です(576条1項)。
- 新しい社員の氏名と住所
- 有限責任社員であること(合同会社の社員は全員が有限責任社員)
- 出資の目的(合同会社では金銭等に限る)と、その価額
出資の価額は定款の必須記載事項なので、出資をしない社員は加えられません。最低額の定めはありませんが、いくらを出資するかは決める必要があります。
登記が要るかは、2つの選択で決まる
合同会社の登記事項のうち、社員に関係するのは次の3つです(914条)。
- 資本金の額
- 業務を執行する社員の氏名
- 会社を代表する社員の氏名と住所
業務を執行しない社員の氏名は登記事項ではありません。 また、社員が出資を履行したときに資本金に計上する額は、払い込まれた財産の価額の範囲内で会社が定めた額です(会社計算規則30条1項)。全額を資本剰余金にして資本金を増やさないこともできます。
この2つの選択の組み合わせで、登記と登録免許税が変わります。
| 加える社員 | 出資の計上 | 必要な登記 | 登録免許税 |
|---|---|---|---|
| 業務を執行する社員 | 資本金に計上 | 業務執行社員の加入+資本金の増加 | 1万円+3万円(増加額の0.7%が3万円未満なら3万円) |
| 業務を執行する社員 | 資本剰余金に計上 | 業務執行社員の加入 | 1万円 |
| 業務を執行しない社員 | 資本金に計上 | 資本金の増加 | 3万円(増加額の0.7%が3万円未満なら3万円) |
| 業務を執行しない社員 | 資本剰余金に計上 | なし | 0円 |
※ 登録免許税法 別表第一 第24号(一)ニ(資本金の増加:増加額の1,000分の7、3万円に満たないときは3万円)・カ(社員に関する事項の変更:資本金1億円以下の会社は1件1万円)
登記事項に変更が生じたら、2週間以内に本店所在地で変更登記をします(915条1項)。
定款で業務執行社員を定めていないと、全員が業務を執行する
会社法590条1項は、定款に別段の定めがなければ社員は全員が業務を執行するとしています。一人会社を作るときに定款で「業務執行社員」を特に定めていなかった場合、家族を社員として加えると、その家族も自動的に業務を執行する社員になり、登記が必要です。業務を執行しない社員として加えたいなら、定款変更の際に業務執行社員を定める規定も入れておきます。
家族を「業務執行社員」にするか、しないか
家族を加える目的によって、どちらにするかが決まります。
| 目的 | 加え方 | 注意点 |
|---|---|---|
| 配偶者に役員報酬を払う | 業務執行社員 | 業務執行社員は法人税法上の役員(国税庁No.5200)。報酬は定期同額給与など役員給与のルールに従う |
| 社長の死亡に備えて社員を複数にする | 業務執行しない社員でも可 | 死亡は退社事由。定款で持分の承継を定めておく |
| 出資を受けて資金を入れる | どちらでも可 | 出資割合は、定款に別段の定めがなければ利益の配当に影響する |
国税庁のタックスアンサーNo.5200は、使用人以外で法人の経営に従事している者の例に「合名会社、合資会社および合同会社の業務執行社員」を挙げています。配偶者を業務執行社員にして報酬を払う場合、その報酬は役員給与として、定期同額給与などの要件を満たさなければ損金になりません。報酬を夫婦でどう分けると手取りが増えるかは夫婦で役員報酬を分けると手取りは増える?で計算しています。報酬を受ける業務執行社員は、社会保険の被保険者にもなります。
社長が一人だけの合同会社では、社長が亡くなると社員がいなくなり、会社は解散します。家族を社員に加えておくと、この事態を避けられます。死亡時の持分の承継を定款で定める方法は一人合同会社の社長が亡くなると会社は解散するで扱っています。
出資割合と利益の分け方
合同会社は、利益の配当の割合を定款で出資比率と違う割合に決められます。家族に少額だけ出資させ、配当は定款で別に定める、という設計も可能です。その場合の税金の扱いは合同会社の利益配分は出資比率と変えられるにまとめています。
均等割は、資本金に計上しなくても増えることがある
法人住民税の均等割の区分は、資本金ではなく資本金等の額で決まります。出資を資本剰余金に計上して資本金を増やさなくても、資本金等の額には含まれます。家族の出資が少額なら区分は変わりませんが、資本金等の額の合計が1,000万円を超えると、23区では年7万円から18万円の区分に上がります。均等割の区分と資本金の関係は法人化の資本金は1,000万円未満?3つの境目を比較で整理しています。
加えた家族を代表社員にする場合の手続と、代表交代に合わせた役員報酬の改定は合同会社の代表社員を変更する手続で整理しています。合同会社の設立そのものの手順と費用は会社設立を自分でやる手順、株式会社との費用の違いは合同会社と株式会社、設立費用の差は約15万円で比べています。
まとめ
- 社員の加入は、総社員の同意による定款変更(会社法637条)と出資で行う。合同会社では払込み完了時に社員になる(604条3項)
- 定款に出資の目的と価額を書くので、出資しない社員は加えられない
- 登記が要るのは、業務執行社員にする場合(1万円)と出資を資本金に計上する場合(最低3万円)。どちらもしなければ0円
- 定款で業務執行社員を定めていなければ、加えた家族も業務を執行する社員になる(590条1項)
- 業務執行社員は法人税法上の役員。報酬を払うなら役員給与のルールに従う
家族を社員に加えるかどうかは、報酬を払うのか、会社の承継に備えるのかで加え方が変わります。報酬を払うなら、自分の売上と経費で手取りがどう変わるかを先に確かめてください。
よくある質問
出資額はいくらでもよいのですか?
会社法576条1項6号は、定款に社員の出資の目的と価額を書くことを求めていますが、最低額は定めていません。少額でも社員として加えることはできます。ただし出資の割合は、定款に別段の定めがなければ利益の配当や議決の場面に影響するため、定款の定め方とあわせて決める必要があります。
社員を加えた登記はいつまでにしますか?
業務執行社員の氏名や資本金の額など登記事項に変更が生じたときは、2週間以内に本店所在地で変更登記をします(会社法915条1項)。合同会社の場合、出資の払込みが終わった時点で社員になる(604条3項)ので、その日から数えます。
社員を加えると、均等割は増えますか?
均等割の区分は資本金等の額で決まります。資本金に計上しなくても、出資は資本剰余金として資本金等の額に含まれます。出資額が少なければ区分は変わりませんが、合計が1,000万円を超えると23区では年7万円から18万円の区分に上がります。
出典
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。