設立の手続き
自動車リサイクル法の解体業・引取業は法人成りで取り直し。費用と順番
結論
自動車リサイクル法には、引取業・フロン類回収業の登録や解体業・破砕業の許可を承継する規定がありません。法人成りでは、会社が事業所の所在地の都道府県知事(保健所設置市・特別区はその長)から登録・許可を受け直します。解体業の新規許可の手数料は政令の標準額で7万8,000円、引取業・フロン類回収業の登録手数料は自治体ごとに数千円です。個人の業を廃止したら30日以内に廃業等を届け出ます。
- 無登録の引取業・フロン類回収業、無許可の解体業・破砕業は1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象(138条)。会社の登録・許可が出るまで個人で続け、その後に個人を廃止する順番になる
- 解体業の新規申請には、施設の図面と、施設の所有権か使用する権原を証する書類が要る(施行規則55条1項)。個人名義のヤードは会社との賃貸借契約などで権原を整える
- 東京23区・経費3,000万円・40〜59歳・物品販売業(第1種5%)の試算で、損益分岐は2年目以降1,243万円。初年度は解体業・引取業・フロン類回収業を大阪府の手数料で取り直すと1,429万円
このテーマの全体像 会社設立の手続き(自分でやる手順と届出)
中古車の販売や自動車の解体を個人で営んでいると、自動車リサイクル法の登録・許可を1つか複数持っています。法人化するときに気になるのは、それが会社に移るのか、取り直しなのか、取り直しならいくらかかり、その間の引取りや解体はどうなるのか、という点です。
この記事は、引取業・フロン類回収業の登録、解体業・破砕業の許可を持つ個人事業主を想定しています。条文で承継できない理由を確認し、会社での取り直しの手数料、解体業の書類で詰まりやすい点、空白をつくらない順番を整理し、最後に損益分岐を計算エンジンで出します。
4つの業と、登録・許可の違い
自動車リサイクル法は、使用済自動車が流れる順に4つの業を定めています(2条11項〜14項)。
| 業 | 内容 | 必要なもの | 有効期間 |
|---|---|---|---|
| 引取業 | 自動車の所有者から使用済自動車を引き取る | 登録(42条1項) | 5年(42条2項) |
| フロン類回収業 | 使用済自動車のカーエアコンからフロン類を回収する | 登録(53条1項) | 5年(53条2項) |
| 解体業 | 使用済自動車・解体自動車を解体する | 許可(60条1項) | 5年(60条2項、施行令4条) |
| 破砕業 | 解体自動車の破砕・破砕前処理を行う | 許可(67条1項) | 5年(67条2項、施行令4条) |
登録・許可の窓口は、事業所の所在地を管轄する都道府県知事です。保健所を設置する市と特別区では、その市長・区長になります(19条)。たとえば大阪府は、大阪市・堺市・豊中市など9市の事業所は各市で手続きをするよう案内しています。
中古車販売店が下取りや廃車の依頼で使用済自動車を引き取るなら引取業の登録、カーエアコン付きの車からフロン類を抜くならフロン類回収業の登録、ヤードで部品取りをするなら解体業の許可が要ります。
フロン排出抑制法の「充塡回収業」とは別の制度
カーエアコンのフロン類回収は、この法律のフロン類回収業の登録で行います(2条8項・12項)。業務用エアコンや冷凍機を扱う第一種フロン類充塡回収業者の登録は、フロン排出抑制法の別の制度です。両方を持っている事業者は、それぞれ取り直しになります。後者はフロン類充塡回収業者の登録と法人成りで整理しています。
業の承継規定がないので、会社で受け直す
自動車リサイクル法には、引取業者・フロン類回収業者・解体業者・破砕業者の地位を譲渡で移す条文がありません。登録・許可は、受けた人に付いています。個人事業主が会社を作って事業を移しても、会社は改めて登録・許可を受ける必要があります。
同じ自動車の業でも、道路運送車両法の特定整備事業の認証は事業の譲渡で承継できます(整備工場の法人成り)。中古車販売に付きものの古物商許可は、承継できず会社で取り直しです(古物商の法人成り)。整備・販売・解体を一体でやっている事業者は、許認可ごとに扱いが分かれます。許認可ごとの全体像は法人成りで許認可を引き継げるかにまとめています。
個人の側は、廃止して30日以内に届け出る
個人で業を廃止したら、廃止した日から30日以内に都道府県知事へ届け出ます。引取業は48条1項5号、フロン類回収業は59条で同じ規定を準用し、解体業は64条5号、破砕業は72条で64条を準用しています。届出を怠ると30万円以下の罰金の対象です(140条2号)。
引取業とフロン類回収業は、廃止に当たると登録が効力を失うと明記されています(48条2項、59条で準用)。大阪府は、廃止届の提出時に登録通知書を返却するよう案内しています。
欠格要件は会社の役員にもかかる
会社の申請では、役員が欠格要件に当たらないことも見られます。引取業の登録は、法人の役員に罰金刑から2年を経過しない者などがいると拒否されます(45条1項7号)。解体業の許可は基準がより重く、拘禁刑以上の刑から5年を経過しない者、廃棄物処理法などの違反で罰金刑から5年を経過しない者などがいると受けられません(62条1項2号)。
解体業の「役員」には、取締役などと同等以上の支配力を持つ相談役・顧問も含まれます(61条1項3号)。一人会社でも、社長個人の経歴がそのまま会社の審査に効いてきます。
取り直しの手数料:解体業は標準額、引取業は自治体ごと
解体業と破砕業の許可手数料には、国が政令で示す標準額があります。引取業とフロン類回収業の登録手数料は政令の表に載っておらず、自治体が条例で決めています。
| 業 | 新規 | 更新 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 解体業 | 78,000円 | 70,000円 | 手数料標準政令(大阪府も同額) |
| 破砕業 | 84,000円 | 77,000円 | 手数料標準政令 |
| 引取業(大阪府) | 5,600円 | 3,600円 | 大阪府の案内 |
| 引取業(京都府・令和7年4月1日から) | 4,280円 | 3,210円 | 京都府の案内 |
| 引取業(宮城県・令和8年4月1日から) | 4,100円 | 4,100円 | 宮城県の案内(新規・更新同額) |
| フロン類回収業(大阪府) | 6,000円 | 4,000円 | 大阪府の案内 |
| フロン類回収業(宮城県・令和8年4月1日から) | 5,200円 | 5,200円 | 宮城県の案内(新規・更新同額) |
宮城県は令和8年4月1日に、引取業を4,000円から4,100円、フロン類回収業を5,000円から5,200円に見直しています。
大阪府で解体業・引取業・フロン類回収業の3つを会社で取り直すと、手数料は78,000円+5,600円+6,000円で合計89,600円です。会社の申請は新規なので、更新の手数料ではなく新規の手数料がかかります。
解体業の書類で詰まりやすいのは「施設の権原」
引取業とフロン類回収業の登録は、申請書と誓約書などの書類が中心です。引取業の申請書には、使用済自動車のカーエアコンにフロン類が含まれているかを確認する体制を書きます(43条1項5号)。
解体業の許可は、施設と申請者の能力が基準に合っていることが条件です(62条1項1号)。新規申請には、次の書類を添えます(施行規則55条1項)。
- 解体業の用に供する施設(積替え・保管の場所を含む)の平面図・立面図・断面図・構造図・設計計算書と付近の見取図
- 申請者が施設の所有権を持つこと、持たない場合は使用する権原を持つことを証する書類
- 事業計画書と収支見積書
- 法人なら定款と登記事項証明書、役員の住民票の写しなど
- 出資の5%以上を持つ者がいれば、その出資額を書いた書類と住民票の写しなど
法人成りで詰まりやすいのは2つめです。**ヤードの土地や解体作業場が社長個人の名義のままなら、会社には所有権がありません。**会社と社長個人で賃貸借契約を結ぶなど、会社が施設を使う権原を書類で示せるようにします。更新の申請では内容が変わらなければ図面と権原の書類を省けます(施行規則55条3項)が、会社の申請は新規なので省けません。
施設の基準(施行規則57条1号)は、保管場所の囲い、解体作業場の床を鉄筋コンクリートにするなどの地下浸透の防止、油水分離装置と排水溝、雨水がかからない屋根や覆いなどです。個人で許可を受けたときと同じヤードを使うなら施設は変わりませんが、図面一式を会社の申請として出し直します。保管の方法や廃油・廃液の回収方法などを書いた標準作業書を常備し、従事者に周知していることも能力の基準です(施行規則57条2号イ)。
大阪府は、解体業の新規・更新とも事前に担当へ連絡するよう案内しています。審査の段階で書類の補正を求めることがあるとも書いています。
空白期間をつくらない順番
無登録で引取業・フロン類回収業を行うこと、無許可で解体業・破砕業を行うことは、1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象です(138条1号・4号)。法人には両罰規定で罰金刑がかかります(142条)。会社の登録・許可が出る前に、会社の名義で引取りや解体を始めることはできません。
一方、個人の登録・許可は、個人が業を続けている間は有効です。順番は次のとおりです。
- 会社を設立し、ヤードの賃貸借契約など施設の権原を会社に整える
- 会社で引取業・フロン類回収業の登録、解体業の許可を申請する(個人の業は続ける)
- 会社の登録・許可が出たら、引取り・解体を会社の名義に切り替える
- 個人の業を廃止し、30日以内に廃業等を届け出る
解体業の許可が下りるまでの期間を示した一次情報は確認できませんでした。申請前に窓口へ相談し、見通しを確かめてから個人の廃止日を決めるのが安全です。会社の設立手順と実費は会社設立を自分でやる手順にまとめています。
中古車・部品販売の個人事業税と損益分岐
中古車や部品の販売は、個人事業税の物品販売業(第1種事業・税率5%)に当たります(地方税法72条の2第8項)。解体業など他の業も、どの業種に当たるかは都道府県が判断します。事業主控除290万円を超えた所得に課税され、法人化すると個人事業税はかからなくなります。代わりに役員報酬に社会保険料がかかります。
仕入れ・ヤードの維持・外注などの経費を年3,000万円、社長を40〜59歳と置き、事業所得ごとに個人のままと法人化の差を計算しました。初年度の列は、大阪府の手数料で解体業・引取業・フロン類回収業を取り直す場合(89,600円)です。
| 事業所得(売上−経費) | 最適な役員報酬 | 2年目以降 | 初年度(設立費用込み) |
|---|---|---|---|
| 600万円 | 月42万円 | −34.0万円 | −53.0万円 |
| 800万円 | 月45万円 | −18.9万円 | −37.9万円 |
| 1,000万円 | 月45万円 | −10.0万円 | −28.9万円 |
| 1,200万円 | 月54万円 | −4.3万円 | −23.3万円 |
| 1,500万円 | 月54万円 | +26.1万円 | +7.2万円 |
| 2,000万円 | 月90万円 | +65.8万円 | +46.8万円 |
※ 当サイトの計算エンジン(node scripts/houjinnari-kyoninka-table.mjs --expenses 3000 --business type1 --age 40to64 --fee 89600 --note '物品販売業(第1種・5%)' で再生成)で算出。経費3,000万円、東京都・東京23区、単身・40〜59歳、青色申告(電子申告65万円控除)、インボイス登録済み、合同会社。法人の税理士報酬35.0万円・個人15.0万円。役員報酬は手取り最大となる額を総当たりで選択。個人事業税は物品販売業(第1種・5%)。初年度は合同会社の設立費用10.0万円と許認可の取り直し費用89,600円を差し引いた額。2026年(令和8年)分基準の概算
損益分岐となる事業所得(青色申告特別控除の前)は、2年目以降が1,243万円です。初年度は、取り直しの手数料がなければ1,341万円、89,600円が加わると1,429万円になります(同じスクリプトから --fee を外して算出)。
手数料は9万円に満たないのに、損益分岐は88万円上がります。この所得帯では、事業所得が増えても法人化の有利さは少しずつしか増えないためです。表でも1,200万円から1,500万円の間で、差は30.4万円しか動いていません。初年度に限れば、数万円の固定費が損益分岐を大きく動かします。
表は東京23区で計算しています。国民健康保険料は自治体で変わるので、大阪府などで営む場合は判定ツールに自分の売上と経費を入れて確かめてください。計算の前提は計算方法に書いています。
まとめ
- 自動車リサイクル法には引取業・フロン類回収業の登録、解体業・破砕業の許可を承継する規定がなく、法人成りでは会社が受け直す
- 解体業の新規許可の手数料は標準額7万8,000円。引取業・フロン類回収業の登録手数料は自治体ごとで、大阪府では5,600円と6,000円
- 解体業の新規申請では施設の図面と権原の書類が要る。個人名義のヤードは会社との賃貸借契約などで権原を整える
- 無登録・無許可の営業は1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象。会社の登録・許可が出てから個人を廃止し、30日以内に届け出る
- 東京23区・経費3,000万円の試算で、損益分岐は2年目以降1,243万円、取り直し費用込みの初年度は1,429万円
よくある質問
中古車販売店で、お客さまの廃車を引き取るだけです。それでも会社で登録が要りますか。
自動車の所有者から使用済自動車を引き取る事業は引取業に当たり、登録が要ります(2条11項・42条1項)。登録は登録を受けた者ごとなので、会社が引き取りを行うなら会社の名義で登録を受けます。所有者の委託で指定先へ運ぶだけの運搬は引取業から除かれています。
個人の解体業の許可は、会社の申請で何か使えますか。
許可そのものは会社へ移りません。解体業の許可の更新では、内容に変更がなければ施設の図面と権原の書類を省けます(施行規則55条3項)が、会社の申請は新規なので図面と権原の書類をそろえ直します。
個人の登録・許可はいつ廃止すればよいですか。
会社の登録・許可が出て、引取りや解体を会社の名義で始められる状態になってからです。引取業は廃止すると登録が効力を失います(48条2項)。廃止した日から30日以内に、引取業・フロン類回収業は廃業等の届出(48条1項・59条)、解体業・破砕業は廃業等の届出(64条・72条)を出します。
出典
- e-Gov法令検索 使用済自動車の再資源化等に関する法律 第2条(定義)・第19条・第42条〜第49条(引取業者の登録・廃業等の届出・登録の失効)・第53条・第59条(フロン類回収業者)・第60条〜第64条(解体業の許可・許可の基準・廃業等の届出)・第67条〜第72条(破砕業)・第138条・第140条(罰則)
- e-Gov法令検索 使用済自動車の再資源化等に関する法律施行令 第4条(許可の更新期間)
- e-Gov法令検索 使用済自動車の再資源化等に関する法律施行規則 第55条(解体業の許可の申請)・第57条(解体業の許可の基準)
- e-Gov法令検索 地方公共団体の手数料の標準に関する政令 本則の表 106の2項(解体業の許可)・106の3項(破砕業の許可)
- 大阪府 【自動車リサイクル法】解体業の申請、届出について
- 大阪府 【自動車リサイクル法】引取業の申請、届出について
- 大阪府 【自動車リサイクル法】フロン類回収業の申請、届出について
- 京都府 自動車リサイクル法(引取業)の登録申請手数料が変わりました
- 宮城県 自動車リサイクル法(申請手数料の見直し)
- e-Gov法令検索 地方税法 第72条の2第8項(第一種事業:物品販売業)・第72条の49の17(個人事業税の税率)
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。