設立の手続き

化粧品製造販売業の許可は法人成りで取り直し。OEMブランドの手順

結論

薬機法には化粧品製造販売業・製造業の許可を引き継ぐ規定がなく、法人成りでは会社が許可を受け直し、品目ごとの製造販売届も会社の名義で出し直します。承継の規定があるのは製造販売の承認(14条の8)だけで、届出で足りる一般の化粧品は対象外です。無許可の製造販売は3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金(併科あり)の対象なので、会社の許可と届出がそろってから会社で出荷し、個人の側は30日以内に廃止を届け出ます。

  • 製造販売業の許可は総括製造販売責任者の事務所がある都道府県の知事が、製造業の許可は製造所ごとに所在地の知事が与える。どちらも有効期間は5年
  • 新規の許可手数料は都道府県で異なり、北海道は製造販売業5万8,900円、製造業(一般区分)4万6,300円。沖縄県は製造販売業7万4,700円
  • OEM・東京23区・40歳未満・物品販売業(第1種5%)の試算では、損益分岐は2年目以降1,266万円、初年度は製造販売業の手数料込みで1,422万円

OEMで自社ブランドの化粧品を売っている個人事業主が法人化すると、薬機法の許可は会社へ移りません。会社が化粧品製造販売業の許可を受け直し、品目ごとの製造販売届も会社名義で出し直します。自社で製造所を持っている人は、製造業の許可も同じです。

この記事では、承継の規定がない条文の構造、取り直しで止まらないための順番、容器の表示の切替え、一人会社で人の要件を満たす方法を確認します。最後に、許可手数料を含めた法人化の損益分岐を計算エンジンで出します。

化粧品の許可は「製造販売業」と「製造業」の2本立て

薬機法は、化粧品を市場に出す責任と、実際に作る行為を分けて許可しています。

許可必要になる人単位許可する者有効期間
化粧品製造販売業(12条1項)自社ブランドで市場に出す人(OEMの発注者を含む)事業者ごと総括製造販売責任者の事務所がある都道府県の知事(施行令80条2項1号)5年(施行令3条)
化粧品製造業(13条1項)製造工程の全部または一部を行う人製造所ごと製造所がある都道府県の知事(施行令80条2項3号)5年(施行令10条)

製造業の許可は、「製造工程の全部または一部を行うもの」と「包装・表示・保管のみを行うもの」の2区分です(施行規則25条3項)。OEMで中身も容器詰めも任せていれば製造販売業だけで足ります。一方、届いた製品に自分でラベルを貼る、出荷前の製品を自分の倉庫で保管する、といった工程があるなら、包装・表示・保管の区分の製造業許可も必要になります。

製造販売業の許可を受けずに化粧品を製造販売すると、3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはその両方の対象です(84条2号)。製造業の許可なしの製造は1年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはその両方です(86条1項2号)。

承継の規定は「承認」にしかない

薬機法には「承継」という見出しの条文があります。化粧品に関係するのは14条の8で、品目ごとの製造販売の承認を受けた者が、相続・合併・分割をしたり、承認品目の資料等を譲り渡したりしたときに、地位を引き継ぐと定めています。

ところが、化粧品の大半は承認ではなく届出で製造販売します。承認が要るのは、厚生労働大臣の指定する成分を含む化粧品だけです(14条1項)。それ以外の化粧品は、製造販売業者があらかじめ品目ごとに届け出ます(14条の9第1項)。

整理すると次のとおりです。

対象承継の規定法人成りでの扱い
化粧品製造販売業の許可なし会社が新たに許可を受ける
化粧品製造業の許可なし会社が製造所ごとに許可を受ける
品目ごとの製造販売届(14条の9)なし会社が製造販売業者として品目ごとに届け出る
指定成分を含む化粧品の承認(14条)あり(14条の8)資料等の譲渡で承継できる。承継前に届出

許可は申請者に与えられます。個人の事業主と、その人が作った会社は別の申請者です。許可の側にも届出の側にも引き継ぐ条文がないので、法人成りでは会社がすべてを新しくそろえることになります。許認可全体の型の違いは法人成りで許認可は引き継げるかにまとめています。同じ薬機法の販売業でも結論は同じで、高度管理医療機器の販売業許可や薬局の開設許可も会社で取り直しです。

空白期間を作らない順番

許可が出るまでは、会社は化粧品を出荷できません。個人の許可は会社の許可が出るまで残しておき、切替えの日を決めて動きます。

  1. 会社を設立する(登記事項証明書が申請書の添付書類になるため。施行規則19条3項1号)
  2. 会社として製造販売業の許可を申請する。法人の場合は、薬事に関する業務に責任を有する役員の氏名と組織図が必要です(12条2項2号・3項1号)
  3. 自社に製造工程があれば、製造所ごとに製造業の許可を申請する
  4. 許可が出たら、会社が品目ごとに製造販売届を出す(14条の9第1項)
  5. 会社名義の表示に切り替えた製品を、会社が出荷し始める
  6. 個人の製造販売業を廃止し、30日以内に届け出る(19条1項)。製造所を廃止したときも30日以内です(19条2項)

廃止届や変更届を怠ると50万円以下の罰金の対象です(87条3号・4号)。

容器の表示は、会社の名称と住所に替わる

化粧品の直接の容器または直接の被包には、製造販売業者の氏名または名称と住所を記載します(61条1号)。個人で出荷していた製品には、個人事業主の氏名と住所が載っています。会社が製造販売業者として出荷する製品には、会社の名称と住所が必要です。

OEMで作る場合、ラベルや印刷済みの外箱の版を替える費用と、刷り直しまでの時間がかかります。個人名義の表示が付いた未出荷の在庫が残る場合、その扱いは許可権者の都道府県に事前に確認してください。在庫を会社へ移すときの税務は、法人成りの在庫引継ぎで扱っています。ブランド名を個人で商標登録している場合は、商標権の会社への移転も同じ時期に検討する論点です。

一人会社で「人の要件」を満たす

化粧品の製造販売業者は、品質管理と製造販売後安全管理を行う総括製造販売責任者を置かなければなりません(17条1項)。化粧品の場合の基準は次のいずれかです(施行規則85条の2第2項)。

  • 薬剤師
  • 高校またはこれと同等以上の学校で、薬学または化学に関する専門の課程を修了した者
  • 高校またはこれと同等以上の学校で、薬学または化学に関する科目を修得した後、医薬品・医薬部外品・化粧品の品質管理または製造販売後安全管理の業務に3年以上従事した者
  • 厚生労働大臣が同等以上の知識経験を有すると認めた者

製造所を持つ場合は、製造所ごとに責任技術者を置きます(17条10項)。化粧品の資格は総括製造販売責任者とほぼ同じ形で、3つ目が「製造に関する業務に3年以上」になります(施行規則91条2項)。

個人のときに社長本人が総括製造販売責任者だったなら、会社でも同じ人を置けます。人が替わらない分、申請書類の準備は軽くなります。

品質保証責任者と安全管理責任者は「販売部門に属さない」

許可の基準には、品質管理の方法(GQP)と製造販売後安全管理の方法(GVP)が省令の基準に適合することが入っています(12条の2第1項)。

  • GQP省令は、化粧品の製造販売業者に品質保証責任者を置くよう求めています(17条)
  • GVP省令は、化粧品の製造販売業者を「第三種製造販売業者」とし(2条10項)、安全管理責任者を置くよう求めています(15条で13条2項を準用)

どちらの責任者にも、「医薬品等の販売に係る部門に属する者でない」ことが要件として書かれています。営業も社長が一人で担う会社では、この要件と組織図の書き方が審査の論点になり得ます。体制の組み方は、申請前に許可権者の都道府県に相談しておくと手戻りを防げます。

取り直しの手数料は都道府県で違う

許可の申請手数料は都道府県ごとに定められていて、全国一律の額はありません。一次情報で確認できた2県の新規申請の額は次のとおりです。

許可北海道沖縄県
化粧品製造販売業58,900円74,700円
化粧品製造業(一般区分)46,300円43,100円
化粧品製造業(包装・表示・保管区分)36,600円31,900円

OEMだけなら製造販売業の1件、製造所を持つなら製造業も加わります。北海道の例では、製造販売業と製造業(一般区分)の両方で10万5,200円です。法人成りで取り直すと、個人の許可の残りの有効期間は使えず、会社の許可は新しく5年の期間で始まります。

個人事業税と損益分岐

OEMで仕入れて売るなら個人事業税の物品販売業、自ら製造するなら製造業です。どちらも第1種事業(地方税法72条の2第8項1号・5号)で、税率は5%です。事業主控除290万円を超えた所得に課税され、法人化するとかからなくなります。代わりに役員報酬に社会保険料がかかります。

OEMの製造委託費・容器・広告などの経費を年1,800万円、社長を40歳未満と置き、事業所得ごとに個人のままと法人化の差を計算しました。初年度の列には、北海道の製造販売業の手数料5万8,900円を取り直し費用として乗せています。

事業所得(売上−経費)最適な役員報酬2年目以降初年度(設立費用込み)
600万円月42万円−37.6万円−53.5万円
800万円月54万円−24.1万円−40.0万円
1,000万円月54万円−14.7万円−30.6万円
1,200万円月54万円−6.6万円−22.5万円
1,500万円月54万円+23.9万円+8.0万円
2,000万円月90万円+67.3万円+51.4万円

※ 当サイトの計算エンジン(node scripts/houjinnari-kyoninka-table.mjs --expenses 1800 --business type1 --age under40 --fee 58900 --note '物品販売業(第1種・5%)' で再生成)で算出。経費1,800万円、東京都・東京23区、単身・40歳未満、青色申告(電子申告65万円控除)、インボイス登録済み、合同会社。法人の税理士報酬35.0万円・個人15.0万円。役員報酬は手取り最大となる額を総当たりで選択。個人事業税は物品販売業(第1種・5%)。初年度は合同会社の設立費用10.0万円と許認可の取り直し費用58,900円を差し引いた額。2026年(令和8年)分基準の概算

損益分岐となる事業所得(青色申告特別控除の前)は、2年目以降が1,266万円です。初年度は、製造販売業の手数料を含めて1,422万円、手数料がなければ1,364万円です(同じスクリプトで --fee 0 として算出)。製造所を持ち、製造業(一般区分)の手数料も加えて10万5,200円とした場合、初年度の損益分岐は1,467万円になります(--fee 105200 --note '製造業(第1種・5%)' で算出)。

損益分岐の近くでは、法人化の有利・不利が所得に対して緩やかにしか動きません。そのため、5〜10万円の手数料でも初年度の損益分岐は58万〜103万円上がります。2年目以降には手数料が乗らないので、判断は2年目以降の列を軸にし、初年度は持ち出しになるかを見る、という使い方が向いています。

自分の売上と経費は判定ツールに入れて確かめられます。計算の前提は計算方法に、設立の手順と実費は会社設立を自分でやる手順にまとめています。

まとめ

  • 化粧品製造販売業・製造業の許可には承継の規定がなく、法人成りでは会社が許可を受け直す。製造業は製造所ごと
  • 届出で製造販売している化粧品は、会社が品目ごとに製造販売届を出し直す。承継できるのは指定成分を含む化粧品の承認だけ
  • 会社の許可と届出がそろってから会社で出荷し、容器の表示は会社の名称と住所に切り替える。個人の廃止届は30日以内
  • 総括製造販売責任者は社長本人が続けられるが、品質保証責任者・安全管理責任者の「販売部門に属さない」要件は事前に相談しておく
  • OEM・東京23区・40歳未満の試算で、損益分岐は2年目以降1,266万円、初年度は手数料込みで1,422万円

よくある質問

OEMで作ってもらっているだけでも、化粧品製造販売業の許可が要りますか。

自社ブランドとして市場に出す者は製造販売業者にあたり、化粧品製造販売業の許可が要ります(薬機法12条1項)。製造そのものはOEM先の製造業許可で行われますが、自社で包装・表示・保管のいずれかを行うなら、その区分の製造業許可も必要です(施行規則25条3項2号)。

個人名義のラベルが付いた在庫は、法人成り後もそのまま売れますか。

化粧品の直接の容器等には製造販売業者の氏名または名称と住所の記載が必要です(61条1号)。会社が製造販売業者として出荷する製品には会社の名称と住所が要るので、個人名義の表示のまま残っている在庫の扱いは、切替えの前に許可権者の都道府県へ確認してください。

医薬部外品(薬用化粧品)を扱っている場合も同じですか。

医薬部外品も製造販売業の許可(12条1項)と製造業の許可(13条1項)の仕組みは同じで、業の許可を引き継ぐ規定はありません。ただし医薬部外品の多くは品目ごとの承認(14条1項)が必要で、承認は品目の資料等の譲渡によって承継でき、承継前に届け出ます(14条の8第2項・第3項)。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。